魔法少女育成計画 -Fratricide Side-   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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● 第一章 魔法少女たちの日常 ●

☆プロローグ

 

 思い返してみれば、私は産まれた時から私になりたくなかったのだと思う。

 自分と言うものの形がひどく曖昧で、その認識はそのまま歪みとして自分の中に刻まれていった。

 

 たった一人にはなりたくなかった。

 世界にひとつだけにはなりたくなかった。

 同じものでよかった。

 私は私じゃなくてよかった。

 

 区別をつけられなくて良い。そんなの落ち着かない。

 判別をつけられなくて良い。そんなの恐ろしい。

 特別にならなくて良い。そんなの悍ましい。

 格別にならなくて良い。そんなの気持ち悪い。

 

 だから。だから私は。

 私を“私”にしようとするものを、多分一生許さない。

 

 

相間好夢(あいま いむ)

 

 相間好夢(あいま いむ)は三つ子の末っ子として生を受けた。それは、同時に多大なコンプレックスを生まれながらにして背負うことを意味した。

 誕生の瞬間から姉妹がいて、母親が出産に手こずり……もとい、好夢が頑固だったのだと両親も医者も言う……姉二人はするんと生まれたらしいのだが、好夢は胎内からなかなか出てこず、とりあげられたのは日付が変わってからだった。なので、三つ子なのに一人だけ誕生日が違う。

 それは明確な日数という形で永劫に刻まれたスティグマである。

 ほんの数分の差で子供間ヒエラルキーの最下位に落とされ、高校二年になった今もその立場に変化はない。

 極めつけは、先に生まれた二人は一卵性であり、好夢はそうではないということだ。

 相間意真(あいま いま)相間衣美(あいま いみ)、姉二人は顔立ちも身長体型も瓜二つだ、この二人が並んでいて双子だと判断しない人間はいないだろう。

 同じ受精卵が分裂し、全く同一の遺伝情報を有する二人と、同じ時期同じ期間同じタイミングで母親の胎内にいたというだけで、そうではない好夢の間には、最初から大きな隔たりがあったのだ。

 姉はちんまりとしている。少女らしく乙女らしく愛らしく。背の順ではいつも最前線で、この歳になっても身長は百五十をこえず、胸も尻も発達していない。二人が小学生料金で映画のチケットを買っている所を好夢は何度も見た。

 対して、好夢の身長は、小学生四年生の時点で百七十を数えた。背の順では常に一番後ろで、あだ名はチュロスだった(深い意味は多分ないのだろう)。

 当時は地域の子供バレーや子供バスケからスカウトが来たこともある。姉二人と自分がとことんまで違うという事を実感させられるようで、好夢はひたすらに断り続け、その後、成長はピッタリと止まり、学年が上がるに連れてそういった声もなくなっていった。

 結局の所、姉達と「違うもの」として扱われるのが嫌だった。家族を含めた周囲は、ごく自然に「双子」と「好夢」でカテゴリをわけて扱っていた。それは愛情が偏るとかそういう事ではなく、セットとして認識されていないという事だ。

 

 

「あ、レアドロップした」

「ええー!? 衣美ちゃんずるー」

 

 その日は、三人とも好夢の部屋にいた。中学生になってからそれぞれ一人部屋を与えられたのだが、意真と衣美は二人部屋が良いと駄々をこね、好夢だけが一人広いパーソナルスペースを手に入れた。

 しかし一人部屋とは寝る時に一人であるぐらいの意味しか持たなかった。姉二人は理由もなく好夢の部屋に来ては我が物顔でベッドに転がり漫画を読み耽るし、今日はお菓子をつまみながらソーシャルゲームに没頭している。

 好夢も付き合いで同じゲーム……『魔法少女育成計画』に取り組んでいた。

 とはいえ嫌々でもなかった、姉達がハマっているゲームを自分だけやらないというのは仲間はずれみたいで嫌だったし、誘われても抵抗感はなかった。可愛らしいアバターも気に入ったし、何より課金要素ゼロなのが良い。

 

「ねー、好夢ちゃん好夢ちゃん、衣美ちゃんがずるいー」

「ふふん、運だけは私のほうが上なのよねー、いつもいつも」

 

 妹がレアアイテムを引いて駄々をこねているのが一応、長女の意真だ。日常生活では区別の為に、そこそこ長めの髪の毛をくくってポニーテールにしている。

 ぽかぽかと足で軽く蹴られているのが次女の衣美で、こちらは髪の毛を結んでたらして、でっかいおさげにしている。

 外見的特徴をあえて区別している二人だが、これは周囲にわかりやすいよう配慮した結果ではなく、あえてわかりやすい相違点を作ることで、姉同士での入れ替わりを容易にするためだと好夢は知っている。

 もちろん全くの同一人物というわけではないし、性格や普段の言動に差異はある……傾向として意真は非常にわがままで衣美はとにかく運が良い……のだが、そういった個性すら二人が本気になれば真似て偽装することができ、二人は度々入れ替わってはそれを悪用してきた。見抜けるのは家族……というか好夢ぐらいのものだ。

 

「じゃあ意真も拾おうね、頑張ろうね」

「やだよぉー! もう金箱からはずれレア引くのやだよぉー! 絶対運営確率操作してるよー! 抗議文出すー!」

「恥ずかしいからやめてね」

「ごめんね、私ラック高すぎてはずれレアとかいう文明? 引いたことないのよねー」

「むきー!」

「衣美煽らないで」

 

 仲が良い、とは思う。喧嘩はすれども一日以上長引いたことはないし、好きなもの嫌いなものも、お互い全部知っている。

 同じゲームを遊び、同じ部屋で戯れ、同じ時間を過ごしている。それでもやはり

 

(いいなあ)

 

 と思ってしまう……二人が持ってる決定的な繋がりの中に、自分がいない気がする。

 もちろんこの歳になってそんな事にこだわるのも子供っぽいと思うし、単なるコンプレックスであるとは重々承知なのだ。しかし理解しているからこそのコンプレックスでもある。

 だから。

 

「おめでとうぽん! あなた達は本物の魔法少女にえらばれたぽん!」

 

 丸くて羽らしきものが生えていて、真ん中から白黒に別れた小さな生き物(?)が、いきなり現れて三人にそう告げた。

 

「え?」

「え?」

 

「え?」

 思わず上げた自分の声が、平時よりずっと高い。眼前に居たはずの双子の姉は消え去り、代わりに見たこともない絶世の美少女が並んでいた。

 二人共、外見は同じだ。ルビーも裸足で逃げ出す程透き通った、大きな真紅の瞳をぱちくりさせている。

 足元までシャランと伸びた金髪も、全身を包むローブも、小さくくりくりした鼻も柔らかそうにふにふに震える肌も全く同じだ。

 頭にかぶっている帽子の形と、首から下げているアクセサリだけが違う。

 部屋においてあった姿見に、自然と目が向いた。そこには、全く同じ外見の、三人目の少女がいた。

 好夢が手を動かすと、鏡の中の少女が同じようにした。にっこり笑ってみると、少女も微笑んだ。

 

「三つ子の魔法少女なんて初めてぽん、すっごく希少な事例ぽん」

 

 三人はすぐさまその謎生物に飛びかかり事態の説明を求め、三十分かけてとっくりと解説された後、自分達が魔法少女になったことを理解した。

 

「魔法少女……」

 

 呆然とする。噂には聞いていた。ソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』をプレイしていると、数万人に一人、本物の魔法少女になれる……のだと。

 そんなもん嘘に決まってると決めつけていた。話の種になる以上の価値は無く、今の今まで忘れていたぐらいなのに。

 嘘ではなかった。本当だった。

 相間好夢(あいま いむ)相間意真(あいま いま)相間衣美(あいま いみ)は、この日魔法少女になった。

 

 

 

 

 

 

御剣隆二(みつるぎ りゅうじ)

 

「お疲れ様でした!」

「「お疲れ様でしたー!」」

 

 労いの唱和が響き渡り、御剣隆二はとうとうこの日を迎えた、と感慨で胸を一杯にした。

 隆二が主役を務めた仮面バトラーエッジは、今日でその役目を終える。今後、旧バトラーたちを集めたオールスター作品に出演することはあっても、それは主役としてではなく、過去の英雄としてだ。

 メインの花形として、今この時代をかけるヒーローとしては、今日が最後だ。それは二度と埋められない寂しさと、それ以上の充実感で満たされる、という意味でもある。

 次代のバトラーへ正式な引き継ぎは、伝統的にテレビシリーズ最終話の出会いを経て、その後の劇場版で行われる。今まさに、その撮影が無事終わったのだ。

 

「お疲れ様でした! 隆二さん!」

 

 事務所の後輩でもあり、そして新しい仮面バトラーのバトンを引き継いだ久留沢愛太郎が、握手を求めてきた。当然応じながら、隆二は笑う。

 

「あとは頼んだぜ、ヒーロー!」

「任せてくださいよ、ヒーロー!」

 

 一年前は、自分が先輩バトラーからこうして後を託された。もう一年もたったのだと思うと、長かったようで、短かった。

 

「これからが大変だぜ、休む暇なんてないからな?」

「ええ、だけど……仮面バトラーは」

「弱音を吐くな、声を出せ、だ」

 

 二人が笑い合う横顔を、マスコミのカメラが何度も照らした。

 

 

 仮面バトラーは昭和から続く伝統的な特撮シリーズだ。元祖仮面バトラーの登場から実に二十五年、今は日曜朝に戦隊ヒーローと共に世の中のちびっ子たちに勇気と力を与える存在だ。

 平成シリーズが始まってからは戦う者、という意味を込められたバトラーに、執事のバトラーという意味が付け足され、主人公はシリーズの度に様々な主人に仕えながら、平和を守るヒーロー、仮面バトラーとして戦うのだ(この設定に対しては、昭和バトラーシリーズのファンからは大反発を呼び、昭和派と平成派の争いは未だ根強い)。

 御剣隆二が演じたのはその二十五周年記念作品、仮面バトラーエッジだった。名前の通り「刃」をモチーフにしており、村正フォームやフランベルジュフォームなど、様々な形態と武器を使いこなす姿は子どもたちにわかりやすく大人気だった。

 それまでは「才能はあるけど知名度が足りない」レベルだった隆二の名前が一気に世間に知れた。顔がよく、背が高く、演技も上手く、そして何よりアクションと殺陣が上手かった。仮面バトラーエッジの何より評価の高い点はシナリオもさる事ながら、主人公が一切スタント無しでやりきった戦闘シーンの数々だ。

 もちろん派手になりすぎたり、危険なことは子供が真似してしまうと困るのでしない。しかし洗練された動きと高速の剣の取り回しはちびっ子たちとその保護者のお母様の胸を打った。人気俳優としての道は仮面バトラーによって、文字通り切り開かれたのだ。

 

「……で、本当に明日から休みでいいの?」

「ええ、社長も英気を養え、との事でした。心配しなくても休み明けからはスケジュールぎっしりですよ、安心してください」

「安心していいのかよ、それ」

 

 拍手と声援に見送られて車に乗り込み、運転するマネージャーと交わした会話の第一声がそれだった。

 

「隆二さんのバトラーに対する思いは社長もわかってますよ、すぐに切り替えるのも難しいだろうって」

「あのおっさんはホント……」

 

 隆二は苦笑した、悪人面でありながらデビュー前から面倒を見てくれた事務所の社長は、今でも良い理解者だ。総じて周りに恵まれている、と思う。

 隆二が俳優を志した理由は「仮面バトラーになりたい」からであり、子役オークションでも大声で「仮面バトラーになりたいです!」と叫び、その場では落ちたものの、それを見ていた事務所の社長の目に止まり、辛く苦しい下積みを経てのバトラーデビューだった。

 有り体に言えば弱冠二十五歳にして隆二は夢を叶え……そして叶え終えたのだ。最大の目標を最初に叶えた事務所の宝に、少し自分を見つめ直す時間を与えよう、という配慮が、嬉しくてたまらない。

 マンションまで送ってくれたマネージャーに礼を告げて、自宅の扉を開く。とりあえず一日は使命も役目も忘れて、何も考えず眠ろう、と思っていた。

 

「あ、おかえりなさい、ご飯にする? お風呂にする? それとも……」

「待て」

 

 しかし出迎えたのは暗闇と静寂ではなく、暖かな照明の光と旨そうな食べ物の匂い、そしてエプロンに身を包んだ少女だった。

 

「何してんだお前」

「主人に対して口の聞き方がなってないわね、馬鹿執事」

 

 自分が執事として仕えていたお嬢様を演じていた事務所の同僚――にして従兄妹である少女、御剣(みつるぎ)(ひじり)は演技がかった口調で、わざとらしく言った。

 

 

「隆二だけおやすみなんでずるい! って社長に抗議したのよ」

 

 自分で作ったカレーを行儀よく食べ終えてから、聖はそう言った。

 

「私だって一年頑張ったし、おやすみ欲しいもん、くれなきゃお仕事しないっ! って机に齧りついてやったわ」

 

 机に齧りつかれた社長と聖のスケジュールを管理するマネージャーは溜まったものだはないだろうが、本人は極めて嬉しそうだ。

 平成仮面バトラーはシリーズ毎に主人公が仕える相手の立場が変わる。近年は犬に車に、果ては宇宙にお仕えしてきたバトラーだが、二十五周年を契機に一度平成バトラーの初心に帰ろうということで、お嬢様に仕える、と言うかたちになった。

 そのオーディションを「隆二が出るなら私も出る」の一言で飛び入り参加し勝利をもぎ取ったのがこの聖だ。従兄妹同士ということで話題を呼んだし、演技力も申し分なく、時にアクションすらこなした。

 隆二はそれこそ生まれた時にまで立ち会っているし、幼少期には生活も共にし、兄と妹のように過ごしてきた相手だ。なので遠慮も容赦もしないが、それにしたって感傷に浸る時間も与えてくれないとは、と多少なりとも不満を覚える。

 

「お前、新作ドラマのオーディションは」

「キャンセルしたわ、元から恋愛物なんてやりたくないし」

「馬鹿野郎!?」

 

 収録当時、弱冠十四歳でバトラーのヒロインを勤め上げ、鮮烈なデビューを果たした美少女、という事務所が隆二と並んで売り出したいはずの役者は、かなり自意識が足りていない。

 だが、隆二の声に、聖も不機嫌な顔で答える。

 

「それとも何? 隆二は私がどこの馬の骨とも知れない三流役者とキス付きラブシーンやってるとこみたい?」

「い、いや、でも仕事が……」

「私、やっと高校生よ? 仕事より勉強、そして勉強よりお休み、もうじき、ようやく夏休みだってのにどいつもこいつも学校ないからたくさんお仕事できるね〜って冗談じゃないっての!」

 

 ヘソを曲げると長い事を、隆二は経験で知っている、これ以上何か告げて刺激するよりは、やりたいようにやらせてやるのが良いだろう。

 隆二もカレーに手を付けた。

 

「がらっ!!」  

 焼けるような辛味が舌を蹂躙した。

 

 

 

 

聖騎士(ホーリーナイト)メア

 

「何で、何でよ! 私は正義の魔法少女になったんじゃないの!?」

 

 倒れる仲間の体を抱き上げ、慟哭する。聖騎士メアの腕に、ずしりと命を失った体重がかかる。

 

「泣いてる場合じゃない」

 

 その傍らに立つのは、真っ白な鎧に見を包んだ少女騎士だ。

 聖騎士、と銘打っているにもかかわらず、聖騎士メアの鎧は黒く、その姿は対照的だった。

 どちらが正義か、など、最初から明らかだった、目を背けていただけだ。与えられた力に溺れていただけだ。

 

「パステルは必ずまた来る、私は……アイツを倒す、君はどうする?」

「私に、私にどうしろっていうの!」

「力を貸してくれ」

 

 その一言を、白い騎士はためらわなかった。

 

「聖騎士メア、私には、君の力が必要だ」

 

 ざぁぁぁぁあ、と雨が降り、二人の鎧が水を弾く。表情が見えないままカメラがフェードアウトし、展開に似つかわしくない、きゃぴきゃぴとしたエンディングテーマが流れ始めた。

 

 

 魔法少女歴七年、これはベテランの域と呼んで差し支えない。

 御剣聖は八歳の時に魔法少女になった、それも悪の手先としてだ。

 魔法の国からやってきたパステルと名乗るぬいぐるみみたいなマスコットに、邪悪な魔法少女を倒してほしいと頼まれ、当時魔法少女プリティピュアシリーズにはまっていた聖は迷わずそれを承諾した。

 しかし本当に邪悪だったのはそのマスコットの方で、魔法の国で悪事を働いていた。

 その証拠を掴んで逃げた正義のマスコットを追い立てるため、現地徴用の捨てごまとして選ばれたに過ぎなかった。

 他にも数人の女の子が魔法少女として選ばれ、悪の片棒を担いだ。仲間だった少女たちは死に、一人生き延びた聖騎士メアに、正義のマスコットに選ばれた魔法少女は手を差し伸べてくれた。

 

「まぁた見てんのか?」

 

 自分でも知らないうちに流れていた涙を、そっと指で拭ってから、聞こえてきた声の主に向かって振り向いた。髪の毛をタオルでがしがしと拭きながら、隆二がリビングに入ってきた所だ、部屋着用のジーンズに、上は着ておらず、役者として鍛えられた上半身を晒していた。

 

「いいじゃない、好きなのよ、かなり脚色入ってるのも最高だわ」

 

 アニメ化。それは殆どの魔法少女の目標と言っても良いのではないだろうか。

 魔法の国はプロパガンダの一環として、素晴らしい活躍を果たした魔法少女をアニメ化する事がある。こちらの世界にも魔法の国の住人や協力者は多数紛れ込んでおり、大きな権力を持っているらしいが、詳細は知らない。

魔法少女アニメの大半は若干の脚色を加えて実話を元に作られる。マジカルデイジー、キューティーアルタイル、どれも本当に活躍した魔法少女のものなのだ。

 そして聖騎士メアもアニメ化魔法少女の一人である……と言っても、主役ではないのだが、それでも聖は満足している。

 

「さて、それじゃいくか」

 

 着替えもそこそこに、隆二が言った。聖は何処へ? とも何しに? とも聞かなかった。答えを知っているからだ。もう、と頬を膨らませた。

 

「あなたね、今って休暇なのよ、分かってる?」

「休暇だからこそ、だろ。特にここ最近は忙しかったから、遅れを取り戻さねえと」

 

 そういう隆二の瞳には、仕事の疲れよりも、これから行うことにわくわくする子供のような光が宿っている。こうなったらもう止まらないことを、聖はよーく知っていた。

 

「はぁ……わかったわよ、付き合ってあげる」

「サンキュ、相棒、それじゃあ、行くぜ」

 

 二人は並んで、手を合わせた。湯上がりの人間の熱と感触が、じんわりと伝わって来る。

 

『変身』

 

 御剣聖はその瞬間、魔法少女、聖騎士(ホーリーナイト)メアに変身した。黒い鎧を身に纏い、手には一振りの剣が握られている。この「闇の聖剣」なる矛盾した武器は、大冒険の末に手に入れた聖騎士メアのトレードマークだ。

 そして、聖騎士メアの眼前に、御剣隆二はいなかった。

 純白の鎧、柔らかく編まれた黄金に輝く二房のツインテール。ぱっちりと大きな瞳、そして「光の聖剣」を携えた女騎士。予定調和の様に声を揃えて、二人は言った。

 

「聖なる星の輝き、スターカッター!」

「星に寄り添う夜、聖騎士メア!」

 

 決めポーズを見ている第三者は、残念ながらいなかった。

 

 

 

 

☆スターカッター

 

 御剣隆二は魔法少女である。

 七年前の事だ、レッスンの帰り道、雨の中を歩いていたら、ボロボロになった猫のぬいぐるみが落ちていた。驚いたことにそのぬいぐるみは動き、喋り、助けを求めてきた。

 自分は魔法の国のマスコットであり、悪い奴らに追われており、どうか力を貸してほしいと言われた。

 抵抗はなかった、ヒーローを志す隆二にとっては至極当然の行動であり、魔法少女の才能があると言われた時もまた躊躇いなく受け入れた。

 隆二は幼い頃から日曜朝に始まる仮面バトラーが好きだった。そしてその後に始まる魔法少女アニメも当然のように好きだった。

 御剣隆二は仮面バトラーになる以前から、魔法少女スターカッターだったのだ。そして自分に力を与えたマスコット、クレヨンを巡る戦いを駆け抜け、その物語は「星の剣士スターカッター」としてアニメ化された。放送時間は深夜帯ながら高い人気を産み、二シリーズ目まで放映された。勿論主人公は男性ではなく、アイドルを目指す少女、という設定に変更されたが。

 戦いが一段落し、クレヨンは魔法の国に戻り、そして大人になってからは魔法少女としての活動はかなり手薄になってしまった。朝から深夜まで仕事があり、睡眠に時間を割くと、どうしても疎かになってしまう。

 じゃあ魔法少女をやめます、というわけにも行かない。美しく強い魔法少女の体は手放し難い魅力があるし、魔法少女をやめたら魔法の国に関する記憶は全て失われる。スターカッターとして生きた日々は今や隆二の人格形成や価値観に多大な影響を及ぼし、スターカッター無くして俳優御剣隆二はありえない。二足草鞋を履かなければならないのだ。

 

「ったく……で、どうするの?」

「まずは人探しからかな……あまり激しくは、動きたくないし」

 

 

 ベランダの柵を蹴って夜の街へと飛び出す。魔法少女の身体能力なら容易いことだ。

 魔法少女はヒーローと同じ、夢と希望を与える存在だ。

 よってその正体が男だとバレる訳にはいかない。スターカッターの正体を隠す為にも、まずはスターカッターという魔法少女を演じなければならない。ボロが出ないようにしなくては。

 

 

4989(シックハック)

 

「私、魔法少女を引退することにしたわ」

 

 今まで長く面倒を見てくれてきた、先輩魔法少女、ブライダルーンは、いつもどおり日課の人助けを終えたあと、唐突にそういった。

 

「……冗談よね? 先輩」

「ごめんね、4989、私……本気なの」

 

 魔法少女4989(シックハック)にとって、ブライダルーンは目標であり尊敬すべき対象であり、そして憧れだ。美しく、優しく、礼節を忘れず、道を違えかけた4989の事も優しく教え導いてくれた。魔法の国の名誉国民であり、マスター用の端末を与えられている、正真正銘の「正しい」魔法少女だ。

誰よりも正しく魔法少女としてあり、誰よりも清い魔法少女だった。だから、その彼女の口から「引退」の二文字が出たことが、どうしても信じられなかった。

 

「どうして……何か、あったんですか」

 

悩みがあるのなら言って欲しい。力になれるなら力になりたい。そう思い、そして自分の心配が全く的外れだったことを次の言葉で知る。

 

「あのね、私……結婚するの」

 

結婚。それは所謂招来を誓った男性と婚姻関係を結び、生涯を共にするあれだろうか。その単語の持ち合わせる意味合いは究極の現実であり、ファンタジーの世界に生きる魔法少女とは確かに結びつかない。

 

「私、魔法少女の活動は好きよ。誰かを助けられれば嬉しいし、魔法だって使えるし……でも、新しい生活が始まったら、今までみたいには行かなくなっちゃうから」

 

 魔法少女は魔法の国が選ぶ。魔法少女となった者は力を与えられる代わりに人助けや魔法の国から要請を受けたらそれに従うといった仕事が発生する。サボったり、違反行為をしたら、折角極上の美少女に変身できるその力を奪われてしまうので、少女たちは日々必死に人助けに取り組む。選ばれた、特別な存在であるという思い込みがそうさせるのだ。

 だが、引き換えに差し出されるのは現実での時間だ。勉強、仕事といった人生を構成する重要な物事を行う時間を、魔法少女の活動に差し出すことになる。その中には当然恋愛だって含まれる。4989もまた、魔法少女として存在し続ける為に少なくない人生の時間を吐き出している。

 言い方を変えるなら、ブライダルーンは魔法少女より、人生を選んだのだ。その決断の大きさを考えれば、4989はもはや何も言えない。

結婚なんて止めて魔法少女続けましょう! なんて言えるほど図太い神経は持ち合わせていない。

 

「い、いい人……なんですか?」

 

 かろうじて絞り出せたのは、聞きたいこととは全く違うものだった。

 

「ええ、とっても」

 

 そして、数秒の間を置いて浮かんだその微笑みには、本当に心からにじみ出てくる幸せがありありと見て取れた。もはや、他に言葉はなかった。

 

「お、おめでとう……ございます」

「ありがとう、4989」

 

 照れくさそうに微笑み、そしてほんの少し、悲しそうな顔をした。4989の瞳に滲んだ涙を、ブライダルーンは見逃さず、その肩を抱いた。

 魔法少女をやめてしまえば、魔法少女であった時の記憶は全て失われる。4989とブライダルーンの思い出は、彼女の中から消滅する。

 それは、ブライダルーンという人間が、4989という友人よりも、日常と夫となるべき相手を選んだことに他ならない。それは事実として悲しかったし、そしてそれを悔しいと思う自分が情けなかった。

 その後は一晩中、思い出を語り合い、時にお互い笑い、時にお互い涙して、4989とブライダルーンは、最後に握手をして別れた。

 結論から言うと、その日その時見たブライダルーンの顔が、4989が見た最後の彼女の姿だった。

 

 

 翌日、ブライダルーンは殺された。

 上半身は惨たらしく切り刻まれ、人としての形を保っていなかった。

 残った下半身、太腿の内側には『魔法少女として相応しくない者に裁きを』と、赤い線で刻まれていた。

 

『魔法少女殺しだぽん』

 

 4989にブライダルーンの死を4989に報告した魔法の国のマスコットは、重々しく告げた。

 

『4989、絶対に勝手に動いちゃ駄目ぽん。この件は魔法の国が専門の人員を派遣するぽん、どうか先走らないで――――』

 

 4989の耳に、それ以上の言葉は入ってこなかった。

 

(4989、私、あなたに出会えて本当に良かった。それが、私が魔法少女になって一番嬉しかったことだわ)

 

 そう笑顔で告げて、別れた彼女の顔を思い出す。悲しかったし、でも、嬉しかった。その苦味はやがて思い出となって、自分を支えてくれるはずだったものだ。

 ありとあらゆる二人の時間を、陵辱された。屈辱の泥を塗り込められて、踏みにじられた。

 許す訳にはいかない。断じて。

 4989は、飛び出した。

 

 

☆メモリアキッス

 

 ギコギコと、硬いものを斬り落とす音が狭い室内に響く。

 

「あぁ……あぁ……」

 

 苦しそうに、嘆くような声を上げているのは、しかし被害者ではなく加害者だ。解体されている方はそもそも意識も命も残っていない。

 

「あーあー、まぁたこんなにしちゃってぇ」

 

 メモリアキッスは知っている。

 彼女が切り取りたいのは骨だ。できれば人骨がよく、作業は長いほどいいらしい。だが人骨を切り取りたいということは皮膚も筋肉も血管も、部位によっては内臓も切らなければならない。当然、周囲は大変なことになる。

 

「あぁー……」

 

 やがて、加害者はたっぷり時間をかけて切断し終えた大腿骨を抱きしめ、甘い声をあげながら、すりすりと頬ずりを重ねる。その瞳に光と理性はかけらも存在しなかった。

 舐めたり、齧ったり、啜ったりをゆっくり嬲るように繰り返す。血と肉の海の中で骨とまぐわる美少女というのは、生臭さを気にしなければ絵になるが、流石に三十分も眺めていれば飽きも来る。予定も詰まっているし、暇なわけでもない。

 

「ねぇ、満足したぁ?」

「あぁ……ぅぅ……」

 

 物足りない、とありありと表情に出ていた。切り取るべき骨はまだまだ大量に残っている、と訴えかけてきている。それはそうだろう、なにせ行われた殺戮は大人二人子供二人の合わせて一家族分であり、今しがた切り取ったものはその中でも一番小さな子供のものだ。メインディッシュはまだまだこれからなのだと。

 

「あのねえ、流石に四人もギコギコ待ってられないわよぉ。何時間かかっちゃうのぉ?」

「うぅー……」

「その代わり、魔法少女の骨をギコギコさせてあげるからぁ」

「!」 

 

 目の色が変わる。ぐぐっと瞳孔が開き、刺々しい犬歯のならんだ口が笑みに変じた。

 

「まほうしょうじょ! まほうしょうじょ!」

「そうよぉ、魔法少女。大好きよねぇ、イフレイン?」

「すき! まほうしょうじょ、すき……ゴリ、ゴリ」

「じゃあ、ここではぐーっと、我慢しましょ? ね? 魔法少女相手なら文句言わないわ、たーっくさんゴリゴリさせてあげる、ね? だからポイしなさい、ポイ」

「う、う……あぁー…」

 

 未練がましく握っていた骨と、メモリアキッスを交互に見て、やがて、言われたとおりにそれをぽいした。

 欲と腹を満たすならば、美味しいもので満たしたい。 

 くるるる、と唸り声のようなものが聞こえる。イフレインは飢えさせれば飢えさせるほど獰猛に、そして愛らしくなる。

 メモリアキッスは知っている。

 魔法少女を、知っている。

 

「さあ――――行くわよ。」

 

 ぺろりと舌なめずりをする。

 彼女たちが果たすのは、徹底的なる悪逆だ。

 魔法少女とは、どこまでも身勝手な生き物なのだから。

 

 

 

☆シュガースポット

 

「せーんぱい、おはようございます」

「あ、おはよう、美里ちゃん」

 

 駅前で恋人と待ち合わせて登校する。それは青春の一ページとして極めて充実していると言ってよく、里美郷美里(さとみさと みさと)は正しくこの世の春を謳歌していた。

 

「もー、また髪の毛跳ねてますよ?」

「ちょっとだけでしょ」

「ちょっと跳ねてたら全部ダメなんです」

 

 立ち止まって、背伸びして、ぴょこんと反った髪の毛を手櫛で梳いてやる。全く、こんなに綺麗な髪なのに、ちゃんと手入れをしない先輩は本当に横着だ、自分の価値をわかっていない。

 

「……美里ちゃん」

「はい?」

「顔が近い」

「知ってますけど」

 

 照れてドギマギしている、かわいい。

 もちろん往来でそんなことをしていれば、通りすがる人の視線が嫌でも向けられるが、美里にとってそれは幸福の実感を増すスパイス以外の何物でもない……肝心の先輩は恥ずかしそうだが、その表情も可愛い、素敵だ。

 

「はい、綺麗になりましたよ」

「……ありがと」

 

 顔を赤らめたまま、ふいっと顔を背ける、ああもう可愛い、抱きしめたい。全てを放り投げてこのままホテルとかに行きたい。

 そういった邪な衝動は一切顔に出さず、自制心という鎖で固く封じる。己の欲望を押さえ込めてこその一流だ。

 

「先輩、手とか繋ぎます?」

「………繋がない」

 

 顔を背けたままそんなことを言うので、むりやり手を掴んだ。柔らかくて熱があって、一瞬体を硬直させたあと、緩く指を絡めて握り返してきた。やっぱり、かわいい。

 

 

「うーん……」

 

 勉強オッケー、スポーツオッケー、青春オッケー、つまり完璧な生活を送っている美里であったが、悩みがないわけではない、むしろここ数年の中では目下最大の課題といっていい。

 今の美里は美里であって美里ではない、長いコック帽を頭にかぶり、パティシエの衣装に身を包んだ魔法少女、シュガースポットである。

 目の前には二つの皿がある。どちらにも焼きたてのクッキーが山と盛られており、目の前で文字通り尻尾を振っている友人はシュガースポットのお預けの指示を律儀に守っている。

「よし」

 その一言で、獅子神破沙羅(ししがみばさら)――狼の皮を頭に被った、野獣のような格好をしている魔法少女――はクッキーに手を伸ばした、バリバリと心地良い音を立てて旨そうに咀嚼し、嚥下し、また手を伸ばす。

 ものの五分で菓子は消え去り、満足げな野獣はお腹をポンポンとさすりはふうと息を吐いた。

 

「すいません遅れましたがせれなの分はあああやっぱりなーい!」

 

 がちゃがちゃと金属がこすれる音を立てて現れた三人目の魔法少女は、落胆して肩を落とす。

 ここはとあるマンションの一室だ。シュガースポットの自宅ではなく、仲の良い魔法少女達が共同で出資し部屋を借りている。いつでも誰でも来てよく、また定期的に集まっては他愛のない話をする。ワンルームでそんなに広くもなく、一月の負担もバイト代の端数で支払えるぐらいのものだ。

 

「うまかった、シュガー、すき」

「うわー! 一欠片も残ってねぇです! ひっでー! ばさらんひっでー!」

 

 叫ぶ魔法少女、せれなはとても小さい。全身が重厚な鎧に包まれているが、お陰で顔が余計小さく見える。シュガースポットも背が低いが、コスチュームのコック帽は三十センチの長さを誇り、それを感じさせないだけの存在感がある。獅子神婆沙羅は百五十センチ程度だが、頭にかぶっている狼の毛皮の分、大きく見える。

 対してせれなは百三十センチあるかないかの小ささだ。その上、固有魔法が『無敵の盾を持ってるよ』であり、せれな自身がすっぽり隠れられるサイズの大きな盾を常に持ち歩いているため、余計に小さく見えてしまう。

 

「シュガーも止めてくれればいいじゃねーですかよ!」

「よだれダラダラ流しながら尻尾バンバン振って目をギラギラさせてる破沙羅ちゃんを五分間待たせた事を褒めて欲しいぐらいですけども……」

「うわー! 差別ですよこれはー! 私はシュガーのスイーツを楽しみに今日を生き抜いたんですよー!?」

 

 騒ぐせれなとは対照的に、満足げに腹を擦る獅子神破沙羅。

 

「せれな、うるさい、ばさらはねむい」

「食っちゃ寝で羨ましいことですねぇー!」

 

 

 

 シュガースポット達が、週二回行っているのが、このお茶会もといお菓子会だ。と言ってもその内容は、シュガースポットが用意したお菓子を獅子神婆沙羅とせれなが食べるだけである。

 これだけ見るとシュガースポットは一方的な奉仕者であるようだが、当然目的は別にあり、全ては自らの将来のためなのだ。

 

「あ〜、このために生きてる……今なら死んでもいい……」

 

 結局、シュガースポットがその場で用意したロールケーキを頬張って、せれなは顔をとろけさせていた。用意したと言っても、わざわざ買ってきたわけではなく、『お菓子作りにかけては右に出るものはいないよ』という固有魔法で作り出したものだ。

 シュガースポットはコスチューム付属の泡立て器を、同じく付属のボウルに入れてしゃかしゃかかきまわし、ひっくり返す事で、好きなお菓子や材料をその場で用意することができる。お皿はコスチュームのポケットに入っており、無限に補給できる。

 レシピを知っている、実際に食べたことがあるなど、そのお菓子に理解が深ければ深いほど早く美味しく作れるようになる、魔法によって作られたその味は、一口ごとに幸せそうな顔をするせれなを見ればわかろうというものだ。

 

「むむむ……」

 

 この魔法を手に入れてから里美郷美里の生活は一変した。

 身寄りのない一人暮らしの身の上なので、変身中は食事や睡眠を大して必要としない魔法少女の頑強さはありがたかったし、ホットケーキやアップルパイなどをゼロから生成できるので食費は大幅に浮いた。

 シュガースポットの魔法は材料も作ることができるので、ケーキやパフェに使うという名目で苺やメロンなどの各種フルーツ、他にも牛乳、生クリーム、卵、小麦粉、チョコレート等は無料で手に入れ放題だ、質も最高級で申し分ない。

 では何が問題なのかというと、美里がまさしくパティシエ志望であるという事だ。

 魔法少女シュガースポットが作り出すお菓子はどれも絶品だ、それこそ最上級のパティシエが最高品質の食材を最高の環境で手がけたが如し、である。

 対して美里の腕前はまだアマチュアの域を出ない、バイト先もそういったお店で、現在進行形で修行を積んでいるし、高校を卒業したら奨学金をもぎ取って専門学校に行くつもりだが、今はまだパティシエの雛鳥と言って良い。

 つまり里美郷美里が作るお菓子は、シュガースポットの作るお菓子を超えられないのだ。

 魔法で用意した材料を使って同じものを作っても、味が全く違う。美里のチョコレートケーキは一口食べただけで感動による滂沱の涙を誘発させられない。

 言い換えれば、美里は自身の夢に対する終着点、世界一お菓子作りが上手い腕前を、自分の理解が及ばないままに手に入れてしまったのだ。

 それは里美郷美里の能力だろうか、と言われれば否である。過程を省略した最高の完成品を無尽蔵に作れるなどというのは、ある意味世界中のパティシエを冒涜しているのと同じだ、里美郷美里はシュガースポットを生み出した存在として、シュガースポットを超えなければならない。

 だからこうして日々シュガースポットのお菓子を研究し、魔法少女友達を集めては食べ比べをさせて感想を聞き出している。

 魔法少女は女の子であり、女の子は甘いものが好きであり、そしてお菓子は甘いのだ。実際ホイホイ釣れたが、人選に問題がある感じは否めない。

「さいしょにたべたほうがうまかった」

 忌憚なくお世辞なく、そして容赦なく、獅子神婆沙羅は言った。当然、シュガースポットが魔法で作ったクッキーの方だ。

 

「ううー、具体的にはどうでしたか?」

「うまかった」

「語彙力!」

「んん……こく? が、ぐっどで、ちがう」

「精一杯の努力をありがとうございます……」

 

 バターが足りなかったのか、あるいは他に何か特別な要素があるのか、美里がシュガースポットに追いつける日は遠い。

 

「シュガーおかわり!」

 

 人の気も知らず(事情は知っているが心境まではその限りではないだろう)皿を差し出してくるせれなに、シュガースポットは宜なく両手でバツじるしを作った。

 

「ありませんあげませんやりません」

「意地悪だー! 意地悪ですよこれはー! 抗議しますよ私はー!」

「私の魔法で作ったお菓子を美味しいと褒められると私の立つ瀬がないんです!」

「普通に聞くと意味わかんねーですねー! 私は普通に作ったシュガーのお菓子も好きですよー! ただ今すぐ食べられるのはその泡立て器とボウルから出てくるファンシーなんですよ!」

「ファンシーは売り切れました、またのご利用をお待ちしてます」

「夢と希望の魔法少女でしょうが!」

「現実と絶望の魔法少女がこのシュガースポットです」

 

騒ぐ二人を横目に、獅子神婆沙羅は膨らんだ腹をなでてから、心地良さそうに丸まって目を閉じた。

 

 

 

烈風(れっぷう)のリカ

 

 眼前に迫りくる拳を、寸前で回避する。掠りでもしたらおしまいだ、意識を持って行かれることを烈風のリカは経験で知っている。

 

「っ、このっ!」

 

 スカートを翻しながら後方に飛んで、両手をぱんと叩いて、眼前につき出す。烈風のリカの魔法が発動した。

 ごうっ! と唸りを上げて、空気の塊が勢い良く『敵』に向かって飛んでいく。直撃すれば吹き飛ぶし、そうでなくても足止めはできる……と思っていた。

 『敵』は見えない攻撃に一切躊躇なく、右腕を横に振った。その衝撃で暴風が辺り一帯を飲み込み、戦いを眺めていた魔法少女が小さな悲鳴を上げた。

 一つの所作だけで、烈風のリカの放った空気砲は拡散して消えた。もちろんその間に、烈風のリカは動いている、両手を合わせて地面に触れると、今度は地面がメキメキと音を上げて隆起した。

 烈風のリカの固有魔法は「叩いて触れると二つに増えるよ」というものだ、質量保存の法則などお構いなしに、生き物以外ならなんでも無制限に増やすことができる。ただし増やした物は最長一時間で崩壊してしまう。

 その制限は、戦闘に使う分には大した問題ではない、眼前の空気を増やして空気砲に変えたり、地面を増やして質量兵器にしたり、戦闘にはもちろん、様々なことに役立つ魔法である。

 

「さあ、どうするっ!」

 

 三メートル以上の高さまで膨れ上がった、増殖した大地が、その質量を持って、視界を塞ぎながら押し潰す。

 返答は衝撃だった。

 視界がくらっ、とした。眩暈ではない、足元が揺れたのだ。メキメキメキメキと、聞こえてはいけない音が発生し、次の瞬間、烈風のリカが増やした大地ごと割れた。

 

「うっそおおおっ!?」

 

 事象としては単純だ。『敵』は自分のその足を地面に叩きつけて、その衝撃で地割れを起こした。増やした大地は脆くも崩れ去り、『敵』はその向こうで一切の表情を動かさず、淡々と告げた。

 

「さて」

 

 いつの間にか、拳大の石を片手に持っていた。烈風のリカはその単なる石が、眼前の敵が投じることによって百発百中一撃必殺の武器になることを知っている。

 

「どうする?」

「えーっと」

 

 ぽりぽりと頬をかく。

 

「降参で」

 

 降伏宣言は無事に聞き入れられ、烈風のリカの黒星がまたひとつ増えた。

 

 

☆プリマステラ

 

 魔法少女、プリマステラ、本名、三日月光(みかづき ひかり)

 魔法少女、烈風のリカ、本名、袋辺理香子(ふくろべ りかこ)

 魔法少女、ピスタール、本名、木下木の実(きのした このみ)

 三人が出会ったのは小学校低学年の頃だった。児童養護施設、というのは多かれ少なかれ不幸に見舞われた、似たり寄ったりの環境の子供達が集まる場所だったが、光の場合は会社の不祥事の責任をなすりつけられた両親が首吊り自殺し、財産は根こそぎ親戚周りに奪いつくされた挙句、施設に放逐されたという類を見ないほど重い事情であり、大人たちは腫れ物を触るように扱っていた。

 

「ふん、アンタが新入り? いい? ここじゃ私がルールなんだからね!」

 

 開幕でそう宣言してきたのが、袋辺理香子(ふくろべ りかこ)であり。

 

「ご、ごめんなさい、この子ちょっと頭悪いんです……」

 

 と、理香子の後ろに隠れながら、前髪で瞳を隠していたのが木下木の実(きのした このみ)だった。

 

「はぁ? 舐めてんじゃねーわよ!」

 

 と言い返した光が出会って五秒で殴り合いになり、施設の大人が仲裁に入った頃には既に二人共顔に痣が浮いていて――――

 

 

 

 

 

 

「ま、あなたにしては頑張った方ではなくて?」

 

 戦いを終えた同期の肩を叩いて、魔法少女プリマステラは慰めの言葉を投げかけた。

 

「うっさいうっさいうるさいさい!」

「あら、荒れてますわね」

「あれいでか!」

 

 烈風のリカはコスチュームが汚れることを厭わず、地面に体を投げ出した。

 

「当たんねー! 何やっても当たんねー! て言うか脳筋すぎー! こっちあたったら負けなのにあっちなにしても通じねーとかありえねーっ!」

「って言ってますけれど、先生?」

 

 プリマステラがそう呼ぶ相手こそ、先ほど烈風のリカが戦っていた『敵』である。彼女は、アンダーリムの眼鏡の位置を直して、淡々と告げる。

 

「強くはなったと思うよ、それに地面を増やすのは驚いた。確かに質量で押すの悪くないね」

 

 あくまで上から目線だが、無理もない。目の前の相手はプリマステラを含む、この場にいる三人の魔法少女の師匠であり、教師なのだから。 

 

「リカったら、いい加減諦めたらどうですか? 定期的に喧嘩を売られる先生の身にもなったらどうなのです」

「やだやだやだやだ! 絶対勝ちたい勝ちたい! 勝てなかったらやだ!」

「はぁ……お子様ですわねえ」

「私は別にいいけど」

「先生がそうやって甘やかすから、リカが調子に乗るんですのよ」

 

 ため息を吐くプリマステラを見て、『先生』は苦笑した。

 

「目標がないよりは、あったほうがいいよ、自分で研鑽を続けるから」

「む、先生? 私だってちゃんとトレーニングは欠かしてなくてよ?」 

「わかってる、プリマステラも努力家だし、ちゃんと自分のことを自分で管理できる娘だしね」

 

 だが、と続ける。

 

「自分のことを自分で管理できず、追い込まれないと本気を出さない娘もいるんだよ……」

 

 どこか遠い目で言う『先生』。

 

「あっれ私今超貶められてる?」

「気のせいだよ」

「何だ気のせいかあ、よかったあ!」

「本当に単純馬鹿ですわねあなた」

「あぁ!? 今バカって言ったなぁ!? バカにバカって言ったらいけないのよ!」

「認めてどうするんですのよ」

 

 愉快に騒ぎつつ、ふと横を見る。戦いを見学していたもう一人の同期がいたはずなのだが、先程から一言も発していない。

 

「ピスタール?」

 

 呼びかける、反応がない。よく見たらどこにもいない。首を傾げる。

 

「プリマステラ」

 

 『先生』が地面を指した。その先を視線で追う。

 

「すやぁ……」

 

 アルマジロか何かのように、コスチュームのマントにぐるりと丸まって、心地良さそうに寝ている魔法少女がいた。

 

「あと五億年……」

「人類が滅びますわー、そうなる前に起きましょう」

「それならそれでぇ……」

「よくないですわよー」

「むにに……終わったっすかぁ……?」

 

 ものすごく仕方なさそうに、魔法少女ピスタールは起き上がった。どんぐりの帽子を、顔半分をすっぽり覆うほど大きくしたようなそれを被り、緑色のマントとコートを身に着けている。栗毛も相まって、森のなかに放り込んだら保護色で見えなくなりそうだ。

 

「百五敗目おめでとっす、リカ」

「負けた前提なの!?」

「勝ったんすか?」

「負けたけど!」

「そりゃそうっすよねー、先生にゃ勝てないっすよねー」

「お前から始末してやるぅぅう!!」 

 

 けらけら笑うピスタールに飛びかかる、烈風のリカ。

 

「またやってる……ピスタールに勝てるわけないですのに」

「まあ好きにやらせてあげよう」 

 

 この四人があつまれば、結局いつもの光景だ。リカが挑み先生が受けてピスタールが笑いプリマステラがため息をつく。

 

「それで、今日はなんでしたっけ?」

 

 今夜の集まりは、『先生』が弟子である三人を招集したものだ。

 

「うん、何だかファムが話があるって」

 

 ファムはこの地域を担当しているマスコットだ。白黒の丸っこいボディが可愛らしく、魔法少女のマスコットとしてはなかなかどうして良く出来たビジュアルをしている。

 魔法少女たち全員に配られる専用の魔法の端末を経由していつでもどこでもアクセスできる手軽さも売りだ。逆に向こうもいつでもこっちに接触してこれるのだが。

 

「やあやあぽん、待たせたぽん!」

 

 『先生』がそう言った数秒後、狙ったようにファムが現れた。

 

「遊んでみたいだから待ってたぽん、もういいぽん?」

「遊んでない! 必死なの!」

「遊びみたいなもんだぽん」

 

 烈風のリカの高らかな主張に、ファムは取り合わない、正しい判断だとプリマステラも思う。

 

「さて、お集まりいただいてありがとうだぽん」

「端末経由じゃなくて、わざわざ集めた理由があるんすかー?」

 

 ピスタールが首を傾げた。

 

「念のためだぽん、これから話すことは内密でお願いするぽん」

 

 ファムの声は高く可愛い。それでもトーンが変われば真剣味の一つも増す。少なくとも『先生』はそう受け取ったようで、詳細を、と先を促した。

 

「実はこの地区に今、やばい奴が出たぽん。魔法少女だけを狙う猟奇殺人犯だぽん。便宜上“魔法少女殺し”と呼んでるぽん」

「魔法少女殺し……例の、監査部のスノーホワイトですか?」

「違うぽん。スノーホワイトは“魔法少女狩り”だぽん。それにスノーホワイトはやってることは過激かもしれないけどカテゴライズするなら正義の味方だぽん。誰も殺した事はないぽん」

「詳しいですわね」

「ファムの先輩がスノーホワイトの専属マスコットなんだぽん。憧れだぽん」

 

 それはさておき。

 

「“魔法少女殺し”は文字通り魔法少女を殺すぽん、今まで確認しただけで三十人は殺されてるぽん」

「三十人!? 正規の魔法少女でしょ!?」

 

 リカが真っ先に驚いたのでプリマステラが何か言う暇はなかった。しかし思いは同じだ。三十人というのは、誰かが誰かを殺した数としてそう簡単に出てくる数字ではない。まして魔法少女には高い身体能力と魔法がある。

 

「犯行はかなり昔から続いてるぽん。現れたり現れなかったりするんだぽん。“魔法少女殺し”は現場に必ず犯行の証を残していくんだぽん」

「犯行の証?」

「“魔法少女として相応しくない者に裁きを”、という文字が遺体に刻まれているぽん。つい最近、この街でそういう事件が起きたぽん」

「模倣犯の可能性は?」

「十分にあるぽん。ただ重要なのは過去の犯人と同一人物であるかどうかより、今この街にベテランの魔法少女を殺害する能力のある“魔法少女殺し”が存在する事実のほうだぽん」

 

 質問を想定していたのか、淀みなく返答するファム。問いかけた『先生』は口元に手を当てて考え始めた。よく考える人だなあ、とプリマステラは思う。

 彼女がプリマステラ達に真っ先に教えたのは「考える事をやめないように」だった。プリマステラは実践しているつもりだが他の二人はよくわからない。烈風のリカなんか絶対に何も考えていない気もするし。

 

「よし、そいつをとっちめればいいのね!」

 

 ほら考えてない。

 

「違うぽん」

「違うの!? そういう流れじゃないの!?」

「違うぽん。危ないから安全が確認されるまで魔法少女の活動はお休みしてもいい、っていう話だぽん。特に結界を展開するから、予定では明日の夜八時から二十四時間は双葉市の魔法少女の出入りは一切できなくなるぽん。無理に出ようとすると死んじゃうぽん。だから電車とかには絶対乗っちゃ駄目ぽん。もしも変身する必要があったら二人以上で行動して、万が一“魔法少女殺し”と遭遇したら絶対に戦わず逃げてほしいぽん、特に見覚えのない魔法少女を見かけたら絶対に近寄ったら駄目だぽん、すぐにファムに知らせるぽん」

「えー! 違うでしょ! そんなんだったらわざわざ私達集めなくていいじゃん!」

「一人ひとりに説明するとリカは暴走しそうだから釘刺してくれる人の前で説明してるぽん」

「かしこまりましわ」

「かしこまらないでよっ!」 

 

 このマスコットは魔法少女達の性格や行動パターンを良くわかっている。

 

「……」

「……せんせ? どしたの?」

「いえ、魔法少女殺しに関する他の情報はないの? ファム」

「ごめんぽん。手がかりはあまりないぽん。全国各地に出没するからどこに住んでるかも不明ぽん。日本国内なのは確かぽん」

「被害者の共通点は?」

「……こう言ったらあれだけど、魔法の力を私利私欲に使ってた魔法少女が多いぽん。でも、どんな理由があっても殺人は論外だぽん、許されることじゃないぽん」

「……つまり、“魔法少女殺し”には独自に魔法少女を殺す基準がある、その基準そのものは不明、と」

「結局人殺しの狂人のやることだぽん、あんまり考えても詮無いと思うし、皆は悪い魔法少女じゃないから大丈夫だとは思うぽん」

 

 プリマステラとしては危険なことはごめんであり、戦えと言われるならまだしも近寄るなと言われたら両手を上げてわかりましたわ近づきませんわという場面だ。

 

「えー!! ヤダやだやだ! 私の正義が許さない! そいつみんなでとっ捕まえて倒そうよー!」 

 

 しかし馬鹿にとってはそうではない。プリマステラは頭を抱えた。どうしてこの娘は昔からこうなのか。

 

「話聞いてましたの? 相手はすごい強いんですのよ、危険ですわよ」

「やってみなきゃわかんないじゃん! それに私だって強いよ! 自信あるよ!」

「先生にもピスタールにも勝ったこと無いじゃないですの」

「先生は強すぎるしピスタールは魔法のおかげでしょ!」

 

 とうのピスタールは困った顔でプリマステラを見ていた。リカはこうなったら譲らない。しかし一人で勝手にしろ、というのは論外だ。プリマステラとピスタールと烈風のリカは離れられない。リカが無理にでも行こうとするならついていかなくてはならない。

 

「……先生、なんとか言ってくださいまし」

 

 こうなると頼れるのはやはり目上の人間ということになる。先生はそうだね、と頷いた。

 

「ファム」

「何だぽん?」

「魔法少女殺しの対応、私に任せてくれない?」

「…………ちょ、ちょっとまつぽん!? 本気で言ってるぽん!?」

「半分本気、というよりも……」

 

 唖然とするプリマステラ達を前に、“先生”は苦笑しながら告げる。

 

「“魔法少女殺し”のターゲットは私になってもおかしくない……と思う。襲われる可能性があるなら戦うつもりでいたい」

「そんなことないぽん、ユミコエルは立派な魔法少女だぽん! ファムはよく知ってるぽん!」

「高評価ありがとう、と言いたいところだけど、私の経歴はファムも知ってるでしょう?」

 

 先生……ユミコエルがそう言うと、ファムは何か言い返そうとノイズを走らせて、何を言い返すべきか迷い、そして出てきたのは「それは……」という呟きだった。

 

「先生、なにか悪いことしたの?」

 

 リカが不安げにユミコエルを見つめた、ユミコエルは柔らかく微笑み、横に首を振った。

 

「色々ね、昔あったの。今はこうして教官役をやってるけど……正直、そんなことができてるのも奇跡だと思う」

「自分、難しいことはよくわかんねーっすけど、いいんじゃねーっすか? 別に」

 

 ピスタールがのんきに言った。思わずムッとなる。

 

「どういう意味ですの、ピスタール」

「そ、そんな顔で睨まなくてもいいじゃないっすか……別に、そのまんまの意味っすよ。“魔法少女殺し”がどんな相手か知らないっすけど、先生が負けるとこ想像できねっすもん」

「慢心と過信は一番危険だと、私達は教わっているはずですけれど? ピスタール」

「だ、だから睨まないで欲しいっす……じゃあプリマステラは先生が殺されると思うっすか?」

「相手がどんな魔法を使うのかもわからないのに断言できませんわよ。そして情報不足の相手に皮算用するほど危険な行為はありませんわ。リカ、あなたはどうです?」

「私が倒したい!」

「聞いた私が本当に馬鹿でしたわ」

 

 ため息が口からこぼれ出る。物事を考えない才能に関してリカは一流だし、ピスタールは先生……というよりも“自分に勝てるユミコエルという魔法少女”をかなり高く見積もっている。比較対象が自分というのが一番問題だ。

 

「まあ、私も自分が凄いって思ってるわけじゃなくて……単に、私で対処できるならしたいなって思っただけ。どう? ファム」

 

 返答には数秒を要した。少し間をおいて、ファムが答えた。

 

「……ダメだぽん、ユミコエルはもう前線で戦う魔法少女じゃないぽん。後進の教育に専念してほしいぽん。この後も指導を頼みたい魔法少女たちがいるんだぽん、今日はその話もしたかったんだぽん」

 

 そう告げられると、ユミコエルもそれ以上は食い下がらなかった。小さく頷いて、「わかったよ」とだけ言った。

 

「それじゃ、今日は解散にしよう。ピスタール、プリマステラ、リカから絶対に目を離さないこと。身勝手な動きだけは絶対にさせないで」

「わかりましたわ」

「了解っす」

「何で何で何で何で何でぇー!?」

 

 叫び暴れるリカを二人押さえ込み、引きずってゆく。

 とりあえず厄介なことにならなくてよかった、と、プリマステラは胸をなでおろした。

 

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