最近はなかなか小説を書く時間がとりにくくなってるので、更新が遅くなるかと思います。
「ガンマさん、飲み込みが早いんですね、もう片手だけでも十分洗えてますよ」
「マダ加減、難シイ・・」
洗い場である井戸の近くで、一人の黒髪のメイドと一体の大きな赤いゴーレムが一緒になって洗濯物を洗っていた。
メイドはシエスタと言い、さきほど出会ったルイズの使い魔であるガンマに洗濯のやり方を教えていた。
何でもこのゴーレムが元居た場所では人の手を使わず、入れるだけで自動で洗濯物を洗ってくれるという"センタクキ"という便利な道具があるらしく、このトリステインにもその道具があるものだと思っていたらしい。
そのような魅力的なものがあるだなんて信じられなかったが、もしそのようなものが実在するのなら、ここにも一台欲しいくらいだ。
そのため、ガンマは自分の手で洗濯物を洗うことになったのだが、そのような家事全般のことをやったことがなくてどうやればいいのかわからないと言うのだ。そこでシエスタがガンマに洗濯のやり方を一から教えることになったのだが・・・そこで一つ問題があった。 ガンマの右腕は通常の腕と違って、先が鉄の塊のような四角い形になっているのだ。
そのため洗濯を行えるのは左腕だけのため通常よりも時間が掛かってしまい、それでもなんとかコツを掴んだのかぎこちないながらも片手で洗濯物を右腕で押さえた洗濯板にこすり付けて器用に洗っていた。
最初こそ見た目はこんなに大きなゴーレムなのに、まるで子供みたいに興味深そうに洗濯物を洗っているところを観察しては見よう見まねで洗ってるところを見て「(なんだか可愛い…)」とさえ思ってしまった。
・・・だがそのため先ほど力加減を間違えてしまって薄い布で出来ている下着を何枚か破いてしまったのである。
「スマナイ、シエスタ・・教エテクレタノニ、上手クイカナクテ・・」
破けてしまった下着の有様を見て、洗濯の指導をしてくれたシエスタに謝罪する
「い、いえ、ガンマさんはこういうのは初めてなんですから仕方ないですよ、しかも片手でしか洗えないんですから・・・」
元は何のために使われるのかはわからないが、右腕がこのような不便な形である以上左手だけでの洗濯には無理があるとシエスタは思った。
「それに…謝るのは私のほうです。ガンマさんの腕をみれば洗濯が難しいとわかるのに、ガンマさんの分を私が引き受けてさえいれば・・」
シエスタはガンマの主人の下着が破れたことでガンマが咎められるんじゃないかと心配した、魔法が使えない平民である彼女は貴族の恐ろしさをいやと言うほど知っているのだ。だがあの貴族なのに魔法が使えずいつも努力しているミス・ヴァリエールがそんなことをするような子には思えないと思ってるが、それでも自分の裁量のなさのせいでガンマが怒られるのがとても辛いのだ。
「何故、シエスタガ謝ル?。コレハボク自身ノミス。ソレニ、マスターカラ受ケタ任務ハチャント自分デヤラナイトイケナイ。」
だがガンマは、シエスタの気持ちとは裏腹に平然と答えた。この任務はガンマ自身が受けたものであり、シエスタはあくまで自分に洗濯のレクチャーをしてくれただけで、シエスタが謝ることなどないと言いのけた。
「ソレニ、ボクハ シエスタガ何モ知ラナイボクニ洗濯ノヤリ方ヲ教エテクレタ事ガ、トテモ嬉シイ。」
そんなガンマの言葉を聴いて、シエスタは大きく目を見開いた。無機質な喋り方ではあるが、このガンマと言うゴーレムはなんとまじめで優しいんだろうか……自我を持っていると聞いてはいたが、まるで人の心が宿ってるように思えた。
「ダカラ、モシシエスタガ コマッタ事ガアッタラ、言ッテ欲シイ。ボクハイツデモ協力スル」
「・・・ありがとうございます、本当に優しいんですねガンマさんは。 私にも何か助けがあるようでしたら、いつでも言ってくださいね!。 それじゃ、残りの洗濯物もさっさと片付けちゃいましょう!」
「アイアイマムッ」
――――――――
しばらくして朝日がだいぶ昇ってきだす頃には、シエスタもガンマも洗濯を終えていた。
「それでは、後は私が洗濯物を干しておきますので、ミス・ヴァリエールの服が乾いたら部屋へ届けにいきますね」
「了解、手伝ッテクレテアリガトウ、シエスタ。」
「いいんですよ。ガンマさんも使い魔のお仕事をがんばってくださいね。 ではこれから他のお仕事もありますので、これで失礼します」
ペコリと頭を下げ、洗った洗濯物が入ったカゴを持ってガンマと別れていった。 そんな彼女にガンマは左手を軽く振って見送る。
そして彼女が見えなくなるのを確認したあと、ガンマは次の任務である"朝になったらルイズを起こす"を実行するため、再び部屋へと戻ることにした。
「(ソレニシテモ・・・洗濯機ドコロカ、電気サエ通ッテナカッタトハ・・コノ世界ノ技術ハマダ発展シテイナイノダロウカ・・?)」
ガンマはこの世界が魔法という科学とは違う力が主になっているというのは理解したが、ここまで技術力が低かったのは誤算だったようだ。
きっとこの世界では自分のようなロボットはオーバーテクノロジーなのだろう。 この世界で他の機器類にめぐり合える確立は無いに等しいと思ったほうがいいのかもしれない・・。
そうこう考えてるうちに、ガンマはルイズの部屋へとたどり着き、ドアを開けて中へと入っていった。
「・・んふふ~・・・美味しそうなクックベリーパイぃ・・・ムニャムニャ・・」
「・・・マダ寝テル・・」
ルイズの顔をそっと覗き込めば、寝言からしてどうやら食べ物の夢をみているようだ。なんとも幸せそうな顔である・・。
「マスター、起キテクダサイ。起床時間デスヨ」
ユサユサと優しく揺さぶり、ルイズを起こそうとする。 その揺さぶりのせいか、ルイズは夢から覚めたようにうっすらと眠たそうに目を開けていく
「くぁ・・ん~~・・? うひゃぁあっ!!?あ、アンタだれ!?」
「・・・。 E-102γ(ガンマ)、君ノ使イ魔。」
「え?・・あ・・そっか、昨日召喚したんだっけ・・」
やっと思い出したのか、眠たそうな顔をしながらあくびをしてベッドから起き上がり、椅子に掛かった制服を指差してガンマに指示をだす。
「服」
「了解」
ガンマは自分の隣にあったその制服を掴んでルイズに手渡す
「下着…そこのクローゼットの一番下の引き出しの中」
「了解」
ガンマは指示されたとおりにクローゼットの引き出しを開け、たくさんある下着の中から適当なのを取り出す。
「コレデイイダロウカ?」
「ん、なかなか的確に動くじゃない、さすがゴーレムね」
ルイズは自分の言うとおりに動いてくれる使い魔に満足気になりながら、手渡された下着を身に着ける。 ガンマは着替えてるルイズの姿を直視しないよう視線をそむけていた
「着せて」
「エ・・・、 ボクガ・・・着セルノ?」
下着をはき終わったルイズは次は制服を着るため、ガンマに服を着せるよう指示を出すが、ガンマのほうは予想外の指示に困惑して自分に指を指しながらルイズに確認をとる。
「あのね、ゴーレムのアンタは知らないだろうけど、貴族は目の前に下僕がいる時、自分で服は着たりしないものよ!」
「ソウナノ・・カ・・?」
ガンマは理解できなかった、普通ならば自分でやったほうが早いことを何故わざわざ他者を使ってやらせようとするのだろうか? 貴族というのはそういうものなのだろうか・・?
「そうゆうものなの! ほら、急がないと朝食に遅れちゃうでしょ?早くしなさい!」
「・・・了解」
ガンマはあまり納得できなかったものの、ルイズの指示に従うことにし さきほどの制服を遅めではあるがちゃんと着せていく。
右腕が銃であるためものを掴むことができないが、さきほどの洗濯のおかげで細かな動きが出来るようになり、銃の突起部分に服の裾を引っ掛けて、その間にルイズに着せて行ってはブラウスのボタンを左手だけで閉じていくことができていた。
その様子を見てルイズは不思議そうにそれを眺める
「・・・あんた、右腕がそんななのに、ずいぶんと器用にできるわね。」
「洗濯スル時、メイドノシエスタニ教ワッテ洗ウコトデ、ドコヲドウ持テバ服ガ固定デキルカ アル程度把握スルコトガ可能ニナッタ。」
「ふ~ん・・」
着々とガンマが服を着せていく中、ルイズはガンマをじっと見ていた。
昨日の夜、このゴーレムが一体何のために造られたのかは結局分からず終いだったが・・・これは仮説だが、もしかするとこのゴーレムは力仕事や護衛のためとかではなく、主人の身の回りの世話をするためのお手伝い・・もしくは執事としての役割をもったやつなのではないだろうか? だとすればこのような力をあまり必要としない細い手足も納得できる。
このようなゴーレムを造れるだなんて・・・こいつの前の主人だったカガクシャっていう人はどんな人物だったんだろう?
「ねぇ、あんたがここに来る前に仕えていた主人はどんな人だったの?」
「・・・・・」
ピタッ…と、ルイズのその問いにボタンを閉じる手が止まる。ルイズはそれを見てまずいことを聞いたのではと慌てる。
「あ・・その、ごめんなさい。別に無理して言わなくてもいいから・・」
「敵」
「え・・」
「アイツハモウマスターデハナイ・・・ボクノ敵」
その言葉を聴いてルイズは硬直した、無機質な喋り方をするガンマのその言葉には敵意がこめられているように感じられたのだ。
ルイズはガンマの様子が気になり、さらに質問する
「マスターじゃないって・・どういうこと? あんたはその人に作られたゴーレムなんでしょ?」
「確カニ作ラレタ・・・デモ、ボクハ生ミ出サレタ当初ハ、タダタダアノ男ノ命令ニ忠実ニ従ウダケノ"ロボット"・・・ルイズ達ノ言ウ"ゴーレム"ノコトダ。 ツマリ、今ノヨウニ自我ヲ持ッテハイナカッタ」
「じゃぁ、最初は今みたいに自分でものを考えたりはできなかったんだ・・・でも、・・なんで敵になったの?」
ガンマは制服を着せる作業を再開させながら、ポツリポツリとその時の事を話し出す
「ボクノ他ニモ、仲間ノロボット・・・兄弟達ガ居タガ。アル任務ニ失敗シ、成功シタボク以外ハミンナ破棄サレテシマッタ。ドコカ遠クヘ追放サレタモノ、マッタク別ノモノへト改造サレタモノモイタ。 アノ男ハ・・自分ノ役ニ立タナイモノハ平気デ切リ捨テル人物ダッタ・・・。 ボクハ・・ソレヲ見テ自分ノ存在ニ疑問ヲ持ツヨウニナリ、ソシテ・・・アル時ヲキッカケニ、ボクハ自分ノ自我ニ目覚メ、アノ男ノマスター登録ヲ自分ノ意思デ解除シタ」
「・・・・」
ルイズは言葉も出なかった。ガンマは、自分以外の兄弟だったはずのゴーレムを、その主人だった男に全て奪われてしまったのだ。 もし・・・自分の実の姉達が、そのように奪われてしまったらと考えたら・・・胸が締め付けられた。
ガンマはルイズに制服を着せるのを終え、改めて緑のカメラアイをまっすぐルイズに向ける
「・・ルイズ、モシボクガ君ノ期待ヲ裏切ルヨウナコトヲシテシマッタラ・・・・・・ボクヲ捨テルノ?」
戦闘能力の高さ、任務の成功でエッグマンから多大な評価をもらったが、もし逆に・・・自分もデルタ達のように失敗していたら、捨てられていたのは自分だったのかもしれないと考えていた。
だからこそガンマは、ココロの奥底では不安でいっぱいだったのだ、マスターとなったルイズの使い魔という任務を完璧にこなせれるのかと・・・。
「はぁ~~・・・」
それを聞いてルイズは呆れるかのように大きくため息を吐いた
「…あのねぇガンマ、あんたミスタ・コルベールの説明を聞いてなかったの? 使い魔っていうのはメイジにとって生涯を共にするパートナーってことなのよ。あんたの前の主人がどんなやつだったかしらないけど・・・たとえあんたがとんでもないことをやらかして私に恥をかかせるようなことがあったとしても、あんたに使い魔のルーンが刻まれている以上あんたが私の使い魔であることに変わりないし、その使い魔を捨てるだなんてメイジにとって有るまじき行為・・恥以外のなんでもないことをするわけないでしょ!」
ルイズはガンマを叱るかのように無い胸を張って言い放った。 このゴーレムのガンマが、まるで一人ぼっちの子供のように見えたのだ。
自我を持ったが故に、兄弟も頼れるものおらず、新たな主人のもとで捨てられることを恐れているかのようだったのだ。
たしかに期待していたのとはだいぶ違ってて神聖でもなければ美しいわけでもない、だが、このガンマはもう自分の使い魔なのだ、102回もの召喚でやっと魔法が成功し、ようやく現れてくれた使い魔なのだ。それを手放す気など毛頭無い!
「それにね、仮に契約を解除しようとしたって簡単には行かないの。 メイジか使い魔、そのどちらかが死なないとその使い魔のルーンが消えないのよ。 …ガンマ、あんた一度死んでみる?」
「ヤダ」
既に一度死んだようなものなんだから即答である
「だったらそれでいいじゃない。だからあんたも安心して私の使い魔を続けなさい! でもまぁ・・・だからといってもし粗相をして恥をかくようなことがあったら、その時は罰を与えるから覚悟しておきなさい、いいわね?」
ルイズはガンマの胸をコツンと叩き、ガンマの緑のカメラアイを笑って見つめる。
「・・・・了解シマシタ、マスター・ルイズ。 ・・・アリガトウ」
ガンマの相変わらずな無機質な声だが、最後の感謝の言葉はどこか温かみがあった。
「さぁ、話はもうおしまい!着替えも終わったし、食堂に向かうから付いてきなさい」
「了解、マスター」
ガンマはルイズのことが、すこしだけ理解できたような気がした。 ・・・彼女が優しいマスターなのだと。
「ア、・・トコロデルイズ・・」
「どうしたの?」
くるっとガンマのほうに振り返り、何事かとたずねる
「アノ・・・実ハ、報告スルコトガ・・・」
「何よ、早くいいなさい」
「コレ・・・」
恐る恐ると体に収納していた、洗濯で破いてしまったルイズの下着を見せる
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「なにこれ」
「下着」
「見れば分かるわ、何でこうなってるの?」
「チカラヲ入レスギテ・・・破レタ・・」
「・・・・・・・・」
にっこり、とどこか恐ろしい笑顔を浮かべ、どこから出したのか乗馬用の鞭を取り出す。
「この・・・・馬鹿使い魔ーーーーーーーっ!!!!」
バシイィィィィン!!と、清清しいほどの乾いた音がガンマの頭を鞭でシバいたことで鳴り響いた
「(前言撤回、コノマスター怖イ)」