テリー一行はルーラにてサンマリーノの町に到着した。
「なあ、本当にハッサンに馬車造ってもらうの?馬車はその辺の森にいるホビットとか、きこりにでも造ってもらえばいいんじゃね?馬は魔物のユニコーンとかレジェンドホーンをなつかせて・・・」
「全く、ここまで来て。ハッサン殿に頼むのが時間やコスパを考えると一番良いのは説明したはずです」テリーの今更な意見に対してピエールが言った。
うー、なんか、知った人間に会いたくねーんだよなあとテリーは思いながらサンマリーノの町に入った。町の北にあるハッサンの家に着いた。家はいつの間にやら三階建てとなっており、表の看板にデカデカと「レイドック国指定店 ハッサン工務店」と書いてあった。
「よくわからないけど、国の名前を堂々と書いてあるあたりが権威がありますって事をあいまいにうっすらと表現しているのかな?」
「レイドック国の公共工事を入札なしで全てやってるんじゃないかととられかねない名前ですな」
「あいつ自分じゃ武道家だとか言ってたけど商人だよな」
一行はそれぞれの感想を言った。
「ごめん下さーい」テリーはドアを開けて店の中に入った。
「いらっしゃいませ。おや、あなたは・・・。ああ、ミレーユ様に似てらっしゃる。ということは専務に会いに来られたのですね」男性の従業員はそう言って頭を下げた。
「失礼しました。私はジョセフといいます。今ハッサンさんのところで働かせてもらっている者です。今、ハッサンさん・・・、専務を呼んでまいります」
聞いてもいないのに自己紹介をしたジョセフは受付から奥の部屋へ入っていった。
「ああ、わかった。多分町長の息子さんだね。レック達から話を聞いたことがあるよ」
「へー、はじめて聞いたよ。どんな話だったんだ?」テリーがスラリンに聞いた。
「ジョセフとメイドのサンディの恋に横恋慕したアマンダがジョセフの家の犬の餌に毒を入れてサンディのせいにしようとしたんだよ」
「懲役レベルじゃん!イタズラや嫌がらせを超えてるぞ!抒情酌量の余地ねーぞ!動物愛護の精神ねーのかよ、そのアマンダって女は!」
「当時、透明状態だったレック殿達が聞いたというアマンダの独り言だけでは決定的な証拠にはならない為、アマンダが自白しなければ罪には問われませんしね。アマンダがNoと言えばそれで終わりです」
そんな話をしていると作業着を身につけたハッサンが出てきた。
「なんだ、やっぱテリーじゃねえか。いくらこの超優良企業に入りたいつっても、すぐに雇えねーぞ。まず履歴書を送ってそれから面接を・・・」
「ちげーよ!仕事の依頼だよ!」
応接室という名のテーブルとイスだけある部屋に案内された。面会部屋だなと突っ込みそうになった。
「なるほど、魔物の仲間を増やしたいから馬車を造ってほしいと。ついでに馬も用意してくれと」ハッサンは言った。
「ああ、サイズは以前パーティーで使っていた馬車よりちょっと大きい位がいい。ただし頑丈に頼む。食料を入れておく箱とスペースも欲しい。イスは変形させればベッドになるようなのがいいな・・・」
テリーは適当な紙に簡単な図面を書きながら説明していった。
「よーし、大体わかった。期限は、まあ、3日みといてくれ。すぐ取り掛かりたいんだけど、仕事が詰まっててな。つらいわー、青年実業家はつらいわー」
はいはい、ご立派、ご立派。じゃあ、3日後取りに来るからなと出て行こうとしたらジョセフが4人分のお茶を持って入ってきた。来客用のお茶って普通来たらすぐ出てくるもんじゃないかと思ったが仕方なく座りなおした。
「伝説の剣士テリー様と会えるなんて光栄ですよ。まだ冒険を続けておられるのですね」
あー、どうも、そうなんですよとジョセフの言葉に適当にあいずちをうってお茶に口を付けた。
「ミレーユ様の弟としては専務がテリー様の義理の兄となるのは嬉しいことでしょう?」
ブーッとテリー、スラリン、ピエールはお茶を吹き出しハッサンの顔にかかった。
「専務は私とサンディとの恋愛相談によくのって頂きました。男はガンガンアタックしろとか男は黙って待てとか言うことはその日によって変わっていましたが・・・。きっと恋愛経験豊富なのだろうと聞いてみましたところ、魔王討伐の冒険中もずっとミレーユ様と恋愛中だったとのこと。しかも大魔道士バーバラ様からもアプローチされており、悩んだ末ミレーユ様を選ばれたとのこと。冒険中でも愛を忘れぬ姿勢こそが男の生きる道と言ってらっしゃいました」
ハッサンは死んだかのようにうつむいてテーブルに伏していた。
なに盛大な妄想ぶちかましてやがる。お前そもそも女性と目を合わせて話すことができず、顔赤くして下向いてブツブツ言ってるだけだったから、バーバラからしょっちゅうキモイキモイって言われてたじゃねーかとつっこみたくなったが、そりゃリア充の部下が色気ある生活送ってたら妄想でもして現実逃避しなきゃ精神が保てなかったんだろうなと思った。
「私も途中まで冒険に同行させてもらっていたのですが、ハッサン殿とミレーユ殿のアツアツぶりはほとほと目のやり場に困っていました。しかし、もうすぐ結婚とは・・・。どうでしょう、町長の御子息であるジョセフ殿のお力でサンマリーノの町をあげて盛大に結婚式を行うというのは?」
「やっぱりハッサンって見た目がいいからね。特に髪型がカッコいいからね。僕初めて見たときモヒカンの部分がアイスラッガーみたいに武器になるんじゃないかとか、髪をブラシの代わりにしてお風呂掃除するんじゃないかとか思ったもん。正義の味方っていうよりヒャッハーとか言ってヘビメタの恰好して村人襲ってる方が向いてるんじゃないかというルックスもポイント高いよね。トゲの付いた肩パッド付けたら、世紀末の中ボスって感じだよね。やっぱり勇者一行の人間どうしの結婚なんだからレイドック王とかも呼んで国家レベルの結婚式にした方がいいんじゃない?結婚式はレイドック城貸切とか」
ピエールとスラリンの話になるほど良いですねとジョセフは言った。
「わー、ハッサンがハッサン兄さんになるのか。うれしいなー。でもハッサン兄さんって言いづらいからハッサン兄貴とか言った方が良いのかなー」テリーは感情を殺して言った。
ジョセフが部屋から出て行った後、とりあえず見積もり出せよとテリーはハッサンに言ったが、ハッサンがピクリとも動かない為そのまま店を出て行った。
「どうしましょう?この事態」
「おめーらが煽ったんじゃねーか」
「こうなったらテリーが女装して結婚式やるしかないよ」
「何で俺があの肉ダルマのために一生モノの恥かかなきゃいけないんだよ!」
テリーはスラリンにつっこんだ。
「大丈夫だよ。僕も女装して妹のスラ子ですって言うから」
「でしたら私も女装して従妹のピエ美よって言います」
実はその発言をしたのはハッサンの多重人格の一人ハッサソであり、ハッサンはその記憶が一切ない、ハッサンは確かに虚偽発言をしたが精神鑑定により精神障害が認められており、責任が発生しないため無実であるとか色々な案が出たが、最終的にハッサンとアマンダが結婚するというのが一番現実的な解決手段であるとなった。
「食事に毎回トリカブトやヒ素が入っているというのも辛いものですな」
「キアリーが効くかなあ?死んだら死んだでザオリクで生き返らせればいいけど・・・」
問題を1つ解決したテリー一行は清々しい気持ちでアモスの所へ持っていくお土産を選びに行った。
「やっぱ、めでタイってことで鯛を買っていった方がいいですかねえ?」
「アジの開きとか買っていったらおかずになるから喜ばれるんじゃない?」
「あー、ダメダメ。そしたらアモっさんの奥さんが、せっかくだから夕飯一緒にどうですか?ってなるじゃん。俺、他人の家の母ちゃんの作った飯とか食えないんだよ」
「いやいやいや、普段食堂で妙齢の女性が作った料理食べてるじゃないですか?」
「あれは、プロが大多数の人の味覚に合わせて作ってるからいいんだよ。なんつーか、俺はその家独特の味っつーか、口に合わなくてもマズイって言って残しちゃいけない雰囲気とか苦手なものだから最初に全部食べたのに、勘違いされておかわりどうぞって言われるあの地獄感というか・・・」
「もー、テリーは変なとこにこだわるなー。だったらこの魚の形したクッキーとかでいいんじゃない?」
「クッキーは缶に入っているもの買えよ。高級感が違うし、食べ終わっても缶は残しといて書類とか入れるのに最適だし、事あるごとに俺がお土産渡したっていう記憶が呼び起こされるだろうし・・・」
「クッキー一缶でこうも恩を着せられては堪りませんな」
「さて、次はモンストルだ。って、俺は行ったことないからスラリン頼むぞ」
「はいはい、ルーラ!」
一行は光に包まれ空高く飛んで行った。