はっきり言いましょう。
くどいです。
めっちゃくどいです。
大事なことなので2回書きました。
合宿場にその来客が現れたのは、夕食が終わってその片付けを皆でしているときだった。
黒歌が皿をスポンジで油汚れを落とし、アーシアが皿についている泡を水で洗い流す。そして朱乃が水気を拭き取り、小猫が食器を元の位置へと直していく。
男たちはログハウスの前で火の後始末をしたり、使った炭を片付けたり、テーブルを布巾で拭いたり。
そしてそれら全ての指揮をリアスが執っているところだった。
ログハウスの前の広場を魔方陣から漏れ出した光が照らし出す。夜が降りてきて、薄暗闇になりかかっていた広場を照らし出した光から1人の男が出てきたのだ。
薄暗闇で尚浮き彫りになる、全身を黒尽くめの装束で包み込んだその男のことを木場と一誠が警戒していると、翔が意外そうな声を上げた。
「あれ? ジョージ、どうしてこんなところにいるんだい?」
「お前に言う義理は無いんだが……。何、依頼の物を持ってきたというだけの話だ」
まるで気安い友人に対するかのように声を掛けた翔と相反するかのように、男――ジョージ・フォアマン――はあからさまに嫌そうに眉間に皺を寄せた。
その反応に両者を暫く見比べていた一誠が、ジョージを指差しながら疑問を口にする。
「なあ、翔。知り合いなのか?」
「名前はジョージ・フォアマン。依頼達成率ほぼ100%の
「何処の誰のせいだと思っているんだ?」
「僕達だね」
「分かっているなら少しは自重しやがれ」
ハァ、と深く嘆息するその様子から一誠は悟った。
この男も、翔に振り回されて苦労している口だということを。
そのことに気付いた一誠がニコニコしながらジョージに近寄っていく。そうする一誠にジョージも気付いたのだろう。暫くジロジロと一誠の体全体を観察していたが……不意に、ガシッと互いに力強く握手をした。
そう、ジョージも察知したのだ。
自分達は同志になれる存在だと。
「ジョージ・フォアマンだ。どうやら長い付き合いになりそうだな」
「兵藤一誠っていうんだ。よろしく頼むぜ」
ジョージが来たことを察知して家から出てきた面子と翔は、その様子に何事だと不思議そうに首を傾げ、木場は苦笑を浮かべることしか出来なかった。
何か、この調子だと苦笑が顔に張り付きそうだな、という予感がしたとかどうとかいう話もあるが、それは木場にしか判らないことだろう。
ともかく、早速カオスに突入しかけている雰囲気を察知したリアスが前もってそれを防ぐために場を仕切ろうと一歩踏み出しながら声を出した。
「あなたがお兄様が紹介してくれた何でも屋ね? 依頼の物を届けに来たのかしら?」
「俺は何でも屋じゃあなくて、バウンティ・ハンターなんだが……。まあいい」
追求するのも面倒になったのだろう。ジョージは深く考えるのをやめて、持ってきていた鞄の中をゴソゴソを探り出した。
そうして取り出したのは、紙の束と一枚のSDカードだ。それをリアスは受け取り、暫く眺めていると満足そうに1回頷いた。
「確かに受け取ったわ。報酬は指定の口座に振り込んでおけばいいのね?」
「そうしてくれ。それじゃあ、依頼を完遂したから帰らせてもらうぞ」
「え~。久しぶりに会ったんだから、お茶でも飲みながら話でもしようよ」
その言葉に心底から嫌そうな顔をしてジョージは言葉を返した。
「ハッ! 誰がお前なんかと好き好んで一緒にいるかよ。じゃあな」
そう言って後ろでに手を振りながら、ジョージは魔方陣の光の中へと消えていった。
◇◇◇◇◇◇
ログハウスの居間にて集まった全員が、先ほどジョージが持ってきた紙へと眼を通していた。木で出来たテーブルの周りに、椅子やソファを持ってきて集まっている。上座がリアス。そのリアスから見て右に木で出来た椅子に座っている男たち3人が。左側にソファに座っている女性3人がいる。
「かなり詳しくデータに起こされているわね……。助かるわ」
そう言って紙束を机の上に置いたのはジョージへとこのデータを持ってくるように依頼したリアスだった。バサリ、と置かれた紙束が慣性に従ってテーブルの上に広がっていく。
その紙に記されているのは、ライザー・フェニックスとその眷属のデータだ。身長・体重・年齢から始まり、得意とする戦法や戦闘スタイル。今までのゲームで使われた戦略やそこで果たした役割。果ては性癖までも網羅されたそれを1日で用意したというのだからジョージの優秀さが際立っている。……一部、必要の無い情報もあったが。
「それじゃあ、ライザーとその眷属の特徴を纏めましょうか。気付いた点を上げていって頂戴」
その言葉に皆が視線を上げる。朱乃は立ち上がってリアスの椅子の後ろへと置いていたホワイトボードの側に行き、ペンを取るとキュポッという音をさせて蓋を外した。そのホワイトボードには『ライザー・フェニックス攻略作戦会議』と書かれている。
それを確認してリアスが頷くと、皆が気付いた点を上げていった。
「基本戦術は『
「主力はやっぱり『
「回復アイテムのフェニックスの涙は全てのゲームで女王さんが持っていますね。他に回復の力を持っている人はいなさそうです」
「騎士や僧侶は複数で組んで数的有利を保つことが多いみたいだにゃ。他のところの数的不利はサクリファイスの戦略でそもそも不利になること承知の上でそう振っているみたいだにゃ」
「そうやって道を開けて最後はライザー自身が出て決着をつけているパターンが多いみたいだ。地力で勝っている相手には出るまでも無く勝ってるけど、地力で劣っている相手にはそうやって出て、「不死身」の特性でごり押ししているみたいだな」
そうやって出てきた案を朱乃がホワイトボードへと書き記していく。他にも幾つかの特徴が書き記されていった。
・僧侶の1人、レイヴェル・フェニックスは殆どの戦いで騎士と組んでいるが、実質的に戦いに参加することは少ないこと。
・騎士、カーラマインは、1対1を好んでいるらしく、絶対に勝てる(とライザーが判断したであろう)相手には1対1で。それ以外は他と同じく複数で当ることが多いこと。
・女王ユーベルーナは中々の炎の魔力の使い手らしく、『
等が挙げられていった。
それらの特徴を眺めていたリアスは、はあ、と嘆息しながら結論を導き出した。
「このデータを見ていると……やっぱり、ライザーの「不死身」という特性が一番厄介ね。……わかりきっていたことだけれど」
そう、ライザー眷属の厄介さはその一点に集中されていると言っていい。
勿論、普通に戦っても現在の自分たちがきつい戦いを強いられることになるのは間違いないが、それでも「優秀な若手上級悪魔」という範疇を逸脱しないものだ。
それを――御家の関係でわざと負けた以外のゲームで――無敗へと押しやっている要因は、間違いなくライザーの「不死身」という特性だ。
そのことを再確認させられたリアスは、どうやってこの難題を解こうかと頭を悩ませた。
「あの、ライザーの、フェニックス家の特性が「不死身」ってことは理解したんですけど、……それって破れるものなんですか?」
リアスが顎に手を当ててウンウン唸っていたところに質問が飛んできた。手を挙げながら一誠がその顔中にはてなマークを浮かべている。
一端頭を悩ませることをやめて、その質問に答えを返した。
「そうね。かなり条件が厳しいけれど不可能ではないわ。アーシアも知らないでしょうし覚えておくといいわ。……いい? フェニックスの「不死身」を破るには主に2つの方法があるわ。1つ、魔王や神クラスの、相手の再生能力を圧倒的に超越する破壊力の攻撃をぶつけること。2つ、相手の再生能力が発動できなくなるくらいに疲弊させること。……なんだけど、翔、あなたなら他の方法でフェニックスを倒せるんじゃないかしら?」
リアスの言葉をメモっていた一誠とアーシアは、最後の言葉に翔へと視線を向けた。その場にいる全員のギラギラとした視線を受けて、翔は苦笑いしながらも頷いた。
「まあ、やってみないとわからないですけど、多分出来ると思う方法が幾つかありますね」
翔は活人拳を志している武術家である。ある意味で相手を殺傷せずに無力化するエキスパートとも言えるだろう。そんな翔にしてみれば、いくら「不死身」と思える再生能力を有していようが無力化する方法はすぐに思いつく。
例えば、「馬家縛札衣」という技がある。相手の服を使って相手を捕縛する、ある意味で活人拳の極みとも言える技だ(その技の性質上女性に使ったらエロい、もとい、エラいことになってしまうが)。この技を使えばライザーも無力化することが出来る……かもしれない。
要するに、そういう風に対応策の1つや2つはすぐに出てくる。
そんな翔にリアスの眷属たちも「おおっ」というふうに感嘆の声を漏らしたが、翔はにこやかに笑いながらそんなメンバーの感心をぶった切った。
「でも、リアスさんは僕に「ライザーを倒せ」とは言わないでしょう?」
「あら、どうしてそう思うのかしら?」
「このゲームの意味を考えたら、ね」
その言葉にリアスは満面の笑みをもって返した。その顔が翔の言葉を何よりも雄弁に肯定している。
そう、リアスは今回のゲームで、翔にライザーを倒してもらおう等とは欠片も思っていない。翔はあくまで彼女の眷属の僧侶の替わりに出る助っ人なのだ。そうである以上、件の僧侶が出来る以上のことはやってもらうつもりは無かった。
何故? そう問いたげな顔をしている眷族たちにリアスはその胸の内の一端を明かした。
「今回のゲームは、ライザーと結婚したくない私を結婚させるために家が用意したものよ。言わば、私とライザー、更にはグレモリー家やフェニックス家との意地の張り合いなのよ。……私の意地の張り合いを、他人の力に依存して決着をつけるなんてことは私の矜持が許さないわ」
眷属の力を借りることは問題ない。自身の力を超える者を眷属に出来ない以上、眷族の力はリアスの力とも取れるからだ。
だが、翔は違う。ただ、彼とリアスの都合が交差した結果、自分の眷属の師匠になって貰っているだけの知人に過ぎないのだ。
彼の力を借りるのはまだいい。だが、彼に頼りっぱなしでいることや、彼だけの力で今回のゲームの決着をつけることは我慢がならない。
他人に勝負の行方を委ねておきながら意地の張り合いだなんだと囀るなんて、リアスにとってはチャンチャラ可笑しいのである。
故に、今回のゲームは自身の力と、自らの眷属の力を用いてライザーを攻略する。そう決めたのだ。翔に助っ人として出てもらうものの、自分の僧侶に出来る範囲のことしか手伝ってもらわないということはリアスの中で決定事項である。
そのリアスの意思の固さを感じ取った眷属たちは、仕方ないな、という苦笑を浮かべていたが、内心でこの「王」を絶対に勝たせようという意志をより堅固にした。
この中で一番リアスと付き合いの長い朱乃は、リアスがそう言うのをわかっていたかのような微笑みを浮かべて問いかけた。
「フフッ。そこまで吼えたのだから、勿論ライザーに勝つための方策は思いついているんでしょうね?」
「うっ」
「……思いついていないのね」
「そ、そんなに簡単に思いついていたらこんな会議を開かないし、そもそもライザーがあんなに白星を挙げることは出来ないわよ」
拗ねたように唇を尖らせながら言い訳じみたことを言うリアスに、朱乃はフゥ、と溜め息を吐いた。途中までは王として中々格好良かったのに、どうして最後の最後でこう落とすのかしら? と。
その様子を眺めていた木場が主を庇うようにして発言をした。
「それなら、ライザーを倒すための条件を1つずつ確認していったら良いのではないでしょうか? そうすれば作戦も思いつくかもしれません」
「そうしましょうか」
そうして気付いた点があれば挙手をして1つずつ上げていくことにした。
「まず大前提として、私たちがライザーを倒すには先ほど言った方法の中での2番目、精神的に疲労させるしかない、ということかしら。他の方法もあるかもしれないけれど、実力的に実行することは難しいと思うの」
「ま、そうだと思うニャ。相手を殺さずに無力化するっていうのはかなり難しいものだしね。それこそ実力に隔絶的な差が無い限り、慣れてないと無理だと思うわよ」
レーティングゲームなので相手を殺すということは無い――その前に戦闘不能と判断されて救護室に運ばれる――が、フェニックスには「不死身」が有るので、その規則には当てはまらない。故に殺さずに倒すという技術が必要になってくるわけであるが、普通の悪魔はそんなものには慣れていない。活人拳の翔と黒歌だからこそ慣れているのである。
「その通りよ。だから私たちはライザーを再生できなくなるくらいに痛めつけて疲弊させる必要が出てくるわけだけれど……」
「……そのためには、こちらも万全の状態で相手に当る必要がある」
「そっか。「不死身」だからこっちよりもタフなわけか……。1人だけで万全の状態で当ってもきついかもな。もっと大勢で当らないと駄目そうなんだけど……」
「相手はサクリファイスでこちらを無理矢理消耗させることも出来るわけだね。数の利が向こうにあるから尚更だ」
「わ、私も皆さんを回復できますけど、多分その為に前線に出たら集中的に狙われて倒されてしまうと思います」
「それに、ライザーを倒すために大勢で掛かろうと思ったら、当たり前ですけど相手の眷族が邪魔になってくると思いますね」
「で、その眷属が邪魔だからといってリタイヤさせようとしても、ライザー対策のために必要最小限の消費で倒さないと駄目なわけだにゃ」
「しかも、向こうの戦略の要である女王はほぼ100%「フェニックスの涙」を持ってきていて、一気に倒さないと回復してきますわね」
それぞれの意見を纏めると、こうなる。
「ライザーを倒すためには、相手の眷属を必要最小限の消耗で、しかもフェニックスの涙を使用できないように一気に倒す。その上で此方の眷属が殆どリタイヤや消耗していない状態でライザーに当り、相手が再生できなくなるまで疲弊させる必要がある。ちなみに相手が好んで使う戦略はサクリファイスで、必要とあらば自分の味方をも巻き込む技を使ってでも此方を排除することも厭わない」
10文字以内で言うと、「何この無理ゲー?(計8文字)」である。
「ライザーが好んでサクリファイスを使うわけよね……」
レーティングゲームでは「王」が倒されるか、『
「サクリファイス」は自身の眷属も損耗するが、相手を確実に消耗させる。ライザーにぴったりの戦略と言える。
だが、幾ら不可能な無理ゲーに見えようが、それでも勝たなければいけない。リアスはこの場に出揃っている条件、自身の眷属の能力、今までに見てきた公式のレーティングゲームの内容、読んできたゲームの戦略本や軍学書等の内容を吟味していく。
相手に勝つために必要な条件。
ほぼ消耗の無い状態で相手の眷属を全員倒すこと。
ライザーに対して此方が万全の状態で相対すること。
此方の眷属のメンバーとその能力。
『
『
『
『
『
助っ人、風林寺翔。その近接戦闘技能の深みは未だに自分では底が量れない。(この前自分はまだまだ未熟だと言っていたが、その時には秘かに小猫と木場が落ち込んでいた)。ただ、今回は自分のもう1人の『僧侶』であるギャスパー・ヴラディの代わりとして出てもらうので、余りその実力は発揮されないであろう。
そして何より自分、『
それらの条件と、今まで眼にしてきた戦略や戦術、軍学書に書かれていた心得などがリアスの頭の中でグルグルと渦巻いていく。いや、それだけじゃない。まるで関係ないと思われるような今までの出来事も交じって頭脳が回り始めた。
そのまま長考に入り、十数分が過ぎ去った。その間、誰もが喋りだすことなく、リアスを静かに見守っていた。
考えが纏まったのだろう。顔を上げたリアスの目には、勝機を見つけた者特有の光が宿っていた。
「皆、作戦が決まったわ」
その言葉に眷属は皆が皆流石、という顔をしていた。彼らは自分の主の優秀さをよく知っている。
「ただ、この作戦を言う前に皆に言っておきたいことがあるの」
何だろう、と首を傾げる。
「今回の作戦は命令じゃないわ。……もしも遂行するのが嫌なら嫌とそう言って頂戴」
特に、
「アーシアと祐斗。あなたたち2人には、辛い役目を押し付けることになるわ。……先にも言ったけど、これは命令じゃない。無理なら無理と、出来ないなら出来ないと、嫌なら嫌と、そうはっきりと言っていいわ」
その言葉に皆が眼を見合わせて……一斉に吹き出した。
クスクスと皆の笑い声が場に流れていく中、それを唖然とした顔で眺めていたリアスに自分の眷属の声が届く。
「今さら何を言っているのかしらね」
「そうですよ! 水臭いですよ、部長!」
「……私たちは皆、貴女に救われました」
「今は、そんな貴女を助けられる良い機会なんですよ」
「リアス部長を助けられるなら、どんなお願いだって聞きます!」
その言葉に。その気持ちに。リアスは、皆を眷属として選んだことは間違っていなかったと。そして自分の眷属になってくれてありがとうと、そう思わずにはいられなかった。
涙が浮かんできそうになるのを何とか堪えて、リアスは破顔した。
「皆、ありがとう」
礼を言ってから一呼吸置いて、リアスは自身の作戦を話始めた。
◇◇◇◇◇◇
リアスの作戦を聞き終わると、皆が皆ほぅ、と感嘆の溜め息を漏らした。
リアスのその作戦は、全員が全力を尽くし、そしてきちんと役目をこなさなければ成功しない、成功率で言えばそれほど高いとは思えないものだった。
それでも、きちんと成し遂げることが出来たのならば、ライザー相手に勝つことが出来ると全員に思わせることが出来る内容だった。
全員が全員、重要な役目をこなさなければならないものの、その中でもアーシア、木場、小猫の役割が特に重要であった。
リアスはアーシアが手を震わせているのを見つけ、やはり無理かとそう思った。
「アーシア……。さっきも言ったけれど、もし無理ならそう言って頂戴。……優しいあなたに、辛い役目を押し付けているということは分かっているわ……。もしこの作戦が無理でも、次善の策はきちんと用意してあるもの」
その言葉を切っ掛けにして、アーシアは心の中から弱気な声が響いてくるのを聞いた。
いいじゃないか、と。
無理なら無理と言ってもいいと言ってくれているのだから、断っちゃえばいいじゃないか、と。
そんな弱い自分を曝け出すように、震える声で話し始めた。
「確かに……怖いです。そんなことをしなければならないって考えただけで、手は震えちゃいますし……」
そこまで言ったところで、アーシアはその瞳に一誠を映し出した。
今も自分を心配そうに見つめている想い人であり、初めての友達。その姿を見ているだけで、アーシアは勇気が湧いてくるような気がした。
「でも、大丈夫です。……私だって、
その言葉を聞いて、リアスは思った。
(やっぱり、この子は強いわね……)
それは戦闘能力だとか、力だとかいう話ではない。
精神的に、アーシアはとても強いのだ。
まるで地殻の中で、高温と高圧に晒された炭素がダイヤモンドへと変化するように、精神的に抑圧されてきたことで鍛えられてきたのだろう。
その精神は、まさにダイヤモンドのように光り輝いている。
それに比べて、自分はどうだろうとリアスは思った。
何故、自分は再三に渡りアーシアに先ほどのような質問をぶつけたのだろう?
しかも、1回その覚悟を聞いていたにも拘らず。
その答えは、思いのほか早く見つかった。
(きっと、私は断ってほしかった……)
リアスは、眷属たちをとても深く愛している。それは「情愛深い」と言われているグレモリー家の特徴としてではなく、リアス自身の気質からだろう。
その愛している眷族たちを、ゲームの中でのこととはいえ、自分の都合のために犠牲にしてしまう。
リアスは、きっとそんなことをしたくなくて、でも自分では勝たなくてはいけないから、その眷属自身に断ってもらおうとしていたのだ。
(これで彼らの主だなんて、……ほんと情けないわね)
アーシアは、例え怖くとも一歩踏み出す勇気を示した。
一誠は、強くなるためにまさに地獄とも思える修行を翔から受けている。
小猫も、過去を乗り越えて歩みだそうとしている。
木場も朱乃も、そんな彼ら彼女らに負けじと自身を磨こうとしている。
そんな眷属たちと比べたら、我侭でゲームを受けておきながら嫌なことから逃げている自分の、なんと惰弱なことだろう。
(強く、ならなくちゃね)
このことに今気付けたのは、ある意味で僥倖とも言える。
この先、リアスがプロとしてレーティングゲームをやっていこうと思ったならば、チームの勝利のために眷属を犠牲にすることを組み込んだ戦略を立てる必要も出てくるだろう。
愛する眷族が傷つく。自身の身を引き裂かれるのにも似た痛みを伴うことを、自分から承知の上で戦略を立てていく。いける程に強くならなければいけない。
(
その決意を胸に秘めて、リアスは今回の作戦会議を締めくくった。
「それじゃあ、この作戦を元に今回の合宿でトレーニングしていくわよ! 皆、自分の役割を果たせるようにきっちりと仕上げておくように!」
『ハイッッ!!』
副題元ネタ……ニコニコ超会議
ふ、副題が~思いつかないんだよ~。無理矢理すぐる。
そして内容がくどい。もう1回言うけどくどい。
はっきり言って今回は読み飛ばしてもいいんじゃないかなあ~。とか思っちゃったり。