ハイスクールDragon×Disciple   作:井坂 環世

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1章の3話です。

・・・展開に迷った末になんか微妙な出来ですね。短いし。


3 撲殺ジャンキー

「翔が、俺の師匠に?」

 

「うん。そうだよ。納得できないかな?」

 

「いや、別にいいんだけど・・・。お前ってどれくらい強いのかなぁって。」

 

一誠が疑問の声をあげる。一誠にとっては翔とは自分が変わるきっかけをくれた友人であり、バンドを組んでいる仲間である。そんな存在にいきなり師匠になる、と言われてもピンと来なかった。

 

別に信頼していないわけではない。むしろ出会って1年しか経ってないにも関わらずかなりの信頼を一誠は翔に置いている。ただ純粋に疑問に思っただけなのだ。

 

それに対して翔が答えようと思ったところで、リアスから待ったが掛けられた。

 

「ちょっと待ちなさい!・・・イッセーは私の眷属よ。どこの誰かまだその素性を聞いてもないのにあなたにイッセーの師匠をさせるわけがないでしょう?」

 

まぁ、リアスにとっては当然の話であった。確かに翔は一誠の親友なのかもしれないがそれはリアスには関係の無い話であり、そしてリアスにとっては翔はいつの間にか自らの領地内に入り込んでいた見知らぬ悪魔の関係者でしかないのである。

 

言外にさっさと何者なのか話せという副音声をその言葉の内に乗せられているのが分かった翔は、「そう言えば説明してなかったな」と思い、わざわざ自分が説明しても完全に信用されるわけがないのが分かりきっているので説明をぶん投げることにした。

 

翔が携帯を取り出す。わざわざ懐に手を入れる動作をするだけで警戒されるのに、「やりづらいなぁ」と内心零した。

 

「今から俺にこの学園に通うように依頼した人に電話するから、その人から説明してもらってください。」

 

「・・・わかったわ。」

 

憮然としてリアスが返事をする。得体の知れない相手の依頼主ともなれば警戒するのも当然だろう。しかも依頼内容がこの学園に潜入しろと言ってるも同然の内容だから警戒も増すというものだ。

 

翔が電話を耳に当てる。数回のコールの後相手が出たのを確認して翔は声を掛けた。

 

「もしもし、僕ですけど。」

 

「ボクボク詐欺なら間に合ってます。」

 

「え?いや、ボクボク詐欺じゃないですって。風林寺翔ですよ。ていうかわかって言ってるでしょう。」

 

「あ、ばれた?」

 

「ばれた?じゃありません。今結構シリアスな場面なんですからふざけないでください。」

 

「だが断る。」

 

「はぁ、今度はジョ○ョでも読んだですか?一々ネタを挟まないでください。」

 

「いやぁ、それは難しいね!私の性格的に。」

 

「うぜぇ。なんでそんなテンション高いんですか。」

 

「あ、そうそう!昨日リアスが久々に電話をしてくれてね!何でも新しい眷族が出来たそうなんだよ!!嬉しそうに話すリアスがまた可愛いんだよ!」

 

「今その眷属のことでリアスさんと話してるんですけど。」

 

「・・・ん?どういうことだい?」

 

「僕のことばれたのでリアスさんに僕のこと説明してくださいってことですよ。依頼主なんだから責任取れ。」

 

その言葉と翔は同時にリアスに電話を放り投げる。その今までの翔のキャラとは違う電話相手との掛け合いに呆然としていたリアス(他の皆も多少は面食らってた)は携帯を受け取りそこないそうになりながらも何とか手で掴んで耳に当てた。

 

「やぁ、リアス。昨日ぶりだね。」

 

「ッ!?お兄様!?」

 

電話口から聞こえてきた声にリアスは驚愕するしかない。何せ正体不明の人物の依頼主が自らの兄だったのだから。

 

「な、なんでお兄様が!?」

 

「まぁ、色々あってね。」

 

色々というか完全に公私混同でしょ、と翔は内心で思ったが、口には出さないでおいた。あんなんでも一応は友人なのである。

 

そうして、兄妹が電話越しに語らうのを翔が眺めていると一誠がボソボソと小声で話しかけてきた。電話に声が入らないようにという配慮だろう。

 

「あの電話、リアスさ、・・・部長のお兄さんに繋がってるのか?」

 

「そうだよ。名前はサーゼクスさんっていうんだ。」

 

「・・・なんで部長のお兄さんと知り合いなんだよ?いや、それを言ったら元々悪魔だったのかよ、って話なんだけどな。」

 

一誠が疑問に思っていることを口に出す。この友人は確かに信頼しているが、何者なのか?ということがわからないのも事実であり、そして一誠の気になるところでもあった。

 

もう隠すことでもなくなっているので、翔は取りあえず要旨を纏めて話すことにした。全部話そうと思ったら話が長くなるからだ。

 

「僕は悪魔じゃなくて人間だよ。それも一誠君と同じく神器持ちのね。」

 

「へぇ~。どんな神器なんだ?」

 

「それはまだ内緒。で、何でサーゼクスさんと知り合いなのかって言うと。」

 

「言うと?」

 

「そこにいる黒歌さんの事情を解決するときに、サーゼクスさんと契約したからだよ。その契約を果たしてからは時々依頼を貰ってたりしてたんだ。」

 

「ふ~ん。で、その結果お前は黒歌さんと付き合うようになったと。」

 

「正解だにゃ♪。」

 

その簡潔すぎる翔の説明で、一応は納得したのか一誠は身を引いた。ちなみに今の話は他のオカ研メンバーにも聞かれており、警戒を解く程度の効果はあった模様である。

 

翔と一誠の会話が終わったころ、リアスとサーゼクスの会話も終わったのか、リアスが携帯を閉じるときのパチンッという音を鳴らす。そしてそれを翔に向けて放り上げると翔は振り向くこともなくそれを受け取った。

 

「お兄様から話は聞いたわ。どうやら本当に信用は出来るようね。」

 

リアスはサーゼクスからの説明を受けて理解はしたようだ。が、納得はしていないのか憮然とした表情を見せている。やはり、自らの兄の太鼓判付きとはいえ初対面の人には自らの眷属を任したくは無いのだろう。

 

「でも、それと一誠の師匠をさせるかどうかは話が別よ。私の眷属を鍛えるというのならそれ相応の実力は示してもらうわ。」

 

そう言ってリアスは立ち上がる。向かうのは唯一の出口である部室の扉。カツカツと小気味良い音を鳴らしながら歩き出す。

 

「先ほどお兄様から依頼が入ったの。はぐれ悪魔の討伐指令。それであなたの実力を見極めさせてもらうわ。」

 

扉に手をかけ、こちらを振り向きもしないで掛けられたリアスの言葉に、翔は不敵な笑みを浮かべる。リアスにとっては挑発したつもりなのだろう。だが、翔にとってそれは挑発とはならない。

 

「いいんですか?実ははぐれ悪魔の捕縛は僕の得意分野なんですよ。」

 

言葉、表情、態度。その全てから余裕を滲ませながらも、油断の欠片も無く翔は既に臨戦態勢に入り、気を高め始めていた。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

リアスとその眷属+翔と黒歌という一行は町外れの廃工場に来ていた。ここにリアスがサーゼクスから討伐依頼を受けたというはぐれ悪魔が潜んでいるという。

 

時刻は深夜。頂上へと上っているであろう月は分厚い雲に遮られており、繁華街ならともかく、ちょっとでも街から外れれば視界の全てが真っ暗闇に包まれている。それが得も知れぬ不気味さを醸し出していた。

 

「お兄様の話通りならここを根城にしているはず・・・。」

 

「・・・いや、確実にここを根城にしているようですよ。」

 

リアスの記憶と照合をしているかのような独り言に翔は顔を顰めながら返した。辺りは暗闇。悪魔でもない人間なら一寸先も見えぬようなそんな漆黒の中で、確かに翔の優れた五感はあたりに散乱しているそれを察知していた。

 

それを見つけたのは翔だけではない。元々が猫又である2人もまた、その異常の原因を見つけていた。いや、嗅ぎつけていたというべきか。

 

「死体・・・。」

 

「結構数が多いみたいね。」

 

そう、辺りに散らばっていたのは、恐らくははぐれ悪魔の食べ残し(・・・・)であろう人間の腐乱死体。手足が千切れ、腹は食い破られ内蔵が飛び出してしまっているものがほとんどで、きれいな形を保っているものはほとんどいない。グズグズに腐ってしまっているせいで老若男女も判然としなかった。

 

黒歌と小猫の言葉に奥の方に何があるのかを察したリアスたちは眉根を寄せる。ただ一誠だけは死体と聞いてもピンと来ないのか呆けた表情を晒しているだけだった。そんな中、翔がリアスたちには聞こえるが周りには響かない程の小さな声で警告を促した。

 

「・・・来ますよ。」

 

翔の鋭敏な気配察知能力が明確に廃工場から出てくるものの存在を教えてくれていた。その言葉通りに工場の入り口から出てくる異形の影。5メートル近い体高に上半身は女性の姿で、下半身は4足の獣の姿をしている。尾は蛇になっており、その手には槍のような獲物が握られていた。

 

その明らかに通常の悪魔からも外れた姿は確かにリアスがサーゼクスから依頼された討伐対象の特徴と一致しており、リアスたちの目標がこの悪魔であることを示していた。

 

「不味そうな匂いがするな?だが美味そうな匂「あ、そういうのいいですから。」・・・。」

 

はぐれ悪魔が何やら登場の台詞を言おうとしたところで翔が見事に被せた。微妙な空気が場に流れる。リアスたちが、心なしかはぐれ悪魔も翔にじとっとした視線を向けてくるが翔はそれに気付いていながらスルーした。

 

翔は自らの装備の調子を確かめる。素肌の上に着た鎖帷子、その上に着た柔道と空手の道着に下はカンフーパンツ。手にはムエタイのバンテージを巻き、そしてその上から手甲と、足に同じ意匠の脚甲を着けている。要するに兼一の装備+脚甲だ。

 

しかし多少は違う場所もあり、腰裏には2本の短い木の棒が交差するように装着されている。これは携帯用の短めに作られた填め込み式の杖である。翔にとっての武器とは己の体とこのただの木の棒だけなのだ。

 

「僕達はあなたを倒したい、そしてあなたはそれは避けたい。・・・なら、やることは1つだけでしょ?・・・それじゃあ、リアスさん。話し通り今回は僕がやりますね。」

 

「ハァ・・・。わかったわ。あなたの実力が如何ほどか、見せてもらうわね。」

 

「ありがとうございます。・・・兵藤君、よく見ててね。これが僕が君に教えるつもりの武術だよ。」

 

翔が構えをとった。脚を肩幅に開き、そして手は握らずに両手共に相手に掌を向けて肘をやや曲げて突き出している。それは格闘技の経験など無く、そしてそれらの知識も持ち合わせていない一誠も、そして実力はあるがあくまで悪魔であるリアスたちにもわからなかった。その構えの正体がわかったのはこの場で翔と黒歌だけであった。

 

その構えの名前は前羽の構え。この構えからは各種の受けに繋げ易く防御に特に優れ、鉄壁とも謳われる構えの1つである。

 

その構えに多少威圧されたのかバイサーは警戒し、翔の様子を伺おうとしている。しかし、元々が欲望に溺れたはぐれ悪魔なのだ。そうそう我慢強くあるはずがなく、じれたバイサーが翔へと突撃をかけた。

 

バイサーが槍を突き出す。その巨体から繰り出される槍の勢いは凄まじく、風斬り音が離れて見ていた一誠たちにも聞こえるほどだった。

 

「翔!?」

 

一誠が悲鳴を上げる。だが、その心配は杞憂に終わった。

 

翔は目の前に槍が迫っていても焦ることは無く冷静に対処した。槍の切っ先が自らの制空圏に触れた瞬間に左腕を動かす。側面から叩くように逸らされた槍は翔を貫くことはなく、そして攻撃に失敗したバイサーは翔の前に無防備な姿をさらけ出していた。

 

翔が右拳を握り締める。槍を捌くのに使った左手を後ろへと引きながら、それと連動しているかのように右手を前へと突き出していく。捻りながら打ち出されたその拳は基礎をきっちりと護られており、翔の錬度の高さとその基礎を磨き上げるのに使われた膨大な時間を感じさせた。

 

「正拳突き!!」

 

バイサーの鳩尾に叩き込まれた拳は翔の見た目に反した威力を持っており、翔の何倍もの体重を誇っているであろうバイサーを容易く吹き飛ばした。

 

翔のその力に黒歌を除いた見学していたものたちは目を見張った。悪魔と言われても仕方のない馬鹿力である。

 

一誠の目には辛うじてしか映らなかったものの、その正拳突きによって翔が何の武術で闘っているかは知ることが出来たのか、その答えを口にする。

 

「もしかして、空手か?」

 

「そうだよ。一誠君にはこれが合っていると思ってね。あくまで僕の勘だけど。」

 

そんな風に一誠と会話をしているとバイサーが起き上がってくる。その目には明らかな憤怒が表れており、余程先ほどの攻撃が腹に据えかねたようであるのが感じ取れた。

 

「舐めるなよぉ、人間風情があぁぁっ!!」

 

バイサーが雄叫びを上げ猛然と翔に向かって襲い掛かる。槍の最速の攻撃方法である突きでもって何度も翔を殺そうと試みるものの、力任せで技巧も何もあったものではないその槍捌きでは翔に触れることも叶わなかった。

 

翔が右に左にとフワリ、フワリと動く。決して速い動きでは無いのにバイサーの突きの連打を回避していく様は悪魔たちにとってはある種異様でさえあった。

 

「ハァッ!!」

 

一閃。翔の手刀が閃いた。たったそれだけの動作。ただそれだけでバイサーの武装であり、一目見て脅威と判断出来る槍が柄の半ばから断ち切られた。その余りの鋭さと自らの武装が無くなったという事実にバイサーは驚き、そして動きを止めてしまう。

 

「グェッ!?」

 

そんな格好の的状態であったバイサーを襲った甚大なる衝撃。その正体は基本中の基本であり、真っ先に習うような蹴り技でもある前蹴りだった。それだけでバイサーは10メートル以上も吹き飛ばされてしまう。

 

受身も取れず、多大なダメージを被ってしまったバイサー。そのダメージの元が只の蹴り一発であることがバイサーには信じがたかった。

 

何とか立ち上がったものの、肉体的にも精神的にも既に戦闘が出来る様子ではないバイサーに翔が歩いて近づいていく。バイサーにはその歩みが死刑執行までの時を刻む時計の秒針に思えてならなかった。

 

「兵藤君、良く見ておいて。今から放つのが、空手において頂点に数えられる1人の男の得意技だよ。」

 

その言葉と同時に翔が構えを取り気組みを錬る。その拳は握られておらず、天に向かって真っ直ぐ伸ばされていた。

 

バイサーがその言葉を聞いて勝ち目が無いと悟り、逃走しようと思い、実行に移そうとしたその時、既に翔は目の前にいた。

 

神速の踏み込み、その勢いのままに技を放つ。基本通りに突き手と引き手を連動させるように動かしながらも、その指は真っ直ぐ伸ばし腕に強い回転を加えて解き放つ。

 

「人越拳、ねじり貫手っっ!!!」

 

キュゴッ!!

 

凄まじい轟音を立ててバイサーの体にめり込んだ貫手は、しかし絶妙な力加減によってその体を貫通はしなかった。翔が手を引き抜くと気絶していたバイサーが支えを失いその場に崩れ落ちる。

 

命のやりとりとなる戦闘において、最も難しい相手を殺す事無く取り押さえるということを圧倒的な力量差からやってのけた男は未だ呆然としている観客たちに向けて笑顔を向けて言った。

 

「それで、これで僕はお眼鏡に叶いました?」

 

リアスは、何の文句も言いようのない結果に、苦笑しながらもOKを出すしか出来なかったのであった。

 

 




題名元ネタ・・・悩殺ジャンキー

も、元ネタがあああ~

内容にあった副題を考えるのが難しい。・・・なんでこんなんにしたかな俺(笑)
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