訴訟も辞さない。
ーー格納庫ーー
「本当に引きこもってるな…」「重症だぜ、こりゃ。」
「ごめん、昨日は気が動転してて…」
「小百合じゃない…俺が悪かったんだ…あんなに怒鳴って…」
「ううん、今回は誰も悪くないよ、じゃないと皆が責任を感じちゃう。」
俺は濡れ衣を着せてしまった真由を探し、幸弘から発信機で真由を見つけて貰い。
真由は格納庫のラハムの中に引きこもっていた。
「余り気に病むな僚。あんな事書かれれば誰だって怒る。」「幸弘…」
「私が一応落書きは消して来たけどごめん、全部は消せなかった。」
「ありがとう、祐未。昨日はごめんな。」
「謝るなら真由君に謝らないと…」
「そうだな…一騎に仲良くなりたいなら向かって行けなんて偉そうなこと言っておいて、島に帰ったら後輩達に笑われるな…」
「僚…」
僚は竜宮島の、喧嘩ばかりしていた後輩の一騎と剣司の事を思い出し力なく笑った。
俺は1人でいることが多かったけど、誰かに向かうのがこんなに恐い事だとは思わなかった。
「辛気臭い顔をすんなよ僚、皆がいるから安心して謝ってこい。」
「そうそう、じゃないと着いて来た意味ないからな。」
「バーカ、俺達が勝手に着いて来たんだろ?」「ほんとほんと。」
「徹…惇…剛史、早苗…」
ここにはファフナーのパイロット全員がいた。
確かに1人じゃ恐かった、でも皆がいるなら少しだけ、恐さが和らいだ。
「俺達にとってもあいつは弟分で、後輩なんだ。見過ごせるかよ。」
「彼がいたからこんなにも楽しかった。今度は私達がお返ししないとね?」
「ああ…うん、そうだな…皆の真ん中に、あいつはいた…」
真由はいつも誰かと一緒にいて、バカやったりくだらない事したり、勉強して後輩らしく誰かに甘えて、俺達の近くに弱くて大事な存在がいるのは、いつも勇気を与えてくれていた。
俺達はラハムに近づき、前に立った。
「真由?聞こえるか?昨日は悪かった、本当にごめん。」
(…………………)
返事はないがラハムは触手で丸を出している。
ラハムは黙ってくれていて、真由に聞こえてはいるようだ。
「何時もお前にキツい事言って、殴ってばかりだったけど…俺1人っ子だったからさ、
弟みたいなのが出来て本当に嬉しかった…嘘じゃないぜ?どの口が言うようだけど、お前といた日々は楽しかったし、何よりお前があんな事書くような奴にはなって欲しくなかった…勘違いでお前に怒鳴って、本当にごめん。独りよがりだけど、お前の事を弟の様に思ってる…」
「真由君、昨日はごめんね?天使って昨日は言ったけど、本当なんだよ?
初めて出会って、君を助けた時から、そう考えてた。皆がフェストゥム化してるって聞いて、
真由君のおかげで同化しないって知ってから、私は真由君を天使だって確信したんだ。
恥ずかしいけどこれからもそう思っていいかな?私の天使様。」
「真由、お前がそいつに名前を付けたように俺もファフナーに名前を付けたんだ。1番をアイン、2番がツヴァイで3番と4番をドライとフィアーって皆がいない時にそう呼んでるんだ。笑うなよ?
こいつらも竜宮島に帰る仲間だって考えたら、つい思いついちまった。」
「昨日の昼は凄かったよな?真由。」
「俺と惇がお前を運んで整備室に着いたら部屋の鍵をかけられたもんな。」
「そうそう、久保さんだけかと思ったら何人かいてさ、縄を解いて走り回って剛史を囮にして背が低いお前に鍵を取って貰ったもんな。」
「馬鹿にしてないぜ?あそこで助かったのはお前のおかげだからな。」
「真由君、実は私には弟がいてね。彗っていうんだけどお姉ちゃん子で。
君みたいに明るくて元気な子なんだ。私が作ったカレーが好きでつい昨日はムキになっちゃった。
弟は7つ年下で、君を見た時は弟とと同じぐらいだと思ったけど、
私達の2つ下だから驚いちゃった。
竜宮島に着いたら私の家族と一緒に私のカレーを食べてよ?
両親もいい人だし、腕によりをかけて作るからさ!」
「真由、お前の予測出来ない行動は、何時も俺を困らせてくれたな。お前以外の誰かが何時も必ずいたから、その人の本性が見れて困惑したものだ。お前は何時も前向きだったけど、自分をさらけ出すのは下手くそだったな。恐がっててその癖、1番の寂しがり屋だった。誤魔化してもダメだぞ?お前は寂しい時に服の裾を掴む癖があったからな。今も寂しいんじゃないか?」
「皆真由の事を心配してる。だから、怒っててもいいから出て来てくれないかな?」
(…………………………………)
真由からの返事はない…ラハムから触手でバツを出され、
真由は俺を許してくれないとわかった。
「真由…」(…………)
真由といた事で今まで痛くなかった肝臓と、なにより胸が1番痛かった。
「真由…ごめん…怖かったよな?悲しかったよな…」(…………………)
何時もの、俺達の馬鹿騒ぎがないのが、静寂が。
真由がいない時の様な時間が、ここまで苦しいとは思わなかった。
キィン…『皆、聞こえるか?今からブリーフィングルームに来てくれ。』
「艦内放送…」「早乙女司令官?」「なんでこんな時に…」
「真由…すまない。後でまた来るから…」(…………………)
俺達は真由に一言謝り、艦内放送に従い、その場を後にした。
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ラハムは今が1番不快であった。
ラハムの元に昨夜、真由が来て狂喜乱舞したがすぐに落ち着いた。
(真由…大丈夫だよ、皆嘘は言ってない。)(………)
ラハムは不快だった。
ラハムの感覚共有で真由が冷静なのはわかったし、
心の整理が未だ着いていないのはわかっていた。
ーーーーー真由…なんで?どうして…
ラハムは不快だった。
真由をここまで悲しませ、苦しませた事に。
ーーーーー……真由。
ラハムは『嫉妬』していた。
ーーーー……………。
ラハムは不快であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーー『ブリーフィングルーム』ーー
「すまないな、皆、集まって貰って。」
そこにはパイロット8名、スタッフ31名、司令官1名と、
全員がブリーフィングルームにいた。
「今も艦内放送は開いている、私は君達に謝らなければならない。」
「司令官?どうしたんですか、全員呼び出すなんて…」
「艦内放送を開いたままって、何かあったんですか?」
「ああ、他でも無い。真由君の事に関してだ。」
「「「「「「「「真由(君)の?」」」」」」」」
集まったスタッフ、パイロット達は困惑した。
今も引きこもっている真由に何かあったのだろうかと…
「真由君、聞こえるかね?私だ、早乙女柄鎖だ。」
(…………………)
「今回の事件、あの落書きを書いたのは私だ。」
「「…はあっ!?」」「嘘っ!?」「本当に?」「そんな司令官だなんて…」
「早乙女司令官……」
「今回の事件、スタッフ・パイロット達を巻き込み、不穏な空気を作り、皆、本当にすまなかった…」
早乙女 柄鎖がブリーフィングルーム、そして格納庫にいる真由とラハム。
L区画にいる全員に頭を下げ、謝罪した。
「将陵君、生駒君。今回は司令官、大人として、いや人として余りにも浅はかな行動だった。
許して欲しいなどと都合のいい事は私に言う資格はない、どうか君達で私を罰してくれ。」
「早乙女さん…」「早乙女司令官…」
早乙女は将陵僚と生駒祐未の元に近づき2人の前で土下座した。
「君達が命を賭けて此処を守り、尽くしてくれているのに私は度が過ぎた行動をした。
司令官を辞任し副司令、オペレーターの亜由美君に変わって貰い、私は1通信士として
身を置くつもりだ。本当に、申し訳ない…」
「早乙女司令…」「最早私は司令とは呼べない…亜由美君。」
佐藤亜由美が口を愕然として抑え、早乙女柄鎖は目を瞑った。
「「………………………」」
祐未は腰をおろし柄鎖の顔を見遣った。
「生駒君…」「……」
パアァン!!
祐未の張り手の音が響き、倒れた柄鎖を僚が胸倉を掴み持ち上げた。
「いい加減にして下さい……‼︎」
僚は真由の時以上の怒りを顕にする。
「貴方が辞任してフェストゥムが倒せるんですか…⁉︎」「……‼︎」
「貴方が辞任して、真由の心が癒されるのですか‼︎」
「あの優しい真由が、貴方が辞任して喜ぶと本気で思ってるんですか‼︎」
「僚…祐未…」「駄目だ徹。」「幸弘…」
彼等は自分達よりも今尚苦しんでいる真由に、
さらなる苦しみを与えようとしている柄鎖に苛立っていた。
「早乙女司令官、私も辞退させて頂きます。」「亜由美君…」
「貴方が今すべきなのは、真由君の元に向かうことだ。」
「ん〜あの少年を放って解決だなんて甘いんじゃないか?」
「森田君…久保君…」
スタッフ・パイロット達は柄鎖を笑って見つめていた。
「貴方は真由に謝るべきだ。」「私達だけでなく、真由自身に。」
僚は掴んでいた胸倉を降ろし、柄鎖を立たせ、祐未は柄鎖の手を握った。
「将陵君…生駒君…」
早乙女柄鎖は涙を流した。
「私は…逃げていた。恥の上塗りだがそれでも顔を出させて貰おう…」
柄鎖は真由に謝りに行こうとした。
しかし…
piーーーーーー!!
ブリーフィングルームにアラームが鳴り響いた。
「これは…!」「L作戦の時間が!?」
今この時間にL計画は遂行された。
「脱出艇⁉︎」「こんな所に通路が…」「そうか…!海中なら!」
「これが脱出方法か…」
時限式の扉が開き脱出艇への通路が現れた時、
別の警報が鳴り響いた。
「敵っ!?」「ッ!私が出ます!」「俺達も!剛史!」「ああ!絶対に帰るんだ!」
「待って下さい、真由も行きます。」
「えっ…?」「真由…?」
真由の声は小さかったが、2つの警報より、ブリーフィングルームに響いた。
今回は三段分け、今日中には全部上げられないかも。