ハイスクールDragon×Disciple   作:井坂 環世

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遅くなってすみません。

ちょいとリアルで色々ありました。


4 鬼って言いなよ

その日、とある家の前でゴソゴソと動き回る影があった。

 

日が昇り始めるよりも前の時間帯、大体朝の5時頃のこと。深夜のように漆黒に染まっているわけではなく、薄っすらと辺りの様子が伺えるくらいの薄暗い住宅街。その中のとある一軒家の庭先で、その影は暗躍していた。

 

影は手には何も持っていなかったが、ズボンのポケットに手を入れて取り出したら、明らかにポケットには入らないであろう大きさの物体が姿を現した。

 

その影は懐から次々と荷物を取り出していく。黒くて丸いドーナッツ型の物や両側に球を取り付けた金属で出来た棒などを取り出していく。縄のようなものを取り出したのを皮切りに荷物を取り出すのは終わったようだ。

 

数々のオブジェクトを取り出した影はその家の2階の部分を見上げた。そうしてしばらく家の外観を眺めると、首を回したり屈伸をしたりし始める。傍目から見ていると準備運動そのものな行動をし終わった影はその場で屈むとその脚を伸ばして溜められた力を解放した。

 

助走も無く悠々と5メートルは跳躍してみせた影はその家の2階の窓にへばり付く。特に道具を使うわけでもなく、ただ掌で壁を掴むだけでその壁に捕まっていることがその影の尋常ならざる握力を示していた。

 

影はどうやらその窓から部屋を覗き込んでいるようだ。カーテンが開かれて外から丸見えになっているので覗くのに困りはしなかった。

 

どうやら部屋の主は男子高校生らしい。クローゼットの扉の取っ手部分にハンガーが掛けられ、そこに近くの学園の男子用制服が掛けられている。その他にも部屋には漫画やゲームなどが存在を主張しており、いかにもな男子高校生の部屋といった様相を呈している。

 

影が窓のすぐ下を見た。どうやらベッドを窓際に寄せているようで、そこでは部屋の主が今も夢の只中をさ迷っている。表情がだらしなく緩んでいる所を見るに、どうやら幸せな夢を見れているようだ。

 

影は窓の鍵の部分を見る。部屋の主は不精者なのかうっかりものなのか、窓は鍵を閉められていなかった。影は「無用心だな」と思いながらも有り難く窓を開け放って部屋の中に侵入を果たした。

 

そのままボォーっとしているわけにもいかない。影はここに来た目的を達成するために行動を開始する。まずは眠っている部屋の主を起こすことからだ。この男子が起きてくれないと何も始まらないのだから。

 

影がベッドの上で惰眠を貪っている男子を揺さぶる。しばらくの間は顔を顰めさせるだけだったが、止むことの無い振動にとうとう部屋の主が目を覚ました。目を擦りながら自らの睡眠を妨げた罪びとの顔を拝見しようとしている。

 

「ふぁ~。ったく、誰だよ?」

 

「や、兵藤君」

 

「・・・・・・え?」

 

部屋の主――兵藤一誠――は聞こえてきた声に一時停止してしまう。こんな薄暗い時間帯からこの家に居るはずの無い人物の声に、まだ寝ぼけているのかと思ったようだ。自らの頬を引っ張ったり、耳が詰まっているのかと耳をほじくったりしていたが、声の聞こえた方に向けた視界が何よりも現実を一誠に教えてくれていた。

 

手を挙げて挨拶している影の正体と自分が夢を見ているわけではないことを一誠が認識したとき、一誠は思わずツッコんでいた。

 

「どうやって入って来たんだよ!翔ぅ~っ!!」

 

「え?窓からに決まってるじゃない」

 

きょとんとした顔で「何当たり前のこと聞いてるの」とでも言いたげな顔の自らの親友件昨夜付けで師匠となった翔に対して、「こいつってこんな変人だったっけ」と一誠は深く疑問に思うのだった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「早朝訓練するからって、部屋に侵入して起こさなくてもいいじゃないか・・・・・・」

 

ジャージに着替えた一誠がぼやく。確かに昨日そんなことを言われていたが、だからと言って窓から直接侵入するのはやり過ぎである。完全に不法侵入だった。

 

しかし、一誠のその言葉に翔は至極もっともなことを言い返した。

 

「初めての早朝訓練だし、兵藤君は起きれないんじゃないかと思ってね。実際起きてなかったし」

 

「うぐ」

 

そう言われれば一誠には黙ることしか出来ない。確かに起きれなかったことは事実なのだから。

 

と、そんな話をしていると翔の準備は終わったようだ。先ほどまでしていた作業を終えている。

 

「はい、準備完了」

 

翔のその声に一誠は自らの腰を見る。そこには縄が括り付けられており、その先にはタイヤが結ばれていた。

 

タイヤを引いて走りこむ。確かに有名な鍛錬法だが聊か古典的じゃないか?と一誠は思った。

 

「え?ハハ、タイヤだけを引くなんてそんなわけないじゃないか」

 

「心を読まれた!?ていうか何を引かなきゃいけないんだ!?」

 

「いや心を読んだわけじゃないよ。ただそう考えていそうだなって思っただけ」

 

一誠と翔はここ一年ほどかなりの頻度で付き合ってきており、親友とも呼べる仲だった。一誠はそんな親友がここまで変人だったとはほんの砂粒程も気付くことが出来ていなかったことに頬を引き攣らせた。

 

一誠が「翔との付き合い方、見直そうかなぁ」と考えている間に、翔がタイヤに座り込んだ。それを見て何を引かなければいけないか思い至った一誠は何かの間違いだと思いたかった。

 

「それじゃぁ町内を4週、いっとこうか」

 

「4週!?この状態で歩いて!?」

 

「何を言っているんだい?」

 

一誠の叫びに翔の目が怪しく光りだす。いつの間にやらその手には鞭が握られており、全身から怪しげな雰囲気をこれでもかと発していた。

 

「走って、だよ!」

 

翔がその手に握られた鞭を振るう。弧を描いて飛来した鞭は一誠に大きな痛みを感じさせた。その痛みに思わず一誠は走り出してしまう。

 

そうして開始された壮絶極まる走りこみ。常に全力疾走。少しでも速度が落ちたら鞭を振るわれる。そんな現状に一誠の目から水が零れ落ちた。一誠は翔が師匠になることを安請け合いした昨日の自分を殴りたくてしょうがなくなった。

 

「ほら!どうしたんだい?ナマケモノのほうがいくらか俊敏だよ!」

 

「のおおおおおおおおぉぉぉぉぉっっっ!!??」

 

その日、早朝の住宅街に哀しげな悲鳴が木霊した。

 

余談だが、この日以降幾度となく響くこの悲鳴はのちに様々な形で都市伝説となっていくことになる。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

ちーん

 

そんな擬音を連想させるのは地面に倒れている一誠だ。うつ伏せになってピクリともしない。精魂尽き果てたようであるのが伺える。

 

それでも容赦しない。それが達人級、引いては達人に修行を課されてきた者のクオリティである。

 

「ほら、起きて起きて。学校までの時間は少ないんだから、有効に使うよ!」

 

「・・・・・・ふぁ~い」

 

「大丈夫。次の鍛錬はそんなに疲れないから」

 

「まじか!?」

 

がばぁっと一誠は起き上がる。やはり人間現金なもので、たとえ疲れていても次が楽だと思えばなんとか起き上がれるものである。

 

「うん。次は柔軟だからね。多分これで早朝訓練は終わるんじゃないかな」

 

「柔軟?それってそんなに時間かけるもんなのか?」

 

翔は一誠のその言葉に苦笑する。確かに柔軟だけでそんなに時間を掛けるとは思わないだろう。武術を習ってない人は。

 

「うん。武術をやってない人は武術に必要なのは筋力だって思ってるものなんだけど」

 

「違うのか?」

 

「いや、確かに筋力は一番大切だけど、柔軟性っていうのはその次くらいには大切なものなんだよ。体が硬いと自由に体を動かせないからね」

 

「へ~」

 

「それに、関節が柔らかいと怪我をしにくくなったりするんだよ?」

 

「そーなのかー」

 

翔は一誠に柔軟性の大切さについて話す。他にも関節が柔らかいと、相手の攻撃の衝撃を吸収しやすかったりするなどの恩恵があったりするのだ。

 

その為、一流の武術家の体は下手な体操選手よりも柔らかかったりする。

 

だが、勿論柔軟といってもただ闇雲にやればいいわけではないのだ。正しい柔軟法を知っていないと関節を痛めたり、逆に体が硬くなってしまうこともある。

 

「それじゃぁ、柔軟を始めようか」

 

「おう!」

 

威勢良く返事をする一誠は、翔のその目から発せられる怪光線に気付かなかった。・・・・・・南無。

 

がし!そう音が出そうな程に強く一誠の肩を翔が掴む。この段階で一誠も何かおかしいことに気付きだした。

 

「あの~、翔?なんで俺の肩を掴むのですか?」

 

「一誠君はまともな柔軟は始めてでしょ?だからまず僕が正しい柔軟を教えてあげようと思ってね」

 

「い、いや。俺だって柔軟くらい知ってるって・・・・・・」

 

「遠慮しない、遠慮しない♪」

 

「そうじゃなくて――」

 

一誠の言葉が途中で止まる。翔がその片手一本で一誠を持ち上げたからだ。そのまま翔は一誠肩と脚に腕を回していく。

 

一誠は猛烈に嫌な予感を感じ、静止の声を掛けようとしたが・・・・・・遅かった。

 

「ちょ、まじで、やめ――――」

 

「バックブリィィーカァァーーッッ!!」

 

「NOOOOOOOO!!??」

 

ゴキミシペキピキ!

 

そんな音が一誠の体の内からする。そんな暴挙を起こした張本人は爽やかな笑顔である。

 

「さて、次は、と」

 

その後も学校にギリギリ間に合うような時間まで、柔軟(拷問)は続けられるのだった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

時間が過ぎ、放課後のこと。一誠は昨日から所属しているオカルト研究部の部室にいた。壁や床に魔法陣が刻まれている部屋の中、中央付近にあるソファーに寝そべりグッタリとしている。ただだらけているというのではなく、見ているものに心底から疲れているのだと思わせる有様だ。

 

部屋にはオカ研メンバーが勢ぞろいしている。現在は眷属となったばかりである一誠と親睦を深めるために雑談に興じていた。

 

「そ、そう。そんな早朝訓練だったの」

 

「ええ、そうですよ。マジできつかったんですから。しかも疲れて授業中に寝てしまって先生に怒られてしまいますし。翔に師匠になってもらったのを早速後悔してるところですよ」

 

「それだけきつかったらそれも当然かもしれないね」

 

雑談の内容だが、完全に一誠の愚痴と化していた。今朝の修行の内容のぶっ飛び具合と、それが原因で受けた被害に愚痴を漏らしていく。いつも爽やかな笑いを浮かべている木場もこれには苦笑するしかない。

 

「大体、なんであんな無茶な修行なんだ?一応あいつって人間なんだよな?」

 

一誠のその疑問の声に沈黙する一同。皆内心では実は翔ってドSなんじゃ?と思っていた。

 

と、小猫がハッと何かに気付いたかのようにその疑問に対する推測を口にした。

 

「虐待を受けていた人は子供に対して虐待をする確率が高いと聞く・・・・・・。もしかしたらそれと同じ・・・・・・?」

 

あまりにも嫌過ぎる推測だった。もしそうだとしたら翔はあの修行を受けていたことになるからだ。しかも翔は人間で一誠は悪魔である。一誠の修行は翔が受けていたものよりも激しくなるのかもしれないのだ。

 

そこまで考えてリアスは頭を振ってその考えを追い出す。本人がいないのにあまりにも不毛な議論だった。

 

「それで、その翔はどうしたの?放課後も修行なんでしょ?」

 

「何でも先生に頼まれ事をされたみたいで。先にそっちの用事をすませていてほしい、だそうです。」

 

「そう。それはある意味好都合ね。・・・・・・朱乃、準備お願い。」

 

「わかりましたわ。」

 

リアスの命令に従い何かしらをやり始める朱乃。一誠には何をしているのかわからなかったが、魔法陣に何かをしているということだけはわかった。

 

「部長、何の準備なんですか?」

 

「あなたの神器(セイクリッド・ギア)を発現させるための準備よ」

 

「俺の神器を?」

 

「そうよ」

 

「部長、準備が完了しましたわ」

 

一誠とリアスが話している間に朱乃の準備は終わったようだ。朱乃の前にある魔法陣が淡く光っている。その幻想的な光景に一誠は一瞬見入ってしまう。

 

「イッセー。その魔法陣の中に入りなさい」

 

リアスの言葉に従い魔法陣の上にたつ。一誠はその淡い光を浴びているだけで気分が高揚してくるような気がした。いや、もしかしたら本当にそんな効果があるのかもしれない。

 

「眼を閉じなさい。そうして思い浮かべるのよ、あなたが最強だと感じる存在を。その存在が一番強く見える姿を。」

 

その言葉とともに一誠が思い浮かべたのは、大好きな漫画である「ドラグ・ソボール」の主人公である空孫 悟。その彼が必殺技である「ドラゴン波」を打っている姿。

 

「思い浮かべたわね?じゃぁ、その人物が一番強く見える姿を強く真似るの。強くよ?軽くじゃダメ」

 

その言葉に一誠はこの歳になって「ドラゴン波」の物真似を披露しなきゃいけないのかと憂鬱になった。しかし、これも自分の神器とやらを発現させるため。不承不承ながらも一誠が「ドラゴン波」をやろうと両腕を揃えて腰溜めにしたとき、ある光景が頭の中を駆け抜けた。

 

その光景を思い出した一誠は、それが頭にこびりついて離れなかった。今のこの状態じゃぁ、「ドラゴン波」の物真似をしても神器は発現しないという確信すら沸いて出てきていた。その直感に従い一誠は構えを変える。

 

左腕は腰溜めにしたまま。右手は軽く前に出した状態にする。手を握るのではなく指は伸ばした状態のまま。脚は肩幅に開いて多少腰を落としておく。

 

深呼吸する。静かに集中を高めていく。そうして幾度か深呼吸を繰り返した後、眼を見開いて動きだした。

 

左脚を前に踏み出す。それと同時に右手を後ろに引きながら左腕を前に突き出す。ただ前に出すのではなく内に捻り込むように回転を加えた上で打ち出した。

 

「人越拳ねじり貫手!!」

 

それは、本当に物真似としか言えないものだった。重心はがたがた。腕に力が入りすぎていて速度が出ていない。突き手の肩を前に出しすぎている。指も真っ直ぐ伸ばしすぎていて、もしも何かに当っていたら間違いなく突き指かあるいは骨折をしていただろう。その他にも悪いところを上げていけば限がないくらいだった。

 

それでも、一誠にとってそれは「最強」の具現だった。その証拠というべきか、一誠が突き終わるのと同時に左腕が光に包まれだす。その光に一誠が眼を閉じた。再び眼を開けたときにはその左腕に赤い篭手が装着されていたのだった。

 

「これが、俺の神器(セイクリッド・ギア)

 

丸い宝玉が取り付けられているその篭手を、一誠はしばらくの間呆けて見続けていたのだった。

 

 




副題元ネタ・・・好きっていいなよ

ありのまま今起こったことを話すぜっ!

俺はリアルで色々あってこのssの展開に悩んでいたら新しいssを書いていた

な、何を(ry

というわけで遅くなってすみませんでした。

しかもこの続きの展開に迷った挙句2分割してゲフンゲフン!!

取りあえずイッセー神器発動回でした。

次は修行回です
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