変なのに愛されて悪夢しか見れない   作:蒼穹難民

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本編進まにゃい…



裏の裏の裏

 

 

『3番機、2番機、収容します。1番機は損害が大きいため、オーバーホールに入ります』

 

 

「う……んぅ…!」

 

 

「お帰りなさいませ、少尉。まさか2機でスフィンクス型を倒すなんてさすがです」

 

 

「おべっかはよせ、途中までは3機だった。まあドジを踏んだ無能は後で懲罰だ」

 

 

人類軍とやらの探索機を救出する際に1機がアキレスシステムの有効範囲外まで出てしまい、

探索機に我が軍の戦力を把握させぬよう、そのまま2機で戦闘を続行。防壁がなかなか削られず、

お陰で一晩かかって倒してもう夜明けだぞ?くそっ、これだから無能は嫌なんだ。

 

 

「お疲れでしょう、閣下からは戦闘報告は2番機のパイロットにさせるので、

最初から長時間戦闘をしていた少尉は今日はもう休んでいいそうです」

 

 

「そうか、報告ご苦労」

 

 

前にいた帝国とは比べものにならんほどの高待遇だな。前線には出されるが…

 

 

前置きに、誰も信じないだろうが私は異世界からこの世界に来た。

 

 

始まりは普通の人事課のサラリーマンだった私は、会社の盲腸である無能を整理し、

順風満帆だった帰宅途中の私に逆上した、救いようのない無能に殺され、神を名乗る謎の存在…

私は仮に存在Xと呼称する。この私をこんな目に遭わせた全ての元凶だ。

 

 

この悪魔が信仰心などという何の利益にもならんくだらないモノを私に持たせる為、

何億人もいる人類から私を選び、女として生まれ変わらせ、魔法と戦争のある世界へ送り込んだ。

 

 

苦境に追い詰め、私に魔法の才能と信仰心を植え付ける呪いの奇跡の力を与え、

あらゆる状況を整えて、何が何でも私に信仰心などというものを持たせようとしてきた。

 

 

だがある日、奴は全世界の危機が迫り、このままでは全ての世界が滅びると、

新たな別の世界、今度はSFのようなほぼ世紀末なこの世界へと私を送り込んだ。

 

 

しかし今度は転生ではなくそのまま送られたので身寄りも身元も無く、

どう生活すればいいか右も左もわからない時、私は閣下に出会った。

 

 

彼は人間では無く、宇宙人…いやエイリアンか?

フェストゥムと呼ばれる存在に転生したそうだ。

 

 

彼は私に自分の素性を明かし、読心能力で私の心を読んだと言った。

 

 

 

──君は信じられぬだろうが私はドイツ第15代首相、アドルフ・ヒトラーだ。

 

 

 

──君は普通の人間にはない…特殊な能力を持っているようだな。

 

 

 

──良ければ私と、少し話さないか?ーー

 

 

 

 

彼は言葉巧みに私を丸め込み、反乱軍代表直属の親衛隊に私を入れた。

 

 

高待遇かつ、高給。食事はそこまでうまくないが以前の帝国とは雲泥の差だ。

彼自身も聡明で有能な人格だ。好感を持てる。

 

けれど彼は私が後方に配属する願望を察知し、ことごとく先回りして前線に配備させる。

 

読心能力で私の心を読み、有能な兵士を遊ばせるほど余裕はないとの事だ。

 

腹立たしいが筋は通っている。存在Xと比べればぐうの音も出ない正論だ。

同じ心を読めながら、何故存在Xは私を納得出来る理論武装を用意出来ないのだ?

おそらく奴の正体はフェストゥムなのではないか?

 

 

部屋に戻る道すがら考え事をしていたが前の通路の陰に誰かが隠れていた。

 

 

「おい、そこにいるのは誰だ」

 

 

もしかして竜宮島の使節団か?

珍しいのは解るが勝手な真似をしないように釘を刺さねばな。

 

 

「使節団の者か、いくら同盟関係とはいえ勝手な行動は慎んでもらおう」

 

「アンタに会いに来たからな、女の部屋に勝手に入る趣味は無い」ぬっ

 

 

陰から出て来たのは竜宮島のメカニックである久保という男だった。

 

 

使節団は30人程いたがコイツの顔を見た第一印象から、絶対に忘れなかった。

何故なら私が元いた最初の世界、此処ではない日本ではコイツは創作の人物だったからだ。

 

 

「久保正樹、その名前は本名か?」

 

「おや?どうやら俺の事を知っているようだな、手間が少し省ける」

 

 

私は奴に気づかれぬよう拳銃の安全装置を外した。

拳銃ではあるが威力は20世紀のライフルと大差無い威力の上、

子供でも反動が少なく幾らでも撃てる。未来とは素晴らしいなクソッタレ。

 

 

「マテマテ、アンタは別の世界から来たんだろ?そういう意味では俺達はご同輩さ」

「何?同輩だと」

 

 

まさか気づかれるだと?それに同輩…なんの事だ…

もしや私まで別世界では創作だとでも言うつもりか?

別世界から来たとなれば創作の人物が居ても不思議ではない。

──証明終了。

 

 

「お前さん。神様かそれに似たなんかに会っただろ。

それを含めて俺達は世界を救うためこの世界に送られてきた。

頼まれた時にそう言われただろ、違うか?」

 

「ッ!?キサマ存在Xの手先かッ!!」

「存在Xゥ?なんだいそりゃ?」

 

 

あの悪魔をこの男は本当に神だと思っているのか?

だとしたら哀れだな。

 

 

私はこの世界に来た経緯を話してやった。

 

 

「ふん!あのような自己顕示が強いおかしな力を持つだけの男が神だとでも?」

「自己顕示?男?」

「惚けるな、キリスト被れの老人だっただろ」

 

 

男は考え込むそぶりをしたが直ぐに気づいたのか顔をあげる。

 

 

「ああ、違う違う。俺とアンタの神様は別人…別神様だ」

「別神様ぁ?」

 

 

嘘だろ…他にも同じようなのが何人もいるのか!?

 

 

「俺が出会ったのはメジェド様、それと声だけだがイイ男のファラオだったさ」

「メジェド…ファラオ…」

 

 

声だけで解るものなのか?情報を纏めてみるがこの男はエジプト神を語る奴に送られたらしい。

 

 

「そんな事なんて今はいいさ。それより自己紹介は必要かい?

俺はアンタの事は此処に来てからしか知らんのだが一方的なのはフェアじゃあ無い、だろ?」

「…いいだろう阿部高和。私は魔法のある世界で帝国軍人をしていた。

元は日本人だったが私は偽名ではない、女として生まれ変わる前の名は忘れた」

 

 

「お前さん男だったのかい?そっちの神様は随分偏屈なジイさんなんだなァ」

「もっと言ってやれ、あんなのだから信仰なぞ得られんのだ」

 

 

意外にも同じ境遇の者とこうして話すのも良いものだな。

 

男…阿部は驚いた顔だったが、周りに人の気配がないか確認し、

それが終わると真剣な表情で私に顔を近づけた。なんだ!?

まっ、まさか中身が男なら誰でもいいとでも言うつもりか!?

 

 

この男が出る創作ではコイツはゲイの同性愛者だ。

私は身の危険を感じ拳銃に手をかける。ヤられる前に()ってやる!!

 

 

「人に聴かれるとマズイ、何処か二人きりで話せる場所はないか」

「…それなら付いて来い。私の部屋なら誰も聴こえん、閣下でさえな」

「ヒュゥ♪そいつは良いじゃないの」

 

 

警戒はしたまま部屋まで案内をする。

この男が出る創作では普通の人間だったが、所謂二次創作と呼ばれる。

本作者以外が書いた物では大体コイツは化け物並の戦闘力があった。

存在Xと同等の存在に送られたのならそれほどの力があるのは間違いないだろう。

だからと言って話さないのは愚策だ。リスクを負ってでも情報を手に入れねば。

 

 

「此処だ、入れ」ガシャンッ

「ほォー…随分良い部屋じゃないか」

 

「閣下が私に対する特別措置だ。軍の唯一の少女兵として表向きはな」

「ふむ、こりゃあ対フェストゥム装甲だな。外で見た潜水艦の素材と同じだ」

「ほぉ?見ただけで解るか。閣下は人に紛れたフェストゥムへの対策もしておられる。

読心能力も防ぐ、ここは言うならば私と閣下との密談室だ。ダミーとして別の密談室もあるがな」

 

 

「こりゃ良い、ヒトラーに聴かれずにすむな」

「閣下に聴かれないのが何が良いのだ」

「やっぱり来てよかったよ。お前さん、何にも聞かされなかったんだな」

「聞かされなかった?」

 

 

此奴はそう言うと勝手に椅子に腰掛けて話し出した。

 

 

「オルフェノク型は本来この世界に存在しない。別世界…未来…

詳しい事は俺にもわからん。だがそこから来たナニカが原因で生まれたものだ」

「なんだとっ!?それは本当かっ!?」

 

 

つまり閣下も私と同じ存在だと言う事か!?

 

 

「話しは最後まで聞いてくれ。そうだな…そこが世界危機のミソなんだ。

一つの世界から幾つもの世界が混ざり始めている。俺とお前がいい例だ」

「……続けろ」

 

 

「問題は30年以上前、フェストゥムの襲来が全ての始まりだった。

とあるスフィンクス型が一人の人間を取り込み、同化に失敗した。

そこからそのフェストゥムがミールに知らせ、オルフェノク型が生まれる要因になった。

オルフェノク型は人間が転生したんじゃない。死んだ人間を取り込み、

その意識が死んだ人間の意識と混ざって生まれ変わったと誤認しているのが彼らだ」

 

 

 

 

 

私は今日、()()を知ってしまうのだろう。

 

 

 

 

 

「オルフェノク型は別世界にも影響を及ぼす。

生み出した原因の人間と起こるであろう未来(IF)の現象。

それを突き止め、問題があるなら解決するのが俺達の使命だ」

 

 

 

 

 

やめろ

 

 

 

 

 

「オルフェノク型は七つの大罪を元に7体のフェストゥムが存在する。

『暴食』『色欲』『強欲』『憤怒』『怠惰』『傲慢』『嫉妬』、

オルフェノク型に、別世界の神々は使徒を送った。愛を持つ人間、俺達を」

 

 

 

 

 

知りたくない

 

 

 

 

 

「俺は今エジプトに居るオルフェノク型のネフェルタリ、司るは『色欲』、

俺は彼女の使徒だ。愛は『性愛』。同が付くがな」

 

 

 

 

聞きたくない

 

 

 

 

「俺が知る限り、イギリスのが『憤怒』、アジアのが『強欲』だな。

『憤怒』は人類軍に洗脳された使徒に倒されてしまった。お陰で使徒の愛もわからん。

『強欲』に至っては自殺だ。使徒の愛どころか使徒が何処に居るのかも皆目見当がつかない」

 

 

 

 

それを知った私は───

 

 

 

 

「ここにいるヒトラー、彼はおそらく『傲慢』だ。

……男だったならシャキッとしろ。お前の愛は───

 

 

 

 

 

『敬愛』だろう?

 

 

 

 

 

 

 

一体、どうすればいい?

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーーその日、貴い人が、儚く散って逝く、戦場の悪夢を見た。ーーー

 

 

 

私はこの日、初めて自分以外の死に、恐怖を覚えた。




筆が遅くてすまない…
どうやらこれが僕の限界のようだ…


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