ハイスクールDragon×Disciple   作:井坂 環世

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1章2話目です。

説明回ですね。


2 君が主で下僕が俺で

「うおおおぉぉぉぉぉっっっ!!??」

 

ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!

 

ガバァツと一誠が上半身を勢い良く起こした。ハァハァと呼吸を大きく乱していることが一誠の動揺具合を大きく表していると言えるだろう。しばらくは焦点が合わなかったのだろう瞳に光が宿ると同時に、自分が今ベッドの上にいることに気づいたようだ。

 

周囲を見渡して、そして未だに音を響き渡らせている目覚ましデジタル時計を見つけるとその音を止めながらも一気に手元に引き寄せその時間を確認する。

 

7時。いつも目覚ましをセットしている時間帯。ベッドの側から差し込んでる朝日が、とても眩しく、一誠に現実感を取り戻させた。

 

「ゆ、夢か?」

 

先ほどまで見ていた光景を思い浮かべ、その言葉を口にする。

 

自らの恋人の背中に生えていた漆黒の翼。

 

口に浮かぶ冷笑と手に持つ光の槍。

 

自らに迫る「死」とそれを吹き飛ばした親友の恋人。

 

突如始まった非現実的な戦い。

 

そして自らの腹を貫く光の槍

 

目に映る鮮血。

 

薄く閉じられ行く真っ赤な景色に、自らの通う学校の1つ先輩に当たる女性の紅の長髪を思い浮かべながら一誠の視界は暗く閉ざされていった。

 

ハズだった。

 

なのに、今こうして自分は自宅のベッドの上に居る。

 

「ハ、ハハ。そうだよな、あんなんありえないよな・・・。夢に決まってるって・・・。」

 

そう繰り返し口にする一誠。彼はそれが自分に言い聞かせているようだと気づいているだろうか。・・・恐らく、気づいているのだろう。

 

『死んでくれないかな。』

 

『死にたくねぇよ・・・!!』

 

その言葉と光景がフラッシュバックし、一誠はギュッと瞳を固く閉じ、その光景を脳裏から追い出そうとした。

 

「夢、夢だ。あれは夢なんだ。」

 

(そう、きっと結局キスでもして舞い上がって気づかない間にベッドに入って寝てしまっただけなんだ。)

 

一誠があまりにも生々しく頭に焼き付いて離れない映像を忘れようと苦心していると、階下から母親の声が掛かってきた。

 

「イッセー!早くしなさい!」

 

そのいつも通りな母親の声に、一誠は苦笑しながらも感謝した。返事を返すために、一誠もいつも通りに声を張り上げた。

 

「わかってるよ!ちょっと待ってって!」

 

「お友達が待ってるんだからね!早くしなさいよ!」

 

「え?」

 

(友達?誰のことだ?)

 

母親の言葉に疑問を抱きながらも、一誠は制服をとって着替え始めた。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「どうしたんだよ?こんな朝っぱらから家に来て。」

 

「まぁ、用事があったからね。」

 

一誠としゃべっているのは風林寺 翔である。結局家に来ていた友達とは翔のことだったのだ。翔は家に来たこともあるので場所を知っているのは不思議では無いが、こんなに朝早くから来ることは無いのでそれが一誠には疑問となっていた。

 

一誠と翔は並んで通学路を歩く。一誠の家は駒王学園の近くにあるので歩いていける距離なのだ。

 

「ふぅ~ん。用事って何だ?こんなに朝早くからじゃないといけないのか?」

 

「うん。まぁね。」

 

翔が一瞬の溜めを作る。一誠は何かイヤな予感がした。これを聞いたら後戻りは出来ないような。

 

「昨日のことだよ。黒歌さんに聞いたんだ。」

 

ドクンッ!一誠の胸が大きく鼓動する。心拍数が上がっていき、何かいやな汗が噴き出してきた。

 

そんな一誠の変化に翔は気づいていたが、それでも敢えて無視して話を進めた。

 

「兵藤君は多分昨日のことを夢だと思っている、いや、思い込もうとしているのかもしれないけど・・・。残念だけどあれは現実だよ。」

 

ドクンドクンッ!一誠は胸の鼓動がやけに大きく聞こえた。周りにも人がいて、喧騒があるはずなのに、まるで世界から自分と友人だけが切り取られたかのような錯覚さえした。

 

冷や汗が止まらない、口の中が渇いて気持ち悪い。そんな不快な感覚が収まらない中、それでも一誠は友人に現実を認めるため確認をとった。

 

「やっぱり・・・そうなのか。・・・でも!じゃぁあれはいったい!」

 

一誠が声を荒げそうになった時、一誠の口の前に翔の人差し指があった。人差し指をまっすぐに立て、一誠に静かにするようにと無言で催促する。

 

翔のその意の通りに一誠が静かになったところで、翔が疑問に答えるべく口を開いた。

 

「今は周りに人が居るから詳しくは言えないけど。兵藤君、君は今世界の裏側ってやつに落ちてしまったんだよ。表の住人が決して知る事無く幸せに人生を終えていく世界の裏側ってやつにね。君はとあるもののせいで必然的に裏の事情に巻き込まれてしまったんだよ。」

 

「う、裏!?まるで漫画みたいだな・・・。」

 

「ある意味でいえばその通りだよ。創作物(フィクション)って意味で言うのならね。」

 

「どういうことだ?」

 

「今は詳しくは言えないって言ったでしょ?詳しくは放課後に話されるよ。」

 

「そうか・・・。」

 

そこで会話が途切れたが、しかし一誠は先ほどの会話の内容に違和感を覚えた。首を捻りながら翔に向けてその違和感の正体を確かめようとする。

 

「話されるってなんだ?翔が話すんじゃないのか?」

 

「うん。僕もその会談には参加するけど、話をするメインは僕じゃないよ。」

 

「じゃぁ誰と話すことになるんだよ?」

 

「言っても信じられないような人だから会ってのお楽しみってやつだよ。」

 

そう言って翔が一誠に向かってウィンクをする。それがまた妙に様になっているので一誠はむしょうにイラッッとしたので腕を振り上げ翔に向かって振り落とそうとしたが、それが無駄だったことを思い出し手を下ろした。

 

そんな一誠の一連の動作を微笑みながら眺めていた翔はその顔から微笑を消して一誠に真剣な声音で話しかけた。

 

「とにかく、兵藤君の人生はもう変わってしまった。後戻り不能地点(ザ・ポイント・オブ・ノーリターン)ってやつをとっくに通り過ぎてしまっているんだよ。これから先、平穏な人生を送れなくて後悔するか、刺激的な人生を満喫するかは兵藤君次第だけど覚悟だけは固めといたほうがいいよ。どんなものが来ても受け入れる覚悟をね。」

 

一誠にそんな忠告を残して、翔は自分の教室に向かっていった。その後姿を内心に不安を抱きながら見送ることしか一誠には出来ないのであった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

放課後、朝の翔との会話のことが頭に残り一日をぼうっと過ごす羽目になった一誠の元に1人の男が水先案内人として訪れていた。

 

「やぁ、兵藤君。ちょっといいかい?」

 

そう爽やかな笑顔を浮かべて教室に入って来たのは木場祐斗だ。そのルックスと常に浮かべている爽やかな微笑から学園の王子様と呼ばれている。

 

文武両道、眉目秀麗、才色兼備、温厚篤実と彼を修辞する言葉は枚挙に暇がない。女子からの人気は高く何回もの回数女子から告白されたことがあるそうだ。

 

一誠はその木場のモテ具合から自分と比較して一方的に敵意にも似た感情を抱いているのである。実際には一誠も去年の文化祭以降中々人気が出始めているのだが、知らぬは本人ばかりなり、というやつだ。

 

案の定、その王子様が一誠を訪ねてきたことで教室は雑然となった。

 

「き、木場君が兵藤君を訪ねてきた!?今まで何の接点も無かったのに!?」

 

「こ、これはまさか新しい展開の予感!?」

 

「木場×兵藤?いや、やっぱりここは兵藤×木場が鉄板かな?」

 

・・・どうやらこの学園の女子は大分醸されているようであった。発酵の進み具合が半端ではない。

 

コイツはくせえッー!腐ったにおいがプンプンするぜッーーーーッ!!こんな腐女子には出会ったことがねえほどなァーーーーッ。環境で腐女子になっただと?ちがうねッ!!

 

そんな風に一誠は頭の中で考えながらも木場に返事をした。もしかして?という予感をその胸の内に孕みながら。

 

「そうだけど、もしかしてお前が?」

 

「うん、そうだよ。昨日のことで話があってね。着いてきてくれるかな?」

 

「わかったよ。」

 

特に抵抗する理由も無いので素直に一誠は木場の後ろに着いていった。後ろから「つ、突いてきてくれるかな、だと!?」という言葉が聞こえたが一誠は全力でその言葉を頭の片隅から放り出した。・・・一誠はこの学園の将来が心の底から心配になった。これだけ腐った土壌が醸成されていて大丈夫なのか?と。

 

そんな風に一誠が木場の後ろを着いていくとたどり着いたのは駒王学園の旧校舎であった。使っているはずのない、学園七不思議の舞台にもなりそうな古びた木造校舎である。

 

しかし、木場の後ろを歩きながら一誠が中を見渡してみるとある事に気がついた。それは埃である。旧校舎はどうやら隅々まで掃除が行き届いているようで、窓のサッシなどにも埃や塵1つ残っていない。蜘蛛の巣なども見当たらず、現在も人の手が入っているのが一誠にもわかった。

 

「話は部長からしてくれるよ。」

 

「部長?木場って何かの部活に入っていたのか?剣道部とかその他の運動部の勧誘も全部断ったって噂になってたけど。」

 

それは去年の4月下旬頃の話だった。体育の運動能力測定試験で軒並みトップレベルの運動能力を披露した木場をどこの運動部もこぞって欲しがったが木場はどれも断るだけで入ることはしなかったのである。元々そのルックスだけで噂になっていた木場はそれでさらに有名になった。

 

かなり有名な騒動だったので一誠も覚えていた。そのため帰宅部だと思っていたのである。

 

「うん。これから行くところが僕の入っている部活でね。オカルト研究部って言うんだ。」

 

「オカルト研究部?それって魔女とか黒魔術とかの研究をすんのか?なんか胡散臭いな。」

 

「はは、まぁそこの部長が今回の話をしてくれるよ。部長自体は君も知ってると思うよ。学園じゃ有名な方だからね。」

 

「有名な人?」

 

一誠は学園で有名といわれる人物を思い浮かべてみるが、オカルト研究部といわれる雰囲気に似合いそうな人は誰1人としていなかったので誰なのか本格的に気になってきた。

 

一体誰なのかと一誠が頭の中で思案していると、1つの扉の前まで来ていた。木場がそこで立ち止まりノックをする。

 

「部長、連れてきました。」

 

「入りなさい。もう1人はもう既に来ているわ。」

 

「わかりました。」

 

木場が扉を開ける。誰が扉の向こうにいるのかとドキドキしていた一誠の目にまず入って来たのは、綺麗な紅の色だった。

 

鮮烈な程の紅の色。まるで鮮血のように鮮やかなその色は見るものの目を引きつけてやまない。そんな紅色の長髪を持つ人物の名を一誠は知っていた。

 

リアス=グレモリー。一誠にとって1つ上の先輩で、後1人と合わせて学園の2大お姉さまと呼ばれている。

 

その女性を目にした物がまず惹きつけられるのが紅の長髪だ。そしてそれと対比するかのような雪色の肌がその次に目を楽しませてくれる。芸術的といってもいいほど整っている容姿と、黄金比の如く美しいスタイルは男女問わず惹きつけて止まない。

 

そんな一誠にとっても憧れの先輩がオカルト研究部の部長という事実に、一誠は開いた口をしばらくの間防ぐことは出来なかった。

 

と、そんな一誠の様子を見かねたのかある人物が一誠に向かって拳骨を振り落とした。

 

ゴチンッ!!と周囲にまで音を響かせるその痛みによって一誠はようやく正気に戻った。

 

「いってええぇぇっっ!?何するんだよ!?」

 

「気付けだよ。」

 

「て、翔か。本当に話に加わるんだな。」

 

「ま、兵藤君は親友だからね。そんな友人の一大事なんだ。参加しないわけにはいかないだろう?」

 

そう言って翔はリアスと向かい合って真剣な表情を作る。その言葉を聞いた一誠は嬉しくも面映くなり、鼻の下を人差し指で掻いた。

 

そんな様子を見ていたリアスは微笑ましそうにしつつも、空気を変えるために咳払いをしてから話を繰り出した。

 

「ゴホンッ!・・・さて、話をする前にまずはお互いのことを知るために自己紹介から始めましょうか?」

 

その言葉と共にリアスの周りに3人の人間が集まる。1人は先ほどまで一誠を案内していた木場祐斗。後の2人は黒髪をポニーテイルにしたスタイル抜群ながらも大和撫子な雰囲気をもっている美少女と、小学生並みに小柄で小動物的な雰囲気を漂わせる白髪の美少女だ。

 

一誠はその2人とも名前を知っていたが自己紹介ということなので黙っておいた。

 

「じゃぁまずは私からね。私の名前はリアス=グレモリー。このオカルト研究部の部長をやらせてもらっているわ。」

 

「わたしは姫島朱乃です。副部長を勤めさせて頂いてます。わたしのことは朱乃とお呼びください。」

 

「僕はさっきも紹介したけど、木場祐斗。オカルト研究部の部員をさせてもらっているよ。」

 

「・・・塔城小猫。1年。」

 

順番に自己紹介をしていく。ちなみに黒髪ポニーが朱乃で、小柄な白髪が小猫だ。

 

その自己紹介も受けて一誠も頭を下げて自分のことを話していく。

 

「ど、どうも。俺は兵藤一誠、2年生です。今回は昨日のことについて話してもらえるということなんで着いてきました。」

 

「風林寺翔、同じく2年生です。兵藤君の友人として今回の会談に同席させて貰います。が、もう1人・・・。」

 

そう言って翔が紙を取り出した。その紙を自分の隣の床に置くと、その紙が光を吸い込むような黒色に光り輝いていく。矛盾した表現だが一誠にはそう表現するのが一番妥当に感じられた。

 

その光の粒子が段々と人の姿を形どっていく。10秒もしたころには、そこに漆黒の髪をもつ女性が現れていた。

 

「えぇっ!?」

 

一誠はそれを驚愕の表情で見ることしか出来なかった。周りの人間がさも当たり前のような顔をしていたのが尚一誠の驚きを助長した。

 

光の中から現れた女性は昨日の件で一誠を護ろうとしてくれた女性であった。一誠は彼女の素性を考えてこの場に来たことを納得したが、先ほどのビックリ映像もかくやの現象には未だに驚きが抜けなかった。

 

「僕の恋人でもあり、昨日の件の当事者でもある黒歌さんにも同席してもらいますが、構いませんね。」

 

「黒歌と言いますにゃ。」

 

ペコリ、という擬音が付きそうな感じで黒歌がお辞儀をする。その様子を小猫が睨みつけるように見ていたのが一誠の印象に残った。

 

「まぁ構わないわ。どうして彼女があそこに居たのか、ということについても説明して貰いたいしね。・・・それじゃぁ、」

 

「すみません。その前にもう1ついいでしょうか?」

 

そこでリアスは言葉を区切った。そうして一誠に顔を向け、話出そうとしたところで翔の言葉がその機先を制したので、リアスはじとっとした目を翔に向けた。

 

「何かしら?」

 

「いや、話を始める前に前提条件となる知識を兵藤君に話しておきたいんです。」

 

「・・・いいでしょう。なるべく簡潔にお願いするわ。」

 

「ありがとうございます。」

 

翔が一誠に顔を向ける。その顔には真剣さが宿っており、今からする話に虚言は無いと一誠に悟らせた。

 

翔が口を開く。その舌が紡いでいくのは表の人間がけして知ることのないこの世界の秘密だった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「悪魔、堕天使、天使の3竦みの勢力、か。」

 

「他にも様々な神族が居たりするんだけどね。今回の話に関係があるのはその3竦みなんだよ。」

 

翔の口から語られたのは裏の世界のこと。創作物(フィクション)と思われている神話の勢力が本当に存在しているという御伽噺のような世界のお話。

 

「今回兵藤君が巻き込まれたわけも天使の側の頂点に位置している通称聖書の神が関係しているんだ。」

 

「どういうことなんだ?」

 

「聖書の神が作り上げた人の血を引くものにのみ宿る奇跡の具現(システム)。それが神器(セイクリッド・ギア)。歴史に名を残すような偉人はこの神器を持っていた可能性が高いそうだよ。」

 

「神器ねぇ。もしかしてそれが俺に宿っているのか?」

 

「その通り。普通の神器ははっきり言って人外にはそこまで脅威とはならない。でも中にはとてつもない能力を持つものもあるんだよ。」

 

「昨日の堕天使はそれが自分達の脅威にならないように君ごと始末しようとしたってわけなんだにゃ。君だってあの女堕天使がそう言っていたのを聞いていたでしょ?」

 

「確かに・・・。そうだった、な。」

 

翔と黒歌が一誠に昨日襲われたわけを説明していく。その内容に一誠はやはりショックを隠せない。・・・当たり前であろう。思春期高校生にとって恋人が自分を始末するためだけに近づいてきたというのは女性不信に陥ったとしても仕方のない事実だ。

 

翔はその一誠の心境を察してはいたものの、慰めたりすることはなかった。・・・正確に言うならば、掛ける言葉が見つからなかったのだ。仕方なく翔は話を先に進めることで一誠の気を紛らわせようとした。

 

「ここまでが、前提条件。そしてここからが兵藤君のこれからの話になる。」

 

「俺の、これから?」

 

一誠はその言葉に訝しげになる。俺がここに来たのは昨日の真相と何故自分が生きているかを知るためじゃないのか?と。

 

「ここからは私が受け継ぐわね。先ほども話にあったように、3竦みは長いこと戦争をしていたわ。」

 

リアスが話を継いで一誠に語り始める。このリアスの話が自分のこれからにどう繋がっていくのか一誠にはトンと検討が着かなかった。

 

「しかし、戦争をしていれば当然死んでいくものが出るものよ。長いこと戦争をしていた3勢力は戦争を終えた後は疲弊しきっていたの。悪魔も例外じゃないわ。純粋な悪魔は戦争によってその数を大きく減らしたの。悪魔がその現状に大きく危機感を抱くほどにね。」

 

リアスが一呼吸のための間を作る。その次の話は朱乃が受け継いだ。

 

「そのため、悪魔は悪魔を増やすための手段を作り出しました。それが「悪魔の駒(イーヴィル・ピース)」と呼ばれているもので、悪魔以外の種族に使うと悪魔に転生させることが出来ますわ。」

 

その言葉を聞いて一誠はピンと来るものがあった。その時背景で光の線が走っていたかもしれない。

 

「もしかして、俺にその駒を使って・・・?」

 

「その通りよ。あなたが死に掛けているところにあなたが持っていた魔法陣で呼び出された私は、あなたの「死にたくない」という願いを叶えるために悪魔の駒を使ったわ。」

 

「そうか・・・。俺、悪魔になっちゃったのか・・・。」

 

ずーん、と一誠が影を背負う。まるで漫画の背景にある縦線が見えるかのような落ち込みようだ。自分が知らない間に悪魔になっていたと知らされたならそれも仕方ないかもしれない。まだ喚き散らさないだけマシだろう。

 

その反応を見たオカルト研究部(以下オカ研)の面々は苦笑するしかない。(小猫だけは無表情のままだったが。)この反応も予想できていたことだった。

 

「まぁ、その反応もわからなくはないけどね。世間一般の悪魔のイメージは悪いものだし。仕方ないかな。」

 

「けれど、悪魔にだって良いところはあるのよ?そりゃぁ、イメージ通りなやつもいるけれど。」

 

木場が一誠の反応に理解をしめし、そしてリアスが一応悪魔のフォローを入れておく。確かにイメージ通りの醜悪な悪魔というのもいるものだがそれだけでもないのだ。人間に良い人間と悪い人間がいるのと同じである。

 

リアスのそのフォローを聞いた一誠は首を傾げた。悪魔の良いところと聞いても想像出来ないらしい。その様子を見てリアスは一誠に悪魔になるということについて説明し忘れていたと気付いた。

 

「そう言えば、まだ悪魔になった際にどういうことが出来るかということを説明してなかったわね。結構イイ特典もあるのよ?」

 

リアスはそうして説明を始めた。悪魔社会と転生悪魔の立場についてを。・・・主に一誠の興味のある方面で。

 

――悪魔説明中――

 

「わかりました!俺はリアス先輩、いや部長の眷属になります!そして、ハーレム王に俺はなるっ!!」

 

思いっきり欲望に溺れている一誠の一丁完成である。チョロすぎるとしか言いようが無い。今時小学生でもここまでチョロくない。・・・ある意味、ここまで欲望に素直な面は悪魔らしいと言えるかもしれない。

 

その様子に翔は溜め息を吐く。確かにリアスは嘘は吐いてない。が、ある意味で大事なことも告げていなかった。・・・これから話すのかもしれないが、翔にとってはその話、いや忠告をするためにここに同席したと言っても過言じゃなかった。

 

「ハァ・・・。・・・黒歌さん。」

 

「わかったにゃ。フフ、翔は優しいわね。」

 

「そんなことはないですよ。」

 

主語などは抜きで会話をする2人。周りが聞いても何をしゃべってるのかまるっきり判断がつかないような会話だ。こんな会話を出来る程度には時間を共に過ごしているのだ。

 

「兵藤君。」

 

「ん?何だ、翔?」

 

翔が一誠を呼びかけ、一誠が浮かれながらも翔の方に注意を向けた。

 

――刹那、翔と黒歌の体からナニカが噴き出した。

 

「ヒッ!」

 

一誠にはそのナニカの正体はわからなかった。視覚的には何も変わっていない。しかし、確かに翔と黒歌から濃密なナニカが出ていることは理解できた。確かに目には何も映っていないのにそのナニカが見えたような気さえした。

 

体が震える。悪寒が止まらない。体中に冷や汗が浮かび、口の中が渇いてカラカラになっているような気がする。呼吸もまともには出来なかった。毎日とは言わずともそれに近い頻度で会っている親友が一誠には別の生き物になったかのように感じた。

 

そして、そう感じているのは何も一誠だけではなかった。そのナニカはほとんどが一誠に向けられてるが、その漏れ出した余波とも言うべきものがリアスとその眷属に当たっていた。

 

「あなたたちっ!」

 

リアスが思わず大声を出す。いや、大声しか出せなかった、と言った方が正しかった。翔と黒歌から噴出すものにリアスたちも気圧されていたからだ。

 

リアスが大声を出したことにより、翔と黒歌はナニカを噴出させるのを止めた。それを感じた一誠は思わずソファーに深く沈みこんだ。ハァハァと大きく呼吸する。たった数秒の出来事なのに一誠は大きく消耗していた。それほどの恐怖だったのだ。

 

「あなたたち、どういうつもりかしら?」

 

リアスが硬い声音で翔たちに問う。その声には隠し切れない険悪な雰囲気があった。リアスの隣では朱乃と木場、そして小猫が何かがあっても即座に反応できるようにしている。

 

翔はその反応も当然だよね、と思いながらも自分の行動の意図を説明した。

 

「簡単だよ。兵藤君に現実をわからせるためにはこれが簡単だと思ってね。」

 

「・・・現実?」

 

半ば放心状態だった一誠がその翔の言葉を拾い上げる。先ほどの行動―一誠には何をしたかよくわからないが―がどんな現実を示しているのか?

 

「そうだよ、兵藤君。裏の世界は良くも悪くも危険に満ちているんだ。もちろん、比較的安全なように立ち回ることも出来るけど・・・。リアスさんの眷属じゃそれも無理だと思ってね。そこでてっとりばやく危険を理解してもらうために「気当り」を当てさせてもらったんだ。」

 

「気当り」、それは闘気やオーラ、あるいは気迫や殺気とも言えるものである。動物には野生的な危機察知能力があり、人間にも退化しているもののこれが備わっている。この危機察知能力で人は殺気等を察知するわけだが、達人ともなるとこの危機察知能力を逆手にとり「気当り」だけでフェイントをしたり、あるいは実力が圧倒的に格下のものを気絶させたりする「睨み倒し」などというものも出来る。

 

翔は、一誠の危機察知能力で反応出来る程の「気当り」を当て、一誠にこの先あるであろう危険というものを体で分からせたというわけだ。

 

「兵藤君、君は弱い。例えその身に神器を宿していたとしても、あくまでこの前までただの一般人だったんだからね。そのままだとすぐに死んでしまうかもしれない。」

 

「また、死んでしまうのか?」

 

その言葉に待ったを掛けたのはリアスだ。彼女は情愛が深いと言われているグレモリー家の者である。眷属になったものをむざむざと死なせるつもりはない。

 

「そうならないように、一誠は特訓をしてもらうつもりよ。」

 

「そうなんでしょうね。でも、僕も一誠君の友人です。一誠君がむざむざと死なせるような状況を作るつもりはありません。」

 

翔が立ち上がり、その目を一誠へと向けた。そこには強い光が宿っている。覚悟を決めたもの特有の光だ。

 

翔には信念がある。12歳の時に決めた自らの生き様とその誓い。それは何よりも翔にとって大切なもので、だからこそ翔は今度こそその誓いを護るためにここに居るのだ。

 

「大切な人を護る」。昨日は果たせなかったこの誓い。今度こそは果たしてみせると胸の中で宣誓しながら一誠に向かって宣言した。

 

「兵藤君。僕が君の師匠になるよ。」

 




副題元ネタ・・・君が主で執事が俺で

と、いうわけで翔は今後グレモリー眷属とは一誠の師匠として付き合っていく感じになります。

この翔は一誠の師匠というのは前から決めてました。一誠がどの武術を習うかも決めてますよ!

まぁ、この説明回は次話も続くっぽい。
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