四葉の姫君   作:らふらふ

2 / 13
真夜との会話を少し修正しました(8/9)


2話

私には不思議な力がある。当初は魔法だと思っていたが、魔法を習っていくうちに違うように感じていた。なんと他者の心が読める時があるのだ。正確にいうと表層意識、だろうか。これが精神干渉系の魔法だったらサイオンを使用するはずだが、それがないため仮に固有能力と呼んでいる。この力について誰にどこまで話すかが重要だ。問題はやはり四葉真夜だろう。原作でも何を考えているかよく分からなかったと思う。少なくとも私の知る範囲では。まだ会っていないが、会ったら表層意識を読んでみるのもいいかもしれない。平然とこんなことを考えられる辺り、やっぱり四葉の血筋というやつかもしれない。とりあえず今すべきことは、この固有能力の研究かな。

 

**********

5歳になり、会わないうちに兄の達也の感情が白紙化されていたようだ。訓練を一通り終えたら会わせることになっているらしい。前世からお兄ちゃんが欲しかったから嬉しいのだが、お兄ちゃんと呼んではいけないのだろうな。

 

**********

 

固有能力の限界が見えない。精神に干渉すること限定であるが、思いついたことはなんでも出来た。表層意識の読み取り、記憶のすり替え、記憶の消去、洗脳など一度も失敗していない。魔法ではないためCADも必要とせず、いつでも発動できるし誰にもばれない。なぜこんな能力があるのか知らないが、いいものを貰ったものだ。

 

**********

 

兄との対面の時がきた。お姉ちゃんは魔法の訓練を中断されて不満そうだ。

 

「あなたたちの兄にあたる達也よ。深雪さんのガーディアンにするわ。兄と言っても彼は使用人だから、身分をわきまえて接しなさいな」

 

お母様の顔からは兄への思いやりが一切読み取れない。隠しているだけかと思ったが、表層意識も静かなものだ。やはり兄への施術と同時にお母様も兄への感情を失ったのかもしれない。

 

この場で兄と仲良くなろうとするのは得策ではない。周りから窘められるだろうし、四葉の当主を目指す身としては失格であろう。そう、私は四葉の当主になろうと思っている。この固有能力を持ってすれば他の十師族より優位に立てるだろうし、なによりお姉ちゃんは当主を望まないだろう。この5年間でしっかりとシスコンになってしまった私は、お姉ちゃんの幸せのためならなんだってすることを決めていた。しかし、だからと言って兄を諦めるわけではない。誰もいない所で仲良くなってやろうと決意した。

 

「そしてこの子は桜井(さくらい)七波(ななみ)ちゃん。深咲さんのガーディアンよ」

 

「よろしくお願いします。お嬢様」

 

彼女は穂波さんとそっくりの顔で微笑んだ。

 

「よろしくね。あと、私のことはお嬢様じゃなくて名前で呼んでちょうだい」

 

「かしこまりました。深咲様」

 

私のガーディアンは兄ではなかったのだな。これは仲良くなるのが大変そうだ。

 

**********

 

あれから1年かけて兄と仲良くなった。おかげで周りに人がいないときは、「お兄ちゃん」「深咲」と呼び合う仲になれた。とはいえ、原作深雪みたいにベッタリではない。私は四葉のための婚姻をしなければならないのだから、恋は御法度なのだ。

 

さて、そろそろ叔母様と対面しなければなるまい。能力の把握も出来たことだし、なんとかなると思いたい。というわけで、母を通じて叔母様に謁見を申し込んだ。

 

 

 

「初めまして、叔母様。深咲でございます。本日はお時間をいただき、ありがとうございます」

 

「初めまして深咲さん。今日はどうなさったのかしら」

 

あたりまえだがお母様と似ている。お母様が綺麗系美女なら、目の前の叔母様は可愛い系美女だろう。だが、お母様に似ている以上に私に似ていた。いや、私が叔母様に似ているというべきか。お姉ちゃんはお母様にそっくりで綺麗系なのだが、自分で言うのもなんだが私は可愛い系なのだ。叔母様の遺伝だったのか……。

 

「実は、私の能力について話しておこうと思いまして。人払いしていただけませんか」

 

そう、結局私は叔母様に洗いざらい話すことにしたのである。最大の理由は、次期当主の座を得るためには能力の開示が必要だと思ったからだ。そしてもう一つ、叔母様が私を愛してくれていることが表層思考を読んで分かったからである。おそらく使い潰されるようなことにはならないはずだ。

 

「分かりました。葉山さん、呼ぶまで離れていていいわ」

 

「かしこまりました」

「ありがとうございます。早速ですが、能力の説明に入ります。私は精神に関することなら恐らくなんでも出来ます。いままで失敗したことがありません。しかも、この能力はCADを必要としないのです」

 

「具体的にどんな事ができるのかしら」

 

「試したのは、表層意識の読み取り・念話・魅了・記憶のすり替えや消去・感情の増幅や減退・洗脳などですね。洗脳は自我ありの思考誘導も自我なしの完全操作でも出来ました」

 

「そう。では私の思考を読んでみてちょうだい」

 

「ーー」

 

「確かに読めるみたいね。次は念話を試してくれる?」

 

『叔母様、深咲です。聞こえますか?』

 

「まさか……こんな能力者が出てくるなんてね。それを私に教えるということは、覚悟は出来ているのかしら。次期当主候補筆頭になってしまうわよ?婚約もしてもらうことになるわね」

 

もちろん分かっている。それが目的なのだから。

 

「当然、覚悟の上です。私は家族を守りたい。その家族には四葉も含まれています」

 

「分かったわ。ただし、次期当主指名は中学卒業の年にします。それまでに、当主として必要な勉強をしてもらいますよ。魔法、帝王学、淑女のマナーなども完璧にしてもらいます。婚約者の選定も中学生でね」

 

「分かりました。頑張りますので、これからよろしくお願いします」

 

にこやかな叔母様に見送られ、屋敷を後にする。

 

**********

 

中学生になった。中学生といえば、原作では追憶編にあたる。原作がどうとかそういう考え方は嫌なのだが、未来を部分的に知っているというアドバンテージは捨てがたい。

 

叔母様との初めての謁見から6年、次期当主として恥ずかしくないように様々なことを学んできた。正直淑女とかいう柄じゃないのだが、立場上致し方ないので必死に学び、今では優美な言動をとることが出来るようになった。

 

さて、そろそろ追憶編開始、すなわち沖縄旅行である。

 

「深咲、準備はできましたか?」

 

「できてるよ。お姉ちゃんは?」

 

「私も出来ています。穂波さんに最終チェックをしてもらいましょう」

 

お姉ちゃんは楽しい旅行だというのに表情が少し不満そうだ。やはり原作と同じくお兄ちゃんが一緒なのが嫌なのだろう。この旅行で改善されることを願う。

表情が、といったのは私が思考を読んでいないからである。できるだけ身内の思考は読まないようにしている。さもないと、人間として大切なものを失ってしまうと思ったからである。まあその分他人には容赦しないのだが。特に敵に対してはガンガン使っている。そう、時々四葉の仕事として呼ばれていて、敵の思考を読むことがある。これも次期当主としての仕込みなんだろうか……現場を知っているのは悪くはないと思う。

 

叔母様によると、そろそろ直接私の指揮下に入る部隊を作るとのこと。上手く使えるといいのだが……帝王学実践編といったところだろうか。

 

 

 

そして3日後、私達は沖縄旅行へと出発した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。