――――――太陽が完全に沈み、すっかり夜が更け巨大な二つの月が魔法学院の本塔の外壁を照らしている。 広大な草原に佇む魔法学院を赤と青のそれぞれの輝きを持つ月によって放たれる月光がコントラストとなり、昼間とはまた違う幻想的な風景を見せている。
その二つの月が照らす本塔の天辺に、一つの人影が立っていた。 人影は顔をすっぽり覆うようにフードを被り、ローブを身にまとっている。マントが夜風に吹かれてバサバサとはためき、月の光に照らされて黒いシルエットとなる。その姿はまるで人の姿をした巨大な蝙蝠のようだ。
・・・バサァッ!
ローブのマントをはためかせ、本塔の屋根から飛び降りる。 落下しながらぶつぶつと口の中で呟き、右手に握られた杖を振った。
すると、落下速度がゆっくりとなり、ふわり・・・っと一枚の羽毛のように本塔の外壁に着地した。人影は自然な動作で、まるで地面の上に立つように外壁の上を垂直に立った。 このような芸当はメイジにしかできない技である。 だが、貴族であるメイジにこんな真夜中に塔の天辺に上ってこのような酔狂なことをする者がいるだろうか・・・?
―――否、該当する人物は一人だけ存在した。
「お宝を頂戴するには…いい夜ね」
そう、この人影こそ・・・『土くれ』の二つ名で呼ばれ、トリステイン中の貴族を恐怖に落としいれた、悪名高いメイジの盗賊「土くれのフーケ」であった。
フーケには数々の武勇伝がある。北の貴族の屋敷に、宝石が散りばめられたティアラがあると聞けば、早速赴きこれを頂戴し、南の貴族の別荘に先帝から賜りし家宝の杖があると聞けば、別荘を破壊してこれを頂戴し、東の貴族の豪邸に、北の国の細工師が腕によりをかけて作った石咬みの指輪があると聞いたら一も二もなく頂戴し、西の貴族のワイン倉に、値千金、百年ものヴィンテージワインがあると聞けば喜び勇んで頂戴する。
神出鬼没の大怪盗、土くれのフーケに盗まれた宝の数は数知れない。
そしてフーケの盗みの手口は、闇に紛れ込んで繊細に屋敷に忍び込んだかと思えば、大胆にも屋敷を粉々に破壊して盗み出したり、白昼堂々と警備の厳しい王立銀行を襲ったかと思えば、夜陰に乗じて邸宅に侵入して盗み出し、衛兵が気づいたときには金庫の中は空となって、フーケはすでに姿を消しているのだ。
フーケのその盗み方は行動パターンが読めず、トリステインの治安を預かる王室魔法衛士隊も振り回されてばかりで手を焼いていた。
しかし、貴族とてむざむざ宝を盗まれるのをただ指をくわえてるわけではない。 フーケの盗みの方法には共通する点が存在する。フーケは狙った獲物が隠されたところに忍び込む時には、主に『錬金』の呪文を使い、屋敷の壁や扉を粘土や砂に変えて穴を開けて忍び込むのだ。 それらの手口から対抗できるよう対策を練って、屋敷の壁や扉は、強力なメイジに頼んでかけられた『固定化』の魔法で、フーケの『錬金』の魔法から守られている。
しかし、フーケの『錬金』はそのメイジの『固定化』をはるかに上回っていた。大抵の場合、『固定化』の呪文などものともせず、強固な扉や壁をただの土くれへと変えてしまうのだ。
さらに忍び込むばかりでなく、フーケが屋敷を破壊する時によく使われるのが、巨大な土ゴーレムだ。その身の丈は軽く三十メイルはあるほどで、城でさえも壊せるような巨大なゴーレムである。 腕利きの魔法衛士隊が集まってこようと、まるで羽虫でも払うかのごとくそれを蹴散らし、白昼堂々とお宝を盗みだしたこともある。
魔法を掻い潜って接近戦に持ち込んだ者も何人かいたが、フーケは魔法だけでなく体術も得意なようで、その鋭い蹴りは屈強な男でさえも蹴り伏せてしまい、あっけなく逃げられてしまう。
そのような盗みの技から、フーケは『土くれ』という二つ名を付けられ、「土くれのフーケ」と呼ばれるようになった。
だが土くれのフーケの正体を見たものはいない。 ローブでスッポリと顔を隠しているため、男なのか女なのかさえ謎である。ただわかっていることは……おそらくトライアングルクラスの強力な『土』系統のメイジであること。
そして、お宝を盗んだあとは必ず、犯行現場の壁に
―――『秘蔵の○○。確かに領収いたしました。土くれのフーケ』
と、ふざけたサインを残して去っていくこと。 そして、いわゆるマジックアイテム・・・・、とくに強力な魔法が付与された数々のお宝が何より好んでるということであった。
そんな大怪盗が次に狙うターゲットが・・・このトリステイン魔法学院だった。今、フーケが垂直に立っている場所が、本塔の五階に位置する宝物庫である。今回フーケが狙うお宝は・・・この宝物庫の中に眠る『破壊の杖』であった。
フーケはフードの中から伸びる青い、長い髪を夜風になびかせ悠然と佇む様に、国中の貴族を恐怖に陥れた怪盗の風格が漂っている。
フーケは口元をわずかに歪め、足から伝わってくる壁の感触に舌打ちをした。
「チッ…流石は魔法学院本塔の壁ね。 守りも完璧だわ・・。 物理的な衝撃が弱点? こんなに分厚かったら、ちょっとやそっとの魔法じゃどうしようもないじゃないの!」
『土』系統のエキスパートであるフーケは、足の裏で壁の厚さを測ることができる。 トライアングルクラスといわれるほどのフーケにとって、そんなことなどぞうさもないことだった。
「確かに、『固定化』の魔法以外はかかってないみたいだけど・・・こんだけ分厚けりゃ、ゴーレムどころか大砲でも壊せそうにないね・・・・まったく、まるで要塞だよ」
フーケは腕を組んで悩んだ。
強力な『固定化』の呪文がかかってるから、『錬金』で穴をあけるわけにもいかない。 この五階周辺の外壁を調べてみたが、どこにも綻びがないほど強固な作りをしている。 物理的衝撃を何度も与えればいずれは崩れるかもしれないが、いくら三十メイル級の土ゴーレムでも壊すのに時間が掛かりすぎる。 いっそのこと宝物庫の鍵を盗もうかとも考えたが・・・その鍵は学院長のオールド・オスマン自身が管理しているため、盗むのは難しい。
「手っ取り早く済ますなら、いままでのようにゴーレムでぶち破るのが一番だけど・・・この分厚さじゃ貴族の屋敷のようにはいきそうにないか…。まずはこの邪魔な壁をどうにかしないと、中に入ることは不可能ね」
獲物を目前にして手も足も出せず、ギリ…と歯噛みをした。
「かといって、このまま『破壊の杖』を諦めるわけにゃあ、いかないね・・・・なんとしても手に入れてやるさ」
フードの中から覗かせるフーケの目が、きらりと光った。そして腕組をしたまま、じっと考え始めた。
――――――― 一方、フーケが本塔の壁に足をつけて悩んでるころ・・・。ルイズの部屋では騒動が持ち上がっていた。
「こんな時間に一体何の用よ、ツェルプストー」
部屋の中心で、ルイズは腰に手を当てながらある人物と睨み合っていた。 不倶戴天の敵、キュルケである。
夜の優美な時間をガンマが淹れてきた紅茶を飲みながらゆったりと過ごしていたところを、キュルケは何やら布で包んだ大きな長物を両手で抱えて押しかけてきたのだ。 傍らではガンマは二人の険悪な様子にどう対応したものかとおろおろとカメラアイを動かしており、いつの間にかタバサはベッドに座り、我関せずといった態度で本を広げていた。
招かれざる客であるツェルプストーによってせっかくのティータイムを台無しにされたのもあるが、 昨日の夜の出来事もあったため…ルイズの表情にはいつもよりも険しく怒りを滲ませていた。
「別にあなたに用があって来たんじゃなくってよ、ヴァリエール」
「じゃぁなんなのよ。 用がないなら帰ってちょうだい!」
今にも睨み殺しそうなほどの眼光で睨みつけているが、キュルケは悠然とそんなルイズの視線を受け流す。
「実は、あなたの使い魔に用があってね」
「ガンマに?」
ルイズは眉を上げてガンマに振り返る。
「エ・・ボク二?」
「そう。あ・な・た・に♪」
まさかのご指名に、キョトンとしたようにガンマは自分を指差すと、キュルケは笑顔でにっこりと答える。
抱えていた長物の布をシュルシュル…と解いていくと、中からピカピカに輝く綺麗な長剣が姿を現した。
「ぁあーっ!? そ、それって…!!」
それを見て、気づいて叫んだのはルイズだった。その剣に見覚えがある・・・あの武器屋の親父が店一番の名剣と太鼓判を押していた『シュペー卿の剣』であった。
「綺麗な剣でしょう? 武器屋のご主人が、お店一番の業物だってみつくろってくださったの」
ピカピカに輝く刀身を指で優しくなぞって、自慢するようにルイズ達に見せ付けた。
「どういうことよ、ツェルプストー!」
「どうもなにも、ボロ剣しか買えない貧乏なヴァリエールに変わって、ガンマに立派な剣を渡しにきたのよ」
「だ・・・だれが貧乏よ! っというか、なんであんたが剣のこと知ってるのよ!」
「さぁ? どうしてかしらねぇ?」
わなわなと指を震わして愕然とするルイズを見て、キュルケは小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。
どうやらキュルケは、ルイズ達が立ち去った後に武器屋の訪れて、ガンマにプレゼントするためにこの高価な剣を購入したようだ。つまり、キュルケはルイズ達がブルドンネ街に行ったの知って、どういうわけか馬よりも速く走るガンマの後を付けてきたということだ。
よりにもよってあの憎っきツェルプストーに剣のことを知られた上に、ガンマへのプレゼントに自分が買ったものよりも格段に上な代物を用意してきたのだ。つまりボロ剣しか買えなかった経緯も知っているということだろう。 ルイズはそう確信すると、キュルケの抜け目の無さにギリギリと歯を立てた。
「ま、そんなことどうだっていいわ」
まるで眼中にないかのように優雅に振る舞い、キュルケはとことことガンマの傍によって剣を贈った
「ほらガンマ、あたしからのプレゼントよ♪」
ガンマはあまり状況が飲み込めてない様子で一瞬とまどったが・・キュルケが自分のためにプレゼントをしようとしてるのだと判断した。昨日ルイズに絶対にキュルケに関わるなと命令されたが、あの『シュペー卿の剣』はたしか "立派な家と森付きの庭"が帰るほどの破格の値段だったものだ。 どうして彼女が自分のためにそのような高価な剣をプレゼントしてくれるのか理由はわからないが・・・自分のために買ってくれた彼女の好意を無下にするわけにはいかないだろう。
「アリガトウ。キュルケ」
お礼を言って、受け取ろうと左手を伸ばすと…そんなガンマを見てルイズは足を蹴飛ばした。
「ガンマッ! あんた昨日言ったことを忘れたんじゃないでしょうね!?」
ビクッと、ルイズの怒声によって剣に伸ばした手が止まる。ルイズを怒らせたら怖いと学習しているため、怒声に反応したようだ。
「ア…、マスター・・デモ・・」
「でもじゃないの! あんたには、あのしゃべるのがあるじゃない!」
「シカシ・・・」
ガンマは困ったように音声を落としながら、迷うように手を伸ばしたり引っ込んだりと動かしている。
「嫉妬はみっともないわよ? ヴァリエール」
キュルケは、勝ち誇った調子で言った。
「は? 嫉妬? 誰が嫉妬してるのよ!」
「そうじゃない。 ガンマにピッタリな剣を、あたしが難なく手に入れてプレゼントしたもんだから、嫉妬してるんじゃなくって?」
「誰がよ! やめてよね! ツェルプストーの者からは豆の一粒だって恵んでもらいたくないだけよ!」
キュルケはガンマを見た。 どうすればいいのか困ったように剣を見つめている。
「見て御覧なさい。あなたがきつく言うからガンマが困っちゃってるじゃない。 知ってる? この剣を鍛えたのはゲルマニアの錬金術師、シュペー卿だそうよ」
それからキュルケは、熱っぽい流し目をガンマに送った。
「ねえ、あなた。 このままでよくって? ゲルマニアと違ってトリステインの女ときたら、このルイズみたいに嫉妬深くて、気が短くって、ヒステリーで、プライドばかり高くって、どうしようもないんだから」
ルイズはキュルケをぐっと睨みつけた。
「なによ。ホントのことじゃないの」
「へ、へんだ。あんたなんかただの色ボケじゃない! なあに? 男を漁りすぎて相手にされなくなったから、トリステインまで留学して来たんでしょ?」
ルイズは冷たい笑みを浮かべて、キュルケを挑発した。相当頭にきているのか、声が震えていた。
「言ってくれるわね。ヴァリエール・・・・」
キュルケの顔色が変わった。彼女の初めて見せる怒りの表情に、ガンマは驚いたように緑のカメラアイをチカチカと点滅させる。
ルイズが勝ち誇ったように言った。
「なによ。ホントのことでしょう? 」
バチッ・・・バチバチバチッ!
二人の間の空気の温度が一気に低下し、まさに一触即発の状況へと転じる。 ガンマが二人をどうにか宥めようと声をかけようとする前に、二人は同時に自分の杖に手をかけた。
―――ビュウゥ!
「!?」
突然、部屋の中でつむじ風が舞い上がり、まるで狙ったかのようにキュルケとルイズの手から杖が吹き飛ばされた。
ベッドのほうでじっと本を読んでいたタバサが、いつの間にか杖を掲げていた。どうやら彼女が二人よりも速く杖をふって風を起こしたようだ。
「室内」
タバサは淡々と言った。 ここでキュルケの火やルイズの爆発の魔法を放ったら危険であるといいたいのだろう。
「なにこの子。さっきからいるけど」
ルイズが忌々しげに呟くと、キュルケが答える。
「あたしの友達よ」
「友達・・?」
ガンマも無機質な声で呟き、タバサに緑のカメラアイを向ける。
「そう、あたしの大事なお友達で、タバサっていうの」
キュルケはころりと表情を笑顔に変えて、ガンマに紹介する。
「なんであんたの友達が私の部屋にいるのよ。勝手に人のベッドに座って」
キュルケの友達というのが気に食わない様子のルイズ。キュルケはぐっとルイズを睨んだ。
「いいじゃない」
「よくないわよ」
ルイズとキュルケはにらみ合ったまま、バチバチと火花を散らし続ける。
そんな険悪な二人の様子を他所に、ガンマはベッドに座っているタバサという少女に緑のカメラアイを向ける。 授業の時など普段見かけることはなかったが、食堂や図書館で本を読んでるところを目撃していたので、タバサもルイズとキュルケと同様、同じクラスの生徒であることをガンマは憶えている。先ほどのあの風は、どうやら彼女の魔法によるもののようだから、彼女は『風』系統のメイジなのだろうか? 風をあんな風に正確にコントロールして杖だけを吹き飛ばすだなんて、『火』や『土』とはまた違った力を持ってるようだ、『風』の系統でも、トライアングルやスクウェアで威力が異なるのだろうか・・? ガンマはそう思案する
「・・・・・」
「?」
ガンマがそんな風に考えていると、じっと本に目を向けていたタバサがこちらを見ていた。 じっと、空のように青い瞳で興味深そうに見つめている。そういえば一週間前の食堂でルイズと食べ物の話をしていた時も、チラチラとこっちを見ていた気がする。
「ハジメマシテ、ミス・タバサ」
「・・・・」
ガンマはとりあえず、ベッドに座っているタバサにペコリと挨拶をした。だが返事はなく、再び視線を本のほうに戻し、本のページを黙々とめくっている。
どうやらかなり無口のようだ、しかしなんで自分を見つめていたのだろう? ガンマは不思議そうに首をかしげた。
そして視線を二人のほうに戻すと、ルイズとキュルケは未だにぐっと睨み合ったままだ。キュルケが視線を逸らして言った。
「埒が明かないわね・・。じゃぁ、ガンマに決めてもらいましょうか」
「エ? ボクガ?」
いきなり自分に振られたのでガンマは戸惑う。
「そうよ。あんたの剣でモメてるんだから、あんたが決めなさい」
ルイズもぐっと睨んだ。癪ではあるが、こうなったら自分の使い魔に選ばせようと託したようだ。
「選ブ・・・選ブ・・・」
ガンマは、キュルケの剣と、肩に引っさげたデルフリンガーを交互に見ながら悩んだ。 たしかに、ボロボロではあるがマスターであるルイズからデルフをプレゼントしてくれたのだから、剣はこれ以上所持する必要はないともいえる。 だけど・・・キュルケが自分のためにあんなにも高価な物をプレゼントをしてくれるという行為は、自分にとって嬉しいものだ。 それを断るわけにもいかないが、受け取ったら怒ったルイズに重い罰を受けるのは確実だし、許してはくれないだろう。 だが受け取らなかったら、優しいキュルケを悲しませてしまう・・。
それに、現在装備しているデルフにだって自分のように意思がある。彼は自分を『相棒』と呼んでくれているのに、デルフの意思を無視してどちらかを選ぶというのは・・・・。
そう思うと簡単には選べない。 剣を選ぶということは、すなわち二人のうち、どちらかを選ぶということであり、剣の『相棒』も選ぶということである。
「さぁ、どっち? 当然あたしでしょ?」
「速く決めなさい。もちろん私に決まってるわよね?」
右にカメラアイを向ければキュルケが睨む。 左にカメラアイを向ければルイズが睨む。 肩に引っさげたデルフも『俺を捨てたりしないよな!?』と訴えるように金具をカタカタと鳴らしているのが聞こえた。
「アノ・・・二本トモ選ブ…ハ・・・可能?」
ガンマは恐る恐ると、指を立てて提案を述べた。
「「・・・・・・」」
―――ガゴンッ!!!
二人に無言で思いっきり剣の鞘で頭をどつかれ、ガンマはぶたれた頭を擦った。
「ねえ」
キュルケはルイズに向き直った。
「なによ」
「そろそろ、決着をつけませんこと?」
「そうね」
「あたしね、あなたのこと、大ッ嫌いなのよ」
「奇遇ね、あたしもよ」
「気が合うわね」
お互いがオーラを放ち合い、キュルケは微笑んだあと、目を吊り上げた。 ルイズも負けじと、無い胸を張った。
二人は同時に怒鳴った。
「「決闘よっ!!」」
「フ、二人トモ、学院デノ決闘ハ、禁止デハ…」
ガンマが慌てて言うが、ルイズもキュルケも、お互いが怒りをむき出しにして睨みあっているので、ガンマの声は耳に入っていなかった。
「もちろん、魔法でよ?」
キュルケはさも当然のように告げて、勝ち誇ったように言った。
ルイズはぐっ…と唇を噛み締めたが、すぐに頷いた。
「ええ。望むところよ」
「へぇ、いいの?ゼロのルイズ。魔法で決闘で、本当に大丈夫なの?」
小ばかにした調子で、キュルケが呟く。ルイズは拳を握り締めながら、強く頷いた。 自身はない。 未だに爆発しか起こせないのだから、あるわけがない。
でも、あのツェルプストー家の女に魔法で勝負と言われては、意地でも引き下がれない。ヴァリエール家のプライドが許せない。それに・・・
「もちろんよ! だれがあんたなんかに負けるもんですか!」
―――「(ガンマにも、ご主人様がすごいんだってところを、見せてやるんだから!)」