「いつからあの人斬りサークルの姫が抜ける対象に……うわっマジじゃん。ワシより薄い本多いじゃん! ふざけんな! 儂で抜け儂で」
「えぇ、頼むよノッブ。人の骸骨で乾杯させてあげるから」
「それマジ? ここにな沖田の着替え写真があるんじゃが……」
今日のぐだ男とノッブ:無明三段突き
<森林>
「とりあえず、話は分かりました。このままあの黒いジャンヌダルクにフランスを滅ぼされてしまっては、世界の危機なのですね。形は違えど、これもまた聖杯戦争、という訳ですか」
「そうですマリーさん。あとその足元にある音楽家を僕に置き換えてほしいかなって」
「ふざけんな! この位置は僕のもんだぞ! 」
「黙れ変態! 」
「お前もだろうが! 」
マリー・アントワネットの足元に佇むアマデウスが羨ましすぎる。本当に僕と変わってほしい。
「……ちっ」
「あっごめんマシュ、決して君の足が嫌だって事じゃないんだ。むしろ気持ちいいから大丈夫だよ」
「黒髭さん、この人やっぱり殺していいですかね? 」
「駄目ですマシュ氏。そしたら世界終わっちゃいますぞ」
僕の頭に乗っているマシュの足の力が更に強まっていく。きっと彼女は生粋のドSに違いない、僕にはわかるよ。とりあえず足蹴にされていた僕たちはその場から立ち上がり、身体に付いた砂埃を落とした。
「でも、こう見てみると戦力は拮抗しつつあるよね。アマデウスもマリーも来てくれたし、それにボクたちにはジャンヌもいる。勝てる見込みがだんだん沸いて来たんじゃないかな? 」
「あ、分かった! ひらめきましたわ! こうして私たちが召喚されたのは英雄のように彼らを打倒する為でしょう? 」
アストルフォきゅんとマリーの絡みが可愛すぎる。全く会話が頭に入っていないのはいつもの事だが、僕が口を開こうとした瞬間にマシュから殺意を向けられたので黙っておいた。
「根拠のない自身はいいけどね、マリア。相手は掛け値なしに強敵だぞ。ジャンヌとマシュ、それにぐだ男とそのサーヴァントたちは戦いに慣れているとしても……僕と君は前線に立つタイプじゃあない。戦力差は未だに空いたままだと思うけどね」
「……確かに、アマデウス殿の言う通りで御座るな。ヴラド三世にエリザベート女王、加えてジャンヌダルクとその使役するサーヴァント……。某が見た所彼らはなかなかの腕の持ち主よ。特にあの紫髪の聖女とやら……彼女は手ごわいぞ」
小次郎の言葉に周りの空気は重いものへと変貌する。本来は武人としての成り立ちがあるからこそ、小次郎の感覚は本物だ。
「それにあの金髪のセイバー……。彼女は君の存在を知っているようだったが? マリー・アントワネット」
「……そうね。もし彼女が私の事を知っているのなら……きっとシュヴァリエ・デオンじゃないかしら。分かるのよ、私」
「あの子の名前はデオンちゃんっていうのか……。今度セクハラしないと」
「たぶん剣でズタズタにされると思うわ。あの子めちゃくちゃ剣強いし」
可愛い子にボコボコにされるのなら本望である。言葉には出さないが顔に出ていたのか、黒髭とアマデウスのみが頷き、僕はより一層絆を彼らと深めた。
「もし彼らが改心するのなら、こちらの陣営に組み込める事はできませんかな? マリー氏の知り合いならばそれが容易だと拙者は考えますぞ」
「それは難しいと思います。私の能力で彼らの能力を見てみたのですが、黒い私により狂化を施されているようですね。歴史の有無など関係なく」
『……聖杯の力か。狂騒の話が無くても英霊にバーサーク状態を付与できる……厄介な話だ』
僕にもバーサーク状態を付与してほしい。そしたら思いのままに女性サーヴァントへのセクハラが可能になるのに。また顔に出ていたのか、黒髭とアマデウスは"わかる"と口パクで僕に告げ、更に絆が深まる。
「でももし仮に、こういったサーヴァントが召喚されているのなら……マリー達の他にも召喚されているサーヴァントがいるという事じゃないのかな? ボクたちも彼らに対抗するためにさ」
「まあ! それってまだ新しい誰かに出会えるって事ね! 」
「そうだねマリー。とりあえず僕も踏んでほしい」
「えい」
踏むって事は蹴る事じゃないんだよマリー。流石に本気の蹴りは血を吐くからやめてほしい。
でも気持ちいいから良しとする!
「ますたぁが踏まれてるけどいいんですか? 」
「既に見慣れた光景だ。気にすることはない。というかこの時の方が話を割られずに済む」
「おいゴルァ! エミヤてめぇ扱いが雑だぞ! お前の元カノ連れてこい! 」
「傷を抉るな! 全ルート回ったら心が死にかけたんだぞ!! 」
切実すぎるエミヤの言葉に僕は正直引く。
心がガラスと言わんばかりの彼の悲鳴に隣の黒髭がエミヤの方を叩いた。
「と、とりあえずここで一旦休息を取りましょう。霊脈も確保できたことですし、サーヴァントを召喚されては如何ですか? 」
「なんか踏まれた状態で召喚すると女性サーヴァントが出そうな気がする。よし召喚だ」
なんとも緩い状態で令呪の刻まれた右手を展開された召喚陣にかざす。
すると9つの光球が普段とは違う虹色の光を生み出し、金色のカードが周囲に光を放った。
そこから青いドレスを纏った金髪の女性が現れ、僕は思わず目を見開く。
「問おう。貴方が私のマスターか? 」
「…………」
「……あれ? あの、貴方が私のマスターか? 」
まさか本当に女性サーヴァントを召喚できるだなんて。隣のエミヤはなぜか右手で顔を覆っているが、気にせずに僕は彼女と話を続ける。
「や、やあこんにちわ! 僕はぐだ男。踏まれている状態だけど僕が君のマスターだ」
「は、はい……よろしくお願いします。マスター」
まさかかの有名なアルトリア・ペンドラゴンをこの手で召喚できる日が来るとは。マリーのおみ足というのは本当に力のあるものらしい。きよひーやマシュ、ジャンヌが何故か可哀想なものを見る目でアルトリアを見ているが、それは見なかった事にしよう。
「おや? その赤蓑は……もしやアーチャーか? 」
「あ、あぁ……そうだ、セイバー。また会うとはな」
「某もおるぞ、セイバー。久しいな」
「おお! いつぞやの侍ではありませんか! あの時は貴方と剣を交えられて光栄でした」
「うむ。此度は同じ味方となる。共に戦えて光栄だ、騎士王よ」
そういえば、小次郎とエミヤは過去の聖杯戦争でアルトリアと戦ったライバル同士だったな。このように記憶を引き継いでいるとなるとなんともマスター冥利に尽きる。
「ねえねえアルトリア。アーチャーの事は……ごにょごにょ」
「え? ま、まあそう呼ぶのは構いませんが……」
何やら不穏な雰囲気を感じ取ったのか、エミヤからの睨みが僕に突き刺さった。
ふふ、もう遅いぞエミヤ。ネタは仕上がっているんだ。
「えっと……その……よろしくお願いします……シロウ」
「あぁァァァァッぁぁァァァ!!!! マスターぁァァァァッ!!! 」
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<夜・森林>
変態紳士にしてはうまく気を利かせたつもりなのに当の本人は全力を以て僕を殴ろうとするのに納得がいかなかったが、ひとまず召喚も終えて僕たちは森林で火を熾しながら野営地を製作していた。
ぶっ殺してやると言いながらエミヤの外見が赤い服装から黒いものに変わりかけたのは正直驚いた。
今後エミヤの元カノについて言及するのは止めておこう。
「ねえマシュ。すごい静かだね。まるでこの世界に僕と君しかいないみたいだ」
「は? きっしょ」
「辛辣」
どこでそんな言葉覚えたの。マスターそんな言葉づかい許しませんよ。
「……主殿。雰囲気と普段の言動を考えては如何か。そんな事では、女子の一人も落とせんぞ? 拙者が手本を見せよう」
そういうと小次郎はマシュの隣へと近づき、彼女の肩に羽織っていた陣羽織を着せる。
元々端正な顔立ちの小次郎があんなことをやってしまっては僕のダメっぷりが更に際立つからやめてほしい。
「マシュ殿。いくらサーヴァントとして契約した身とは言え、お主は生身の女性と大差ない。そのお身体をご自愛されよ」
「あっ……小次郎さん……有難うございます……」
「うむ、お主はやはり笑っている方が美しい。努々忘れてはならぬぞ、マシュ殿は可憐な華のように美しいとな」
「そ、そんな事ないですよ……えへへ……」
なんだあの顔。僕に一度も見せた事無いぞ。おい小次郎、僕へそのサムズアップを向けるのを止めろ。
まるで童貞とイケメンの差を見せつけられた様じゃないか。
ようし、僕もやってやる。
「マシュ。僕のズボンも穿くといい。そんな彫刻のようにきれいな生足を出してしまっては寒いだろう」
「いやぁぁぁぁぁ!!! なんで脱ぐんですか!!? 」
忘れてた。今の僕は黒タイツだけだったんだ。また生まれたままの姿に戻ってしまった僕に、マシュの張り手が突き刺さる。先ほど召喚したアルトリアの視線が既にドン引きしたものに変わってるのはご愛嬌。
「主殿……流石に脱ぐのはまずいなぁ……」
「ぶぐぐぶご(前が見えねェ)」
「マスター、ボクのマント着てね? さすがに全裸は絵面的に終わっちゃうから」
アストルフォきゅんの白いマントが僕の全身を包み込む。男なのになんでこんないい匂いがマントから漂うんだろう。もうアストルフォきゅんは女の子でいいんじゃないかな。
「ローランみたいなことはしちゃ駄目だよ? 女の子に嫌われちゃうからさ」
「僕はアストルフォきゅんさえいればいいかなって思うんだ。なあ黒髭にアマデウス」
「全面的に同意」
「僕もそう思う。ってかその性的な容姿で男ってのが反則だよね」
各自ストッパーに足蹴にされる辺り、僕たち三人は本当に気が合うのかもしれない。
うーむ、世界の偉人たちに変態性を並べる僕って何者なんだろうね。
そんな時、エミヤの隣に座っていたアルトリアが何かを感じ取ったようでいきなり座っていた丸太から立ち上がる。同時に僕の耳に装着されていた通信端末が起動し、ドクターの声が響いて来た。
『ぐだ男君! サーヴァント反応だ! おそらく黒いジャンヌの手先だろう! 』
「何ッ! 女か!? 男か!? 」
『喜べぐだ男君! 女の子サーヴァントだ! 』
「ッしゃぁぁぁぁぁオラァァン!!! 」
アストルフォきゅんのマントの留め具を留めて全身を隠した後、足蹴にされていたきよひーの足から立ち上がると僕は反応があった先へと視線を向ける。
その先には半分肌が露出している礼装を纏ったサーヴァントであり、そしてさっき僕がセクハラしたサーヴァントであった。
「……こんばんは、皆様。寂しい夜ね」
「何者ですか、貴女は? 」
「何者? そうね……自分でもわからないのが辛い所です。壊れた聖女に使役されて――」
「あっ!! 君はあの時のドスケベエロエロサーヴァント!! 」
まさに運命と言っても過言ではないだろう。紫髪の彼女はその胸に提げた二つの豊満なメロンを揺らし、僕らの前へと現れた。
あのおっぱいでサーヴァントは無理があると思うんだ。
「あっ、あんたは! よくもあの時はえっちな事言ってくれたわね!? ふざけんじゃないわよ! 真面目な場面だってのに一人だけ赤くなっちゃったじゃないの!? 」
「だってその服装で見るなって方が無理あるでしょう!? どう思うみんな!! 」
「無理だな」
「あの胸に包まれたいで御座る」
「拙者は踏んでほしい」
「屈服させたいね」
「ボクは甘やかされたいな」
ほれ見ろ。エミヤや小次郎、アストルフォきゅんでさえも同意してくれるとは思わなかったが男性陣からは賛成で一致のようだ。ここまで結束が固くなったのは初めてだね。
対して女性陣からは養豚場の豚を見る視線が僕らに投げかけられた。正直気持ちいいのでもっと見てほしい。
「あぁもう! せっかくかっこよく登場したっていうのに! 覚悟しなさいね!……コホン、覚悟なさい。異世界のマスターよ」
「いやそのキャラは無理があるでしょ」
僕にしてはまともな事言ったのに殴るのはひどいと思うんだ。
「うぅ……セイバーが"私を呼ぶ声がする"とかいう電波的な事言ってアホ毛をくっ付けてどこか行ってしまったわ……どうしよう……」
「そういうわけで儂颯爽登場! 沖田にケツを無明三段突きされてこの部屋行きじゃ! 」
「えっヤバくない? 普通に年末の特番パクリじゃないこれ? 」
「こまけぇこたぁいいんだよ! ここからぐだぐだ所長オーダーの始まりじゃ! とりあえずこの企画の名前を冬木エンカ〇ントに変えようと思うんじゃが」
「本当に殴られるからそのタイトルは止めましょうね!? 」