ルイズアドベンチャー~使い魔のガンマ~   作:三船

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また長いことお待たせしました、次の話です。 最近やっと余裕ができそうな環境になって調子が戻りそうです。


ミッションー126:参上!土くれのフーケ

「残念だったわね!ヴァリエール!勝ったからにはガンマにはあたしの剣を使わせてもらうわ!」

 

キュルケは、勝ち誇って大いに笑った。 ルイズは勝負に負けたのが悔しいのか、膝をついたまましょぼんと肩を落として、打ちひしがれていた。

 

「(マスター・・)」

 

剣を抱えたまま、どう声をかければいいのかわからず、ガンマは複雑な気持ちでルイズを見つめた。

それから、腕の中で抱えられてるデルフは金具を鳴らしだした。

 

 

『おい!さっさと縄解いてくれよ!』

 

「ア、ゴメンデルフ…」

 

ガンマは低い音声で謝罪する。 落ち込んでるルイズのことが気になるが…まずはデルフとシュペー卿の剣を縛ってるロープを外すことにした。二本とも鞘から抜け落ちないようにきっちりぐるぐる巻きにされてるから、結び目を堅くてぐいぐい引っ張っても外れない。

片手だけでは解けそうになく、ガンマはキュルケに頼むことにした。

 

「申シ訳ナイ、キュルケ。 コノロープヲ解イテクレナイダロウカ」

 

キュルケは微笑んだ。

 

「ええ、喜んで」

 

 

 

 

 

その時である――――

 

 

 

 

 

 

――――"ズズゥウン!"

 

 

 

 

 

突如、大きな音と共に地面が揺れだした。地震かと思ったが、地震にしては妙な揺れ方で、まるで巨大な物体が地面を叩いたような衝撃が後方から発せられたのをガンマのセンサーが感知する。

キュルケもガンマと同じ方向に何かの気配を感じたようで、ガンマと同じタイミングで振り返った。

 

「ッ!!」

 

「な、なにこれ!」

 

ガンマはカメラアイを点滅させ、キュルケは我が目を疑うように口を大きくあけた。 

 

 

そこには、いつの間にか土でできたゴーレムがいた。 巨大な巨人の足元の芝生は無残に掘り起こされたように土が見え、まるで地面から這い出てきたような様で地面に方膝をついて鎮座している。 先ほどの揺れは、この巨人の仕業のようだ。ルイズも膝をついたまま、突然のゴーレムの出現に呆然としている。

 

ガンマ達が驚いているのもつかの間、土のゴーレムは体を動かし始め、足元にある植え込みをメキメキと踏み潰しながらゆっくりと立ち上がり始める。

 

 

 

 

――――"ムオオオオォォォォォーーーッ"

 

 

 

 

 

完全に二本足で立ち上がると、ゴーレムが唸るような低い咆哮を上げた。 立ち上がったことでそのゴーレムの全貌が露になり、ガンマはその巨人の大きさに驚愕した。 スキャンしてみた結果全長が三十メートルはあり、全身が土と岩石の物質で構成された土人形のようだ。

 

「きゃぁああああああ!!」

 

キュルケは悲鳴を上げて逃げ出した。

逃げ出すキュルケを見てこれが由々しき事態であると判断したガンマは、ルイズのほうを向いた。

ルイズは腰が抜けたようにペタリと座り込んでゴーレムを見上げている。

 

 

「(状況確認、危険ト判断。最優先任務、マスター・ルイズノ保護。ルイズヲ守ル)」

 

 

ガンマは自分の任務を遂行するため、動けないルイズの傍に駆け寄り、二本の剣を肩に引っさげ両手でヒョイッとルイズを抱き上げる。

 

「へ? ひゃぁっ!」

 

ルイズが小さく悲鳴を上げた。

 

「マスター、避難ヲ開始スル」

 

我に返ったルイズは突然のことでうろたえてるようだが、緊急事態のため主人の反応を無視して走り出した。

ガンマは巨大なゴーレムと応戦せず、避難することを選択した。あの質量と大きさだ、いくらエネミーを破壊する威力のある自分の銃でも、性能上あんな巨大な土塊の集合体であるゴーレムを破壊できるか可能性は低い、それにあのような巨大なエネミーとの戦闘データはガンマにはまだなく、ルイズを守りながら戦闘を行うにはリスクが高すぎる、まずはルイズを安全な場所まで運ばなければ・・・

 

 

ズシンッズシンッズシンッ!

 

 

っと、巨大なゴーレムは地面にいる小さなルイズたちの存在など気にも留めず、地響きを起こしながらこちらへ向かってきている。

 

「こ、こっちに来るわ!!ガンマ急いで!!」

 

ルイズは慌てふためいてガンマの頭をベシベシと叩いた。急かされたガンマは急いでこの場から離れるためモードチェンジへと移行する。

 

 

「モードチェンz…」

 

 

――ガギィッ!

 

「!?」

 

 

ガンマが走行モードへと変形しようとした途端、折りたたもうとした足の関節が固まった。ガンマはバランスを崩してこけてしまい、ルイズはその拍子でお尻を打った。

 

「いった~っ もうどうしたのよ!」

 

「マスター、脚部ニ異常発生。動ケナイ」

 

「ええ!?」

 

無機質な声で異常を伝えるとルイズは打ったお尻をさすりながらガンマに駆け寄る。 何事かと足に目を向けると・・・足の関節部分にいつの間にか土の塊が付着していた。 一体いつの間にこんなものが? まるで土の塊が足を固定するように硬質化して固まってる。土塊に混じってる砂利が関節の隙間に入ってるせいで脚部のパーツを動かすことができない、これではモードチェンジ不能だ。

 

「な、なんで足にこんなものつけてんのよ!あんたってば!」

 

「不明、ボクニモ理解不能…」

 

そんな二人に、ゴーレムの足がすでに間近に来ていた。あと一歩足を動かせば、自分達を踏み潰せる距離である。 ガンマはなんとか立ち上がろうとするが、間接が土で固まってるせいで立ち上がれない。

 

「安全装置、解除。」

 

ガンマは銃の安全装置を解除した。学院内での銃の使用を禁止されているが、今は緊急事態だ、少しでも足止めをするためにガンマは右腕の銃を構える。

 

ジャキッ

 

 

だが、右腕にも足と同様の異常が発生した。

 

 

「!? 腕ガ…!」

 

気づけば"右腕の銃"にも同じ土の塊が覆い包み、銃口を塞がれていた。しかも内部にまで浸入してるせいで銃口が詰まってて、このまま射撃すれば腔発を起こす危険がある。

ガンマは異常事態の連続で困惑し焦るようにカメラアイを点滅させた。ルイズを守るという自分の任務を遂行しようにも、銃は封じられ、デルフもシュペー卿の剣も縄で縛ったままで剣を抜くこともできない。

身動きがとれず唯一の攻撃手段まで封じられてしまってはもう打つ手がない、せめてルイズを逃がさねば!

 

「ルイズ、逃ゲロ! ココハ危険!」

 

「く、こんな石・・・!」

 

ガンマはルイズに逃げるよう告げるが、ルイズは警告を聞かず、一生懸命にガンマの足にくっ付いた塊を引き剥がそうともがいている。

それをあざ笑うかのように、巨大なゴーレムの足が持ち上がり始めた。

 

 

―――「きゅいいぃぃぃ!」

 

 

もうダメだと思ったその時、青いドラゴンが風を切る音と共に滑り込んだ。タバサの使い魔のウィンドドラゴン、シルフィードである。

背には主人であるタバサが跨っており、その後ろにはキュルケも乗っている。

 

「何やってるのよヴァリエールったら! タバサ、ガンマもお願い!」

 

「シルフィード」

 

「きゅい!」

 

カプッ

 

「わぁ!?」

 

コクリと頷き、手足を見てガンマが動けない状態だと察したタバサはシルフィードに命じた。主人の声に呼応し、シルフィードがルイズの襟首を銜え、倒れてるガンマを前足で抱きしめるようにがっしり掴み、力いっぱい翼をはためかせてゴーレムの足と地面の間をすり抜ける

 

 

 

―――ズシィィィン!!

 

 

 

その場から離れた直後ガンマ達が居た場所に、ゴーレムの大きな足が大きな音を立てて地面にめり込んだ。

 

 

「ふう…間一髪だったわね二人とも、もう少し遅れてたらぺちゃんこになってたわよ」

 

「キュ、キュルケ?! あんた先に逃げたんじゃ」

 

「さっきタバサに拾って貰ったのよ。とりあえず無事でよかったわ。貴方達ももうとっくに避難してるもんだと思ったんだけどね。」

 

「これのどこが無事だってのよ!!」

 

襟首を銜えられて宙吊りにされたんじゃ無事とは言えないと文句を言う。

 

「しょうがないでしょ? この子のシルフィードでもガンマは重たいんだから。ちゃんとタバサにお礼いいなさいよね?」

 

こんな事態になっているにも関わらず、いつもの調子で風になびく赤い髪を押さえながらキュルケは言った。 ルイズはウィンドドラゴンに銜えられてるのにキュルケに噛み付いてる。

 

「空・・・飛ンデル・・・」

 

ガンマはいきなり飛び込んできたドラゴンに抱かれて飛び上がったことに驚いたが、どうやらルイズと一緒に助けてくれたのだと理解した。 あと少し遅れていたら、ゴーレムに踏み潰されてスクラップになっていたことだろう。

 

「えっと・・・たしかタバサだっけ? 助けてくれてありがとう」

 

「救出感謝シマス。ミス・タバサ」

 

落ち着きを取り戻したルイズは、ウィンドドラゴンに跨っているタバサにお礼を言った。ガンマも主人と共に助けてくれたタバサにお礼を述べると、タバサは無表情に頷いた。

 

「くるる…」

 

「?」

 

するとウィンドドラゴンは不服そうにジトーっとガンマを見てる。 まるで『重たいお前を運んでるんだからこっちにもお礼を言え』と言いたげである。ガンマはまだこのウィンドドラゴンという生物との交流はまだなかったが、自分を運んでくれているこのウィンドドラゴンにもお礼を言うべきだと判断した。 たしかさっきシルフィードと呼んでいたが、それがこのドラゴンの名前なのだろう。

 

「助ケテクレテアリガトウ。シルフィード。感謝スル」

 

「きゅい♪」

 

ガンマがシルフィードにもお礼を述べると、シルフィードはえっへんと鼻息を鳴らす。よくわからないが、とりあえず機嫌を直してくれたようだ。でもお礼が遅かったとはいえ、睨まれるようなことをしただろうか?ガンマは首を捻りそうになる。

 

 

二人を救出したシルフィードは、重量のあるガンマを抱えながらもあっという間に塔を超えて空高く昇り、ルイズ達は上空からゴーレムを見下ろした。

 

 

―――《キュィィン…ピピピッ》

 

 

ガンマはカメラアイでズームアップしながら周囲を見回していると、センサーが反応した。

 

「マスター、ゴーレムノ操縦者ヲ発見。場所、ゴーレムノ肩」

 

ガンマがその場所を指差す。 ルイズ達はそこへ視線を向けると・・・ゴーレムの肩の上を、黒いローブを身に着けた黒い影が立っていた。

ガンマは無機質な声で呟く。

 

「マスター、アノ人物ガ、ゴーレムヲ操ッテイルメイジ?」

 

「わかんないけど、そうに違いないわね…。あんな巨大な土ゴーレムを操るだなんて、きっとトライアングルクラスの土メイジだわ」

 

「『トライアングル』・・・」

 

ガンマは緑のカメラアイを向けながら地上を歩いてる土ゴーレムを見下ろし、改めてメイジの力を目の当たりにした。

三つの系統をもつ『トライアングル』クラスのメイジはより強力な力を用いていることは想定していたが・・・これは自分の想定を超えている。

エッグマンが作りだした巨大メカがいくつか存在するが、トライアングルの土メイジが使う魔法は、エッグマン専用兵器『エッグウォーカー』や『エッグバイパー』よりもさらに巨大な三十メートル級のゴーレムを生み出し、操ることも可能なのか・・。 ドットメイジのギーシュが生み出したアーマードワルキューレなど2、5メートルほどで比較にもならない。 自分の腕と足を覆っている土の塊も、以前ミセス・シュヴルーズが生徒を黙らせるさいに使用した土魔法と該当データが一致しているから、あのメイジの魔法によるものだ。つまりあのゴーレムを操ってるメイジは、『土』系統のエキスパートという可能性が高い

 

・・・・・レベルが違いすぎる。

 

 

ガンマは土で覆われた右腕を握った。さっき、ルイズは危険を顧みず、自分を拘束してる土の塊を外そうとしてくれた。 本来なら主人を守るべき存在である使い魔の自分を・・・・・。

 

 

「マスター・・・、ドウシテ逃ゲナカッタ。ボクノ任務ハ マスター・ルイズヲ守ルコト。行動不能ノボクナド放棄シ、逃ゲルコトモ可能ダッタハズ。ソレナノニ・・ドウシテ」

 

 

ルイズはきっぱりと言った。

 

 

「言ったはずよ。使い魔を見捨てるような恥知らずはメイジなんかじゃないわ」

 

ガンマは無言で、ルイズを見つめた。

 

緑色に輝くカメラアイにピンク色の髪を靡かせるルイズの姿が、眩しく映りこむ。 その姿に、ある一人の少女を重ねた・・・

 

 

 

 

 

ザザーッ ザザザ・・ッ

 

 

 

――――ナゼ……

 

 

――――ナゼ…… 助ケル……?

 

 

 

 

――――《・・・『今度会うときは、友達って言ってたじゃない』・・・》

 

 

 

 

 

 

「・・・・エミー・・・・」

 

 

 

ガンマのその小さな囁きは、ルイズには聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

 

 

 

「逃がしたか… ふっ まあいいわ。」

 

フーケは、巨大なゴーレムの肩の上で薄い笑みを浮かべていた。

ウィンドドラゴンの邪魔が入ったおかげで"あのゴーレム"を仕留め損ねたが…、あれならしばらく身動きが取れないだろう。 今も上空を舞うウィンドドラゴンの姿があるが、フーケは頭からすっぽりと黒いローブに身を包んでいる。その下の自分の顔さえ見られなければ、ほっといたところで問題はない。

フーケはウィンドドラゴンのことは気にも留めず、ヒビが入った本塔の壁を見据えた。

 

ズンッズンッズンッ…

 

「ゴーレムちゃん、思いっきりいくわよ…!」

 

塔の前に到着すると、巨大なゴーレムはぐぐぐっとぶっとい腕を大きく振りかぶり、殴りつける体制に入った。

 

 

 

「"シャベルクロー"!」

 

 

―――ブオンッッ!!

 

 

 

ヒビが入った壁に向かって、土ゴーレムの拳が振り下ろされた。

インパクトの瞬間 フーケはゴーレムの拳に向かって杖を振る。

土の拳が鋼へと変わり、形も変化して先端が鋭く尖り、二本の鍵爪のように先が割れた二又の巨大なスコップの形へと変貌する。

 

壁に拳が突き刺さると、鋼のスコップが穴をこじ開けるようにバガァアンッ!と鈍い音を立てながら壁を抉り出した。

ガラガラと魔法学院が誇る塔の壁が崩れ落ち、黒いローブの下でフーケは微笑んだ。

 

「強力な『固定化』も、こうなっちまったら意味ないねぇ…」

 

フーケは土ゴーレムの腕を伝い、壁に開いた穴から宝物庫の中へと侵入した。

中には様々な宝物があった。 しかし、フーケの狙いはただ一つ、『破壊の杖』である。

フーケは周りにある宝物など目にもくれず、大理石の床をつかつか進むと、様々な杖が掛かった壁の一画があった。

 

「この中ね・・」

 

フーケはその杖の一画を見渡す。その中に、台座に飾られたどう見ても魔法の杖には見えない異様な品があった。

 

「・・・? もしかして、これが?」

 

フーケはその杖を疑視した。全長は1、5メイルほどの長さで、見たことのない金属で出来ている上に、太く無骨な形をして先端に筒の穴のような空洞があいていた。 ・・・本当にこれが杖なのか? どう見ても杖にしては大きすぎる。

フーケはその下に掛けられた鉄製のプレートを見つめた。

 

 

『破壊の杖。持ち出し不可』…と書いてある。

 

 

『破壊の杖』で間違いないようだ。 フーケの笑みがますます深くなった。

フーケは『破壊の杖』を取ろうと持ち上げると、その軽さに驚いた。 いや、人間が扱うには十分重いが…両手で持ち上げるほどの大きさにも関わらず、金属で出来てるとは思えない重量だ。 数々のお宝を手にしてきたフーケだが、こんな代物は初めてである。鋼ともスチールプレートとも違う・・・一体何で出来てるんだろう?

 

「っと、今は考えてる暇はないわね」

 

そろそろ学院の連中が騒ぎ出してるころだ、ここからずらかることにしよう。『破壊の杖』を布で覆い包み、それを担ぎ上げるとゴーレムのほうへ戻りだした。

 

 

「ん?」

 

ピタリ。 中心部の床を踏んだとき、フーケは足から伝わる違和感を感じとり、動きを止めて、足元の大理石の床を見下ろした。

 

「・・・・床の中に何かあるわね・・。しかもかなり大きい…」

 

足の裏から感じる大理石の床の中に、軽く2メイル以上ある異物が埋まってるみたいだ。隠し扉とかそういうものはない、床の中にそっくりそのまま埋め込んでいるような状態だ。 なんでこんなものが埋まってるのだろう? フーケは不可解な表情を浮かべた。

 

 

「…。そういえば、あのハゲが宝物庫には噂があるっていってたわね・・」

 

フーケは頭の片隅に置いていたあの時の話を思い出す。 噂によれば、昔オールド・オスマンが宝物庫のどこかに、大切な宝を隠してるということだ。しかもその宝は、奇妙な形をした鉄の像だったらしい・・。 もしかしてその宝とはこの中の物体のことだろうか? こんな大きなものをわざわざ大理石の床をくりぬいてまで隠すだなんて、よほどオスマンにとって大切なものと見える。

 

 

しかし、フーケにとってはオスマンの宝が像であれ彫刻であれ、どうして隠してるかなどどうでもいいことだ。

狙いはあくまで『破壊の杖』のみ。それ以外には用はない。

 

 

「まぁ・・もう"一つ"頂戴するやつは、あるんだけどね」

 

口元をわずかに歪め、そう呟いた。フーケはさっさとゴーレムのほうへきびすを返し肩に飛び乗った。

去り際に杖を振る。すると、壁に文字が刻まれた。

 

 

 

       『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

宝物庫に空けられた穴から出てきた黒ローブのメイジを再び肩に乗せ、ゴーレムは歩き出した。魔法学院の城壁をひとまたぎで乗り越え、ズシンズシンと地響きを立てて草原を歩いていく。

 

そのゴーレムの上空を旋回していたシルフィードは、羽ばたきながらゆっくり近くの塔へ近づく。

その背に跨ったタバサが身長より長い杖を振る。『レビテーション』でルイズを浮かして、塔の上に降ろし、シルフィードがその隣に抱えてたガンマを置いた。

タバサが再び身長より長い杖を振ると、ガンマの手足を拘束していた土の塊が、サラサラと砂の粒子へと変わり、ガンマを開放した。

土の拘束を解かれたガンマは隙間に残った砂を洗浄機能のエアーでブシューッと排出し、ぐりぐりと動かしながら右腕と脚部に異常が無いかを確認して、タバサに向き直る。

 

「アリガトウゴザイマス。ミス・タバサ」

 

ガンマがタバサに再び礼を言った。 タバサはまた無表情に頷く。

タバサは淡々と「ここにいて」と述べ、キュルケを乗せたまま再びシルフィードを空へ飛ばし、草原へ進んでいったゴーレムを追っていった。

ガンマは巨大なゴーレムを見つめながら、隣にいるルイズに尋ねた。

 

「マスター、アノメイジハ、塔ヲ破壊シテ中ニ侵入シタガ・・・何ガ目的ダッタノダロウ?」

 

「ゴーレムが穴をあけたのは本塔の五階…宝物庫だわ。あの黒ローブのメイジ、壁の穴から出てきたときに、何かを担いでたわ」

 

「デハ、ソレヲ盗ムタメニ?」

 

「恐らくね。あんな大胆な方法で盗むだなんて、とんでもないやつだわ」

 

「・・・! マスター、ゴーレムガ停止シタ」

 

塔の上から眺めていると、草原の真ん中を歩いていた巨大なゴーレムは突然動きを止め、ぐしゃっと崩れ落ちた。

崩れ落ちたことで砂煙がブワッと舞い上がり、空から追跡していたシルフィードは空中で停止した。

もうもうと巻き上がった砂煙はその一帯を覆い包み視界を遮っている。タバサが上空から杖を振ると、風が巻き起こって砂煙を吹き飛ばす。 

そこにはもう縦横無尽に塔を破壊し、中庭と草原を踏み荒らした巨大なゴーレムの姿は無く、大きな土の山ができていた。

 

ガンマはズームアップしてそこを見渡したが、月明かりに照らされたこんもりと小山のように盛り上がった土山以外、何もない。

そして、肩に乗っていた黒いローブのメイジの姿は、消えうせていた。

 

 

ルイズとガンマは、呆然と眺めるしかできなかった。ルイズは悔しそうに拳を握り締めている。

 

ガンマは視線を変え、足元に溜まっている砂の山を見つめた。 タバサの『錬金』によって変えられた砂を、左手で掬い上げる。

 

 

 

 

 

 

 

―――――「(疑問。ナゼ、アノメイジハ・・・・"ボク"ヲ攻撃シタ・・・・?)」

 

 

 

 

指の隙間からサラサラと砂が零れ落ち、夜風に吹かれて舞い上がった砂の粒子が、風に乗ってキラキラと空に散っていった。




実写版ソニックどうなるかなぁ・・・。

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