召喚師 屍魎己~魔都東京   作:律子

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第14話からの続きです。


第16話 迎撃

 

 十字路を左に曲がって進むと突き当たりにドアが見える。博士の後に続いて部屋に入った。

 部屋の照明は落とされ、壁と床にある大小の様々なメーターの明かりが明滅し、幻想的な雰囲気を醸し出している。よく見ると部屋はそれほど広くはない。中央に手術台みたいなベッドが設置され、その上に『何か』が横たわり、白いカバーが覆ってある。

 

「見たまえ、これが彼女だ」

 

 博士がカバーを外すとそこに1人の女性?が眠っていた。

 顔はマネキン人形のように無表情。髪は金髪、身体は人型だが生身の人間じゃない。胴体部分は、黒いメタリック調のレオタードを着て、臍がある場所に円形のメーターが付いている。両肩、両腕、両足の間接部分は可動式フィギュアより精巧だ。頭にはカチューシャらしき物と両耳の部分はヘッドホンみたいな物がついている。

 

「こいつはオルガ。身長165cm、体重180kg。表面的には人間とほぼ同様の外観に、金色の長髪と赤色の瞳を持つ女性型の電人である。人間とのコミュニケーションの円滑化の為に、いくつかのヒューマンインターフェースを実装、その一環として『擬似人格OS』を搭載、人語を理解し、応答することができる。その行動や態度の基本は『任務、論理、効率、服従、良心』に支配されている」

「電人?模擬人格OSって?」

 

 うーん、アンドロイドとは違うのかな。

 

「こいつは、この研究施設のスーパーブレイン『OLGA2772』そのものだが、現在の段階では人の脳サイズに出来ない為、ネットワーク回線を通じて情報の伝達を行なう訳だ」

「それって、本体がクライアントソフトで、OLGA2772がメインサーバーみたいな物ですか?」

「いい例えだよ、君。もしリンクが断たれても彼女の頭脳は、そこらのスーパーコンピューターよりも高性能だからな。大きな違いはデーターの記憶量と、擬似人格の一部機能が制限されるだけだから問題は無い」

「……」

「驚いて声も出んか」

「ええ、全く凄いです……よ」

 

 何と言えば良いのか、賞賛より開いた口が塞がらないって感じだよ。

 

「腹にメーターがあると強度の面で弱点になるんじゃないですかね?」

「君ぃ、これは男の浪漫だよ。まぁ、基本設計が屋内限定の介護支援用で身体の強度が低いのは否定せんよ。それに完全防水されていないからな」

「なるほど。で、動力源は?」

 

 思わず博士の後ろに下がる。ま、まさか超小型の原子炉じゃないだろうな。

 

「大容量の小型バッテリーと最新型のマグネタイトバッテリーを搭載している」

「えっ!!それってCOMPに使われている物ですか?」

「そうだ、容量も君のCOMPとは比べものにならんよ。消費するCPも悪魔の半分に抑えてある」

「CPって?」

「抗体ポイントの略称だ。悪魔がこの世界で実体化、維持する際に必要な生体マグネタイトの必要量だよ」

 

 そういえば、ナオミが前にそんな説明をしてくれたっけ?

 

「マグネタイトを消費って……悪魔みたいですね」

「ふむ、確かにそうだな。人ならず者の総称が悪魔に分類されるなら、こいつも範疇に含まれるだろう」

 

 博士は腕を組み思案気な顔で人形を見た。

 

「でも、想定外のアクシデントで暴走したら……」

 

 強力なパワーは生身の人間では止められないだろう。博士は口を歪めニヤッと笑う。

 

「そうならない為に『良心回路』と『絶対服従回路』を内臓しているのだよ。この分野はロボット工学の世界的権威でもある光明寺博士の協力を受けたからな。仮に暴走しても回路が作動し、全機能がシャットダウンする。そうなると外部からの入力が無い限り、自力で再起動は出来んよ」

「そ、それなら安心ですね」

 

 この人形はあれだ。えぇっと確か……あれだ、M66に似ているよ。

 

「苦労したのは総重量を150kg以下に押さえるのと、駆動部分にかかる負荷を軽減する為、補助動力を組み込む事だった。そして人形の身体には最新の悪魔召喚プログラム・システムが内臓され、所謂『人型COMP』でもある。まさに最先端科学と魔術が融合した異形科学の申し子だ」

 

 魔術と異形科学……あぁ!!COMPで思い出した。

 

「博士!! 俺の制服とCOMPを返してくださいよ!!」

「あぁ、その件だが……その……」

 

 突然、部屋が赤い光に包まれ、アラームが鳴り響いた。博士は白衣のポケットから携帯電話?を取り出した。

 

「どうした? ヒロ子クン!!」

『偉大な天才博士!!性懲りも無く招かれざる客人が来やがったので、とっととお戻り下さい!!』

 

 部屋のどこかにスピーカーがあるのか、ドスの効いたヒロ子さんの声が響いた。もう、この人に日本語を教えたのは誰だよ全く。

 

「またかね? 零に異界化させて拠点防衛用のスライムを放出させたまえ」

『合点承知の介でございますだ』

 

 博士はポリポリと頭を掻き、深い溜息をついた。 

 

「やれやれ、また我輩のファンがアポも取らず来たか。人気者はツライよ」

 

 それって違うと思うけど……。

 

「我輩達も管制司令室に戻るぞ」

「あ、はい」

 

 管制司令室。その名の通り、元核シェルターでもある地下研究施設の中枢を司る部屋で、巨大な液晶モニターパネルが壁の三面に貼られ、見ただけでは分からない設備が満載している。ヒロ子さんは制御盤がある椅子に座っている。

 

 マジで特撮やアニメに出てくる秘密研究所の管制司令室だよ。

 

「ヒロ子クン、招かれざる客は何人かね?」

「武装した兵士が10体、後1体は、生意気にもスーツ姿ってヤツ」

「ふむ、そいつが指揮官か。あの人数でここを攻めるのは無謀だと言うのに。いつもの通り、零に処理させたまえ」

「と~ころがギッチョンチョン、拠点防衛用スライムがカチンカチンのアイスになったですだ」

 

 ニヤニヤ笑うヒロ子さんは楽しそうだよ。俺はただ見ているだけ。監視カメラの映像は兵隊が、小型のボンベを手にしている。

 

「ほほう、液体窒素ボンベか。脳筋の彼等にも学習能力があるみたいだ。こちらも試作の屍鬼隊を出したまえ」

「博士、屍鬼隊って何ですか?」

「以前に零が処理した兵隊の死体を特殊加工したゾンビ・ソルジャーだよ。まぁ見たまえ」

 

 メインモニターには完全武装し、奇怪なガスマスクを着けた兵隊12人が、異界化した廊下を自動小銃を構えて走っている。

 

「まっこれで『偉大な首領様!!』『ぜっ全滅?3分も持たずに12体の』『超ゲキヤバですぅ』」

「どうした零?」

『ご来店頂いたお客様』『あれはボス悪魔よ!!』『憎いサマナーでっていう』

「ほほぅ、サマナーもいるのか。零だけだと、ちとばかし厳しいか?」

 

 モニターには黒焦げの死体が見える。紅蓮の炎に包まれた双頭の顔を持つ巨大な獣がゆっくり進み、その後ろを完全武装の兵隊とサングラスを掛けたスーツ姿の男が見える。

 

「あれはオルトロス!!あの魔獣を召喚出来るサマナーがいたとは……い、いかん!!零だけでは危険だ。ヒロ子クン!!」

「オルトロスって確かギリシャ神話に出てくる怪物だっけ?」

 

 ヒロ子さんは爪にマニキュアを塗っているよ。別のモニターに映っている洒落たスーツ姿の男がサングラスを外した。こいつ見覚えがある、ま、まさか!!

 

「あぁッ!!あいつは!!」

 

 思わず大声でモニターに指を指す。

 

「どうした?涼太クン」

「あいつは山田一郎ですよ!!まさかあのホモでキモい変態サドが来ているなんて……」

 

 ヒロ子さんはマニキュアを塗るのを止め、モニターを凝視している。

 

「あの山田一郎クンかね?彼の力量ならオルトロスを召喚するのも可能だろう」

 

 博士はモニターを睨み腕を組んで唸っている。

 

「アトラックめ、彼を雇ったのか……い、いかん!!零が倒されたら異界が解けてしまう!!」 

 

 日頃から傲岸不遜でデリカシーの無いチョビヒゲがうろたえているのはいい気味だ。

 

「しかし彼はここが『中立』だと知っているはずだが……」

「あのヤロー、ヒロ子さんの涼太を狙って糞生意気。今度こそあたり前田のクラッカーにしてやる」

 

 うわっ指をポキポキ鳴らしているよ、この人。あたり前田のクラッカーって何?

 

「ヒロ子クンなら一郎クンと互角以上に対抗できるが、念の為サポートに零をつけるか」

「いらない、涼太を連れて行く」

「じょ、冗談でしょ? あいつ、まどかさんに頭を撃たれても平気だったバケモノですよ!!」

 

 リアルで頭を撃たれて平気な人間なんていない。

 

「う~む、涼太クンの力量では、ヒロ子クンの足手まといにしかならんか」

 

 ハッキリ言うなぁこのチョビヒゲ。事実だから仕方ないけど。博士は腕を組んで考え中だ。

 

「涼太ならあのロボッ娘を起動出来る。すると愉快なデータが取れるかもよ」

「おおっ!!その手があったな。早速だが君にも手伝ってもらうぞ」

 

 すみません。あなた達が納得しても僕は?です。

 

「すぐに君の調整槽へ入ってもらうよ」

「え、チョッ、ちょっと待ってください」

 

 手を引っ張られ、調整槽のある部屋に来た。円筒形のガラスケースが左右の壁に並んでいる。

 

「早く脱ぎたまえ。今更、恥ずかしがる訳ではあるまいに」

 

 諦めて目を閉じ、ピンクのジャージを脱ぎ捨て円形の台座の上に立つ。ヒロコさんが俺の身体に電極のコードを付け終わると、カプセルが下りて来た。下から透明の液体が溢れ出して冷たいよ。たちまちにカプセルの半分に届き、俺の顔までに達した。

 

「ウグッ!!くっ苦しいよ」

 

 途端に視界が明るくなった。どこかで駆動音が響いて腕で支えて起き上がろうとするが動けない。

 

「ドウなってるんダ。まるデ麻痺していルみたいだヨ」

 

 ワタシハオルガ。コンゴトモヨロシクオネガイシマス。

 

 ええ、頭の中で機械的な女の声が響く。身体を見ると生身の人間じゃない。

 

「こちらこそヨロシク……って、なな、なんじゃこりゃ? あの人造人間かヨ」

 

 俺の思考がオルガとリンクしているので、例えば起き上がろうとすると彼女が身体をコントロールするようだ。

 

『聞こえるかね? 涼太クン』

 

 突然視界に博士の画像が現れたよ。思わず右側のヘッドホンみたいなのに触るが外せない。

 

「聞きたくなクてもバッチリ聞こえますヨ」

『おおっ無事に同調、起動したな。それでは隣の部屋でコートを受け取ってくれたまえ』

 

 部屋に入るとヒロ子さんが待っていたが、白衣姿でなく。メタリック調の黒い着物姿に高い下駄で、蛇の目傘を手にしている。

 

「アレを着ろ」

 

 見ると黒色のロングコートで材質はゴムとも皮でもない未知の素材だ。

 

「ロボッ娘、とっとと逝くぞ」

「行くって……ヒロ子さん、その格好で?」

 

 着物姿では動きが鈍いのでは?

 

「ふふん、着物はヒロ子さんの戦闘服なのだ」

 

 ヒロ子さんの後に続き、部屋を出た。エレベーターに乗り、1階に出るとエネミーソナーが反応する。網膜に直接表示されるレーダーには赤い点が2個、黄色が10個表示されている。

 

 『アクマショウカンプログラムヲキドウイタシマス。リストカラナカマヲセレクトサモンネガイマス』

 『いや、先にあのオルトロスをアナライズしてくれ』

 『デビルアナライズ……カンリョウ、データヲヒョウジイタシマス』

 

 悪魔名称:オルトロス   レベル:??

 種  族:獣族系・魔獣

 神  族:不明

 相  性:火炎吸収・魔力無効・氷結弱点

 

 今の俺達からするとボスクラスじゃないか。オルトロスには氷結攻撃が有効、ならユキジョロウだよな。

 

 DEGITAL DEVIL SUMMON SYSTEM OK

 MAG BATTERY OK

 CONDITION OK

 SUMMON OK

 GO

 

 召喚魔法陣が床に青白く輝くと鬼女ユキジョロウが実体化した。

 

「召喚師殿その姿は、からくり人形……面妖な……しかし中からは我が主を感じますわ」

「実は……」

 

 俺は彼女に今までの事を説明すると訝しそうな顔をしていたが納得したようだ。

 

「私を召喚したのは賢明な判断ですわ。凍てつく吹雪の舞であの獣を打ち倒してご覧にいれましょう」

「うん、頼むよ」

 

 兵隊達はオルトロスを戦車に見立てて背後に控えている。遠・近距離に対応出来る組み合わせでかなり厄介だ。まだ、通路の角にいる俺達に気づいていない。兵隊を拡大で見ると米軍の兵隊と同じヘルメットを被り、自動小銃を両手で構えている。顔は髑髏のように肉が削げ落ち上半身裸で人の顔が見える。

 

「あいつら……人の皮を剥いで被っているのかよ……クッ!!」

 

 拳をギュッと強く握り締めるが不思議なくらいに動揺はしない。これも同調している効果なのだろうか。

 

「ヒロ子さんはあのヤローを相手にするから。ここはロボッ娘に任せる」

「むっ無茶ですよ!!てっ」

 

 ヒロ子さんは俺を抱きしめる。

 

「今の涼太なら大丈夫。だがオルトロスは無視しろ。今のロボッ娘達には無理だ」

 

 そう言うと反対側の通路に向かった。

 さてどうするか、ここはユキジョロウのブフーラで凍結させてからだ。

 あれっ?一瞬、オルトロスの姿が陽炎みたくゆらいだような……。

 

「くっ!!あれでは私の氷結魔法が相殺されてしまいますわ。獣の分際で生意気な」

 

 忌々しい顔でユキジョロウが自分の鋭い爪を噛む。

 増援を待っているのか?それとも異界化した通路にトラップが仕掛けてあると予想しているのか?

オルトロスは動かない。兵隊達も背後に控えたままだ。これでは手詰まりだよ。

 

「うーん、オルトロスさえいなければ」

「召喚師殿、どう致します?」

「こちらから仕掛ければ銃撃の的だ。どうしよう」

「あ、そうだ。もう1体召喚しよう」

 幽鬼ガキ、外道スライム、屍鬼ボディコニアン、幽鬼オキクムシの4体しかいない。悪霊の???は召喚不可だ。うまく行けばバッドステータス攻撃が有効かも。

 

 『オルガ、あの兵隊をアナライズしてくれ』

 『イエス、マスター。アナライズ……カンリョウ、ヒョウジシマス』

 

悪魔名称:ゾンビアーミー   レベル:15

 種  族:邪霊系・屍鬼

 神  族:不明

 相  性:呪殺無効・銃撃耐性・破魔・火炎弱点

 

 火炎攻撃が弱点だけど、黒井さんがいないから無理だ。バッドステータス攻撃はおKみたいだ。眠らせてから永眠の誘いで一気にトドメをさせる。

 

「ナオミを召喚だ」

 

 イエス、マスター。サモンシマス。

 

「はぁ~い、ナオミだよって……マジで涼太クンなの?」

 

 当然胡散臭そうな目で見ている。俺は事情を話した。

 

「なるほど。外見は『木偶人形』でもソウルは涼太クンだから気にしないワケ」

 

 『マスター。オツムノヨワソウナシキヲコッソリバラシテモヨゴザンスカ?』

 

 だ、駄目だよ。仲魔同士仲良くしないと。

 

「ナオミのセクシーダンスで魅了させて同士討ちをさせるか、ユキジョロウのドルミナーで眠らせてから永眠の誘いで倒すしかない」

「了解なワケ」

「それしかありませんね。問題はオルトロスですわ。先手を取られると倒すのが困難です」

「そうなんだよな。どうしよう」

 

 その時、オルトロスが動き出した。鋭い目が隠れている俺達を睨みつける。

 

「ムウ、アルジガアブナイ……オレサマヒキアゲル。アトハオマエタチノスキニシロ」

「お、おいオルトロスさんよぉ、話が違うじゃねーか」

 

 ゾンビ兵達のざらつく下卑た大声が聞こえる。某ゲームに登場するガイスト兵みたいに良く喋るよ全く。

 

「そうだぜ。アンタ、俺達の護衛だろ」

「オレサマ、オマエラヨリアルジダイジ」

「ふざけんなよ!!こりゃ契約違反だぜ」

 

 オルトロスはゾンビ兵の文句を一切無視して来た道を引き返す、一瞬俺達に振り返る。

 

「サマナートナカマヨ、イノチビロイシタナ」

 

 視界からオルトロスの姿が消えた。

 

「あの獣はどうしたのでしょうか?」

「さぁ、よく分かんないワケ」

「今、ヒロ子さんと山田のオッサンが戦っていて、オッサンが不利になったから助けに行ったんだろう」

 

 俺達とオルトロスとでは力量が違いすぎるが、あのゾンビ兵なら対処できる。その後、ヒロ子さんと合流しよう。俺達がゆっくり進むと気づいたようだ。

 

「おい見ろよ、極上のナオンどもじゃねーか」

「へへ、あのピンクのエロい服着た女、チョー好みだぜ。俺様のモノでじっくりと可愛がってやるぜ」

「どんな悪魔が待ち伏せしていると思ったが……こりゃオルトロスがいなくても俺達で楽しめるな」

「ヒヒヒ、すぐには殺さねぇ、じっくりとじわじわ嬲って生かしたまま皮を剥いでやろうぜ」

「おう、戦場では男の皮ばかりだったからな。女悪魔どもの皮は珍しいぜ。ヘヘ」

「ウヒャヒャ、数では俺達が有利だからもうたまんねーよ!!」

 

 ゾンビ兵達は俺達を取り囲む。こいつらマジで人の皮を被った外道だ。

 

「よう、お嬢ちゃん達。俺達に輪姦される為に出て来たとは運が無かったなぁ」

「へへ、こっちの白服のスケ、スカしたツラしやがって、素っ裸にして泣き喚かせてやるぜ」

「ウヒャヒャ、俺はそっちのオツムの弱そうなエロい女だ。腐れ〇〇〇に銃剣を突っ込んで腸を掻っ捌いてやるぜ」

「おい、そいつは俺の獲物だ!!横取りすんなよ!!」

「うるせぇ!!俺が先だ!!」

 

 リーダーらしいゾンビ兵は葉巻を取り出し、オイルライターで火を点けると深々と吸うと、オイルと葉巻独特の匂いが漂う。

 

「お嬢さん方、最後のお祈りは済ませたかね?」

「へへ、俺達はこれでも慈悲深いんだぜ、楽しむ前に最後のお祈りをするくらいは待ってやるぜ」

「なんたって俺様達はジェントルマンだからな、ただ食うことしか考えない妖獣や幽鬼の連中とは違うぜ、ギャハハハ!!」

 

 ゾンビ兵否、ガイスト兵達は下卑た笑いをする。ナオミが両手を上げて身体をくねらせた。

 こいつら最低最悪の外道だ……これでモヒカン頭だったら世紀末伝説に出てくる悪党だ。

 

『召喚師殿、彼奴等、私達を舐めていますね』

『こいつら屍鬼っていうよりド外道なワケよ。一緒にされると非常に迷惑なワケ』

 

 うん、確かに外道だよ。同調している今の俺は怒りもしなければ怯えもしない。リーダーに顔を向けた。

 

「アンタ達こそ、最後のお祈りを済ませたのか?これから俺達にやられるとも知らずに」

「なん……だと?」

「ふざけやがって!!おい!!やっちまえ!!」

 

 突然、自動小銃が火を噴いた。2体が仲間を狙ったのだ。

 

「ば、馬鹿野朗!!あぶねぇ!!」

「おいッ!!何やってんだ!!」

「くそッ こう近いと銃が使えん!!同士討ちになっちまう」

「おい、やめろっ!!味方を撃つなってのがわからねーのかよ!!」

 

 ナオミのセクシーダンスで魅了したゾンビ兵2体が無言で撃ち続けている。

 

「ほほほ、凍りなさい。マハ・ブフーラ!!」

 

 事前にブフーラで炎の壁を打ち消済みで、5体が凍結して動けなくなる。あと3体だ。

 爪を伸ばして戦っているナオミの背後から銃を棍棒代わりにしいるやつがいた。

 

「ナオミ、危ない!!鉄拳パンチ!!」

「ウグゥッ!!」

 

 肘から先の射出された左腕は命中し、ゾンビ兵を吹っ飛ばすと背後の壁に激突した。打ち所が悪かったのか動かない。

 

「サンキュー涼太クン!!」

 

 左腕のワイヤーを巻き戻した。自分の腕がびょーんと伸びたようで変な感じ。ナオミは転倒したゾンビ兵に鋭い爪で切り刻み、喉元を噛み千切った。

 ゾンビ兵達は俺達を無視して同士討ちし生き残ったのは4体だ。

 

「醜い坊や達、私の唄でお眠りなさい」

 

 残りのゾンビ兵達は自動小銃を床に落とし、両手で頭を抱えフラフラしていた。

 

「うぉッ、眠い……ち、畜生……我慢できねぇよ」

「お前ら寝るんじゃねーよっ……力が……入らねぇ」

「クソッタレ……こんなはずじゃ……」

「ほほほ、それでは永遠にさようなら」

 

 眠っている者を完全に即死させるスキル『永眠の誘い』で残りを倒した。

 

「何かこうも簡単に勝てるとは思わなかったな……」

 

 倒れたゾンビ兵達は蓄えていたマグネタイトを失ったのか?溶けるようにして消えた。自動小銃も同様だ。

 

「ナオミに祈りなんて不要なワケ」

「彼奴等、私をか弱い女と思って侮ったのが運の尽きですわ。ほほほ、さすがオツムの弱い屍鬼だこと」

 

 ユキジョロウは養豚場の豚を見るような蔑んだ笑みを浮かべ、ナオミに顔を向けた。

 

「クールビッチ!!ナオミに喧嘩売ってるワケ?」

「あら、貴女とは言ってませんですわよ。ほほほ」

「コイツの顔を引き裂いてやるワケ。絶対!!」

 

 ナオミは鋭い爪をユキジョロウの顔面に構えた。

 

「きゃあ怖い、怖い。助けてぇ召喚師殿」

 

 ユキジョロウは俺の背中に隠れる。怖がってないよ。それ面白がってると言うんだ。

 

「ナオミをからかうのはやめろよ。ユキジョロウ……」

「私を雪姫とお呼び下さいませ」

「ゆ・き?」

 

 ユキジョロウは蕩けるような満面の笑みを浮かべている。

 

「はい、美しい雪の姫、雪姫でございます」

「ギキギ!!」

「あらあら、腐れ女さん。悪趣味で下品な顔が益々歪んで、不細工ですわよ」

「ウギャアアア!!クソビッチ、ぶっ殺してやる!!」

 

 逆上して飛び掛ったが、素早く避けた。

 

「それでは失礼いたしますわ、ほほほ」

 

 おい、勝手に帰還したよ。怒りが収まらないナオミは俺を睨む。

 

「涼太クン!! アイツ、適当に合体させてスライムにするワケ!!」

「今は、貴重な戦力だからそれは絶対無理だよ」

「それは分かっているワケ……でも馬鹿にされて超悔しい……」

 

 涙を浮かべるとナオミは俺に抱きつく。本当、ゾンビでなければエロかわいいんだよな。

 

「と、とにかくヒロ子さんと合流しよう、な」

 

 ヒロ子さんの実力は分からない。ただ1人で戦うのだから何か策があるのかもしれないが、あの山田一郎は他に仲魔がいるはずだ。

 

 俺とナオミは駆け出した。

 




作者:やっとこさ、最新話を投稿できたよ。
B:ねぇ、質問だけど、いい?
作者:あ、はい。
B:アナライズだけど敵悪魔のスキルとHP・MPは表示されないのは何故?
作者:そうですね。TRPGゲームとは違いますので省きました。
B:ふむふむ、そうだよね。
作者:それと威力とダメージ量も表示するとゲームもどきなりますので、はい。
ちなみにレベルの表示は、悪魔召喚プログラムの独自規格という事で。
B:なるほど、人間様のレベルも分かるのかな?
作者:人をアナライズしても全て??と表示されます。ただサマナーのレベルは使役している悪魔で、ある程度は予想可能ですが……。
B:ああ、でも絶対じゃないわね。
作者:そうです。
B:キャラシートの公開予定はどうよ?
作者:ネタバレになりそうなので未定です。
B:了解、お仕事大変そうだけど続き頑張ってね。
作者:は、はい、ありがとうございます。


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