【if】もしも緑谷出久に〝個性〟があったら 作:ウドの大木
目が覚める。見慣れた天井。昨日の出来事が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
僕はかっちゃんにノートを爆破された後、『超常協会』なる団体から手紙を受け取って――気づいたら、数年前に戻っていた。
そうだ、それでその後〝個性〟が発現した。火を操る〝個性〟だ。
昨日は色々ごたごたがあってそれどころじゃなかったけど――間違いない。
僕は、今『僕に個性が発現した世界』の僕なんだ。
そこにはやっぱり、手紙の『超常協会』が関係して――「出久!起きて!」
「あっ……はーい!」
お母さんに呼ばれ、僕は急いでベッドから飛び起き、リビングに向かった。
朝ごはんを食べ終え、学校の準備をして、ドアを開ける。空はびっくりするぐらい真っ青で、どこか僕の新しい門出を祝福しているようだった。
幸せな気持ちでいっぱいになりながら、僕は学校へ向かう。
―――――
学校では、色々なことがあった。
まず教室に入ると、クラスのみんなが僕を囲んだ。
「〝個性〟が発現したんだって?」「4歳以降に〝個性〟が発現する例は初めてなんだって!」「お前有名人じゃん!」……などなど、僕にも劣らないマシンガントークが繰り広げられた。大事になるのは嫌だったから口止めしておいたんだけど……誰が言ったんだろう。
クラスメイトをなんとか捌き席に座ると、昨日僕をリンチした子達がいた。
「あの……昨日は、ごめん」「〝無個性〟だからっていじめていいなんて訳ないもんな。ごめん」と、翼の子と手の子は素直に謝り僕も許したが、問題は主犯格。……かっちゃんだ。
「〝個性〟が発現したからって調子乗ってんじゃねーぞ、デク!てめえに〝個性〟があろうがなかろうが、一番になるのは俺だ!」
やはりかっちゃんはかっちゃんだった。顔は腫れ、涙の跡もくっきり残っているのに、すごい自信だ。
僕はじわじわと自分は〝個性〟持ちだという実感を持ち始めていた。もう〝無個性〟という檻ち囚われず、自由に羽ばたくことができる。
自分への期待を胸にそっとしまって、僕は帰路につく。
―――――
僕はまた、昨日の市民体育館に来ていた。自分の〝個性〟の特訓の為だ。
石は、磨かなければその輝きを最大限に発することはできない。いくら優れた原石だとしても、努力をそこにつぎ込まなければ誇ることはできないのだ。
だから、今僕は〝個性〟という原石を磨こうとしている。
僕の『火を操る』〝個性〟は、今のままでも十分強い。……けど、それじゃあオールマイトのような、『誰でも必ず救け、常に笑顔を絶やさない、最高のヒーロー』にはなれない。このままじゃだめなんだ。
できることは色々ある、その中で重要なのは……やはり、『操作精度の向上』だと……思う。目標は……思った通りのコースをきちんと走る。まだ発現したてだし、そのくらいが妥当かも。あと……やっぱり炎でドラゴンくらいは作りたいな。
目標も決まったし……早速特訓だ!
この後僕が小学生以下は保護者の監督無しでは〝個性〟が使えないと言われて体育館を追い返されるんだけど、それはまた別の話。
今のデクの個性の操作精度は、下手な人がやるマリカくらいなイメージです。本編には全く関係ありません。