召喚師 屍魎己~魔都東京   作:律子

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第4話 囮

 最初は秋葉原に寄る予定だったけど、如月商会での一見が強烈な為、とてもそんな気分にならない。

 時計を見るとまだ時間があるが、早めに行ってのんびりと待つつもりだ。

 JR渋谷駅で降りてからセンター街に向かい、よく利用しているピースダイナーで食事をする。お気に入りのゲーセンで遊びたいけど、今は我慢して約束の場所へ向かった。

 ネロンガは用賀駅東側出口の駅ビル2階にある。受付で個室の空席状況を見るとほとんど空いている。平日の午後は、仕事をサボっているサラリーマンか後は大学生くらいだろう。今日は個室でなくテーブル席に座って2人を待つ事にした。とりあえず2人に、先に着いた事をメールする。ゲーム雑誌や新刊のコミックを読んでいると、COMPにメールの着信マークが表示されている。ヘッドバイザーをしていなかったので今まで気がつかなかったよ。

 メールが1件届いていた。

 送信者は『Steven』知らない名前だ。COMPのアドレスは、まだ誰にも教えていないので、サイバース社からともかくこれは怪しいよ。件名を見ると『悪魔召喚プログラム』なんだこりゃ?

 

 深町涼太君へ、最新版の悪魔召喚プログラムシステムを送らせてもらった。これを有効活用して生き延びて欲しい。使い方はテキストファイルを参照の事。

 

 サイズの大きい圧縮ファイルが添付されていた。名前からして怪しさ大爆発だよ全く。もしウィルスだとしたらわざとこんな名前を付けないだろう。ホラーゲームのタイトルにも見えるけど、こんな名前のゲームは知らない。COMPのセキュリティは堅固、でも念の為ウィルスチェックに掛けたが、異常は無い。

 とりあえず解凍するとインストーラーが起動し、ディレクトリの設定とファイルを作成、インストールが完了した。画面に悪魔召喚プログラムのアイコン『DDS』が表示されていた。

 こいつをクリックすると、起動するのだが怖くて出来ないよ。何か取り返しのつかない事になりそうだ。DDS-NETにログインして検索したが見当たらない。サイバース社の公式サイトやググッたり、弐Chのオカルト板で検索したが出て来ない。あとAT-LOWさんとレッドマンさんにメールを送った。もしかしたら何か知っているかもしれない。

 悪魔召喚儀式……ファンタジー小説やホラーゲームではおなじみだ。祭壇と生贄を用意して床に血で魔法陣を描き、悪魔を呼び出し使役する。もし制御に失敗すると悪魔に殺されるか魂を奪われる……背徳的な儀式で、人の道を外れた悪魔崇拝者か悪しき魔女が行なうと言われる。

 テキストを読んでいると入り口に倉橋と武原が見えたので、手を上げると2人は俺に気づいた。

 

「よぉ、お待たせ」

「早くから待ってたみたいだな」

「いやいや、雑誌やコミック読んでたら時間なんてすぐだよ」

 

 実際、コミックやネットを見ていると時間が早く感じる。揃ったので俺達はネロンガから出た。

 

「先にゲーセンに行こうか?」

「ああ、バイオマスターをやってから深町の家に行こうぜ。な、倉橋?」

「了解、昨日プレイしたがありゃ凄いぜ」

「あれは、ヤッバイぞ」

 

 今、持っている事は内緒にしておこう。俺達は歩きながら学校での出来事やゲームの話をする。

 3人で一緒に行動出来るのは2人には当たり前だけど、俺には夢みたいだ……本来ならここにいないから。

 

「ところで深町。今日、何でサボったんだ?」

「え?」

 

 一瞬、我に返った。

 

「そうそう、お前が休むなんて珍しいからな。メール見て驚いたぜ」

「あ、ああ」

 

 2人が言うが、まぁ当然だよな。少し脚色して説明する。

 

「へぇ、そうだったんだ。言ってくれりゃ付き合ってやったのに。なぁ、倉橋」

 

 武原が言うと倉橋も同調する。

 

「タケの言うとおりだよ。しかし謝礼の為に休むなんて、お前にしては大胆だな……てっきり病院に行くのかと思ったぜ」

 

 俺は肩をすくめた。

 

「もし3人で休んだら『あいつら絶対に怪しい』ってなるじゃないか」

「まあ、そりゃそうだけどよ……」

 

 倉橋は納得し難い顔をする。

 

「じゃあ、今の深町クンは懐が暖かいってワケですね。よく分かります」

 

 目をキラーンと光らせた武原がニヤニヤする。俺は大げさに肩をすくめた。

 

「分かったよ。ゲーセンで2人に全額奢るってば!! それでいいよな?」

「さすが深町クンは、気前がいいですね」

「よっ!! 憎いねぇ大統領!! 俺達に出来ない事を平然とやってのける。そこに痺れるぅ!! 憧れるぅ!!」

 

 もう茶化すなよ、ゲーム代なんてまぁ安いモンだよ……全く。

 

 ゲームセンター内は、学校帰りの生徒で混んでいた。自販機でカップ麺を買ってお湯を入れると、お目当ての台に座り食べ始める。これが俺達3人の日課みたいなもんだ。

 新作のアクション・シューティングゲーム、バイオマスターを夢中でやっていると、倉橋が何か思い出したのか俺を見る。

 

「あっそうだ。佐藤が言ってたけど校門で変な奴に声を掛けられたんだってさ」

「変な奴?」

 

 プレイしながら訊く。佐藤とは同じクラスだがあまり親しくない。チラッと見ると倉橋が何か言い難そうな顔をしている。

 

「ああ、佐藤とは途中のコンビニで会ったんだよ。この学校に深町涼太がいるか? って訊かれたらしい」

「えっ? アッーー!!」

 

 うっかりミスってゲームオーバーだ。

 

「で、佐藤は『あいつは今日休んでる』って言ったな」

 

 俺は一瞬背筋が寒くなった。倉橋と武原は顔を見合わせる。

 

「まさかと思うけど、昨日の件かもしれない……」

 

 十中八九、浦木さんの件だ。だってそれしか心当たりが無いよ。

 

「そうだとすりゃお前、ヤバイ事件に巻き込まれたんだぞ!! ど、どーすんだよ?」

「こりゃマジヤバだぜ!!」

 

 上着のポケットからスマートフォンを出して、自宅へ電話をすると直ぐにお袋が出た。

 

『はい、深町です』

『も、もしもし、俺だけど』

『あっ涼ちゃんなのっ!! ちょうど電話しようと思ったのよ!!』

『もしかして誰かが俺を訪ねて来たとか?』

『そっそうなのよ!! 2人の刑事さんが来て、事故の件でお前に訊きたい事があるって言うのよ!!』

 

 お袋は、ひどく興奮しているが『事故』と言われりゃ無理もない。倉橋と武原は無言で見ている。

 

『息子は学校に行ってまだ帰って来ませんって、答えると出て行ったわ』

『それ何時頃? で、あと何か言ってた?』

 

 俺の鼓動が激しくなる。ヤバッ!! 学校サボったのがバレちまう。

 

『お昼前よ。特に話して無いわ。それより事故ってどういう事なの? 説明しなさい!!』

『帰ったらするよ』

 

 何か言っているお袋を無視して電話を切った。

 

「で、おばさん何だって?」

「2人の刑事が来たってさ……」

「それってマジにゲキヤバじゃねーか?」

「そ、そうだ。深町、ニュースを見ようぜ」

 

 スマートフォンを操作してネットニュースのサイトを見るが、殺人事件の項目には浦木さんの名前は出ていない。

 

「じゃ、事故の項目は?」

 

 武原がアドバイスする。事故の項目を検索すると、ビンゴだ。

 

「多摩川下流で男性の遺体を発見……本日午前7時40分頃、通学途中の男子中学生が発見し警察へ通報。身分証からフリーライターの浦木浩一さんと判明……遺体から大量のアルコール分が検出された。玉川警察署は急性アルコール中毒が原因で川に転落、溺死と発表……こっこの人だよ」

「おい、間違いないだろうな?」

 

 すっかり俺達は、ドン引きだ。

 

「もし事故で処理されていたら、わざわざ刑事が家に来ないよ」

「そうだよな。じゃあ、お前んちに来た奴は偽刑事ってか?」

「分かんねーよ」

 

 倉橋は誰かと携帯で話している。

 

『そうか、分かったよ。サンキュー』

 

 電話を切って俺と武原を見た。

 

「佐藤に確認したんだが、やっぱり2人組の男で刑事って言ってたよ。警察手帳も見せてくれたって。人相と服装は、黒いスーツに黒のサングラスだとさ」

「とんでも無い事に巻き込まれたよなぁ……で、これからどーすんだ?」

「そ、そーだよな……」

 

 これが刑事ドラマならワクワクするれど、実際自分の身に起きたらメッチャ怖い。俺は如月商会で貰った2人の名刺を思い出して会社に電話した。

 

「クソッ!! 留守電になってやがる!!」

 

 次は竜也さんの携帯にするが、こっちも留守電だよ、畜生!! 

 焦りながらまどかさんの携帯に電話するが、呼び出し音が響くが出てくれない。頼むから出てくれよ!! と祈りながらリダイヤルする。

 

『はい、如月です』

 

 3度目のリダイヤルで出てくれた。この時、まどかさんの声が天使の声に聞こえたよ。

 

『も、もしもし、深町です!!』

『あら、深町君どうしたの?』

『あの実は……困った事になって相談したいのですが……』

 

 俺が事情を話してる最中、まどかさんは無言だ。2人は成り行きを見ていた。

 

『――と言うワケなんです!!』

『事情は分かったわ。折り返し連絡するから待ってて』

『お、お願いします!!』

 

 電話を切った。ふうっと一息ついた。

 

「どうだった?」

「折り返し連絡するってさ。自販機でジュースを買ってくるよ……」

「俺、コーラ」

「タケがコーラなら俺はアイスコーヒー」

「おK。把握した」

 

 入り口脇の自販機で買うと2人に渡して飲む。しばらくして着信音が響いた。

 

『もしもし、深町です!!』

『竜也と話したのだけど、あいつが言うには己の尻は己で拭けって……』

『……』

 

 身体の力が抜けた。

 

『浦木さんの件も謝礼を渡して終わってるから、あのガキがどうなろうと知ったことかって言うのよ。ごめんなさいね』

『……』

『もしもし深町君、聞いてるの?』

『はい……』

 

 絶望で言い返せないよ。

 

『だけど私達に協力してくれれば、今回は助けてやろうと言うのよ。どうする?』

 

 どうするって言われても、今の俺に選択肢は無い。

 

『きょ、協力します』

『今、どこから電話しているの?』

『用賀駅前のゲーセン、アバドンからです』

『今、車で環七通りを目黒方面に走っているから、上馬で国道246号に入って用賀に向かうわ。そこから動かないで』

『はい、待ってます!!』

 

 外を見ると日が暮れていた。3人で新型の台を占領していたので他の客が睨んでいる。とりあえず俺達は別の台に移動する。本当に時間が経つのが遅い。

 

 しばらくしてから、ゲームセンターの入り口にまどかさんの姿が見えたので、俺達が駆け寄ると彼女は苦笑した。

 

「また会うとは思わなかったわ。その2人は?」

「俺の友達です」

「倉橋です」

「た、武原です。タケって呼んで下さい」

 

 まどかさんの美貌に2人はかなり緊張しているよ。

 

「貴方達は、すぐ帰りなさい」

 

 一瞬、2人は顔を見合わせたが猛然と抗議する。

 

「そんなっ!! 俺達だって協力するよ!!」

「ふざけんな!! 深町だけ置いて帰れないッスよ!!」

「貴方達は部外者だから巻き込む訳にはいかないのよ。深町君は無事に帰すから私を信じて!!」

 

 まどかさんが俺を見る。

 

「俺、怖いけど、まどかさんを信用するから頼む!! なっこの通りだ」

 

 俺が拝むように言うと2人は、完全では無いが分かってくれたみたいだ。

 

「お前がそこまで言うなら帰るよ……」

「如月さんだっけ? 深町になんかあったら絶対に許さないからな!!」

「分かってるわ」

「解決したら必ずメールするから心配しないでくれ!!」

 

 2人は、手を振って帰った。

 

「深町君は、良い友達を持っているのね」

 

 まどかさんは、2人の後姿を羨ましそうな目で見ている。

 

「ええ、まぁ、そう言われると恥ずかしいです」

「彼等みたいな友達は大切にしなさいよ」

「それで俺は、どうすれば?」

 

 これからの事を訊く。俺の命が掛かっているからだ。

 

「とりあえず家に帰ってもらうわ」

「えっ、それだと2人の刑事に捕まっちゃうのでは?」

 

 急に不安になって、まどかさんを見ると爽やかな笑を浮かべているよ。

 

「そうよ♪」

「それってもしかして……俺が囮になるんですか? 平凡な高校生の俺が、小説やドラマに出てくる囮役ですか、そうですか」

「これから説明するわよ」

 

 まどかさんの話によると、例のSSDをまどかさん達が手に入れた事を、奴等は気づいていないらしい。それで捕らえた浦木さんを責めて聞き出し、俺を探している。ちなみに警察は事故と発表してどこの部署も動いていない。

 2人の刑事は偽者で、本物は連中の手口からして、すでに処理されていると言うので恐ろしい話だ。

 作戦は、俺を囮にして連中の活動拠点を壊滅させる。かなり無謀に思えるが、奴等は一般人を虫ケラ以下と見下しているから、成功率はかなり高いと言われても不安は拭えない。

 まどかさんは俺に家族への説明の方法を教えてくれると、超小型の高性能発信機を俺の靴底にセットした。これで俺を見失わない。それとSSDが入った茶封筒を持たされた。データの中に凶悪なウィルスが入っているとの事だ。

 ゲームセンターを出て家に向かうが、足が重く現実から逃避したい。暗い夜道を照らす街灯の淡い光が、余計に憂鬱な気分にさせる。

 予想通り、家のすぐ近くにいた2人の男が俺を見ている。ここで逃げる訳にはいかない、震えを抑えるように歩くと男達を見た。2人とも黒のスーツの上に黒皮のコートを着て、黒のサングラスを掛けている。個性を消した無機質で冷たいな雰囲気が漂う。1人は背が高く、もう1人は小柄で太っている。

 

「深町涼太君だね」

「そう、ですが?」

 

 男の口調は低く、有無を言わせぬ強さがある。俺に警察手帳を提示するが、本物か偽物の区別は分からない。

 

「我々は、玉川署公安課の者だ。浦木浩一の件で同行してもらいたい」

「ちょっと待ってください。あの人は事故で亡くなったのでは?」

 

 2人の偽刑事は顔を見合わせる。

 

「刑事課では事故処理になったが、我々公安課では極秘のチームを結成し、浦木が悪魔崇拝者(サタニスト)の重要メンバーである情報を掴み、その背後関係を捜査しているのだ」

 

 背の高い男が話すと、もう1人が頷く。

 

「彼を尾行中、君と出会って我々に奪われまいと重要な証拠を渡している筈だ」

 

 悪魔崇拝者の話は嘘だ。まどかさんや竜也さんと、話をしていなかったら信じていただろう。反論すると立場が悪くなりそうで黙っていた。

 

「わ、分かりました。親に事情を話すので少し待って貰えないでしょうか?」

 

 相手を怒らせないようにかなり丁寧に話すと、2人は顔を見合わせた。

 

「いいだろう。10分だけ待ってやる。もし遅れたら遠慮無く踏み込むからな」

「りょ、了解です」

 

 開放されて家に入る。

 

「ただいま」

「説明しなさい!! いったい、どういうことなの!?」

 

 お袋はかなり興奮している。突然、刑事が家に来たので無理は無い。俺はまどかさんに言われたとおりに説明したら納得してくれた。

 

「そうだったの……お母さんビックリして、どうしようかとオロオロしていたのよ……お父さんは出張で戻れないし、良かったわ。涼ちゃんが事故と無関係で……もし、巻き込まれたのかと思うと……」

 

 お袋の涙声はこっちがとても辛い。

 

「これから警察署に行って、話をすれば終わりだから大丈夫だよ」

「刑事さんにちゃんと話すのよ」

「ああ、帰りは遅くなるけど、警察に送ってもらえるから心配しないで」

 

 これからが俺の勝負だ。

 自分の部屋に入ってバッグを置いたが着替える時間は無い。COMPを持っていくか迷う。一般人は虫ケラ以下と見下しているから、身体検査されて取り上げられる可能性は少ないと言う。

 

 ①取られると困るので持っていかない。

 ②悪魔召喚プログラムが俺を助けてくれるかも。一応持っていく。

 

 家を出ると男達に連れられ、黒い国産のセダン車に乗り込む。運転席は別の男が待機していた。俺達3人が後部座席に座ると車はゆっくりと動き出した。窓から夜の景色を見ていると玉川警察署とは、別の方向に走っているのに気づいた。

 

「あの、警察署と反対方向みたいですが……」

 

 男達は無言だ。重苦しい雰囲気に居心地が悪い。

 まどかさん達は発信機で俺達を追っている……大丈夫だ、問題無い。と、自分に言い聞かせる。突然、視界が真っ暗になった。

 

「えっ!!」

 

 突然、俺は目隠しされ動揺する。

 

「フフ、着くまでの辛抱だ」

 

 落ち着け!! 涼太。まどかさん達を信じろ!!

 どこをどう走ったのか分からないが、目的地に着いたらしい。

 車から降りると目隠しを外され、周囲を見ると4階建てのビル? が密集している。一瞬団地かと思ったが違う。俺達以外に人の気配は無い。

 どこかの工場か倉庫、研究施設にも見える。

 男達に挟まれて建物の中に入る。中は誰もいない。通路を歩いていると暗くて、非常灯が寂しく点灯していた。男達は慣れているのか迷わず歩いている。

 突き当りのエレベーターに乗ると、地下3階に降りて通路を歩く。ここも暗い。右側のドアが1つ開いて明かりが漏れている。入ると蛍光灯の照明が眩しい。部屋は意外に広く電子機器特有の匂いが漂う。

 どうやら電算機室かサーバー室みたいだ。奥の壁際にコンソールデスクがあり、1人の男が座って俺達を見ている。服装は黒いスーツを着て黒のサングラスを掛けている。

 

「ようこそ、深町涼太君。わたしは山田一郎と申します。君に来てもらったのは、浦木氏が我々から奪ったSSDを返して貰いたいのですよ」

「……」

「それと彼が君に何を話したのか、わたしに『直接』教えてほしい。フフ、簡単ですよね~」

 

 丁寧だけど人を小馬鹿にした口調で何かムカツク。俺は無言で茶封筒に入ったSSDを渡した。山田は、茶封筒から取り出し、デスクの上にあるパソコンにコードで接続した。

 

「ふむ、確かに本物ですね~」

「ここはどこですか?」

 

 少しでも時間を稼ぐ為、男に尋ねる。

 

「わたし達の活動拠点の1つですよ。計画が始動したので、近日中に引き払う予定ですが、君も家に帰りたいなら我々の事は詮索しない事。浦木の二の舞になりたいですかぁ?」

 

 山田はサングラスを外すと満面の笑みを浮かべた。黒い髪で油でも付けているのか、ベッタリして前髪を切り揃えている。一見すると銀行員か郵便局員に見えるけど目つきが何かキモい。

 当然、俺は首を全力で横に振る。

 

「フフ、そうでしょう。わたしは紳士なので、物事を穏便に済ませられるのなら、手荒な真似はしない。君は前途有望な学生だ。こんな場所で命を失いたく無い、そうですよね~?」

 

 俺は首を縦に振る。そして出会った時の経緯を山田に話した。

 

「なるほど、彼の背後で如月商会が動いていたのですねぇ。フン、小賢しい。如月ごときが組織に抵抗しても所詮、蟷螂の斧。無駄なのですよ~ククク……」

 

 山田は立ち上がると俺に近づくが、香水の匂いが鼻を刺激する。

 

「それでは君の意識を、読ませてもらいますよ。大丈夫、痛くないですから……」

 

 山田は右手の手袋を外すと、俺はそれを見て悲鳴をあげてしまった。

 人間の手では無い。奇形なのか灰色の鱗に覆われた三本指の鋭い鍵爪だ。思わず逃げようとしたけど、2人の偽刑事に押さえられ動けない。山田は嗜虐心で満ち溢れた笑みを浮かべている。

 

「ククク、この手が怖いですかぁ。いいですねぇ~その怯えた表情……君はわたしの好みですよ。ウィッグを被らせて化粧をさせれば素敵な女性になる。そしてわたしがベッドで縛り上げ、口と腰を使って激しく攻め立てて男の快楽を教える……ウフフ、ゾクゾクしますねぇ。君は本当に美しい、あぁ色々、想像していると勃ってきましたよ」

 

 あまりのおぞましさに全身に鳥肌が立った。こ、こいつ最低最悪の変態ホモ野郎だ、吐き気がこみ上げて来る。あっ自分の股間を触るな。

 

「ウフフ、わたしはねぇ、女装させた可愛い男の子が必死に抵抗し、屈服させるのが趣味なのですよ~そして自分から腰を振ってわたしのモノにしゃぶりつく過程がもう!! たまらない~さぁ……」

「いやっ!! 嫌だぁああ!!」

 

 どこかで爆発音が響いた。




 別に薄い本が出来そうです。
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