召喚師 屍魎己~魔都東京   作:律子

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第8話 業魔殿

 日曜日の午後。俺は、履歴書を持って裏歌舞伎町にある如月商会に向かった。

 異界?にある裏歌舞伎町には、まだ直接行けないのでまどかさんと待ち合わせしてからだ。

 日中の裏歌舞伎町は、相変わらず人影は無いけど熱い視線がビシバシ感じる。

 

「最後の確認になるけど本当にいいのね?」

「はい」

「じゃあ誓約書を読んで了承できたらサインして」

 

 ペンを受け取ると署名欄に自分の名前を記入した。誓約書の内容は仕事中の事故や怪我について如月商会は、一切の責任を負わないと言う事だ。希望すれば独自の団体保険に加入出来るらしい。万一、怪我や死亡しても保険金が支払われるので当然加入する事にした。当然、保険料は給料から天引きになる。退魔師と呼ばれる人達は、仕事を直に請けられるが今の俺はアルバイト扱いなので直には請けられない。給料は日本円だが、希望すればマッカで受け取れると言う。マッカから円の両替はレートによって変動するが手数料がゼロなので円よりお得だ。

 

「当商会は深町君を歓迎するわ」

「よろしくお願いします」

 

 俺は深々と頭を下げた。

 実は随分悩んだのだ。ゲームの主人公と違って、安易な正義感や金儲けで決める話ではないからだ。全てを忘れてしまえば日常の生活に戻れる。問題は、ダークサマナーの山田一郎の存在だ。あの変態サディストでホモが、自分の命と尻をロックオンしている限り、童貞が脅かされるからだ。小心者でヘタレの俺としては、危険と隣り合わせである、この業界に深入りしたくないが……

 如月商会は、表向き、輸入雑貨品を扱う会社だけど、裏では警察が手に負えない『悪魔絡み』の事件を調査解決する会社で、まどかさんは共同経営者だ。社長は竜也さんだが、別の肩書きを持つ忙しい立場な為、実質まどかさんが仕切っている。同じ名字なので結婚しているのかと思ったけど、まどかさんは2歳年上の従姉弟で幼馴染だと言う。社員は竜也さんとまどかさんを除いて5人だ。

 

「俺は、本家の事務所に顔を出すからこのガキの面倒を頼む」

「行ってらっしゃい」

 

 竜也さんは黒皮のコートを着ると事務所から出て行った。

 

「本家の事務所って如月家のですか?」

「ん? 違うわよ。竜也には八代目佐竹組若頭補佐、初代如月会会長の肩書きを持っているのよ」

「エッ!? マジ?」

 

 俺は固まった。佐竹組は、東日本最大の広域暴力団、関東羽黒組の二次団体でバリバリの武闘派としてニュースでもその名前は時々出てくる。先週も六本木で藤堂組系の組織と派手なドンパチをやらかしたのはネットでも覚えている。一瞬、背筋がゾッとした。

 

「まさかあの人……モノホンの人だったとは……じゃここは?」

 

 まどかさんは、首を振り肩をすくめる。

 

「深町君が言いたい事は充分に分かるわよ。ウチは、佐竹組や如月会と一切関係無いわ」

「そ、そうなんですか?」

「当たり前でしょ」

 

 それを聞いてホッとした。まどかさんは立ち上がるとベージュ色のコートを着て俺を見る。

 

「それじゃあ、これから出かけるわよ」

「えっ? ど、どこにですか?」

「私の用事に同行してもらうわ。最初に退魔師が必要とする装備やアイテムを売っている店よ」

 

 退魔師の装備は、家に代々受け継がれている霊剣とか弓矢を想像するけど、それは一部の古い家系のみと言う。退魔師、最近は『デビルバスター』呼ばれている者は、退魔組織から借りるか自腹で買うしか無いらしい。

 外に出ると人影が無い大通りに向かう途中に目的の店がある。純和風の平屋で大きな看板に達筆な字で『山羊屋』と書かれ、異国情緒が漂うこの街では浮いた感じがする。

 

「ここよ」

 

 店内は薄暗く、お香の匂いが漂う。見ると用途不明のセーラー服やメイド服、バニースーツがマネキン人形に着させて展示され、壁には、ハンドガン、日本刀、斧、、アサルトライフルが飾られている。怪しさ大爆発の店だ。これでは銃刀法に思い切り違反しているよ。

 

「いらっしゃいませ。これは如月様、毎度ご贔屓して頂き、感謝しております。はい」

「うわっ!!」

 

 店の奥から店員がモミ手しながら出て来たけど、その姿を見てドン引きになった。貧弱な小男で奇怪なガスマスクを被っている。半袖のシャツから出ている腕はごつごつして毛むくじゃらだ。こっこいつ人間じゃねぇ。

 

「この人は店長よ」

「山羊屋裏歌舞伎町支店の八木沼と申します。以後、お見知り置き願います」

 

 差し出された名刺を両手で受け取る。声からして年配者らしいが若くも聞こえてよく分からない。

 

「よ、よろしく……」

「山羊屋は24時間年中無休です。何卒ご贔屓願います」

「深町君行くわよ」

「は、はい」

「またのご来店をお待ちしております」

 

 店を出ると用意してあった白色の車に乗ると狭い道を走り出した。何か夢に出てきそうだ。

 

「あの人、もしかして人間では無いですよね?」

「そうよ。昔からクズノハや神宮の森に協力してくれているわ」

 

 何か気になるけど、俺が心配しても仕方が無い。

 

「これからどこへ向かうのですか?」

「ビーシンフル号、業魔殿よ」

 

 業魔殿……どこかで聞いた名前だ。もしかしてお台場に停泊している水上ホテルの事かな。

 

「今、話題になっている水上ホテルの事ですか?」

「そうよ。よく知っているわね」

「DDS-NETでも話題になっていましたから」

 

 そう、そこで働いているメイドが可愛くてネット内の『嫁にしたいメイド』ランクの1位にランキングされているからだ。それとホテル内にあるレストランで、出されるフランス料理は、超絶品でミシュラン3ツ星クラスらしい。業魔殿は以前、日本海側にある天海市に停泊していたが、最近になってお台場に来て話題になった。

 

「でも、そんなホテルとまどかさん達の仕事が関係あるのですか?」

 

 ホテルと悪魔退治、どう考えても繋がらない。まどかさんは、巧みに運転して他の車を追い越す。日曜の午後でも交通量は少なく快適だ。

 

「大いに関係あるわ。特にデビルサマナーになりたての深町君にとってね。詳しい事は、私より彼から聞いたほうがいいわ」

「はぁ」

「それともう一つは、例の山田が使っていたスマートフォンのデータをサルベージする為よ」

 

 ナオミが壊したスマホのデータを復旧しようと試みたが、巧妙なセキュリティトラップが仕掛けられていて困難らしい。うっかりトラップにハマると、全データが削除されてしまう。そこで専門家に依頼する事になったとの事だ。

 何気に外の街並みを見ているとJR飯田橋駅に向かっていた。新宿からお台場に向かうには首都高速を使うか下道なら四谷、赤坂、六本木、芝浦と抜けたほうが早いのでは? とナビを見て思う。

 

「業魔殿に行く前に寄りたい所があるのよ。その場所は深町君にも是非見てもらいたいわけ」

「その場所って」

「……」

 

 まどかさんは答える気は無いようだ。

 ビルが密集する狭い通りを抜けて目的地に着いた。見回しても塀があるだけで建物は無い。広さからしてマンションの建設予定地なのかもしれない。周辺はビルが密集して建っているので、そこだけがポッカリ開いている感じだ。

 まどかさんが車から降りると俺も後に続き、門らしい場所に来ると彼女は指を示した。

 

「ここよ」

「ゲッ!! な、何なんですかここは?」

 

 マンションの建設予定地だったら更地のはずだが、そこは巨大な穴が見える。真っ暗で底が見えない。

 

「こっこれは……」

 

 異様な光景で何とコメントすればいいのか分からないよ。

 

「軽子坂高校跡地。原因不明の衝撃と共に学校が消失したのよ」

「消失って……でかい校舎が無くなるなんて、そんな……有り得ないですよ。爆破されたとか……」

 

 まどかさんの顔は、真剣で冗談を言っているとは思えない。

 

「爆破されたのなら無数の破片が飛び散り、周囲の建物に大きな被害を与えているし、死傷者が大量に出ているわ。当時の資料にはそれらの被害の報告が無かったのよ。しかも起きたのは平日の夕方」

「先生と生徒達はもしかして……」

「現在も行方不明よ」

 

 軽子坂高校消失事件。1990年代後半だと当時、俺は生まれていないが、ガイア系のカルト教団による宗教自爆テロとか騒がれていたらしい。本当に恐ろしい話だ。巨大な穴を見ていると、これに似た話のマンガを思い出した。かなり古いマンガだ。確か……あれは、大和中学校だったけ? そしてあれもか?

 

「当時のクズノハの見解によると、何者かの強力な術により、異世界に跳ばされたとされているわ」

 

 やったのが悪魔でなく人間だったらそいつは、とんでもないテロリストだ。

 

「そのやった奴は捕まえていないのですか?」

「これだけの大掛かりだと外部からは無理なのよ。その術者も一緒に跳ばされたらしいと報告されているわ」

「大勢の人を巻き込むなんて許せないですね」

「そうね。巨大な穴を塞ぐには消えた学校を戻すしか無いわ。この世界に関わるからには一度見てもらいたかったのよ」

 

 まどかさんは俺の肩をポンと軽く叩くと車に戻るので後に続いた。

 

「あんな穴が開いてたら、一般人がうっかり迷い込んで落ちたら大変じゃないですか?」

「あの場所には、人払いの結界が二重に張られているから一般人は入れないわ。ウチやクズノハでも綻びが無いか定期的に巡回しているから大丈夫よ」

「そうですか。あの穴を見ていたら、大魔王ルシファーに率いられた悪魔の大軍団が現れるのかと心配になりましたよ」

 

 俺の何とも言えない顔を見てまどかさんは、声を出して笑った。

 

「それこそ無用な心配よ。高位の悪魔がこちら側に出るにはGPの格差修正と莫大なマグネタイトが必要になるから、そう簡単には現れないわ」

「そ、そうですか……」

 

 何か非常に気になるが、まどかさんがそう言うのであれば納得するしかない。

 

「それとクズノハとは、何ですか?」

 

 まどかさんは、よくぞ訊いてくれましたと言う顔をした。

 クズノハ……葛葉とは平安時代以前から続く国内で最大規模の退魔組織で、如月家は枝分かれした分家の一つらしい。他には九鬼、葛城、神代、京極、結城家がある。フリーの退魔師は別にして、一般の退魔師は各家と密接な関係があり、時の朝廷、幕府から今の政財界に大きな影響力を持っている。

 

「例えで言うなら歌舞伎や能楽師の家みたいに先祖代々受け継がれているのよ」

「なるほど、まどかさん達も幼い頃から修行した訳ですね」

「うーん、私達はちょっと違うわね。私はマジシャンを目指していたし、竜也はあの気性だから家を飛び出して、愚連隊を率いて池袋や歌舞伎町で暴れていたけど、クズノハからの要請で仕方なくこちら側に戻ったのよ」

 

 クズノハからの要請は実質の命令と同じく断る事が出来ない。退魔師の業界?は、広く狭いので慢性の人材不足に陥っている。学校を設立して人材の養成をする余裕も無い。広告を出して退魔師を募集するのは問題外で、精々素質がある人を見つけたらスカウトするしかないのが実情だと、まどかさんは言う。そんな実情は、小説やアニメでも描写されている作品があるけど、まさしく因果な稼業だ。

 まどかさんが運転する車は、芝浦からレインボーブリッジを渡ってお台場に来た。2人だけだから休日のドライブみたいだ。

 

「着いたわ。あそこに見えるのが業魔殿よ」

「あれが……実際に見ると凄いや」

 

 目の前にテレビやネットでも話題になっている業魔殿が見える。巨大な客船を改装して出来た業魔殿の迫力に圧倒されるよ。有料の専用駐車場に車を止めてからから歩いていると、家族連れやカップルの見物人が多く写真を撮ったりしている。

 

「日曜だから人が多いので混んでいますね」

「そうね、業魔殿は特別に予約しないと入れないのよ」

「なるほど」

 

 タラップには大勢の人が集まっているが、中に入れないので見ているだけだ。

 まどかさんは構わず進むので俺も後に続く。スーツを着ているまどかさんと、ダウンジャケットにジーンズ姿の俺に、多くの視線が背中を突き刺すがちょっとした優越感を味わえるよ。

 

「すっ凄い!!」

 

 広間は吹き抜けになっている。高い天井には巨大なシャンデリアが吊るされて淡い光を照らしている。内装は豪華で床の絨毯はフカフカで靴が埋まってしまうほどだ。壁にはよく分からない絵画が飾ってある。奥に緩い円を描くような2つの階段が見える。おのぼりさんみたくキョロキョロしていると、いつの間にか1人のメイド服姿の女性が現れた。

 

「お久し振りでございます、如月まどか様。お待ちしておりました」

「久しぶりねメアリ。で、彼が」

「深町涼太様ですね、伺っております」

 

 メアリは俺を見ると深々と挨拶をするので、俺も慌てて挨拶をした。

 

「よ、よろしくです。メアリさん」

「メアリ、とお呼び下さい。私に、さん付けは無用です」

「は、はいっ」

 

 言葉は丁寧だけど有無を言わせぬ迫力がある。

 俺の前に本物のメイド衣装に身を包んだメアリ本人が立っている。肌は白く、黒髪のショートヘアに神秘的な顔立ちは無機質な人形みたいだ。その両目は赤みを帯びた瞳で俺を見つめている。なんだか吸い込まれそうだ。アキバの通りで風俗店のビラを配っているメイドもどきと大違いだよ全く。突然、声が響いた。

 

「COMPを手にした若きサマナーよ。業魔殿へヨーソロ」

 

 国籍年齢不詳の男が現れた。男の服装が異様で例えるなら海賊船の船長だ。赤地に金の刺繍が施された襟付きのマントにパイプを手にしている。船長の帽子を深く被り銀髪の前髪が右目を隠している。

 メアリと同じく赤味を帯びた瞳は鋭い。色白の肌で、髯を生やしている。ゆっくり階段を降りて俺達の前まで来た。

 

「久し振りね、ヴィクトル」

「うむ、如月まどか。人喰い電車事件以来だな」

 

 ヴィクトルと呼ばれた男は、表情を変えずに頷くと俺に顔を向けた。異様な迫力に呑まれる。

 

「では、改めて名乗らせていただこう。我が名は、ヴィクトル。悪魔合体を生業とする者だ」

「悪魔合体って……」

 

 一瞬、悪魔が分離、変形、ドッキングするイメージが浮かんだ。

 

「悪魔と悪魔を合体させてより強い悪魔を作り出す邪法だ。ここで話すより我が聖域でもある魔の工房へご案内しよう」

 

 ヴィクトルが指を鳴らすと階段が落ちて地下へ続く道を開けた。どんな仕掛けになっているのか分からないよ。ヴィクトルが先頭で次にまどかさん、俺と最後はメアリさんが続いて地下に降りた。

 地下にある工房はまさしく背徳と魔の工房だ。例えるなら昔のB級SF映画に出てくるマッドサイエンティストの研究所だ。設備は最新鋭の電子機器と言うより、今では珍しい真空管が使われ、無数のアナログメーターがレトロチックな雰囲気を醸し出している。奥に人が入れそうな巨大な円筒形のシリンダーが7本ある。透明ガラスで内部に、青みを帯びた液体が満たされ泡だっている。中央には魔法陣が描かれた円形の台座がある。非現実的な迫力に圧倒されてただ見ているだけだ。確実に言えるのは、通報されたらアウトって事だ。

 

「ここで我輩は悪魔合体の研究を行なっている。お前に合体理論を説明しても理解出来ぬだろう」

 

 そりゃそうだ。理解できたら天才だよ全く。

 

「ヴィクトル、これが例のCOMPよ。巧妙なプロテクトとトラップが仕掛けられてウチやクズノハでも手に負えないのよ」

 

 まどかさんは例のスマートフォンをヴィクトルに渡した。

 

「これは、山田一郎のCOMPだな。なるほど彼からも破棄の連絡が届いている。この依頼は、確かに引き受けた。そう時間もかからないだろう」

「よろしくお願いします」

 

 まどかさんは深々と頭を下げる。

 

「それと深町涼太よ。お前のCOMPを見せてくれぬか?」

「は、はい」

 

 断る理由も無いので俺は、コードを外しケースから取り出すと渡した。ヴィクトルは測定器に接続して調べている。

 

「ほう、ベースはサイバース社の最新型をカスタマイズしているな。悪魔召喚プログラムは……フフ、最新版か……そうかお主がな……」

 

 俺を見ると意味有り気な含み笑いをしてちょっと怖いよ。

 

「COMPに入っている仲魔は、幽鬼と屍鬼に悪霊か……これでは合体は無理だな」

「無理って……」

「悪魔合体は言葉通り、2体の悪魔を1つのより強い悪魔を生み出す邪法だが、悪魔には種族相性があり、相性が悪いと合体素材の仲魔より能力……レベルが低い悪魔……スライムが出来てしまうのだ。最悪の組み合わせだと合体は不可能になる」

「つまり合体させたけりゃもっとたくさんの悪魔を仲魔にしろって事ですか?」

「察しが早いな」

 

 簡単に言ってくれるよこの人は、全く。

 

 ①当然、合体すれば数が減る

 ②己の力量より強い悪魔は作れない。悪魔は己より弱い者には従わないので、逆に殺されてしまう。

 ③仲魔にいる悪魔は作れない。

 ④幽鬼などダーク系の悪魔は合体の制限を受ける。

 

「これは基本で他にはスキルの継承や3身合体や、特殊な合体があるが一度に全て覚える必要は無い」

 

 悪魔合体って本当に奥が深いですね。よく分かりました。

 

「それと如月まどか。お主からの依頼を引き受ける代わりに、我輩の頼みを引き受けてはもらえぬか?」

「どのような内容でしょうか?」

 

 無理難題を要求されるかと思ったのか、まどかさんはかなり警戒している。

 

「難しい話では無いから警戒しないでもらいたい。あるモノを手に入れて欲しいのだ。我輩は、新たな合体秘術を日々研究しているので、この場から離れられない。それを入手して完成すればサマナー達の新たな力になるだろう。お主達が損になる話ではないと思うがな」

 

 まどかさんはヴィクトルを見ていたが……

 

「分かりました。お引き受けしましょう。それで手に入れるモノとは何ですか?」

「モノ言わぬ土くれの人形、ドリーカドモンだ」

「あれは確かDr.スリルの物で彼は今、日本にいないはずですが……」

「最後の1体は、奴の秘密研究所に保管されているのだ。研究所は現在、無人だがサマナー嫌いの奴は悪魔を大量に放っていて、一般人では近寄る事も適わぬ。そこで」

「デビルサマナーの力が必要なのですね。ウチに新人が入りましたので任せますわ」

 

 新人ってまさか俺? ジョウダンデスヨネマドカサン……

 まどかさんは、さわやかな笑顔で俺の肩を叩く。

 

「デビルサマナー深町涼太の初仕事よ。頑張って、ね」

「そ、そんな……いきなりは無理ですよ」

 

 俺が情けない声で抗議しても無視してくれるよ。まどかさん。

 

「で、研究所の場所と悪魔の種類と、トラップがあるか分かるかしら?」

「メアリの報告によると研究所は世田谷区内にあるが、建物と敷地は、異界化しており悪魔が存在している。数は多いが高レベルはいない。むしろトラップの方が厄介だろう」

「私が確認したところ放たれている悪魔は多いですが、今の深町様でも対応可能です。地下研究室は結界に覆われて入れませんでした」

「難易度は低いが万が一と言う事もある。装備を整えて行くのが良かろう。研究所のデータはCOMPのメモリーに入れて置く」

「それで出発は、いつですか?」

 

 COMPの時計を見ると16時を過ぎている。

 マサカコレカラムカウトハイワナイデスヨネ?

 

「もちろん、これから向かうわよ」 

 

 ヒロ子さんからメールが届いています。

 >最後通告!! 深町涼太。本日19時までに来い!! ヒロ子さんはプンスカなんだぞ!!

分かってるのか!! もし来なかったら強制拉致を決行する。以上!!

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