「我に命令を下すか、童。良い、申してみよ」
「おままごとしましょう? きっとあなたも楽しめると思うわ、ねぇジャック? 」
「うん! 」
「……ならば貴様が嫁で、貴様が夫と言ったところか。我は息子役だな」
「なにあれ」
「ルートほぼ全部畜生ムーブしてた奴の行動とは思えねぇな」
今日の兄貴とぐだ男:ケツに天の鎖
<騎士の根城>
「ねえどうしてくれるの騎士様。僕はまだしも黒髭とアマデウスも股間以外隠れてない状態になっちゃったじゃん」
「す、すまない……まさかこの地に降り立ったマスターだとは……」
「まあまあ。少なくともエネミーと見間違えるのは仕方ないでござるよ。普通に考えて人間ヘリコプターとか頭おかしいですぞ」
負傷しているのにも関わらず、目の前のイケメン騎士は申し訳なさそうな表情を浮かべながら正座をしている。
出会い頭にバルムンクはひどいと思うんだ、ラブコメのヒロインでもそんな事しないよ普通。
「ともかくマリアたちには無事に彼と合流出来た事は伝えておいたよ。あとは僕たちの服を探さなきゃね」
「そういえばここに赤タイツと青タイツだけはあるのだが」
「モジモジ君かよ」
「すまない。でもこれしかないんだ」
大人しく赤青のタイツを身に纏うアマデウスと黒髭。
黒髭に至っては妙に筋肉質なせいか普通にボディビルやってる人に見える。
「先輩! 無事ですか……ってうわぁ……」
「待ってくだちいマシュ氏。これ誤解だから。決してマスターにシンパシー感じたとかじゃないから」
「アマデウス、それの着心地は如何なものかしら? 」
「めっちゃ良いよ。マリアも着てみる? 」
ナイスアシストアマデウス。
マリー様のタイツ姿とか純粋に興奮する。
何故か兄貴やエミヤでさえも親指を立てて満面の笑みを浮かべていた。
「君たちが……そうか。彼らの仲間という訳か」
「不本意ながらですけどね。とにかく、今は時間が無いんです。竜殺しの騎士というのは貴方の事ですね? 」
「如何にも。傷は既に君たちのマスターに治してもらっている」
「なら急いでください。すぐそこに、私達を追う竜種が近づいてきているのです」
何、と騎士が顔をしかめながら剣を手に取り立ち上がった瞬間。
聞き覚えのある咆哮と瓦礫の崩れる音が響き渡り、僕たちの身体を硬直させる。
「……なるほど。召喚されたのはこの為か……」
轟音の聞こえた元へ向かうとそこには相変わらずドラゴンは健在で、僕たちを見つけ出したのか更に元気になってる気がした。
こんなに熱いラブコールをくれるならせめて擬人化してくれ。
「おや、ここにいましたか。見つけましたよ、私」
「あっクラスに一人はいるツンデレキャラポジの女の子だ! 」
「誰がツンデレよ! べ、別にあんた達を見つけたかったわけじゃないんだからね! ただ聖杯で願いをかなえる為なんだから! 」
何あの子めっちゃノリいいじゃん。
ドラゴンを連れて僕たちの前に現れた黒いジャンヌは咳ばらいをしながら旗を掲げた。
「……瀕死のサーヴァントが数人、フン。これじゃあ肩慣らしにもならないわね」
「やべえぞマスター! あのトカゲモドキ、また火を吐いてきやがる! 」
「私がやります! 先輩、下がって! 」
マシュとクーフーリン、それにジャンヌが僕の前に立ちはだかり、各々の宝具を展開する。
しかし奴の吐く炎は3人の魔力を以てしても到底守り切れるものではなく、勢いが更に増していた。
『うわっ!? なんだこのエネルギー反応……! 』
「くそっ! もう持たねえぞ! おい竜殺しとやら! 準備できてんのか!? 」
「――無論。君達のおかげで、随分と回復できた」
降り注ぐ火の粉を払いながらイケメン騎士がドラゴンの前へと躍り出る。
「ふ、ファフニールが怯えている……? まさか! 」
「二度姿を現すのなら、この俺が二度この手で打ち倒すまで! 蒼天の空に聞け! 我が名はジークフリート! 汝を嘗て打ち滅ぼした者だ! 」
そう意気込むと騎士――ジークフリートは手にした剣を天高く掲げた。
辺りに風が立ち込み始め、その風に雷が纏っていく。
「宝具解放!
風を纏ったその剣から放たれる、必殺の一撃。
その攻撃を羽に食らったのか、ファフニールは情けない声を上げながら僕らの前から去って行く。
「はぁ……はぁ……。ひとまず、これで……」
「ジークフリート! 」
宝具を展開した瞬間に彼は倒れ、ジャンヌとマリーによって回復魔法を施される。
霊基はまだ消滅していない、おそらく病み上がりなせいで気を失ってしまったのだろう。
「ジャンヌ、マリー。今は応急処置だけ済ませて安全な場所へ撤退しよう。幸いボクのヒポグリフならジークフリートを乗せられるよ」
「お願いします、アストルフォ。クーフーリンさん、彼に付いて行ってあげてください」
「おう、分かった。坊主たちの事は任せたぜ」
そう言いながらアストルフォくんは大きな鷲の魔物を召喚し、気を失っているジークフリートの身体を乗せた。
鷲の背中に彼は跨ると、クーフーリンの兄貴も同じようにして彼の後ろに乗る。
「……む」
「気づきましたか、アーチャー。まだまだ我々を追うサーヴァントたちがいるようです。マスター、どうされますか」
「みんな、いけそうかい? 」
今のところ戦えるメンバーは黒髭にセイバー、エミヤに小次郎と十分な戦力が揃っていた。
アマデウスには魔力を使ったマリーとジャンヌの防衛を行ってもらうとして、マシュはずいぶんと疲弊している。
「やれ……ます……。まだ、私は……! 」
「無理はしないで、マシュ。君は僕の隣にいてくれ、それだけで良い」
「でも……! 」
「隣にいるという事だけでも、僕にとっては心強い。盾がいるなら、なおさらだ」
そんな事を話している最中に、漆黒の鎧をまとった騎士と長いコートに銀髪のイケメンが僕らの下へ姿を現した。
二人の姿を見るなり、マリーたちの護衛に回っていたアマデウスが苦虫を嚙み潰したような声を上げる。
「お前……! 」
「……やはり、君達だったんだね。マリア、それに……アマデウス」
「サンソン……」
シャルル=アンリ=サンソン。
マリー・アントワネットを処刑を執行した男が、黒い甲冑の騎士を連れて儚げな視線を僕らに投げかけた。
対する黒の騎士は、セイバーとマシュを見るなり絶叫する。
「Arrrrrrrrrrrr!!! 」
「バーサーカーか……。だがこの剣に甲冑……どこかで……」
「セイバー! 来るぞ! 」
自身の狂気を剥き出しにしながら騎士はアルトリアに斬りかかった。
無論の事その程度の斬撃に打倒される彼女ではない。
「……そうか。マシュ、マスター。お下がりください。この騎士めは、私が討ち取ります」
「君一人で大丈夫か? 」
「無論。アーチャーはアマデウス殿の援護に回ってください」
互いに距離を取った所で、アルトリアは透明化していた剣を具現化させて切っ先を地面に刺す。
エクスカリバー。
騎士王アーサーの持つ、最強の宝剣。
「Arrrrrrrrthurrrrrrrrr!!!!! 」
「来い。……再び私が、貴殿に引導を渡そう」
「今日珍しく本編シリアスじゃの。あっ皇女そこにあるリモコン取って」
「はい。……所長とやら、私にミカンの剥き方を教えなさい」
「カドック君教えてあげてちょうだい」
「何で僕が……」
「……お願いカドック。それとも私のお願いを聞くのは嫌? 」
「い、いやそんな事ないけどさ……」
「は? なんですかあれ? 無明三段突きしていいですか? 」
「やめとけ沖田。お主クッソ身体弱いんじゃから凍って死ぬぞ」
「……我が娘を頼むぞ、そこの魔術師」
「うへぇデカい象さんじゃ! 儂の事肩車してぇ! 」
「よかろう」