「あのー、オールフォーワンさんはどうやってお父さんと知りあったんですか。」
純粋な疑問だったのだろう。
こんな見るからに傷だらけで人には言えないような隠し事をしてそうな男と今は見るからにひ弱で気の弱い男がどこで知り合ったのかが。
あるいは、父親たる存在が何かの悪事に巻き込まれたか心配して聞いたのだろうか。
けど、ゴメンね。
この出会いを僕の口から語る事はないだろう。
別に言えない事情がある訳でもないし、それこそ昼のエスカノール君に聞けば『傲慢』に僕を貶めながら、夜のエスカノール君なら遠慮がちにポツリ、ポツリと話してくれるだろう。
けど、僕は話さない。
何故なら、これは僕自身のプライドの問題だからだ。
悪を象徴する僕ではなくただの僕自身の……
「うーん、これもハズレかな。」
あの日、僕は来たるべき日に向けて有能な『個性』を集めていた。
オールマイトとその前の『ワン・フォー・オール』所有者、志村菜々の友人との戦いの日だ。
なるべく先延ばしになるよう手を尽くしてきたが、それもそろそろ限界らしい。
勿論、負けるとは思わないが少しの可能性も考慮して手を打っておくのが長く生きるコツだ。
「……もう明け方か、そろそろ戻らなければ…。」
僕は陽が差し込み始めた裏路地を歩いていく。
だいたいこの時間はホームレスや表に出れない様な犯罪者がいっぱいいる。
その中から盗りやすそうな個性を盗ればいいだろう。
そして獲物を探している時、僕はそれを見つけた。
それは道の脇ににいた。
巨大な片手斧らしき刃物に寄りかかり気持ちよさそうに寝ている青年と呼ぶにはまだ若い男だった。
着ている服も微妙にブカブカだが身だしなみはしっかりしておりホームレスではなさげだった。
「今日はこの男で終わるか。」
少しの物音では起きそうにないので、歩いて近づいていき寝ている男の個性を奪いとる。
と同時に、昔奪った個性『解析』を使い奪った個性を解析していく。
「んー、何時もに増して時間が掛かるな……。」
だが個性『解析』にもデメリットが存在した。
解析中はその場から動けないのだ。
その場で解析したのがミスだったのかも知れない。
突然、上から人が降ってきた。
いや、飛んで来たと言った方が適切か。
FAKOOOM
「ようやく見つけたぞ。オール・フォー・ワン‼︎」
飛んで来たのはマントをつけた男だった。
いや、男というよりは老人だ。
足には噴射機みたいな物をつけている。
「志村の友人か…、悪いが今は君たちと戦う気はない。逃げさせて貰うよ。」
僕が『解析』を一旦取りやめ、逃走する為に個性『転移』を使おうとした時……。
ドクンッ
急に身体の中から熱が吹き出た。
感じた事もない熱さだった。
まるで、体の内側に太陽が有るような……。
「か……ッ‼︎ ……はあ……。」
「はぐっ、から…だ…が…あつ…い。」
そのまま、身体全体に熱が巡る。
体の水分が蒸発し、口から湯気が出てくる。
あまりの熱に全身の細胞が炭化していく。
「当然です。私の個性ですから……。」
突然、斧にもたれかかり寝ていた筈の少年が立ち上がった。
何故か、体が大きくなっており先程とは別人の様だ。
「『
僕は自身が燃え尽きる寸前で男から奪った個性を放出した。
それは太陽みたく丸くなりながら光を放ち彼の身体に吸い込まれていった。
そんな光景は見たことがなかった。
さらに、どんな原理か僕が長年奪ってきた個性は大半が焼滅してしまった。
そして僕はそのまま気を失った。
『……あぁ、ナイトアイに頼んでここら一帯を封鎖して貰え。早よう来るんじゃぞ俊典。』
「……というわけで、坊主。そこに倒れている男を引き渡してくれんかのぅ⁇」
「ダメです。」
金髪の大男がオール・フォー・ワンを捕縛しようとする老人の前に立ち塞がる。
「ん、何故じゃ⁇ 奴は凶悪な
「……えぇ、だからこそです。この愚かな盗人には私自ら罰を与えなければ。」
「罰なら法が与えてくれる。……それじゃいかんのか?」
「当然です。この私が罰を与えてこそ罪が償われるのですから。」
「……傲慢極まりない奴じゃの、すまんがちょっと眠っとれ‼︎」
老人は個性『ジェット』を使い目の前の大男に蹴りを入れる。
目の前に盟友を殺した張本人が倒れており老人は焦っていた。
いつ意識が戻り逃げ出すか分からない、この機会を逃したら次の機会に自分は生きていないかもしれない。
そんな不安もあったのだろう。
故にミスを犯した。
後になって考えみても決して正解が出るとは限らないだろう。
だが、これだけは分かる。
その行動は誤りだと。
「それが『
大男は老人の蹴りを片手で掴んでいた。
老人といっても実力はトップヒーローに並ぶ程であり決して弱くは無い。
その蹴りを軽々と受け止めたのだ。
老人……グラントリノは即座に離れようと『ジェット』を使い試みた。
だが、大男の握力が強すぎるせいか捕まれているのを振りほどけない。
掴まれている足からイヤな音が鳴る。
瞬時の判断で体を捻り、もう片方の足を『ジェット』で加速させ腕を蹴りつける。
が、大男に効いてる様子は無い。
ーー突如、グラントリノには大男が太陽に見えた。
大男が空いているもう片方の手でパンチを放つ。
「ーーーーっ」
ガードがギリギリ間に合い何とか防御するがガードした腕から嫌な音がする。
更に、足が地についていないため簡単に吹っ飛ばされる。
そのまま後ろの壁にぶつけられた。
「ーーガッ‼︎」
大男は傍に置いてあった巨大な片手斧を手に取りグラントリノにトドメを刺そうとする。
「これで終わりです。」
斧を振り下ろした。
土煙りが吹き荒れる。
切った手応えはなかった。
突如、後ろに人の気配を感じた。
振り返ると前髪をV字に2本逆立てた金髪の筋骨隆々の男が先程と老人を抱き抱えていた。
「…ゴホッ……遅いぞ、俊典。」
「申し訳ありません、グラントリノ。ここからはお任せを……」
駆けつけた
「ハァーー、次から次へと……。何故こうも敵うはずのない戦いに挑むのですか?」
「HAHAHA、それはやってみないとわからないんじゃないかな。それよりもだ、何故君はこの凶悪な
「庇う⁇…この私が⁇……彼を⁇……フッ…フハハハハハハ‼︎。」
「……ん、違うのかい?」
「当たり前です。彼にはこの私自ら罰せねばならないのであなた方に連れて行かれると困るだけですよ。」
「そうかい、……では私は君を犯罪者にしない為、君を倒し後ろの敵を連れて行こう‼︎」
オールマイトは両腕をクロスさせるとそのまま大男に向かって突っ込んで行く。
「
そのまま、胴体にクロスチョップを放つ。
地面がひび割れる程の衝撃波が後ろにまで吹き荒れる。
が、大男は澄ました表情でその場に留まっている。
瞬時に効いてないと判断したオールマイトは連続でパンチを打つ。
周囲に豪風が吹き荒れ、周りの瓦礫をもふきとばしていく。
周囲の被害は甚大だが、グラントリノ等に被害が被らない様調節してるのはさすがといえよう。
オールマイトの連撃が効いたのか大男は一歩後退する。
この一歩に少しずつだが確実に効いていると確信したオールマイトは更に攻勢に出ようとする。
ーーーザンッ
突如、オールマイトの胸が一文字に斬れた。
「ーーークッ」
突然の事に動揺しながら瞬時に後ろに下がる。
深く斬られたからか、傷口から血が吹き出てコスチュームを赤く染める。
「オイオイ、全っ然効いてないのか⁇」
「フン、その程度の攻撃、効くはずがないでしょう。……ですが、この私を一歩でも下がらせた事に敬意を表し「あっ、パパーーー‼︎」ええ⁉︎」
突然遠くの方から女の子の声が聞こえた。
見てみると黒髪のボブカットで9歳ぐらいの可愛らしい女の子がこちらへ走って来るのが分かる。
「ダメだ、少女‼︎ こちらに近づいては‼︎」
オールマイトはこちらに近づいてくる少女に制止を促す。
が、聞こえてないのか、自分ではないと思っているのか言う事を聞く様子は無い。
そのまま、嬉しそうにニコッした笑顔で大男の方に近づいていってしまった。
「今日は私が見つけたから、お昼は私の好きな物ね。うーんとね〜ハンバーグがいいな‼︎」
隠れんぼでもしていたのだろうか、自分が見つけた事を嬉しそうに大男に語る。
大男の方も持っていた片手斧を降ろし、穏やかな表情で話しを聞く。
「ええ、良いですよ。ですが、その前にあの者を懲らしめなければなりません。……あぁ、そうだ。クマ、貴女の個性であの男と私をこの前行った湖に飛ばす事は出来ますか⁇」
「うん、大丈夫だよー。」
クマと呼ばれた少女はそう元気に返事をする。
「それではお願いします。」
うんっ、と大きい声で返事をした少女はオールマイトの方に向く。
突然、親子の会話が始まり呆気に取られてたオールマイトだが当然今の話は聞こえていたので警戒せざるを得ない。
此処には、長年の宿敵オール・フォー・ワンが無防備で気絶してるがいつ気が付いてもおかしくない為、此処から移動するのは避けたい。
そして周辺は先程ナイトアイに頼んだ警察による包囲網も出来つつあった。完成も時間の問題だった。
つまり地の利は完全に此方にある。
住民や街の被害も心配では有ったが、そこは出来る
そんなほんの僅かな油断とも言えぬ気の緩みが起きてしまった。
オールマイトの視界に入っていた筈の少女が消えた。
否、既に自分のすぐ側におり少女の個性によって発現したらしきクマの肉球のような物がついた手が自らに触れていた。一瞬だった。
世間より『平和の象徴』として讃えられてたオールマイトが気付かなかったのだ。
即座に後ろに下がろうと試みるがいつの間にか地に足がついてない。
触れられた瞬間、個性の影響で浮いていたのだ。
そのまま、凄い勢いで上空まで飛ばされる。
究極の脳筋と呼ばれる由縁となった個性『ワン・フォー・オール』のパワーで勢いから逃れようとも身体がピクリとも動かない。
オールマイトはされるがまま飛ばされて行った。
「パパ、あれで良かったの⁇」
「ええ、どうやら彼は周りの被害を気にして本気を出せなかった様ですからね。その様な状態でこの私を一歩下がらせたのです。遊んであげる価値はあります。」
「ふーん、けどハンバーグまでには帰って来てね‼︎」
「勿論です。……あぁ、あとそこの倒れている黒スーツの男を家に運んで置いてくれますか?それと、この周辺にウジャウジャと羽虫が取り囲んでいるので気をつけるように。」
「うん、分かった‼︎ それじゃあ、行ってらっしゃい。」
少女が大男に触れる。
大男は、ぱっ‼︎と手品みたくその場から消えてしまった。
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