【if】もしも緑谷出久に〝個性〟があったら 作:ウドの大木
トレーニング回と見せかけてのシリアスです。
爆豪勝己は苛立っていた。
それは、幼馴染の緑谷出久についてのことでだ。
出久は、〝無個性〟だった。全人口に2割のマイノリティ。そんな彼を、勝己は『デク』と呼び、蔑んできた。努力せずともなんでも平均以上にできてしまう自分と、どんなに努力しても他の人と並ぶことは無い『デク』。そのはっきりとした現実を見て、勝己は自分と真逆だった彼のことを、『一番すごくない』と決めつけ、虐げた。
しかし、そんな彼に〝個性〟が発現した。これは、勝己の中では大きな出来事だった。ずっと下に見ていた『デク』が、自分と同じ土俵に立った。いくら相手が努力してもひっくり返ることのなかった上下関係が、勝己の中で微かに揺らいだ。
プライドと自尊心の塊の勝己は、この事実に苛立っていた。一番下のはずの『デク』が、一番下ではなくなるかもしれない。いや、もしかしたらそこら辺の没〝個性〟共はもう抜いているかもしれない。その感情には、焦りなどなく、自分の考えに逆らった出久への怒りに埋めつくされていた。だが、勝己がいくらそのことに苛立ちを覚えようとも事実は変わらない。勝己は道端の石ころを爆破し、そのストレスを解消しようとしていた。
しかし、勝己が感じたのは苛立ちだけではなかった。『デク』への怒りの中に、確実に感じる違和感。勝己は、それの正体に気づいていた。
それは、〝個性〟の発現に伴う出久の変化だった。
1つ目。出久の各教科の成績が格段にアップしたこと。体育は自分に遠く及ばなかったが、国語や算数などの成績は並んだ。
2つ目。性格の変化。前はいじめられているところを見ると自分がかばっていたのが、間に入りなるべく言葉だけで解決しようとするようになった。
どちらも、〝個性〟の発現とはとてもではないが結びつけられなかった。まるで、出久に他の誰かが乗り移ったような、そんな変化だった。
聞こう。勝己は思った。ここで真相を知らなければ、何か大事なものがずっと欠けたまま。そんな気がした。
歩調は先刻より幾らか速まり、眉もいつもより寄せられた。決心したのだ。
運命の歯車は、まるでそれが必然かのように狂っていく。
―――――
僕は悩んでいた。個性の強化について。
体育館は、保護者と行かなければ〝個性〟は使えない。だからといって、僕の為に毎日頑張ってくれてるお母さんにこれ以上迷惑をかけるわけにもいかない。家ではある程度の〝個性〟の使用ならば許されるが、僕の〝個性〟は炎の〝個性〟。家で使ったら、大事なオールマイトのポスターやフィギュアが燃えてしまうかもしれない。
じゃあ、どこで特訓すべきだ……?燃えるものがなくて、人気のない、そして万が一何かが燃えても消火できるように、水があるところ。
……あった。家の近くの海浜公園。地面は砂で燃えないし、地元の人間は寄り付かない。それに、水もある。ただ……漂着物と不法投棄で物が多いのが課題かな……まあ、なんとかなるか。
そんなことを考えていた最中。
「おいデク!!!」
「ひぁ!?か、かっちゃん!?」
突然聞こえた怒鳴り声。聞き慣れてるはずだし、あれからいじめられてないはずだけど……やっぱり、トラウマってそう簡単には消えないか。精神年齢的には、こっちが随分上なんだけどなあ。なんか、腑に落ちないというか。
「いるんならさっさと出ろや!!ブッ殺すぞ!!!」
年上でも怖いものは怖いな。うん。諦めよう。
そう思い、ドアを開ける。
家だし、多分ぶちのめされないと思う、けど。
「聞きたいことがある」
いつもよりずいぶん怖い顔のかっちゃんが、さらに眉をひそめて言った。
「なあ……てめェ、本当にデクか?」
「……へ?」
いやあ、さすが才能マン。鋭い。
あと、原作15巻とすまっしゅ4巻買いました。面白かった。