テリー 冒険のその後   作:ストイコピクシー

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第17話 メタル狩りの準備

「はぐれメタルって仲間になんの!?」テリーは驚いて聞いた。

「いや、まあ、私もスラリンもそういう話を聞いたことがあるというだけです。実際に、はぐれメタルを連れた人間のパーティーを見たことはありません」ピエールは答えた。

ふうん、とテリーは考えてみた。はぐれメタルがパーティーの一員となる。物理攻撃は期待できない。攻撃呪文はギラを使えるくらいか。これでは即戦力とは言い難い。が、あの「みのまもり」と「すばやさ」、そしてほとんどの呪文、とくぎが効かないという特性は捨てがたい。戦闘となればはぐれメタルが動き回って敵の注意を引いている間に自分達が敵を攻撃するのだ。はぐれメタルなら敵の中に紛れている時に、こちらの攻撃呪文やとくぎを敵に放っても無傷だろう。それに「はぐれメタル」だ。ドランゴが「ドラゴン」の職業であったように、「はぐれメタル」の職業についているなら、自分のようにレイルーラを覚えるかもしれない。うん。良い!

「よーし、はぐれメタルを仲間にしようぜ!」テリーは言った。

「いやいや、仲間になるかどうかわからないんですって」

「はぐれメタルってメタルスライムが硬度を保ったまま突然変異をおこしたとか、液体金属が生命を得て形を維持できないでバブルスライムみたいな形になったとか、はたまたオリハルコンが神か魔王から生命をもらったとかいろんな説があって、言葉もしゃべれないから同じスライム族の僕らでもわからないんだよ」

「正確には、液体金属がたまたまスライム族の形に似たものに変化した場合もあり得る為、スライム系でなく物質系である可能性もあるのです。物質系の魔物は言葉を持たない者が多い為、そうであったとしても納得できます」

 

スラリンとピエールの話がテリーの好奇心を刺激して、テリーの心がうずうずしてきた。そんな未知の生物だったのか。知りたい。こりゃ仲間にして、直接話を聞かなきゃな。

「よーし、絶対はぐれメタルを仲間するぞ!」テリーが右手をあげて叫んだ。

「・・・我々の話聞いてました?」ピエールが言った。

「まあまあ、聞けって。はぐれメタル倒せばすっごい経験値が入るじゃん。レベル上げのついでだよ」

「でもさー、レベル上げ過ぎると今度は熟練度が入りにくくなるよ。ムドー倒した後、レベル上がり過ぎてたせいで、ハッサンだけ職業の成長が遅かったって嘆いていたもん。逆にムドー城に入らなかったバーバラがどんどん熟練度入っていって、一番最初に上級職になったのはバーバラなんだよ」

比較的早い段階でレック達パーティーの仲間になったスラリンが言った。

「大丈夫だって。魔物が強い場所は大体レベル99まで熟練度入るんだから。ガンガンはぐれメタル倒して強くなろうぜ。そんで運が良けりゃはぐれメタルも仲間になると」

テリーは笑って言った。

「スラリン、今の魔物使いの熟練度は?」ピエールが聞いた。

「ひゃくれつなめを覚えたばかりだからまだ4だよ」スラリンは答えた。

「ふむ、位階が高いであろうはぐれメタルを仲間にするにはまだランクが低い気がしますな。最低でも6は欲しいところです」ピエールは言った。

「あー、どうせメタル狩りをするなら弱くてもいいから、まずは他の魔物を仲間にしないか?はぐれメタル1匹倒したら、レベル1の奴なんて一気にレベル10位までいくんじゃね?」テリーは言った。

「良いアイデアですね。どのみち仲間は入れなければいけないのです。即戦力でなくても育成枠として2匹位仲間にしてホイミタンクとして使いましょう」

「まーた、そんなこと言う。仲間になってくれるなら好きな職業にさせてあげて、強くして喜んでくれるならそれで良いじゃん」

「いやいや、テリーは魔物の事がわかっていない。仲間になった魔物はリーダーである人間の望みを叶えることが最大の喜びですから。リーダーがこの職業につけと言えば喜んでその職業につきます」

「んじゃ、お前今から遊び人に転職しろよ。そしたらくちぶえ担当にするから」

「絶対に嫌です」

「言ってること違うじゃねーか」

 

「おいおいスラリン、ピーナツは一気に食うもんじゃない。一粒、一粒味わって食うんだ」テリーは言った。

「だって僕水ばかり飲んで飽きちゃったもん」

「だからこのやたら塩気の多い(おつまみセット)を頼んだんだろーが。いいか、ピーナツは一人10粒、アーモンドは一人3粒、ナッツは一人2粒までだ。ペース配分を考えながら食べるんだぞ」

なんだかんだで朝食をさっさと食べてしまい、水ばかり注文することに耐えられなかったため、仕方なく全員分として(おつまみセット)を注文したスラリンに対してテリーが注意した。まだまだ会議は続くからなとテリーは言って話を馬車のことに移した。

「育成枠の魔物を入れるなら馬車が必要だな。まずは育成枠の魔物は安全な馬車に入ってもらってて、俺達の戦いを見ながらレベルと熟練度を上げてもらおうぜ」テリーは言った。

「育成枠の魔物を誰にするかはひとまず置いといて、馬車を作ってもらうのはハッサン殿でいいですか?ついでに馬も手配してもらいましょう」

「僕、ハッサンに会いたい、会いたい」

かつての仲間との再会を楽しみにする2匹をよそに、テリーはテンションが上がらなかった。実家の大工を継いだハッサンからすると、いまだに冒険者をしているテリーはモラトリアムに見えなくもないだろうから、まじめに働け、就職しろ、将来云々の話をされる予感がした。とはいえ冒険者というのはこの世界では十分稼ぐことのできる職業の一つであるし、ゴールド銀行にはそこそこの額が預金してあるので、何か言われた時のためにゴールド銀行から預金額の書いてある紙を発行してもらおうかなあと考えているテリーだった。

「テリー、大丈夫ですって。ハッサン殿には私が交渉しますから」

「いーよ!交渉事を魔物に任せましたなんてやったら、本物のダメ人間だよ!ちゃんと自分でやるよ!」テリーはピエールに言った。

 

「その後、アモっさんの所に行こうよ。魔物使いやってたから、どの魔物を仲間にしたらいいか教えてくれるよ」

「おおっ、素晴らしいアイデアだなスラリン」ピエールはスラリンを褒め称えた。

「そんなもん、大体わかるからわざわざ聞きに行くほどのことでもないだろ。おめーらただアモっさんに会いたいだけだろ」

ますます盛り上がる2匹にテリーはつっこんだ。

ちなみにアモっさんというのはアモスのパーティー内での愛称だ。10代のレック、バーバラ、チャモロ、テリー、20代前半のミレーユ、ハッサンはお互い呼び捨てだったが、年齢非公表でどうみてもアラサーのアモスは呼び捨てにしてはいけない雰囲気だったので皆気を使って、アモっさんとビミョーに敬称をつけて呼んでいたのである。

「あのおっさん、結婚して子どもが産まれるとかミレーユ姉さんが言ってたよ」

「それはめでたい。お祝いの品は何にしましょうか?」

「ハッサンのいるサンマリーノで何か買えばいいんんじゃねーの?クリアベールの名物の寝具でも良いけど、新婚の人に寝具渡すのもなーんかやらしくて嫌だよな」

「じゃあ、まずサンマリーノだね。ああっ、もうお昼近いよ。ここでお昼ごはん食べてく?」

「いやいやいや、そりゃサンマリーノで海鮮料理食う方が良いだろ。くあーっ!サンマリーノに行くってわかっているなら(おつまみセット)注文しなきゃよかった。いや、違うな。朝食抜いてサンマリーノで食べ放題のランチ頼めば良かったんだ。ちくしょう・・・、昨日の晩きちんと計画立てていれば・・・」

「私は昨晩今後について話そうとしましたからね!」ピエールはテリーを責めた。

「まあ、やっちまったもんは仕方がない。お前らサンマリーノは魚介類が旨いから値段気にせず好きなもん食っていいからな」

テリー一行はそんなことを言いながら食堂の支払いに行った。

 

「3名で4ゴールドです」食堂の女将は頬をひくひくさせながら言った。

これでも十分にサービスしているつもりだったが、店を出たばかりのテリーの口から4ゴールドあればエビ1匹丸ごと焼いたやつ食えるんだけどなと聞こえた時は、やはりスポンサー契約にしておけば良かったと痛感していた。でも夜の宿はまたここにしようなとの声も聞こえてきたのであの子ったらと頬を染め、機嫌が直る女将だった。

 

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