EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~   作:エルミン

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第一章の始まりです。



第一章 十香デッドエンド
第一話 第一精霊・Princess


四月十日。この日は五河 士道にとっても、重要な日となった。

 

己が救うべき存在、その一人に出会う日なのだから。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「・・・ん・・・・・・ふあぁぁぁ・・・もう朝か?」

 

五河 士道の目が覚めた。目覚めたばかりの頭で、今日のスケジュールを思い出す。

 

今日は四月十日。士道が高校二年生に進級する日でもある。

 

 

士道がベッドから起き上がると、ドアが開いて、女の子が入ってきた。

 

「おにーちゃん、おはよー!朝だぞー・・・おぉ!もう起きてる!」

 

「おはよう、琴里。朝から元気・・・あぁ、いつも通りか。琴里も早いな」

 

「早寝早起きは、体に良いからね!」

「そうか、よしよし、いい子だな」

 

士道が頭を撫でて誉めると、くすぐったそうに、そして嬉しそうに撫でられ続ける。

 

赤い髪をツインテールにしている女の子は、「五河 琴里」。士道の義理の妹だ。

 

 

士道は幼い頃に親に捨てられ、五河家に引き取られた。その時に出来た義妹が琴里だ。

 

「今から朝ごはんを作る。先に行ってろ」

「はーい!」

 

元気よく返事して、一階に降りていく。士道も高校の制服に着替えて、一階に降りる。

 

 

一階に降りると、琴里はソファに座ってテレビを見ていた。早速朝食を作っていく。

 

卵とベーコンを炒めていく中で、「空間震」に関するニュースが流れ始めた。

 

 

「空間震、最近多くなってきてるな」

「うん・・・・・・でも、予定よりちょっと早いかな?」

 

「ん?」

「なんでもないよー」

 

「・・・そうか」

 

琴里の呟きはあまり聞こえず気になるが、年頃の女の子の事をアレコレ詮索するのもあれか。そう思い、調理に集中する。

 

ようやく完成。二人で仲良くいただきます。

 

 

「琴里。今日は始業式だけだから昼には帰ってくるけど、何が食べたい?」

 

「デラックスキッズプレート!」

 

「当店ではご用意できかねます。・・・わかった、じゃあファミレス行って食べるか」

 

「本当!?約束だよ!」

 

「あぁ、約束だ」

 

そんな会話をしながら、食べ終わった後、皿洗いをして一緒に出る。

 

途中で別れて、士道は自分の通う高校に着いた。

 

 

来禅高校。最新の設備で充実しているこの高校は、数年前に立てられ、最新のシェルター設備も完備されている。

 

士道は自分のクラス・・・二年四組に向かう途中で、友人の広人と合流した。

 

 

「よぉ士道!相変わらずイケメンだな、イケメン力を分けてくれ!」

 

「よぉ広人、だが断る」

 

教室に入って座席表を確認。その席に座る。

 

近くになった広人と話していると、折紙も登校してきた。

 

「おはよう。五河君、殿町君」

 

「おはよう、鳶一」

「おはヨーヨー!美少女な鳶一さんに朝のご挨拶をしてもらえるなんて、俺はなんて幸せなんだ!」

 

「うるせぇ」

「タコスッ」

 

広人を物理で黙らせて、席に戻す。士道の隣になった女子は折紙だ。

 

「よろしくね」

「あぁ、こちらこそ」

 

微笑む鳶一。その微笑みは、意識する男子と隣になれた事の喜びである。

 

 

「ちくしょう・・・ちくしょう・・・」

 

広人、及び他男子連中が血涙を流しているが、士道と折紙はその事に気づかず、二人で仲良く話していた。

 

その後、担任の岡峰 珠恵先生の挨拶も終わり、始業式も終えて帰宅の時間。

 

折紙も広人も先に帰った。用事があるらしい。士道も帰ろうとしたら、スマホに着信。

 

見てみると、美九からのメールだった。士道は机に座り直して、メールをしていく。

 

 

『だーりん、進級おめでとうございます! 《*≧∀≦》』

 

『ありがとな。美九も今日始業式か?』

 

『そうですぅ。三年生ですね。だーりんより一つお姉さんですぅ (* ̄∇ ̄)ノ』

 

『それは知ってる』

 

『ですよねー ( ̄▽ ̄)=3』

 

 

そんな感じでメールのやり取りをしていく。そしてメールを終えて今度こそ学校を出た。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士道は琴里と約束したファミレスについたが、そこに琴里はいなかった。

 

 

疑問に思っていたら、空間震警報が発令された。

 

空間震が発生するため、シェルターに避難しないといけないが、GPSで確認すると、琴里の反応はファミレスを示していた。

 

 

(何でだよ・・・琴里は店内にいないのに!)

 

士道は心配と焦りを抱き、店を出て琴里を探そうとしたが、空間震が発生してしまった。

 

士道はとっさにファミレス内部に入って空間震の衝撃から逃れようとする。

 

それが収まってから外に出ると、ビルが吹き飛んだ所の中心部・・・士道の正面に、一人の少女がいた。

 

近くに来ると、その少女の美しさがよくわかった。

 

黒くて長い髪。ポニーテールにしているな。

紫色の鎧とドレスを足して2で割った様な神秘的なのを着ている。

 

さらに、大きな椅子に座らず足を掛けて立っていて、格好良さ可愛らしさが両立している。

 

少女も士道に気づいたのか、椅子から剣を抜いて降りてきて、突き付けてくる。

 

 

「・・・・・・お前も」

 

少女が語りかけてくる。その声は、表情は・・・。

 

 

 

「お前も、私を殺しに来たのか・・・」

 

 

悲しみと絶望に満ちている。士道は確信した。

 

 

(・・・助けたい。この子は昔の俺と同じ感じがする。両親に捨てられて、絶望していた時の俺に)

 

士道は心の中で思いながら、言葉を紡ごうと口を開いた。

 

今日この日から、士道は精霊と呼ばれる存在を救うための戦い(デート)に、身を投じる事になった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士道は少女に出会った後、急に飛んできた水着みたいなスーツ着て機械で武装してた少女達の乱入によって、少女と戦闘を開始。

 

こんな状況では話はできないので、一旦離れる。

 

これからどうしようかと思っていたら、士道は光に包まれ、知らぬ場所に移っていた。

 

そこで、「村雨 令音」という眼鏡をかけた女性と出会い、会わせたい人がいると言われたのでついていく。

 

そして、たどり着いた場所・・・船のブリッジみたいな場所で、神無月 恭平という金髪の男性と出会い、そして大きな椅子に座っていた人物が士道の方を向く。

 

 

 

「ラタトスクへようこそ、士道」

 

「・・・琴里?」

 

 

士道の妹、琴里だった。しかし、リボンは黒になってる。

 

 

「えぇ、士道のかわいい妹よ」

 

「・・・まぁいい。どういうことか、説明してくれるよな?」

 

「もちろんよ、その為にここに来させたのだから」

 

そして、琴里は説明を始めた。

 

 

上のモニターに映した少女は、精霊。隣界と呼ばれる世界からこちらにやって来る生命体。

 

見た目は人間の少女。しかし、誰も敵わないほどの強大な戦闘力を持っている。

 

 

霊装という最強の盾と、天使という最強の矛を持つ存在。

 

そして、空間震は、精霊がこの世界に現れる際の余波である。

 

次に、AST。精霊を武力で根絶するための組織であり、陸上自衛隊所属である。

 

最後に、ラタトスク。俺たちが今いる空中艦《フラクシナス》を開発した組織。

 

ASTとは異なり対話による平和的な方法で精霊を救い、空間震被害を根絶するための秘密組織。

 

 

しかも、その対話とは、「会話をして好感度を上げて、デートをして、デレさせる」というものだった。

 

 

 

「それ、何てギャルゲーだよ!?」

 

「いわば、『リアルギャルゲー』ね。ヒロインの好感度を上げてルートに入り、恋してキスをする。

 

攻略に失敗してバッドエンドになったら、世界が滅ぶわよ」

 

 

「バッドエンドがデカ過ぎるだろ!」

 

「あんたなら出来るでしょ?天才ゲーマーS」

 

 

「天才ゲーマーである俺でも、リアルギャルゲー何て攻略出来るかもわかんねぇぞ!?」

 

 

琴里は士道が天才ゲーマーSだということは知っている。

 

 

「それに、本当は空間震警報が解除されてからここに呼ぼうと思っていたけど・・・」

 

 

琴里は急に士道を睨む。

 

「何で警報が解除されてないのに外に出てたの?馬鹿?死ぬの?」

 

 

士道は素直にGPSの事を話した。

 

 

「あー、そっか。それは盲点だったわ。後で調整しないと」

 

 

 

『お前も、私を殺しに来たのか・・・』

 

士道の中で、精霊の少女のあの姿が離れない。全てに絶望したようなあの表情。

 

助けたい。同情かもしれない、昔の自分と重なっているだけかもしれない。

 

それでも、放っておけない。

 

士道はあの子に教えてあげたいのだ。この世界の素晴らしい所を、人の優しさを!

 

 

(その為なら、リアルギャルゲーだって、ノーコンティニューでクリアする!)

 

心の中で決意を固め、琴里に聞く。

 

 

「琴里。精霊を救う為には、対話が必要なんだよな?」

 

「えぇ。精霊と対話して、恋をさせて、精霊の心を救う。それがあなたのやるべき事よ」

 

「手伝ってくれ」

 

 

バグスターの事もあるが、知ってしまった以上、士道にとってはもう他人事ではない。

 

それに、士道自身もあの子を助けたいと決めたから。琴里は嬉しそうに笑う。

 

「OK。このラタトスクは、精霊達と、士道個人の為に作られた組織。最大のバックアップを約束するわ」

 

「ありがとよ・・・琴里、それに皆さん」

「「「?」」」

 

皆が注目するなか、士道は言いきった。

 

 

「五河 士道です、よろしくお願いいたします!」

 

 

しっかりと挨拶して、頭を下げる。

 

すると、皆が拍手してくれた。笑顔になっているのを見るに、どうやら悪い印象は無いらしい。

 

「これから頑張りましょうね、士道」

 

 

 

その後、このブリッジに集まっている方々から自己紹介を受けた。

 

早すぎた倦怠期(バッドマリッジ)、川越 恭次。

 

社長(シャッチョサン)、幹本 雅臣。

 

藁人形(ネイルノッカー)、椎崎 雛子。

 

次元を越える者(ディメンション・ブレイカー)、中津川 宗近。

 

保護観察処分(ディープラヴ)、箕輪 梢。

 

二つ名がアレだが、優秀な人員らしい。

 

 

「・・・では、シン。今から君を地上に転送する」

「俺は士道ですよ、令音さん」

 

 

令音は、何故か士道をシンと呼ぶ。

 

士道が注意しても、呼び方を変えることは出来なかった。

 

「では士道君。明日はこの船の案内を致しますね」

「ありがとうございます、神無月さん」

 

神無月さんは、とてもいい人だ。だがドMな変態だ。琴里に足を踏まれたりして喜んでいた。

 

趣味にとやかく言うのもあれかと思い、そっとしておく事にした。

 

そして、その後。士道は地上に転送してもらった。顕現装置(リアライザ)というシステムによるものらしい。

 

 

 

その後、帰宅している途中で栞と合流した。

 

「士道!」

「栞!どうした?」

 

 

栞の話によると、自分で作ったアップルパイのお裾分けに来てくれたのだ。

 

「ありがとう、栞。もらっていいか?」

「もちろんです!」

 

アップルパイを受けとる。ここで士道は、戸惑いながらも栞に訪ねてみた。

 

「なぁ、栞・・・」

「はい?」

 

「女の子と、その・・・デートしたり恋をしないと世界が滅ぶって事になったら・・・どうしよう?」

 

「・・・・・・・・・ほえ?」

 

栞はわからないらしく、首を傾げた。

 

栞にはとりあえず、女の子と恋をしないと世界が滅ぶ、という夢を見たと言って誤魔化しておいた。

 

 

精霊やラタトスクの事は秘密にするように言われており栞にはバグスターとの戦いもあるのに、巻き込みたくないという気持ちから黙っている事にした。

 

 

(精霊を救えるかどうかは、俺にかかっているんだ。絶対に・・・あの子の笑顔を取り戻す!)

 

決意を新たに、士道の怒濤の一日は終わった。




次回予告


士道は精霊との対話の為の特訓を行うことになる。果たして上手く出来るのか?


第二話 対話の為のTraining!


「ノーコンティニューで・・・クリア出来るといいなぁ」


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