「マスター……そう言ってもらえるのは嬉しいですけど服着てください」
「僕毒耐性あるからへーきへーき。ほら抱き着いておいで」
「……主よ。何故我に抱き着いた」
「あっ」
今日のぐだ男:首を出した
<オルレアン・草原>
「……ふう。ここまで逃げれば大丈夫かしら? 」
「はい。ってあれ……? マスターの姿が見当たりませんが……」
「みんなぁ~! 」
ジャンヌ・オルタ率いるサーヴァントたちからマリーの宝具であるガラスのペガサスで逃げ切り、崩壊した街からこの草原に辿り着いた。
まあ僕はマリーちゃんに踏んでほしいと頼んでしまったせいか、両陣営からフルボッコにされた僕は彼女の宝具から蹴落とされてしまう。
なので僕は自律機動型飛行生命体と化し、こうして股間のマイサンをヘリコプターのローターよろしく回転させて空を飛んでいる。
「…………えっ」
「マリーさん、申し訳ないんですがあの変態が私たちのマスターです。もし変なことをされたら迷いなくぶっ殺してください」
「はっはっは! 某のマスターは面白い男よなぁ! 」
「どうしようマシュ! 小次郎さんが泣きながら笑ってるよォ! 」
僕の陣営から阿鼻叫喚の様子がよく伝わってくるが、気にせずに僕は華麗に地面へと着地した。あのアストルフォきゅんでさえも若干僕に引いてるのが辛い。
「まあマスターの事は置いておき……ドクター? 反応は見られますか? 」
『いや、反応は消失してるよ。あとぐだ男君のストッパーとしてティーチをそっちに呼んでおくね』
『ファッ!? 拙者いつからマスターのストッパーになったんでござるかぁ!? だって今回はお休みだって……あっちょっ! この服装のまま召喚されるのきついから! 今普通に私服だから! 』
通信端末から聞こえてくる黒髭の必死の抵抗虚しく、僕の前に何故かTシャツ短パン姿の黒髭が現れた。彼は額に冷えピタを貼り、手には作りかけのプラモとスミ入れ用の筆ペンが握られている。
「なんだ黒髭! その恰好は! ちゃんと特異点を無くすっていう意識があるのかい!? 」
「マスターに言われたくねーよ! あんたが一番やる気ないでしょ!? 」
そう思われるのも仕方がない。何せ僕は今普段の魔術礼装が焼け落ち、黒タイツを穿いているのだから。マリーちゃんの隣にいる派手な服装に身を包んだ金髪のイケメンが僕の下へと近づいてくる。
「いいねぇ、君。何か芸術性を感じるよ。バンド組まない? 」
「マジで!? ようやく僕の魅力に気づく男が現れたとは……君、名前は? 」
「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。しがない音楽家さ」
自分ではしがない音楽家とは言っているものの、生のモーツァルトに出会えるとはかなり貴重な体験だ。僕は彼と握手を交わし、マシュから渡された灰色のパーカーを羽織る。
「それでドクター。これからどこへ向かえばいいでしょうか? 」
『この先の森林に霊脈の反応が見られた。ぐだ男君の魔力も温存しておきたいし、ここで魔力の補充を行おうと思うよ』
「魔力の補充……? はっ! つまり僕は女性サーヴァントととのいかがわしい行為を体験できる……? 」
「マスター。それは止めにして拙者の懐に仕舞ってある本でシコるといいでござるよ」
「なにぃ? そこまで言うなら……うーんこれは爆シコ」
流石に黒髪の巨乳お姉さんの同人誌を持って来られたら僕もこう言わざるを得ない。既に見慣れた痛々しい視線を肌で感じながら僕たちは森林へと入る。
ダ・ヴィンチちゃんによるサーヴァント相性の説明を受けながら、いったん休息を取ろうと開けた野営地へと僕は腰を落ち着けた。
「落ち着いたところで、改めて自己紹介をさせて頂きます。私はマリー・アントワネット。クラスはライダー。召喚された理由は不明ですけど、よろしくお願いいたしますわ」
「改めて、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。僕も彼女と右に同じさ。確かに高名な芸術家だけどここに召喚された理由は分からないね」
「僕と一緒に特異点を救う……それだけでも理由は十分さ。マリー、モーツァルト。この特異点を救う事に協力してほしい。僕の行動からは見て取れないかもしれないけど、この思いだけは本気だ」
いつもとは違う真面目な雰囲気を漂させる僕に、マシュたちの不安げな視線が突き刺さる。
仕方のない事だけど、本当にこの歴史を修正する事には本気だ。
「……分かりました、マスター。わたくしは今から貴方のサーヴァントとして、仕える事を誓います」
「うん。僕は分かっていたよ。この世界が滅ぼされるという事は、僕の偉大な作品たちが受け継がれない事に繋がるからね」
「ありがとう、アマデウス、マリー。ジャンヌダルクと一緒に、このフランスを救おう。歴史が変わるという事は、君たちの生きてきた人生が全て否定されたことになる。僕はそれが許せない」
僕は特に歴史の授業が大好きだった。それこそ、マリー・アントワネットやモーツァルトのような歴史に名を刻んだ人間たちが否定されるようなことは僕には許せない。
佐々木小次郎と言い大海賊エドワード・ティーチと言い、僕の下には多くの高名な人間が集まり過ぎた。
ならば僕は彼らの人生を肯定するまで。
「まあ! そちらの方はかのジャンヌダルクだと言うのね! 光栄だわ、わたくしのような人間が聖女と呼ばれた方と共に戦えるだなんて! 」
「私が聖女と呼ばれたのはあくまでも結果論です……。でも、そう言っていただけると私も救われます」
「ねえアマデウス。二人のカップリングどう思う? 」
「最高」
「拙者も同意」
ねえマシュ。いきなりふざけた瞬間にケツに盾を刺すのはひどいと思うんだ。隣の黒髭も頭にジャンヌの槍を刺され、アマデウスもマリー・アントワネットに足蹴にされている。
どんなご褒美だアマデウス。僕は羨ましいぞ。
「……とりあえず。霊脈の魔力からマスターの魔力を回復し、一旦休息をとってから次の目的地へと進もう。そうだったな、マシュ? 」
「そうです、エミヤさん。ほら、先輩も早く立って」
「僕のマイサンは既に勃っているよ」
僕の意識はマシュの痛烈な一撃により再び彼方へと消し飛んだ
「なんだか今回は進展ないわね。ねぇオルタ、二人でゲーム実況しない? 」
「ここから配信できるのか? まあいいだろう、今回のゲームは何だ」
「チーターマンよ」
「時代背景考えろアホ」