ランサーが死んだ、悲しい事件でしたね。
その光景が凄惨を極めたのか知らないが人妻が変形した。
……えっ、変形ェェェェ!?アイエ、変形ナンデェェェェ!
「あ、アレは」
「どういうことだってばよ」
「そういうことか、アインツベルンが作った聖杯は人型だったんだ!そして、その聖杯が身体から出てきたに違いない。だが、だというならあの黒い泥は何なんだ……」
「うぬぅ、見るからに危なそうな見た目をしておる」
人の身体から浮くように現れた黄金の聖杯、ただし汚れている。
何やらコールタールとも石油とも見える黒い泥を吐き出している。
黒い泥に触れた植物は枯れ、地面が焦げていく。
し、知ってる!ジブリで見た、タタリガミの仕業に違いない!
『いや、それは違う。そうか、ギルガメッシュ三人分だったからか』
「知ってるのかラッセー」
『アレはこの世全ての悪、アンリマユが汚染して、なんやかんやで触れたら英霊は死ぬ。あと人は呪われる』
「みんなアレに触れたら死ぬらしいぞ、気を付けろ!」
俺の忠告を聞いて、皆が身構える。
まさかの危機に対して素早く動けるのは英雄だからだろうか。
最初に動いたのはライダー、イスカンダルのオッサンだ。
オッサンの身体から光が発生したと思ったら、いつの間にか俺は砂漠にいた。
『固有結界だ!』
「瞬間移動した!」
砂漠の真ん中で黒いオアシスとも言うべきか、聖杯が黒い泥を排出する。
その量は、どこにあったんだというくらい質量保存の法則を無視している。
「アレが、聖杯……そんな、私は……だが、聖杯を手に入れなければ」
「危ない!」
「なっ!?」
そんな泥に、誰かが頭から突っ込んだ。
見れば、ウチのバーサーカーであった。
頭が悪いアイツの事だ、俺の言葉が理解できなかったのだろう。
「ら、ランスロット卿!」
「私は、貴方に、裁かれたかった……」
「ランスロット卿ゥゥゥぅ!」
なぜか金髪の姉ちゃんが手を伸ばしながら叫んでいた。
まぁまぁ、落ち着けよ。泥まみれになってるだけで、死ぬだけだぞ。
離せとか言ってる金髪姉ちゃんを無理矢理抱えて移動させる。
「ウゥゥ、グアァァァァ!アァァァァァサァァァァァ!」
「日本語喋れ!」
「ぐふっ!?」
ひょっとして、ギャグで言ってるのかと思えるほどの変わり身でバーサーカーが泥から飛び出す。
そして、こっちに殴りかかってきたので逆にパンチしておいた。
ふむ、どうやら死ぬというのは社会的に死ぬという意味らしい。
アイツ、どう見ても正気じゃなかった。
「こうなったら、あの聖杯を俺の篭手に収納しなきゃ」
『待て、お前も正気じゃないぞ!早まるな!』
ラッセーが何か言ってるが、たかが泥である。
あとで洗えば良いのである。
それに、ここでアレを手に入れないと泥がずっと出てきて世の中が大変なことになる、それは良くないことだ。
「行くぞぉぉぉぉぉ!」
「す、スゴイ!あの人の右手に泥が吸い込まれていく!」
「吸引力が変わっておらんぞ!しかし、アレではいつか限界が来る」
俺は泥を吸い込みながら、一歩一歩前進していく。
足に泥が触れると何か汚いので死にたくなったが取り敢えず前に行かなければならない。
それにしても、なんか死にたいわ。すっごく死にたいわ。
あれ、もしかしてこれが呪いなのか、鬱になってしまったのか。
まぁ、死にたいと思っても実行に移すほどではない。
『な、なんかキタァァァァ!』
泥が盛り上がり、人型の泥が武器を持って現れる。
それが俺に襲い掛かってきたので殴り返せば、ちゃんと感覚があった。
実体を伴った泥人形ってやつだな。
「なんだあれ、一体一体がサーヴァントだ!」
「なんということだ、加勢することも出来ぬとは……」
後ろで聞こえた声からコイツらがサーヴァントということが判明した。
よく分からんが、俺の邪魔をするなら敵である。
俺は全身から魔力を放出して、泥を寄せ付けなくする。
物理的な圧力を持って、サーヴァント達の攻撃を防いだ。
そんな戦闘の際に、俺は後方で魔力の高まり的な物を感じた。
「おい、何やってんだ!」
「逃げ……ろ……くっ!」
「まさか、令呪か!セイバーのマスターは何してるんだ!」
何事だと、振り向けばプルプル震えている金髪の姉ちゃんがいた。
金髪の姉ちゃんは、なんか光ってる剣をライダーに向けている。
ライダーが動けば、それに合わせて剣を向けていた。
仲間割れとかやめろや。
「恐らく、固有結界の中の状況が分かっとらんのだろう。それで、この征服王イスカンダルの首を狙ったと見た」
「冷静に反応してる場合か」
「フン、ならばその策を征服し、我が物とするのも征服王の努めだと思わんか?」
イスカンダルのオッサンが、マスターである少年の肩を掴んで後方にいる仲間の兵士達に投げ込んだ。
っていうか、アンタいつの間に部下を召喚してんだよ気づかなかったわ。
「その者を抑えろ、邪魔はさせるな!」
「おい、何を考えてるんだライダー!まさか、やめろ!マスターの言うことが聞けないのか!」
「フハハハ、ウェイバーよ!余は一度も貴様をマスターだと思ったことはない」
「えっ……」
「だがな、共に戦場を掛けた友だとは考えておる。ウェイバーよ、貴様と過ごした日々は真に楽しかった。しかと、見届けよ!これこそが、征服王の最後の遠征である!行くぞ、ブケファラス!」
ライダーが馬を蹴り、此方へと駆けてくる。
さっきまで泥に触れることすら躊躇していたのにどういう吹き回しか。
そして、それを無視するかのように後ろで剣を頭上に掲げる姉ちゃん。
やめて、なんか地面からポワポワした謎の光が浮いてる。
『来るぞイッセー、束ねるは星の息吹だ!』
「何が来るっていうんだ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
剣が、振り下ろされると同時にビームが放たれた。
おい、剣からビームってまるで意味が分からんぞ!
その光に飲み込まれながら、満足そうなイスカンダルのオッサン。
そして、ビームが泥を焼き払いながら俺の方にも到達する。
「ど、ドラゴン破ァァァァァ!」
掌からドラゴン破を放ち、謎のビームと衝突する。
まさか、俺ごと焼き払いに来るとは騎士王とか名乗っておきながら外道である。
俺の身体はビームとビームがぶつかった衝撃で後ろに下がる。
その時、俺の閃きが走る。
逆に考えるんだ、別にふんばらなくてもいいやって。
『ふぁ!?』
「フハハハハ、見ろ!ビームを利用して飛んだのだ」
ジャンプした事で、俺の身体が後方に向けて飛んでいく。
そして、そのまま聖杯に近づき、その聖杯を抱きしめた。
黒い泥に身体が飲み込まれるが根性で篭手に向かって収納する。
何というか、スゴイ胸焼けが半端ない。
身体に良くないものだって分かんだね。
「ぐわぁぁぁぁぁ!?」
しまった、聖杯を手に入れてドラゴン破をやめたから直撃した……無念。
『ば、爆発オチなんて最低ッー!?』
俺の意識は途切れた。