ハイスクールDragon×Disciple   作:井坂 環世

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幕間2ですが、時系列的にはむしろ原作2巻に相当すると思います。

今回はアーシアメイン!


幕間2 放課後パーティータイム

駒王学園には校舎が幾つかある。

 

その中の1つが音楽室や家庭科調理室、理科実験室など、教室では出来ない授業を行うための実習室を丸々内包している実習棟だ。

 

放課後となり、斜陽差し込む時間となっている実習棟をアーシア・アルジェントと桐生藍華が並んで歩いていた。

 

両者は楽しそうに談笑していた。主に桐生が会話を振ってアーシアが相槌を打っている形だ。

 

「それでさ~、あいつったらこう言ったのよ? 『松坂牛と烏骨鶏が街頭で焼肉撲滅宣言っ!?』って。授業中にどんな夢みてんだって話よね」

 

「フフッ。イッセーさんって面白い人なんですね」

 

「いやいや。ただの変態よ」

 

「イ、 イッセーさんは変態じゃないと思います!」

 

どうやら共通の話題である一誠の話で盛り上がっているらしい。桐生は笑いながら一誠を貶しているがそれも仲が良い故だろう。

 

顔を真っ赤にしているアーシアを見て桐生が「初心な反応ね~。可愛いなあ」と「弄りがいがありそうね」という2つの感想を抱いているとは露知らず、アーシアは一誠が如何に良い人かを話し始めていた。

 

その内容は、普段一誠と翔、松田、元浜の4人組とツルむことも多い桐生にとっては、「まあイッセーならそうするでしょうね」というものだったが。

 

要約すれば、道に迷っていたアーシアを一誠が助けてくれた、ということである。そこからどう進んだら一誠の家にアーシアがホームステイすることになり、この学校に転校することになるのか。桐生の興味を刺激してやまない。

 

まあとにかく、1つだけ分かったことがある。

 

「アーシアがイッセーのことを大好きなのは良くわかったわ」

 

「わ、わわわわわっっ!? イ、イッセーさんがす、すすすす好きってなんですかっ!?」

 

顔を耳まで真っ赤にして、どもりまくっている。誤魔化せるわけがなかった。

 

そんなアーシアの反応を見て思う。

 

(天然で清純でしかも初心な金髪美少女って、スペック高すぎない? しかもシスター属性。こりゃ男が「守りたい」って思うのも仕方ないわ)

 

彼氏持ちのリア充な桐生は別に僻むことは無いのだが、馬鹿な女も出てくるかもしれない。女にはドロドロとした部分があることを桐生は承知している。

 

ま、友達になったことだし、色々手を打ちますかっ、とそうアーシアがまだワタワタしている横で桐生は思った。

 

と、ある程度歩いていると目的地へと辿りついた。

 

「お」

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「いやいや、次で最後だなあ、と」

 

「ほえ?」

 

アーシアが小首を傾げて?マークを頭の上に掲げている。そんな仕草も一々可愛いなあ、と桐生は内心で呟きつつ間近に迫りつつある扉の上のプレートを指差した。

 

そこにはゴシック体で「第一音楽室」と書かれている。

 

「第一音楽室ですか。さっき見たのは第二でしたよね?」

 

「そ。どっちも音楽室には変わらないんだけどね~。所属クラスで使う教室が変わるのは勿論、第一は軽音楽部が、第二は吹奏楽部が主に使ってるのよ」

 

その説明で得心がいったようだ。そうなんですか、と頷いて扉へと近寄っていく。

 

扉についている窓から中を見ようとしていたのか。しかし、カーテンが掛かっていたことで中がどんな風になっているのかは見えなかった。

 

「カーテンで見えません」

 

「音を鳴らすからね。音が漏れないように遮音カーテンを張ってるのよ。壁も防音仕様なのよ」

 

「はあ。凄いです」

 

「駒王は設備に金かけてるからね~。流石元お嬢様学校って感じでしょ?」

 

「はい。校舎もグラウンドも体育館も凄く広くて圧倒されました」

 

「その分掃除とかが大変なんだけどね」

 

感心している様子のアーシアに、桐生が説明していく。その反応も納得だと、多少苦笑した。かつての自分もそんな風に圧倒されたものだ。

 

と、アーシアがこちらに振り向いてきた。綺麗なお辞儀をされたのに多少面食らっていると、アーシアが口を開いた。

 

「桐生さん。校舎を案内していただいてありがとうございます」

 

「どういたしまして。アーシアは真面目だね~」

 

「シスターですから」

 

顔を上げてきたアーシアと向かいあった。多少冗談めかしているその言い方の奥に、何か悲しげなものを桐生は感じ取ったが、まだそこまで深入りすべきではない、と自制した。

 

と、そこでアーシアの様子が変化した。何かしら不安そうな顔をして、何かを言おうとしては口を閉じてを繰り返している。桐生はアーシアが口にするまで待つことにした。下手に急かしてはいけないのだと分かっているが故の判断だ。

 

「あの、その……。桐生さん、お願いがあるんですけど……」

 

「お願い? まあ、あまりにも無理な願いじゃない限りは別に良いけど」

 

「はい、あの……えっと……」

 

両手を擦り合わせ、顔を俯かせていく。眼は左右へと泳いでいて、額には冷や汗が浮かんでいた。今のアーシアの感じている不安の大きさが見て取れる。

 

「その……私と……」

 

「私と?」

 

そこまで言ったところで深呼吸。呼吸を落ち着かせたところで一誠の姿を思い浮かべた。それだけでアーシアの心に勇気が湧いてきて、今までの不安を拭い去ってくれた。

 

その勇気を動力源として、アーシアは最初の一歩を踏み出した。

 

「その……と、友達になって欲しいんですッ!!」

 

最後は半ば勢いだった。

 

思った以上に大きな声が出たことで、アーシアの中の不安が再燃してくる。

 

どうしよう。大きな声が出ちゃいました。驚かせちゃったかもしれません。いや、それ以前にこんなお願いするなんて変な子って思われているかも。

 

桐生が中々返事をしないことも、その不安を煽っていった。

 

どうしたんでしょうか? と、チラと桐生を覗き込んだ。

 

「……プッ」

 

思わず、といった様子で桐生が噴出した。

 

その様子を見てアーシアは呆然とした。

 

「クッ、フフフッ。アハハハッ!! アーシアッ! 『友達になりたい?』それは無いわッ!! アハハハッ!!」

 

心底堪らないと桐生がお腹を押さえながら爆笑していた。呼吸も苦しいのかヒーヒー言いながら壁に手をついている。

 

その言葉を聞き、桐生の姿を見たアーシアの心の中を暗い気持ちが覆っていった。

 

――そうだ、何を勘違いしていたんだろう?

 

――イッセーさんが友達になってくれたからっていい気になって。

 

――あの人が特別なんだ。

 

――なのに、あの人が友達になってくれたからって、もっと友達が欲しいなどと欲張って。

 

――こんな欲深く、罪深い自分と友達になってくれる人など――

 

絶望と諦念が湧き上がってくる。

 

感情が噴出して、泣き出してしまいそうになる。

 

でも、駄目だ。泣いてしまったらもっと……。

 

そう感情を押し殺して、涙を零さないように我慢しようとした。

 

けれど、耐え切れずに右の瞳から涙が零れ出て。

 

――そのアーシアの心の雫を、桐生の親指が拭い去っていた。

 

「私は、もう既にアーシアと『友達になっていた』つもりなんだけど?」

 

「え?」

 

アーシアの思考が、本当に一瞬停止していた。

 

その間も、桐生は喋っている。頭の後ろで手を組んで。その顔に愛嬌のある笑顔を浮かべて。

 

その笑顔が、アーシアに桐生の言葉が本心からのものであると理解させていた。

 

「ま、ジョジョ風に言うとこうかしら。――『友達になりたい』と心の中で思ったならッ! その時スデに友情は結ばれているんだッ!」

 

「『友達になりたい』と思ったら、友情は結ばれている……」

 

そう言えば、とアーシアは思い出す。

 

初めての友達である一誠も言っていた。

 

――今日一日俺とアーシアは遊んだだろう? 話しただろう? 笑いあっただろう? なら、俺とアーシアは友達だ! 悪魔だとか人間だとか、神様だとか関係ない! 俺とアーシアは友達だ!――

 

遊んで、話して、笑いあったならもう既に友達なのだ。

 

今日一日、桐生とは何度も話し、そして笑いあった。

 

なら、もうスデに自分たちは――

 

「『友達だ』なら使ってもいいわよ?」

 

桐生が冗談めかしてそう言った。ウィンクをしている姿が随分と様になっている。

 

その言葉に、さっきとは別の意味で涙が零れ落ちそうになる。

 

嗚咽が漏れ出て、まともには喋れなくなってきそうだ。

 

でも、我慢しないと。

 

だって、言わないといけないことがあるから。

 

新しく買ったばかりの制服の袖で目元を拭う。汚れてしまったな、なんてどうでもいいことが思い浮かんだ。

 

顔を上げた。

 

笑顔を形作った。

 

何とか笑顔になっているかな、なんて不安になる。

 

でも、言うんだ、言え――

 

「――はい! 私と桐生さんは『友達です』!!」

 

それは本当に綺麗な笑顔で。

 

見るもの全てを笑顔にする力が含まれていた。

 

「ええ、勿論よ」

 

だから、桐生もそれまで以上の満面の笑顔で返すことが出来た。

 

と、アーシアが我慢の限界に来たのだろう。

 

その両の眼から涙を流し始めた。

 

「うう~。桐生さあん」

 

「はいはい。泣かないの。折角の綺麗な笑顔が台無しよ?」

 

ポケットから出したハンカチにてアーシアの顔を拭ってあげた。

 

彼女が化粧をしてなかったのは幸いだろう。もしもしていたら顔がぐちゃぐちゃになっていたところだ。

 

まあ、しなくてこの美貌はどうなのよ、と思いはするのだが、そんな思考は頭の中のゴミ箱にボッシュートしとくのが吉だろう。嫉妬したところでどうにもならないし、第一泣いているアーシアを見ていればそんな気持ちも萎んでいくというものだ。

 

数分経っただろうか?まだスンスンと鼻を鳴らしているが、何とか涙は収まってきたようだ。

 

人前で泣いたことが恥ずかしいのだろう。その顔を羞恥で赤く染めている。

 

「その、みっともないところをお見せしてしまいました」

 

「別にいいわよ? アーシアほどの美少女の泣き顔を見れるなんて光栄なことだし」

 

「び、美少女!? も、もう! からかうのはやめてください!」

 

「本当のことなんだけどな~。それに時間も稼げたし結果オーライでしょ」

 

「え? 時間、ですか? どういうことです?」

 

アーシアのその質問には答えずに、桐生は第一音楽室の扉を開けた。

 

そしてその行動を見送っていたアーシアの後ろに回ると、その背中をグイグイと押していく。目指す先は音楽室だ。

 

「ちょ、ちょっと!? 桐生さん!? 今はクラブ活動中なんじゃあ……!?」

 

「はいはい。いいから入った入った」

 

押しの弱いアーシアは碌な抵抗も出来ずにその扉を潜った。カーテンが顔に引っかかってきた。思わず眼を瞑り、カーテンを手で押しのける。

 

カーテンを追いやったことで眼を開けた。その先には部活に励んでいる生徒達の姿が――

 

パンッ! パパンッ!

 

『アーシアちゃん! 駒王学園へようこそ!!』

 

無く、クラッカーをこちらに向けて一斉に引いているクラスメイト達の姿があった。

 

「ほえ?」

 

予想していた光景がなかったことと、大きな音が鳴ったことによって呆けてしまう。教室中に広がる光景を見渡していても、何が起こっているのか理解できない。

 

と、教室の前方の黒板に何かが書かれていた。あそこには色とりどりのチョークで「アーシアちゃん歓迎会」と書かれていた。残念ながら日本語を習いたてで漢字がまだほとんど分からないアーシアには「アーシアちゃん」までは読めても「歓迎会」までは読めなかった。

 

「あの~桐生さん、これは?」

 

「見て分かるでしょ? アーシアの歓迎会よ」

 

「かんげいかい? それって……」

 

今だに呆然としている様子のアーシアの腕を誰かが引っ張った。そちらに眼を向けてみる。左手を引っ張っているのは確か「片瀬」さん。右手を引っ張っているのは「村山」さん、だったか?

 

「あ、あの!?」

 

「ほらほら! ボーっとしてないで!」

 

「今日はアーシアちゃんが主役なんだから中央に来ないとね!」

 

人垣が左右にのけてそこに置いてあるものが見えてきた。

 

いつもは置いてある3人1組の長机をどけて出来たスペースに、その机を4つ引っ付けてその上に様々なお菓子とジュースが置いてあった。椅子が無いところを見るに立食形式のようだ。

 

と、そこまで来て見えてきたものがあった。黒板の下、普段は教壇が置いてあるそのスペースにドラムセットやキーボードなどが置かれている。

 

そして、クラスメイトたちから離れた位置に、自身もよく知る紅髪の麗人と、赤縁眼鏡で黒髪の女の人が壁にもたれて立っていた。リアスが手を振ってきたので軽く会釈する。

 

と、そこでスピーカーから大きな声が聞こえてきた。マイクを使って声を拡大しているのは桐生だ。

 

『さ~て始まりました! アーシアちゃん歓迎会! さて、最初っからクライマックス!! 今回はアーシアちゃんを歓迎するために「あいつら」が復活だあ!!』

 

その言葉が聞こえてくると、向こうの扉――音楽準備室と繋がっているもの――から4人の人が出てきた。スポーツ刈り、黒髪眼鏡、茶髪、金髪蒼眼の4人組。

 

スポーツ刈りがドラムセットへ。黒髪眼鏡はキーボードへ。茶髪はマイクスタンドの前へ。金髪蒼眼はマイクを挟んでキーボードと左右対称になるような位置へと。

 

その内の2人。ギターを持つ茶髪と、ベースを持つ金髪蒼眼はアーシアの顔見知りだった。

 

「イッセーさん!? 風林寺さん!?」

 

その声が聞こえたのだろう。2人がアーシアへと顔を向け、2人同時にニヤッと笑った。まるで悪戯が成功した悪童のような笑みである。

 

『さて! 知らないアーシアのためにこの4人を紹介していきましょう! まずはドラマー! 彼女が出来たことで、将来を真剣に考え始めた! 現在プロの写真家の下でマジに修行中! 元エロパパラッチ、現写真家志望! 松田ァッ!!』

 

ドンドドンドン! ドンドドンドン! ドン!

 

紹介を受けて適当にドラムを叩く。その姿は中々様になっており、濃密な練習の後が窺えた。

 

「アーシアちゃん! 後で写真のモデルになってくんね?」

 

「あ、はい。いいですよ」

 

「っしゃ!」

 

唐突なお願いに条件反射で頷いてしまう。この辺り本当に人が善い。流石は元聖女。

 

が、クラスの男子は気に入らなかった模様。一気にブーイングの嵐となった。

 

「ふざけんな! 新しいクラスの癒し、アーシアちゃんを!」

 

「第一、お前にはもう彼女いるだろうが!」

 

「そうだ! その子をモデルにしとけよ!」

 

「うるせー! 誰が自分の彼女を大多数の男の目に晒したがるよ!」

 

『はいはい! 勝手に盛り上がらない! 静かにしないとアソコのサイズを晒すわよ!』

 

シーン…………。

 

言い争いに発展していた松田とその他大勢の男たちの口論を桐生の一言が捻じ伏せた。誰だって自分の一番のプライバシーを暴露されるなんてのは願い下げだからだ。ていうか何でクラスの男たちのアソコのサイズなんて把握してんの?

 

これがッ……! 匠ッッ……!? と、男達を中心に畏怖の念が広がっていくのを見た桐生は満足げに頷いていた。

 

『よろしい。それじゃあ続けるわ。次はキーボーダー! あんたら手を出すんじゃあないわよ! 私にゃNTR(寝取られる)趣味はない! マイスイートダーリン! 元浜ァッ!!』

 

元浜も即興でキーボードを鳴らしていく。どうやら紹介されると適当に弾くのが慣習?であるようだ。

 

弾き終わったところで元浜が口を開く。その顔は多少呆れ気味だ。

 

「流石に「マイスイートダーリン」はやめてくれよ」

 

『い、いいじゃない! 別に……』

 

「恥ずかしがるんなら言わなきゃいいだろうに」

 

ハア、と溜め息を吐いている。どうやら普段からそんな馬鹿ップルじみたやりとりはしていないようだ。桐生の顔が多少朱に染まっている。

 

『さ、サア、次にいくわ!』

 

「誤魔化したな」

 

「誤魔化したね」

 

「誤魔化しましたね」

 

『そこ! 五月蝿い! ていうかアーシアまで!?』

 

ガビーン! と、少々ならず大袈裟なリアクションを取る桐生。どうやらアーシアまでがそんな反応をすることにショックを受けているようだ。

 

もっとも、それも盛り上げるための芸の1つのようなものだったのだろう。すぐに元の調子を取り戻して紹介に戻る。

 

『続いてはベーシスト! その楽器の通り縁の下の力持ち! こいつが居なきゃあこのバンドは存在しなかった! 変態3人組の外付けストッパー! 風林寺ッ!』

 

ボボボボ ボボボボ ボン ボボン ギュィーーン!

 

「もうそろそろ変態3人組って称号は相応しくないんじゃない?」

 

『残念! 表に出さないようにしてるだけで変態なのには変わりなかった!』

 

「まあ、そうだけど」

 

平然と変態呼ばわりしたりする桐生も大概だが、それを否定しない翔もひでえもんである。もっとも、変態呼ばわりされても否定出来ない部分がある3人の自業自得かもしれない。

 

まあ、口では何だかんだ言いつつも卑猥な行動は起こさないようになっているので、真に受けたり、クラスで酷い扱いになったり、ということはない。冗談だったりじゃれ合いの一部であることが殆どだ。

 

が、それを知らずに、また本気で受け取ってしまう真面目な人もいるもので。

 

「え、えっちなのはいけないと思います!」

 

『はい! アーシアの『えっちなのはいけないと思います』入りました! ありがとうございます!』

 

「「「「ありがとうございます!!」」」」

 

「ぴえっ!?」

 

桐生に続いて男子連中が大声を上げてお礼を言いながら上半身を90度に折り曲げる。その様ははっきり言って気持ち悪い。

 

アーシアも驚いてしまっており、そしてアーシアに対して過保護なものがこの場にはいる。

 

「おい! アーシアを怖がらせるんじゃねえ!」

 

『はいはい、わかったわよ。じゃああんたの紹介に移るから』

 

「なんか俺の扱いだけぞんざいじゃないか!?」

 

一誠の抗議を適当に受け流す。その態度は超軽く、一誠の抗議も柳に風となっていた。まあ、一誠はこういうキャラだから仕方ねえのである。具体的に言うと絶叫型ツッコミ&エロボケキャラだ。

 

『気のせいよ。 ゴホン! 最後はギター&ボーカル! どいつもこいつもリア充しやがって! ああ! もう! 妬ましい! バンドメンバーで唯一の恋人無し! 兵藤っ!』

 

「おーい! 俺の紹介だけ悪意入ってないかー! ていうか好きで彼女がいないわけじゃないわ!」

 

そのあまりにあまりな紹介に、半ば涙目で一誠が突っ込む。何でこういう立ち位置になっちゃってるんだろう、と心の中で今までの高校生活を回顧してみたものの、原因はわからなかった。

 

と、その様子に何とかフォローを入れようとする健気な娘が1人。アーシアである。

 

「わ、私はイッセーさんに恋人が居なくてよかったなあ、て思いますよ!」

 

が、残念ながら1ミクロンもフォローになっちゃいねえのであった。むしろ傷口を切り開いてその中に塩だけでなくその他諸々毒物を捻じ込むような暴挙である。

 

一誠は恥も外聞もなくその場に崩れ落ちるのであった。その格好を端的に現すとorzである。

 

「うわぁ」←翔

 

「うわぁ」←リアス

 

『うわぁ』←その他大勢

 

『うわぁ。トラウマを無自覚で抉りにいくなんて、このシスター天然で鬼畜やでえ。アーシア、恐ろしい娘ッ!!』

 

ちなみに、このクラスはレイナーレの件は知らないが、去年一誠が女の子と付き合い始めて2週間もしないうちに振られた(しかも相手から告白されたにも関わらず)という経験を持っていることは知っているため、女性との付き合いに対して一誠が慎重になっていることは把握している。

 

そんなトラウマを直球で抉りに言った(誤字に在らず)アーシアへの畏怖の感情が会場を満たしていったのであった。

 

「え!? どうしたんですか!?」

 

「いいんだ……。どうせ俺なんて女の子とまともに付き合えるはずもない、まるで駄目なお付き合いしかできない男、略してマダオなんだ……」

 

ギターと暗い影を背負いながらそう呟く一誠。そんな彼の元にも救いの手は差し伸べられた。

 

床に置いていた手を握り締め、自らの胸元へと持っていく影。アーシアだった。

 

「そんなことはないです。私はイッセーさんはとても素敵な方だと思います」

 

「アーシア……」

 

まるで地獄の底にて蜘蛛の糸を垂らされた時のカンダタのような気持ちになりながら、顔を上げる一誠。その光景はまるで一枚の絵画のように美しかったが、地獄に突き落としたのも救いのための糸を垂らしたのもアーシアである、という一点が桐生を戦慄させていた。

 

(一端落としておいてから持ち上げることで自分の株を上げるというまるで小悪魔のような手口ッ! しかもそれを無自覚で行っているという事実ッ! 清純シスターと魔性の女という相反する属性をまったく矛盾させることなく同居させているッ!! これがアーシアの実力ッ……! 駒王のシスターは化け物かッ!?)

 

ある意味でアーシアの「元聖女であり現悪魔」という正体を正確に看破しながらも、取り敢えず一誠の気持ちが持ち直したようなので桐生は元の流れに持っていくことにした。

 

『元気を取り戻したわね? それじゃあアーシアも元の位置に戻って頂戴ね~。……よろしい。さて、今紹介したこの4人がアーシアを歓迎するために音楽を演奏してくれる4人組バンド。去年の学園祭で舞台に上がった『松風元兵』よ! メンバーの苗字を一字ずつ取ってくるなんて安直なネーミングよねえ』

 

「うるせー! 他に無難なのが思いつかなかったんだよ!」

 

「確か他には『H2M2』なんて候補もあったよね?」

 

「ああ、ローマ字の頭文字(イニシャル)を取ってくるという点においては安直さは変わらないな」

 

「それだけじゃなくて、

 

(Hen)態3人組って呼ばれているほど

 

(Hen)態な俺らが

 

(Mo)テるためにバンドを組むけど

 

(Mon)句は無いよねっ!

 

っていう頭文字を取ったっていう意味も付けてたな。流石にこんなの気付くやついねえだろ、ってことで無難な名前になったけど」

 

はっきり言って無難すぎて何の面白みも無い名前だが、それ以外に思いつかないほど貧困な想像力しかなかった。ごめんね☆

 

『4人を紹介させて頂いたところで次に進みましょう! 今回の司会進行をさせてもらうのはこの私! 上は高度な政治的な話から下は猥談まで! 政治、経済、時事、勉強、アニメ、ゲーム、下ネタなどどんな話題でも何でもござれ! そのマシンガントークに留まる気配はない! アーシアが来るまではクラスの美少女枠と盛り上げ(ムードメイカー)担当! その眼鏡によってあらゆる真実見抜く! 「匠」こと桐生藍華だあ!』

 

「なんで自分の紹介が一番長いんだよ! しかも自分で美少女って言うな!」

 

「流石、イッセー君の突っ込みが一番早いね」

 

「えっ。もしかして俺の扱いが酷いのってそのせいか?」

 

「「「「『うん』」」」」

 

「クッソオオオオオオオッッッ!!!!」

 

一誠が頭を抱えて絶叫するが、一誠の叫びが上がることなどこのクラスでは日常茶飯事である。誰も(アーシア以外)は気にしていない。

 

『さて、歓迎会を始める前に紹介をしなくてはいけない方がおられます。今回の歓迎会を始めるに当って、この会場を準備するために軽音楽部から借りるための交渉にあたってくれたゴラン・ノスポンサー、ではなく。支取蒼那生徒会長と、その会長に話を取り付けてくださったリアス・グレモリー先輩です。皆さん拍手!』

 

パチパチパチパチ!!

 

クラスメイト全員がリアスと蒼那に向けて拍手をする。リアスはそれに手を挙げて答え、蒼那は会釈するに留まった。

 

余談だが、蒼那は「会場を借りる」代わりに「軽音部が前から欲しがっていた備品を購入」し、リアスは「会場を借りる交渉をして貰う」代わりに「備品代の何割かを出す」という契約を行った。つまり悪魔としての業績を学生としての行動の中から出すというちゃっかりした強かさを両者とも発揮している訳で、その行動に損と善意だけがあったわけではない。流石は悪魔である。

 

そんな裏話を勿論知らない桐生が、そんな様子など露とも出さない蒼那へと話を振った。

 

『そんな会長から一言貰いたいと思います! どうぞ!』

 

桐生が蒼那へとマイクを渡した。その振り事態は最初から決めていたのか、動じることなく蒼那はマイクを握った。それだけで会場のざわめきが収まる辺り、その『王』や『上級悪魔』としてのカリスマの片鱗が垣間見える。

 

『さて、これは歓迎会ですので長々と話をするのはやめておきましょう。私から言うことは1つ。羽目を外しすぎないようにして、けれど精一杯楽しみ、また、アーシア・アルジェントさんとの親睦が深められるようにしてください。……それと、アルジェントさん』

 

「は、はい!」

 

『自分で言うのも何ですが、この学園は素晴らしい所だと思っています。これから勉学に行事、他にも様々なことを学生生活を送る上で経験されていくでしょう。……それらの日常を存分に楽しんでいただくことが、生徒会長である私の望みです』

 

「はい! 私もとても楽しみです!」

 

『ふふ。それじゃあこれで挨拶を終わらせていただきましょう。私は仕事が残ってますので退場させていただきますね』

 

一礼をして、桐生にマイクを渡して言葉通り扉に向かっていく。その後姿に大きな拍手が送られていた。

 

『さて、生徒会長の有り難いお話を頂きました! それではそろそろこの歓迎会を始めさせていただきましょう! ……皆さん、お手元にジュースは御座いますね?』

 

桐生が辺りを見渡した。誰も彼もが紙コップを持っており、その中に各々の好みのジュースを入れている。今、最後の1人、アーシアにも紙コップが渡った。

 

『それでは……アーシアの転入を祝して……乾杯!!』

 

「「「「「「「かんぱ~い!!」」」」」」

 

コップを上に掲げてから、口へと運んだ。アーシアもおずおずと周りの人間に従ってそのコップの中身を喉へと飲み込んでいく。

 

『ぷはあっ! さって、それじゃあアーシアちゃん歓迎会を開催するわよ! さあ、音楽部隊ミュージックスターツ!!』

 

桐生がバンドの4人組を指差して指名する。紙コップを床へと置いた4人はそれぞれ顔を見合わせてニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

「アーシアちゃん、今更だけど駒王学園へようこそ」

 

ベースを肩から提げて翔が。

 

「盛り上げていくから、楽しんでいってくれよな!」

 

マイクスタンドを掴んで一誠が。

 

「拙い演奏かもしれないが、全力を尽くさせてもらおう」

 

眼鏡を中指で持ち上げながら元浜が。

 

「それじゃあ、行くぜッ!」

 

ドラムスティックを両手で持った松田が。

 

それぞれの演奏準備を整えた4人が位置につき、そして息を合わせていった。

 

「「「「1! 2! 1、2、3、4!!」」」」

 

そして、荒削りながらも魂の込められた演奏が始まった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

歓迎会開始から暫くの時間が経ち、アーシアは一呼吸を吐けるために今は人から離れて壁にもたれていた。

 

「ふぅ」

 

「疲れちゃったかしら?」

 

そんなアーシアの隣にやってきたのは、アーシアの所属することになるオカルト研究部の部長であり、眷属としての『王』でもあるリアスだった。

 

同じように壁にもたれかかったリアスに向き直りながらアーシアは疑問に答えるべく口を開いた。

 

「はい、確かに疲れました。……けど、それ以上に楽しかったです」

 

「そう。それは良かったわ」

 

そう、確かに今までに無いほどの人たちと話したことで疲れているが、そんな経験も初めてのことで、アーシアを楽しませてくれていた。

 

また、常に側には桐生が居て、誰かしらが話しかけている時もアーシアをフォローしてくれたおかげで、クラスメイトの誰とも尻込みすることなく話せていたと思う。

 

歓迎会によって、確実にクラスメイトとの距離感は縮めることが出来ていて、そのことが嬉しかった。

 

そんな自らの下僕の様子を見て、まるで我が事のように喜んでいるリアスに、アーシアはより一層嬉しくなり笑みが零れた。

 

「それに……」

 

そう続けたアーシアの視線の先にはクラスメイトに肩を掴まれて絡まれていながらも笑顔になっている一誠の姿。今は演奏していないものの、先ほどまでの演奏と歌は確かにアーシアの心まで響いていた。

 

「イッセーさん、かっこよかったです」

 

「ふふ。確かにね。去年話題になったのも頷けたわ」

 

頬を朱色に染めているアーシアの気持ちが微笑ましくて、思わずリアスは笑みを浮かべてしまう。

 

そして、リアスの言葉を聞いて恋敵(ライバル)が増えるかもとワタワタしている様子にほっこりとしてしまうのも仕方ないというものだろう。可愛い。

 

そう、そんな可愛い眷族だからこそ、リアスはこれからのことを心配してしまうのだが。

 

「アーシア。これから先上手くやっていけそうかしら?」

 

「はい! 皆さん良い人ばかりでしたから」

 

全員と『友達になりたい』と思ってしまうくらいには。

 

けれど、アーシアはその言葉を口にはしていない。雑談をすることはあっても、「友達になってください」とは一切口に出していない。

 

だって、教えてくれたから。

 

初めての女友達が、言っていた。

 

『友達になりたい』と思った時には、もうスデに――

 

「皆さんは、私の自慢の『友達です』!!」

 

その身に宿す神器の名前の如く、聖母のような微笑を伴ってアーシアはそう言いきった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だが、その言葉を聞いていた一部の男連中が、あるものは「まだチャンスはある」と希望を抱き、あるものは「永遠の友達宣言ですか?」と絶望を抱いたという。

 




副題元ネタ……漫画「けいおんっ!」より、主人公たちのバンドグループ名「放課後ティータイム」

というわけでアーシア転入回でした。クラスのほんわかしたムードが出していれたらなあと思います。

今回は桐生さん大活躍! 桐生さん超書き易い。スラスラ出てきました。

ジョジョネタが出てきましたが、この時空ではジョジョが発売されてる設定です。こういうのが嫌な方は言ってください。なるべく減らします。

そして次回からは原作2巻突入!

2巻の目標は「まるべく全員格好良く書けるようにする」です。

私は「敵役、悪役、ライバル役が魅力的な物語は面白い」と思っております。

代表としては「ジョジョ」の「DIO」や「ドラゴンボール」の「ベジータ」や「ブロリー」などでしょうか?

なので、ライザーも格好良くかけたらなあ、と思っております。
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