「わぁっすごい入れ墨! それって乳首にも股間にも入ってるの? 」
「入ってるよぉ。何なら見る? 」
「見る見る! あとアサシン、メディアさんに擬態してから全裸になってほしい」
「いいよぉ」
今日のマスター:ルールブレイカー
<カルデア・ぐだ男の部屋>
一騒動起こった後、僕はマシュとロマンからのお説教を経てベッドに横たわっていた。
明日のオルレアンへのレイシフトに備えて今日は早めに寝ておこうという僕の考えにより、全身の倦怠感と共に寝息を立てている。
しかし急に催したのかベッドから立ち上がり、股間に走る尿意を感じながら寝間着姿のままトイレへと走った。
僕の部屋に生憎トイレは備え付けられておらず、カルデアの共用トイレで用を足すしかない。
「あ~……」
なんとも気だるい声を出しながら僕は用を済まし、濡れた手をタオルで拭う。
再び寝直そうと思い欠伸を掻きながら自分の部屋に辿り着くと、僕はポケットに手を突っ込んだ。
「……ん? 」
各サーヴァントや職員にあてがわれた部屋はカードキーによってロックされている。
なので必然的に再び部屋に入り直すのにはカギが必要だ。
「……ない」
しかし、目当てのカードキーはどこにもない。
トイレに落としたのかと思って戻ってみるも、白いカードキーはどこにも見当たらなかった。
これもしかしなくても詰んでるんじゃないか?
「やっべぇ……寝ぼけててカードキー忘れたみたいだ……」
不幸な事に現在深夜0時。
セキュリティ担当の職員さんも寝ている時間だろうし、サーヴァントたちも各々の行動を取っている。
おそらくほとんどの人間が眠りについているであろうこの時間帯に、僕は最悪の事態に陥ってしまったわけだ。
仕方ない、いったん黒髭の部屋にでも向かおう。
きっと彼も起きてゲームとか何やらしているはずだ。
「おーい、黒髭? 今いるー? 」
僕は黒髭の部屋の前に立ち、白いオートロック式のドアを何回かノックする。
瞬間、目に隈を作りながら血走った目で僕を見つめる彼が現れた。
「……なんでござるか、マスター」
「インキーしたから部屋に入れてほしい。できれば朝まで」
「……非常に申し訳ないんだけど、拙者同人誌描くのに徹夜続きで死にそうでござる。割と本気で座に帰るの考えてしまった」
こんな真っ白な黒髭見たことない。
さすがに可哀そうなので僕は彼に謝罪の言葉を送ってから立ち去り、再びカルデアの暗い廊下を歩き始めた。
僕が次に向かったのはロマ二の医療室。
「ロマン、今入ってもいいかい? インキーしたからちょっと助けてほしい」
「マギ☆マリと徹夜続きで死にそうだから無理、ごめん」
次に僕はマシュの部屋へ。
「マシュ、君の部屋に入れてほしい。インキーしちゃった」
「そう言って私に変なことするつもりですよね。エロ同人みたいに」
そう言われるのも無理はない。
というかマシュのパジャマ姿可愛かったな。
上下ピンクとか普通に発情しそうだったよ。
マシュにも断られ、次に僕は小次郎の部屋へと足を進めた。
「――あぁ、主殿ォ? 今くーふーりん殿と酒盛りしてるでござるぅ」
「ボウズゥ、こっちきて俺の酒注いでくれぇ~」
僕は無言で立ち去る。
思わず絶望に打ちひしがれ、廊下で両ひざを着いた。
「やべぇェェェェ!! どいつもこいつも役に立たねェェェェ!! いやインキーしたのは僕のせいだけど!! 明日オールで言ったら絶対ボコボコにされちゃうぅぅぅぅ!!! 」
「うるせぇ!!! 」
そりゃ寝ている最中に大声でツッコんだら怒られるのも当然である。
でも叫びたくもなるよね。
今ならアメリカ横断編のミ〇ターの気持ちがわかる気がする。
「……おや。マスターか、どうかしたのか? 」
「あ、どうもこんばんは。ひどく悩んでおられるがどうかしたのですか? 」
「せ、セイバーにエミヤ! 助けてくれ! 君たちが最後の希望なんだ! 」
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<カルデア>
「つまり、トイレに行った時に鍵を忘れて部屋から閉め出されてしまった訳か。なるほど」
「それは困りましたね……その様子ですと他の方にも断られたみたいですし……」
「うん。ほんと絶望で絶頂に達しそうだったよ」
「ドMにも程があるだろお前」
訳を話している間に僕たちは元の部屋の前に辿り着く。
暗い照明が二人を照らしている光景は、何故か死ぬほど見たことのある光景だった。
「マスター、私にいい考えがあります。少し離れててください」
「ん? 何を……」
えっへんと言わんばかりのドヤ顔でセイバーは鎧を見に纏い始め、手に伝説の聖剣エクスカリバーを発現させる。
あれ、なんだか嫌な予感。
「エクスカリ――」
「おいィィィィ!! 止めろぉぉぉぉぉ!! ここ一帯吹き飛ばすつもり!? つか僕ごと消そうとしてなかった!? 」
「……ちっ。バレたか」
「何舌打ちしてんだテメー! たかがケツにエクスカリバー突っ込もうとしただけだろ! まだ恨んでんのか! 」
「いやそれ怒って当然ですからね!? 」
まあ恨まれるのも当然である。
次にエミヤが僕らの前に立ち、ドアの前に右手を翳した。
「おお! もしかして投影魔術でカードキーを出そうって言うんだね! さすがエミヤ! どこぞはらぺこあおむしとは違うね! 」
「誰がはらぺこあおむしですか! ほんとシバきますよ! 」
「でも食っても食ってもその発育には……」
「テメーぶっ殺されてえか」
セイバーが普段の口調を忘れて胸倉を掴んだ辺りでエミヤの投影は終わったようである。
僕セイバーも可愛いと思うんだ、特に私服の黒タイツが死ぬほどエロい。
だが次に僕が見たのは白い長方形の塊が部屋のドアに設置されている光景。
何やら嫌な予感がする。
「マスター、これでどうだ? 」
「えっこれ何? すごい物騒な匂いするんだけど」
「C4爆弾だ」
「丸ごと爆破してどうするつもりだテメェ! しかも丸眼鏡掛けて言うんじゃねえよ! どこぞの爆弾魔か! 」
ツッコミってこんなに大変なんだと僕は痛感する。
改めてマシュやきよひーの偉大さがわかったよ。
「だいたいなんでそんな奇行に走ってるの二人とも! 深夜テンションでアホになったの!? 」
「あわよくばマスターに復讐をと思ってな」
「こんなとこであわよくばなんて思うんじゃねえよ! 僕生身の人間! 君らと違って蘇生不可! 」
「ただのうんこ製造機では? 」
「その顔でうんこって言っちゃダメ! 色んなとこから怒られる! 」
閑話休題。
僕らには何も手立てがない事に気づいたのか、三人で廊下の端っこで体育座りをして落ち込んでいる。
「……どうしよう……」
「C4も宝具も撃てないじゃどうしようもないな……」
「もう床で寝ればいいんじゃないですかね? マスターなら大丈夫ですって。私たちは個々のベッドで寝ますから(笑)」
「(笑)じゃねーよ! 何満面の笑みで立ち去ろうとしてんだテメーら! 関わったのオメーらだからな! もう寝るとは言わせねーぞ! 」
「嫌です。あっ別に私はシロウと寝るという意味で言った訳では……」
「せ、セイバー……」
何こいつら。
深夜だとみんなアホになる病気でもかかったの?
二人とも何顔赤くしてんだよ。
当てつけか? 僕への当てつけなのか?
「あれ? マスター? こんな夜遅くにどうしたの? 」
「あ、アストルフォきゅん! あぁ……今は君が女神に見える……」
「わっ、くすぐったいよぉ~」
同じ男はと思えないほどアストルフォきゅんの肌は柔らかい。
マジでこのままお持ち帰りしたいくらいである。
「アストルフォきゅん……僕は今非常に困っているんだ……。どれくらい困っているかって言うとエロサイトに架空請求された中学生時代のように……」
「割と深刻なんだね……分かった! ボクに任せて! 」
「あ、アストルフォ! 何か打開策があるとでも言うのか! 私たちでも解決できなかった代物だぞ! 」
「うるせー脳筋バカップル! これから僕はアストルフォきゅんと深夜ランデブーすんだよぉ! 」
何を思ったかアストルフォきゅんは僕の胸の中から離れ、カードキーをかざす部分へと近づく。
「オラァッ!!! 」
普段の可愛いアストルフォきゅんとは思えないほどの野太い声。
何故か画風も変わっているのが妙に気になるが、彼の拳はカードキーの部分を易々と貫いた。
そして、嫌な音を立てながら僕の部屋のドアは開く。
「ほら、開いたよ? マスター、明日遅刻しちゃダメだからね~」
沈黙。
そんな僕らを無視して悠悠自適に立ち去っていくアストルフォきゅんを一瞥し、僕は部屋へと入る。
「…………あの、これからお茶会でもしない? 」
「出来るかァっ!!! 」
「今日座に還ったサーヴァントいねえしワシらだけじゃな所長。つか腹減った。そこのインスタントラーメン取って」
「自分で取ってよノッブ。というか私が貴女の相方でいいの? 」
「いいんじゃいいんじゃ。あの人斬りサークルの姫も儂離れする時じゃろ。でもあいつの着替え画像流したら面白そうじゃの」
「ここに丁度良くパソコンあるわよ」
「うっしゃあ! 震えるぞインターネット! 」
「ネットリテラシー三段突きぃぃィィィィ!!! 」
「ケツがァァァァァ!!! 」
「あたしのパソコンンンンンン!!!! 」