ハイスクールDragon×Disciple   作:井坂 環世

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恐らく誰も想像すらしていなかったでろう人物の1人称です。

ライザー対リアスのレーティングゲーム。

楽しんでいただけたら嬉しいな。


9 魔王様が見てる

やあ、皆さんこんにちは。或いはこんばんはかな? もしかしたら初めましての人もいるかもしれないね。

 

この小説を読んでくれてありがとう。作者に代わって私からお礼を言わせていただくよ。

 

今回のお話は私の視点でお送りさせていただく。

 

……なんだって?

 

いきなりすぎる? 何で1人称になっているんだ? メタ発言はやめろ? そもそもお前は誰だ、だって?

 

ふむ。もっともな質問だね。ではその質問に1つずつ答えていこうか。

 

まず、何故今回は3人称じゃなくて1人称で進めようと思ったのか?

 

それは、3人称で今回の話を進めようと思ったら頻繁に場面転換をしなきゃいけなくなっちゃったからだよ。

 

勿論、それでも面白く描ける力のある作者もいるけれど、少なくともこの作品の作者は自分のことをそうは思わなかったということだね。

 

その点、第3者の視点から今回の話を見ることのできる立場の人が1人称で話を展開したなら、場面転換が少なくなる。というより、必要なくなる。

 

それに、3人称で今回の話を書こうとすると、どうしても地の文が解説的で、くどくなってしまう。

 

客観的な視点から、あくまでも推測として今回の話を解説できる役割も期待されているというわけだ。

 

だから、今回の語り部として私が選ばれたんだよ。

 

ん? だからそもそもお前は誰なんだって?

 

それは質問に答えていくうちに自然と分かると思うよ。

 

さて、次はメタ発言のことかな。

 

勿論、作者だって頻繁にメタ発言を使うつもりはない。今回はこういう形式で話を進めていくからこそメタ発言を出来たということだね。

 

例えば、今の跳躍の看板漫画と言ってもいいワ○ピースの主人公が、「一体何時になったら海賊王になれるんだ? このままだったら100巻越えてもなれないんじゃないか?」という風にメタ発言をしたらそれは読者には受け入れられないことだと私は思う。

 

でも、同じ跳躍漫画でも○魂の主人公が「そろそろネタなくなってきてるからね? これ。作者もしんどくなってきてるからね?」っていう風にメタ発言をしても受け入れられるだろう?

 

そんな風に、作風や発言をするキャラクターによってはメタ発言をしてもギャグの1つとして受け入れられる。

 

私は公式の原作設定でも、私的な場では軽いキャラクターということだから、まあメタ発言してもギリギリ許容内じゃあないかな~。という作者の甘い見通しがあるというわけだ。

 

まあ、内心で非難轟々になるんじゃないかと戦々恐々としているわけだがね。

 

さて、では私が一体誰か、ということだね。

 

今までの受け答えだけじゃあ、精々「公式設定で軽いキャラクター」ということしかわかっていないから、ヒントを出そうかと思う。

 

今回の話は、ライザー君対リアスのレーティングゲームの模様をお送りさせていただく。

 

……え? これだけじゃあ解らない?

 

いや、これだけでも結構情報が込められているものさ。

 

今回のレーティングゲームは非公式なので一般の観客はおらず、関係者も会場に行くのではなく中継という形で見ることになっている。

 

つまり、私はグレモリー家かフェニックス家の関係者ということだ。

 

どうだい? もう大分解ってきた人も多いだろう?

 

更に言うなら、解説役ということは今回ゲームで使われている戦略や戦術、或いは技や魔力、魔法を見抜ける程度の実力が無いといけない。

 

つまり私は「グレモリー家かフェニックス家の関係者で、かなりの実力があり、更には軽い性格をしている」キャラクターなんだよ。

 

もう誰か解っただろう?

 

そう、私は「サーゼクス・ルシファー」

 

リアスの兄であり、現魔王を務めさせてもらっている者だよ。

 

今回は、この私、サーゼクス・ルシファーの1人称で話を進めるという役を僭越ながら務めさせてもらうよ。

 

「一体、何処の誰に向かって、何を言っているのですか?」

 

ん? グレイフィアかい?

 

いや、何。折角珍しく3人称ではなく1人称で話を進めるのだから、ただ普通に「私は○○。今日は~~で――」って始めるのもなんだと思ってね。

 

一風変わった挨拶をさせて頂いたというわけさ。

 

勿論、メタ発言はこのシーンだけに限るから読者諸兄は安心してくれていい。

 

それじゃあ、本編を始めさせていただこう。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

手元の書類の内容に間違いが無いかを確認し、それに印鑑を押して決済する。

 

もう何万回、下手したら何億回と繰り返してきたその作業はスムーズなもので、特に停滞することも無く一区切り付くところまで終わらせ、一息をつけることが出来た。

 

決済済みの書類が山となっている自分の居城、その執務室を見て、その惨状に慣れたとはいえゲンナリとする。

 

やはり自分は、堅苦しいことは苦手であると再認識する日々だ。

 

その気持ちを溜め息に込めて吐き出すことで、気持ちを落ち着かせると、手元の懐中時計に目を落とした。

 

現在の時間を確認し、どうやら間に合ったようだと安堵する。

 

愛する我が妹リアスとその婚約者のライザー君の非公式レーティングゲーム。

 

その中継がもうそろそろ始まろうとしていた。

 

本来ならリアスの応援に現地に駆けつけたいところなのだが、「魔王」という肩書きがそれを邪魔する。

 

権限は大きいが、それ故に自由に動けないところが面倒くさい。

 

まあ、中継を見ることが出来る時間を捻出出来ただけでも、良しとしておくべきなのだろう。

 

まあ、それでも不満があることに変わりはないのだが。

 

もっとも、その不満は別としてこれから始まるゲームには聊かの興味と期待感があると言わざるをえない。

 

普通に考えたなら「不死身」の特性を持ち、すでにプロとしてデビューし、公式のゲームで良い成績を残しているライザー君の勝利は揺らがないものだとするのが妥当だろう。

 

事実、我が両親であるグレモリー郷とその妻であるヴェネラナ夫人。そしてフェニックス

郷等も彼の勝利を疑ってはいない。

 

例え、リアスが伝説の赤龍帝を眷属としていてもだ。

 

しかし、私とグレイフィアだけが知っている。

 

かの赤龍帝の師匠であり、我が友人である風林寺翔という今回のゲームにおけるリアスの助っ人が、人間としての規格外だということを。

 

異能の力を「自らの身体能力を強化する」というものしか持っていない彼が、SS級のはぐれ悪魔を捕縛するほどの実力を持っているということを。

 

そして、どの戦いでも、どれほど傷ついても、相手を決して殺さず捕縛してのけたことも。

 

……そんな存在が参戦するということを知っていたなら、どんなことをしでかしてくれるのか期待してしまうのも仕方ないというものじゃないかな?

 

リアスが彼をどのように運用するかという点も興味深いね。

 

と、そんな風にこれから始まるゲームに思いを馳せていたら、目の前にモニターが複数出現した。

 

ブォン、という音を出してそれらのモニターがある風景を映し出す。

 

そこに映っているのは、リアスやその眷属たちが通っている学び舎だった。

 

ふむ、ゲーム開始の時間となったのかな?

 

『皆さま。この度グレモリー家、フェニックス家の「レーティングゲーム」の審判役(アービター)を担うこととなりました、グレモリー家の使用人グレイフィアでございます』

 

モニターから我が愛しの妻の麗しい声が聞こえてくる。

 

何時聞いても聞き惚れるほど美しい声だと惚気気味に自慢に思うのは私の悪い癖だとセラフォルーやアジュカから何度も言われているが、直す気は毛頭無い。

 

自分の妻を自慢に思うことに悪いことなど一切無いからだ。

 

グレイフィアも呆れながらも満更でもないようだし。誰も困っていないから良しとしていいだろう。

 

ん? どこかから「桃色空間を展開されて砂糖吐きそうになるのよ★」という声が聞こえたような?

 

まあ、気のせいだろう。

 

おっと、いつの間にかルール説明が終わっていたようだ。

 

『開始のお時間となりました。制限時間は人間界の夜明けまで。それでは、ゲームスタートです』

 

ゲームスタート。果たして両者はどのようなゲームメイクをするのかな?

 

 

 

序盤。所謂オープニングゲームと言われるところだね。

 

両者とも静かにゲームメイクを開始しているよ。ここまでは実に定石通りの立ち上がりだ。

 

リアスもライザー君も、自分の陣地とも言えるところに罠を仕掛けたりして、本陣の防衛線を構築している。

 

リアスは本陣のある旧校舎の周囲の森にブービートラップを仕掛け、しかも幻術の霧を生み出している。

 

ライザー君は本陣である生徒会室がある新校舎に入りにくいように工夫しているね。

 

これは実際の将棋で例えたりするならば、駒を動かして「矢倉」を構築しているようなもの。

 

まずはゲームで重要となる本陣や王を護るための防衛線を構築するのがゲームでの定石。

 

ここまではまあ、普通のゲーム展開だ。特に目ぼしいところは無い。

 

……リアスの騎士である木場君が何やらかなり疲労しているのが気になるところだけど、それはコンディションの問題だろうからね。ゲームまでに調子を整えられなかった彼が悪い。

 

おっと、動きが出始めたね。

 

ライザー君はかなり定石通りの動かし方だね。

 

戦略上重要となる地点に何人かの兵士と他の駒を組まして向かわせている。

 

旧校舎へのルートの拠点となるものの1つ。旧校舎と新校舎に隣接している体育館に『戦車』1名と『兵士』3名

 

旧校舎へのルートの拠点となるものの2つ目。新校舎裏手にある運動場。そこに隣接している部室棟に『僧侶』『騎士』『戦車』が1名ずつ。『兵士』が3名。

 

残りは様子見ということで本陣に待機なのかな。

 

……いや、女王が単独で動き出しているね。

 

恐らく、不意打ち狙いだろう。体育館と運動場。どちらにもすぐに向かえるように新校舎の屋上に待機している。

 

どちらで戦闘が始まったとしても、戦闘に集中している相手を即座に魔力で狙えるようにしている。

 

どうやら、ライザー君が『犠牲(サクリファイス)』を好んでいるというのは本当のようだ。

 

おっと、どうやらリアスも動き出したようだけど……。

 

……これは、かなり変則的な動き方をしているね。

 

運動場の方は定石通りというか……。『騎士』である木場君、そして助っ人である翔君をタッグで組ませて向かわせている。

 

そして、巧妙に幻術で隠れているけれども……それから少し離れたところに小猫君がいる。

 

基礎的な幻術だけれども……かなり錬度が高いね。

 

これはライザー君の眷属じゃあ見つけるのに苦労するだろうね。なまじ目立つように木場君と翔君が動いているから、そちらに眼を奪われるだろうし。

 

どうやら木場君と翔君は囮みたいだ。彼らに注目を集めている間に幻術で身を隠した小猫君が運動場を突破、新校舎に潜入するという作戦かな?

 

そして予想外の組み合わせをしているのが、体育館の方。

 

なんと、『王』であるリアス自身が自ら前へと出ている。

 

お供に『兵士』である一誠君を連れて、体育館を拠点としていたライザー君の眷属たちの前に堂々と姿をさらしているよ。

 

これには彼女らも驚いたみたいだ。声も出ないっていう風に眼を見開かせて驚愕を顕わにしている。

 

『フフフッ。どうしたのかしら? そのありえないものを見たかのような顔は?』

 

リアスがそう挑発の言葉を口にしているけど……それも無理ないだろう。

 

普通、『王』は前へと出てこない。『王』がリタイヤすればゲーム自体に負けるのだからそれも当然だ。

 

勿論、他の眷属が負けたりすれば前へと出てくることもある。或いは終盤になれば前へと出るのを好む『王』もいる。

 

けれど、この序盤の時点で出てくるのはまず有り得ない。

 

こんなのは、自信過剰の馬鹿か勝利を諦めた玉砕戦法(バンザイアタック)かでないと選択しない。

 

だが、リアスの顔にそのような色はない。

 

あくまで、勝利を掴みに行く者特有の不敵な笑みを浮かべている。

 

だからこそ、ライザー君の眷属たちは困惑しているのだろう。

 

しかし、時間が経つと落ち着いてきたのか。

 

『戦車』の娘――確か雪蘭という名だったかな?――が余裕の笑みを顔に浮かべて話しかけている。

 

『……あやうく騙されるところだったわ。『王』がこんなところに出てくるなど有り得る筈ないというのにね。……幻術か何かでリアス様の姿を取っているのかしら?』

 

そういう風に判断を下すのも仕方ないと思うが……残念だけど本物だよ。

 

その証拠に、リアスが手から放った魔力弾が彼らの手前の床へと着弾し、そこを魔力弾の形に綺麗に刳り抜いている。

 

こんな破壊のされ方は、バアル家固有の「滅びの魔力」でもない限り不可能に近い。

 

そのことで相手がリアスだと判明したのか、相手の顔が引き攣っている。

 

が、すぐに顔を引き締めた。……どうやら覚悟を決めたみたいだね。幾つかのゲームを潜り抜けている分判断が早い。

 

『まさかっ。本当に『王』自身が出てくるなんてね……! リアス様。覚悟してもらいます! その身を討ち取りこのゲームを終わらせます! 行くわよ!!』

 

『ハイッ!』

 

『『ハ~イ』』

 

棒を手に持った『兵士』がその棒を構え、双子の『兵士』は持っているチェーンソーを起動した。

 

ドゥルルルルルン、というエンジン音が体育館に響き渡っている! 何とも物騒な姉妹だね。

 

おまけに、雪蘭君はつけている通信機を使ってライザーに援軍を要請している。どうやら自分たちでは勝てないと思い、あくまで自分たちは時間稼ぎに徹するようだ。

 

う~ん。良い判断をするね。

 

『あら。……こんな狭いところで何人も相手にするのは面倒だし……。一誠、一端引いて他の仲間と合流するわ!』

 

『はい! 部長!』

 

そう言葉を残して背を向けて撤退するリアス。

 

が、どうやら逃すつもりは無いみたいだ。

 

『待ちなさい!!』

 

体育館を出てリアス達が運動場へと向かう! そこを追おうとする雪蘭君たち。

 

しかし、そこでリアスたちに動きが現れた。

 

相手の眼が一端途切れたところで、リアスと一誠君が手を繋いだ。

 

『一誠、捕まりなさい!』

 

『はい!』

 

『キャスリング!!』

 

その言葉が発せられると同時にリアスたちが光り――――その場にリアスだけが残された。

 

いや、彼女はリアスじゃあない。

 

幻術でリアスに化けた小猫君だ!

 

そこで雪蘭君たちが角を曲がって小猫君を視界に捉える。

 

『待ちなさい! 他の眷属たちも来ています。逃げられませんよ! リアス様!!』

 

……どうやら、彼女たちはリアスが入れ替わっていることに気付いてないみたいだ。

 

そのまま、彼女らは運動場に向けての逃走劇を繰り広げ始めた。

 

どうやら、ゲームは中盤戦。ミドルゲームに入り始めているみたいだ。

 

別のモニターではそれぞれ面白い戦いが繰り広げられている。

 

1つのモニターでは『女王』対決が起こっていた。

 

『そこをどきなさい!』

 

『あら……。どけと言われて素直にどくとでも? 寧ろどきたくなくなるのが人情と言うものですわ』

 

『戯言を! なら、無理矢理どかすだけです!』

 

雪蘭君の援軍に赴こうとしているライザー君の『女王』、ユーベルーナ君をリアスの『女王』である朱乃君が阻止している。

 

朱乃君を突破しなきゃいけないユーベルーナ君は早く倒そうとかなり攻撃に力を注いでいる。今会場の上空では幾つもの火炎の華が咲き誇っていた

 

一方、朱乃君はリアスのところに行くのを阻止すればいいのだから、時間稼ぎに徹しているようだ。

 

散発的に雷で攻撃しているものの、その威力も高くなく、範囲も狭いので容易に防がれている。

 

けれど、そのユルい攻撃が攻めに集中したいユーベルーナ君にとっては鬱陶しいのか、かなりイラついているみたいだね。

 

むしろ、それが目的なのかな?

 

とにかく、上空での『女王』対決は攻めのユーベルーナ君対守りの朱乃君という魔力対決という様相を呈してきている。

 

一方、別のモニターでは運動場で翔君と木場君のタッグ対ライザー君の『兵士』3人という2対3マッチが行われている。

 

『くっ! ハァハァ……。すまないね……!』

 

『これくらい、仲間なら当然だよ』

 

けれど、木場君の調子がかなり悪いのか、翔君はかなりやりづらそうだ。

 

木場君を護りながらじゃないといけないから、防戦一方という感じになってきているね。

 

けれどそれでも実力差はあるみたいで、ライザー君の『兵士』たちは攻め切れていない。

 

それに、どうやらこれも作戦のうちなのかもしれない。

 

翔君が本気を出したら相手の3人なんてすぐ撃破出来るからね。

 

勿論、木場君を護りながらだよ?

 

氣による身体能力強化も使ってないみたいだし……何かしらの意図があって戦闘を遅延しているのは間違いないね。

 

どういう作戦なのか……。俄然興味が湧いてきたよ。

 

……おっと、別のモニターも面白いものを映し出しているね。

 

キャスリングによって新校舎に突入したリアスと一誠君の2人なんだけど、どうやら別行動を取っているようだ。

 

一誠君は真っ直ぐ新校舎端にある生徒会室を目指している。

 

リアスは単に上を目指しているのかな? これは。

 

今現在、ライザー君の眷属達は運動場に配置されている者たち以外がリアスに扮した小猫君を追い詰めるために出かけているから、新校舎内は伽藍洞だ。

 

それに、ライザー君は新校舎に入られないように罠を仕掛けてはいても、新校舎内には罠を仕掛けていないらしい。

 

おかげで、一誠君はすんなりと生徒会室まで辿りついたようだ。

 

呼吸を整えてから一誠君が新校舎の扉へと手を掛け、開けようとしたその時!

 

その扉をぶち破って紅蓮の炎が一誠君へと襲い掛かった!

 

『くっ!』

 

一誠君は何とか横に転がってその炎を避けている。

 

……炎が放たれる前から反応していたから、避けられたみたいだ。奇襲対策はばっちりだね。

 

一誠君が立ち上がったその目の前で、自身が吹き飛ばした扉からライザー君が悠々と歩いて出てきた。

 

『ふん。どうやら昇格(プロモーション)するためにここまで来たようだが……無駄な努力だ。お前らはどうせ負けるのだからな』

 

『へっ! 俺たちは負けねえ。部長は必ず勝つぜ!!』

 

ライザー君の嘲りを受けても強気にそう返している一誠君だけど……現実は無常だと、その言葉は真実だと言うかのようなタイミングでその放送が鳴った。

 

『リアス・グレモリーさまの『騎士』1名、リタイヤ』

 

別のモニターでは、とうとうその猛攻に耐え切れなくなったのか、木場君が打ち倒されていた。

 

翔君はそれでも1人で戦線を支えているけど、そこでレイヴェル君が戦力の投入を決意したのか、部室棟からレイヴェル君と『騎士』カーラマイン君、『戦車』イザベラ君が出てきて翔君が戦っているところに向かっている。

 

その放送を聞いて、ライザー君はいっそ憐れだとでも言うかのような表情をその顔に浮かべて一誠君に話しかけた。

 

『どうだ? 元々数の不利があったところであの『騎士』の撃破だ。この調子で行けばお前達の敗北は眼に見えている』

 

『……それでも、俺たちは諦めない!! 最後の一瞬まで!!』

 

その言葉を真実として強調しているのが、一誠君の眼だ。

 

そこには強い光が宿っていて、未だに勝利を諦めていないのが、モニター越しでも伝わってくる。

 

その言葉に嘆息をしているライザー君だけど……その口元の笑みは隠しきれていないよ?

 

内心で「リアスは良い眷族を見つけたようだな」とでも思っているのかもしれないね。

 

でも、その笑みを浮かべたのは数秒のこと。すぐに顔を真剣なものに変えてその手に紅蓮の炎を宿らせた。

 

『なら、ここでお前を撃破してその希望を摘み取ってやろう!!』

 

轟っ!! と炎が空気を焦がすかのように燃え上がる。

 

その熱量は画面越しでもこちらの身を焦がすかのよう。

 

……良い炎を出すね。ライザー君は。伊達にレーティングゲームで勝ち上がっているわけじゃあない、か。

 

その炎を前に身構えていた一誠君だけど……ライザー君が動き出そうとしたその瞬間、相手の機先を制するかのように指を廊下の窓の外へと向けて高らかにこう叫んだ!!

 

 

 

『ああっ!! 相手の攻撃に晒されてリアス部長の服が破れて、生乳が顕わになっているぅ!!!』

 

 

 

……いや、その言葉はどうだと思うんだけどね?

 

確かに、兄の贔屓目無しに見てもリアスはご立派なものを持っていると思う。

 

でも、真剣勝負の最中にそんな言葉で気を引かれるような馬鹿は居ないだろう。

 

 

 

『何だとォッッ!!!! どこだ!! おい!! どこなんだ!!』

 

 

 

居たァァァァ!!

 

ここにそんな馬鹿が居た!!

 

思いっきり一誠君の言葉に気を引かれて窓の外を探している?!

 

ライザー君……それでキミはいいのかい?

 

いや……そう言えば、ライザー君は自分の眷属でハーレムを作るくらいには好色だったね……。

 

なら、気を引かれるのも仕方ない、のかな?

 

昇格(プロモーション)!! 『女王(クイーン)』!!』

 

その余りにでか過ぎる隙を一誠君が逃す筈も無く。

 

『女王』に昇格してライザー君を殴り飛ばした!

 

『ぶげろぱ?!』

 

奇声を上げながら廊下を転がっていくライザー君!

 

ズシャァァ、という音を立てて漸く止まった。

 

それで一回殺されてしまったのか……殴られた頭から炎を吹き出して再生しながらライザー君が立ち上がる!

 

プルプルと震えているライザー君の前で、生徒会室へと半ば入りながら一誠君が自分のお尻を叩きながらこう言った!!

 

『アホが見~る~♪ 豚のケ~ツ~♪ 蝿が止~ま~る~♪』

 

その歌自体は知らないだろうけど……自身を馬鹿にしているのは解ったのだろうね。

 

ブチブチブチ!! という血管が切れる音がこっちにまで聞こえてきそうな程に青筋を頭に浮かべて、ライザー君が一誠君へと踊りかかった!

 

『殺すっ!!』

 

物凄い形相を浮かべて一誠君へと走っていく!

 

一誠君はまともに相手をすることはなく、生徒会室へと入り、更にそこの窓を突き破って飛び出した!!

 

地面を転がって受身を取り、更に走っていく!!

 

その先には、未だに戦闘を繰り広げている翔君の姿がある。

 

『兵士』3名に『戦車』1名を相手にして尚余裕を持って戦線を保っているのは流石だね。

 

『僧侶』であるレイヴェル君と『騎士』であるカーラマイン君は戦闘に参加する事無く、だけど包囲網を築いていたんだけど、一誠君が走ってくるのを見て警戒を強めている。

 

そちらの方向に一誠君が向かい、その後ろからライザー君が追いかけていると、体育館のある方向からリアスに化けた小猫君が走ってくる。

 

その後ろからは彼女をリアスだと思い込んで、撃破しようと追走しているライザー眷属一同の姿が。

 

更に上空からは、朱乃君が彼らの傍らに飛び降りてきた!

 

空には、先ほどまで朱乃君と激しい魔力合戦を繰り広げていたユーベルーナ君が居る。

 

そうして、リアス眷属の4人が一箇所に集合し、ライザー眷属の全員がそれを包囲するという形が出来上がった!

 

こんな状況になったことで流石に頭から血を降ろしたのか、ライザー君が笑みを浮かべてしゃべりだした。

 

『リアス。何か作戦があったようだが、それもどうやら無駄に終わったようだな。……『投了(リザイン)』しろ、リアス。この状況を覆すことなど出来やしない。悪足掻きは見苦しいぞ』

 

その言葉は勝利を確信した者の余裕に満ち満ちており、ある意味で婚約者を慮ったものに聞こえるだろう。

 

しかし……ある一面から見ると途轍もない程に滑稽な言葉だ。

 

実際、彼らは笑みを抑えきれないでいる。

 

『何だ? 何が可笑しい?』

 

『フフ……。誰に言っているのか知りませんけど……。私はリアス部長じゃあ無いですよ?』

 

その言葉と共に小猫君の姿がグニャリと歪み……彼女本来のものへと戻った。

 

その光景に、ライザー君たちは驚愕を顕わにしている。

 

それも当然だろう。今までリアスだと思って散々追い掛け回していた人物が実はリアスじゃなかったのだから。

 

雪蘭君の驚愕などは一際大きい。彼女は一度リアスと相対してその証拠も見ていたのだから、何時の間に入れ替わっていたのやら、という驚愕も含まれていることだろう。

 

が、そこは流石『王』と言うべきか。

 

ライザー君が逸早く動揺から立ち直ってユーベルーナ君へと指示を出した。

 

『ユーベルーナッ!! 早くこいつらを撃破しろ! 何かやばいっ!! こいつらを放っておくとやばいことになる!!』

 

その言葉に上空のユーベルーナ君が応えるように手の平に魔力を灯し、それを高め始めた。

 

しかし、それを邪魔するかのようにその場に高らかに声が木魂する!

 

 

 

『ライザァァァ!! 私は、リアス・グレモリーはここよっ!!』

 

 

 

その声の主、リアスは新校舎の屋上に立っていた。

 

その体全体から魔力の波動を迸らせており、それが刻一刻と高まっていっている。

 

それは、明らかに喰らえばヤバいとわかるほどの濃密なもの!

 

ライザー君とレイヴェル君ならともかく、他の眷属達が喰らえばまず撃破される! そう思わせるほどのオーラの高ぶり!!

 

しかし、それを見ても数瞬で驚愕から脱出し、リアスを邪魔すべく動き出したものが居た。

 

それはライザー君の『女王(クイーン)』であるユーベルーナ君。『爆弾女王(ボム・クイーン)』がその手の平を、魔力をリアスへと向けている!

 

その顔に嘲笑を浮かべ、ローブを羽織った魔術師がリアスを撃破すべく動き出す!

 

『愚かですね! 姿を晒す事無く不意打ちしていればいいものを? ……ぉえ?』

 

 

 

 

 

――そうやってユーベルーナ君がリアスの方向を向いたその時、彼女の腹を一振りの剣が貫いていた。

 

その剣が飛んで来た方向は旧校舎。

 

そして、

 

剣を投擲したのは。

 

その旧校舎の屋上で佇んでいる1人のシスターだった。

 

『主よ……。罪深き私をお許し下さい……。痛っ!!』

 

アーシア君が神へと祈りダメージを受けている。それでも祈るのをやめないところを見ると彼女にとって先ほどの行動はそれほどの事だったのだろう。

 

……が、少々疑問が残る。彼女の力じゃああの剣をあれ程の速度で打ち出すことは出来ない筈なんだけど……。

 

その疑問はリアスが晴らしてくれた。

 

『その魔剣の名前は『猟剣(ハウンドドッグ)』。祐斗がこの時のためだけに全精力を注いで創り上げてくれた、「自動追尾」の属性を持つ魔剣よ』

 

なるほど、ね。「自動追尾」、或いは「必中」の属性を持つ魔具、宝具、神具の伝承は世界各地にある。それを参考にして創りだしたのだろう。

 

腹を貫かれたユーベルーナ君は勿論致命傷、救護室行きだ。それを証明するかのように彼女の体が地面へと墜ちていきながら光に包まれていく。

 

『すみ、ませ……ラ、イザー、様……』

 

『ライザー・フェニックスさまの『女王』1名、リタイヤ』

 

その放送と共にユーベルーナ君を包んでいた光が弾け、彼女は救護室へと転移されていった。

 

その光の残滓がキラキラと運動場に居る者達へと降り注いでいる。

 

『ユーベルーナァァァァ!!!』

 

ライザー眷族最強の『女王』が撃破された。

 

その事実にライザー陣営の者達は皆驚愕し、或いは憤り、あるものは嘆いていた。

 

しかし、実戦の場においてそれは明らかに隙となる。

 

それを証明するかのように一陣の風が彼らの間を駆け抜け――彼らの体が宙へと舞っていく!

 

そうして全員が宙を舞って地面に落ちてきた頃には、地面に人――正確に言うと悪魔だけどね――が絡まりあって出来た1つの歪な円が出来ていた。

 

リアス眷属たちと新校舎の間に出来たその円を前に、それを成した人物が腕を組んで高らかに技名を宣言した。

 

『岬越寺無限轟車輪!!』

 

悪魔同士の腕や足が絡まりあって出来た歪な円。その円を構成しているライザー眷属たちは何とか動こうともがいているがその体が動くことは無かった。

 

『無駄だよ……。その技は互いの体重を利用して関節を極める構造になっている。外から外してもらわない限り脱出することは出来ないよ』

 

くくっ……。流石は翔君と言ったところかな? まさかこんな技を持っているなんてね。こんな技は他の誰にも使うことは出来ないだろう。そもそも関節を極めて人同士を絡めあって動きを封じるなんてことをするよりも、魔力を使った方が遥かに簡単だろうからね。

 

確かにこの技は自分たちでは外す事は出来ないんだろうね。

 

でも、ライザー君たちにはそれでもこの技を外す手段がある。

 

『すまん! ニィ!』

 

『いいですニャ! ご武運をお祈りしますニャ!』

 

そう言って炎を吹き上げるライザー君の体。

 

その炎によって隣のニィ君の体が傷ついていく。

 

――そう、誰か1人でもリタイヤさせればそこからこの技を外すことが出来る。

 

褒めるべきはその犠牲となるニィ君がまったく躊躇うことなくそれに従った忠誠心の高さかな?

 

けれど、遅いよ。

 

何せ、動きを封じられた彼らの隙を、リアス達が逃す筈が無いからね。

 

そもそも、リアスは元々魔力の溜めを終了していた。

 

なら、ライザー君のその行動よりも攻撃が早く終了するのは自明の理だろう。

 

朱乃君が宙へと飛び上がって、空中に魔力を溜めていっている。

 

彼女お得意の魔力変換。雷で編まれたその魔力球は、まるで獲物を前にした猛獣の唸り声のように低音を響き渡らせていた。

 

そして、リアスもその手の間に彼女の身長の半分程の大きさの魔力球を生み出している。

 

『遅れるんじゃないわよ! 朱乃!!』

 

『貴女こそ……!!』

 

リアスが放った魔力弾が朱乃君の造った魔力球に衝突した!

 

それらは相克し合うことなく、寧ろ混ざり合って紫電を緋色へと変えていく……!!

 

そして、その魔力が最高潮に高まったとき……!

 

その牙を地上にいるものへと突き立てるべく降り注いだ!!

 

 

 

『『緋電滅殺雷王撃(スカーレット・ライトニング)!!!』』

 

 

 

それは滅びの力を帯びた緋色の稲妻!!

 

長い時間を共に過ごした幼馴染という絆があったからこそ成しえた合体魔法(ユニゾン・アタック)!!

 

消滅という、本来なら一瞬で相手を消し去る力を、稲妻に混ぜることで長い時間浴びせるというエゲツナイ攻撃!!

 

『ガアアアァァァァ!!!』

 

その雷を浴びているライザー君たちが苦悶の声を上げている。

 

それも仕方ないことだろう。

 

本来、一瞬で消え去る筈の消滅の痛みを長い時間に渡って味合わされているのだから。

 

その激痛は想像するだに恐ろしい。

 

この攻撃はライザー君対策だろう。

 

ただ消滅させるよりも、その痛みを長く与えることによる精神の消耗を狙った攻撃か。

 

ただ、それでも消滅の力が強大なことには変わりない。

 

当然、「不死身」の特性を持っていないものが耐えられる筈も無い。

 

 

 

『……ライザー・フェニックスさまの『兵士』8名、『騎士』2名、『戦車』2名、『僧侶』2名、リタイヤ』

 

 

 

『女王』を除いた全ての眷属が今の一撃で撃破された。

 

レイヴェル君も「不死身」を持っているんだけど……痛みに耐え切れなかったということだろうね。

 

元々、彼女はこの勝負に乗り気じゃないというか……ライザー君の眷属として戦うことに乗り気じゃないから。

 

そこであの激痛を与えるであろう滅びの雷による攻撃だ。

 

精神を削りきられてリタイヤしたのだろう。

 

結果として、ライザー君はその眷属を全員撃破されてしまったことになる。

 

そして一方リアスはと言えば、『騎士』である木場君が撃破されたこと以外、消耗は軽微だ。

 

寧ろ、彼が撃破されることは折込済みだったのかもしれない。

 

猟剣(ハウンドドッグ)』を創り出すことに全力を注いだらしいし、彼がゲームが始まった頃から疲れていたのはこの魔剣を創り出したためだったろうからね。

 

それ以外の者達は、最小限の消耗でこの状態を作り上げることが出来たと言えるだろう。

 

ライザー君が起き上がって、リアスを物凄い形相で睨んでいる。

 

歯を噛み締める音が此方にまで聞こえそうな程の表情だ。

 

それも仕方ないかな。

 

彼も気付いたのだろう。リアスの作戦がこの状態を作り上げることを目的としていたことに。

 

――この状態、ライザー君対リアス眷属の木場君を除いた全員の面々という構図。

 

この状態は、例え「不死身」があると言ってもライザー君には厳しいものだろう。

 

リアス達は、ライザー君が疲労して再生が出来なくなるまで入れ替わり立ち代りローテーションを組んで戦うつもりだろう。

 

アーシア君が居るから、例え傷ついたとしても、仲間と入れ替わっている間に回復することが出来る。

 

しかも、仲間が戦っている間は休憩して体力を回復させることも出来るんだ。

 

ライザー君が勝とうと思ったら、1人でその1対1を相手が回復出来なくなる(アーシア君が回復の力を行使できなくなる)まで戦わなければならない。

 

それだけでもかなり疲弊することだろう。考えるだけでも精神的にプレッシャーが掛かるに違いない。

 

しかし、ライザー君が顔を歪めているのはそれだけではないだろうね。

 

相手を何度傷つけても回復して立ち向かってくるという状況。

 

それは、ライザー君が今までの相手に散々味あわせてきた「不死身」の恐怖だ。

 

それを自分が今擬似的に味あわされようとしている。

 

その屈辱に、彼は顔を歪ませているんだろうね。

 

それが、更に精神的にライザー君を削るためのリアスの策だと解っていても。

 

この状況を作り上げることがリアスの策。

 

リアスはまさに、『王』の首元へと『王手(チェック)』を掛けたに等しい。

 

私が秀逸だと思うのは、アーシア君をこの策を左右するところの決め手に使ったところかな。

 

レーティングゲームが始まる前に、相手の情報を調べて対策を練るということは、ゲームのプロなら誰でもやっていることだ。

 

勿論、ライザー君もね。

 

そして、少し調べればアーシア君が回復の神器『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』の使い手であり、逆に攻撃の手段を持っていないということが解る。そして、アーシア君が相手を傷つけるのを躊躇う性格をしているということも。

 

ライザー君たちは、意識的にしろ無意識的にしろ、アーシア君からの攻撃は無いものだと断定していただろう。

 

その意識の隙間を縫うようにして、アーシア君からの攻撃!

 

最も怖い攻撃とは、圧倒的な破壊力を有しているモノではなく、意識の外からやって来る攻撃だ。

 

その意味で言えば、アーシア君からの攻撃とはまさに意識の外からの攻撃だろう。

 

想像すらしていなかった方向からの攻撃で眷属最強の『女王』がリタイヤした。その事実に驚いている間に、相手の動きを封じ時間を稼ぎ、大技を使ってライザー君以外を全滅させる。

 

こうして、最小限の消耗でライザー君以外を全滅させることに成功したというわけだ。しかも、ライザー君に結構な消耗を強いてね。

 

これは、例え出ていたのが翔君ではなく、本来のリアスの眷属であるギャスパー君だったとしても成功していたかもしれない作戦だ。

 

何せ、相手の動きを停止させるというのはギャスパー君の本領だしね。吸血鬼としての能力を利用すれば、相手を翻弄して戦線を維持するということも出来るだろう。

 

その意味で言えば、確かに翔君は「ギャスパー君の代わりに出場した助っ人」だろう。と言うより、そのような運用をリアスがしたということかな。

 

勿論、その他の全員の働きも大事なものだ。

 

一誠君は相手の中で最も強いライザー君を相手に挑発して、合流地点まで連れて行った。

 

朱乃君も、相手眷属の中で最も厄介な『女王』を足止めし続けた。そして、リアスとの合体魔法によって相手を一網打尽にした。

 

木場君は、作戦上最重要のキーとなる魔剣を創造し、しかもその身を犠牲とすることで相手の油断を誘い、相手がリアスの誘いに乗りやすいように思考を誘導した。

 

小猫君に至っては、リアスの振りをし続け相手の大半を引き付けての逃走劇をし、尚且つ合流地点まで無傷で辿りついてみせたのだからね。

 

そして、この作戦を考え、見事に眷属達を運用して見せたリアス。

 

結果、策は成った。

 

リアスが眷属たちの下へと降り立ち、並び立った。

 

旧校舎の方角からは、アーシア君が走って向かってきていた。

 

そして、肩を大きく上下に動かして呼吸を整えながらも、彼女がリアス達に合流した。

 

『アーシア、お疲れ様……。そしてありがとう。この状況に持ち込めたのは貴女のおかげよ……』

 

リアスが彼女を労わるようにその金糸の髪に指をとおして頭を撫でている。アーシア君は擽ったそうにしながらも嬉しそうにそれを受けていた。

 

『はい……。部長のお役に立てたのなら、私も嬉しいです』

 

そう言ってはいるが、彼女の手は震え続けている。

 

優しい彼女にとって、例え敵とは言え誰かを傷つける行為というのは酷く精神を消耗することだったのだろう。

 

それは、例え傷つきながらも神への祈りをやめなかったことからも明らかだ。

 

リアスもそれに気付いている。

 

気付いているが……彼女の気遣いと、その献身を思って謝ることはしないのだろうね。

 

その分、後で精一杯愛でるのだろうけど……。

 

充分にアーシア君を労わったリアスが眷属(+助っ人)を背後に立たせてライザー君と向かい合った。

 

眷属を従えて立つ姿は、まさしく『王』と呼ぶに相応しい。

 

それと向き合っているライザー君は、屈辱に顔を歪めて立っていた。

 

『ライザー。『投了(リザイン)』したらどうかしら? この状況を覆すことは出来はしないわ。悪足掻きは見苦しいわよ?』

 

くくっ。何とも痛烈な皮肉だね。

 

先ほど、包囲していた時にリアス(に扮する小猫君だったが)にライザー君が語りかけたその言葉。

 

それがそのまま鏡返しとなって自分に降りかかってきている。

 

その事実はライザー君にとっては耐え難いだろうね。

 

実際、ライザー君は顔に憤怒を浮かべてリアスに向かって捲くし立てた。

 

『ふざけるな! まだ勝ち目は残っている! この状況だろうが、潔く負けを認めるわけが無いだろう!!』

 

吹き上がる紅蓮の炎!! それは不死鳥の炎の翼となって、ライザー君の背中に背負われていた!

 

まるで仇を見るかのような鋭い目つきでリアスを睨んでいたライザー君の目線を遮るように、一誠君がリアスの前へと飛び出してきた。

 

『お前の相手は俺だぜ! ライザー!!』

 

『Boost!!』

 

左手に『赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)』を発現させ、カラテの道着を着た一誠君がリアスを護るように仁王立ちをしている。

 

先ほど馬鹿にされた相手だから、ライザー君も無視できなかったのだろうね。

 

『赤龍帝か……。お前じゃあ俺の相手になりはしない。引っ込んでいろ!』

 

『ハッ! 今のお前相手だったら俺でも充分だぜ! 焼き鳥野郎!!』

 

焼き鳥野郎。それはライザー君にとっては例え挑発だと分かっていても聞き逃せない言葉だったのだろう。

 

激情に顔を赤くしながらも一誠君と向かい合った。

 

その間に、リアス達は彼ら2人から充分に距離を取っていた。これで1対1の決闘場(コロセウム)が出来上がったというわけだ。

 

『良いだろう……! まずはお前から撃破してやる……!!』

 

その言葉と共に一層炎が猛り狂って、画面の中の学び舎を赤く染めていっていた。

 

その威容を目の前にして、しかし一誠君はそれでも前に一歩踏み出した!

 

 

『Boost!!』

 

 

『丁度150秒……! 倍加は充分だ! 行くぞ相棒!!』

 

 

『ああ……! 覚悟はいいか! ライザー・フェニックス!!』

 

 

『図に乗るなよ!! 下級悪魔風情がぁ!!』

 

 

『Explosion!!』

 

 

 

レーティングゲーム終盤戦。

 

赤龍帝VS不死鳥の戦いの幕が切って落とされた。

 

どんな結末になるのか……。楽しみだね。

 




副題元ネタ……マリア様が見てる

という訳でVSライザー。誰も予想しなかったであろうサーゼクス視点での展開。

理由については冒頭の通りです。

そして相変わらず影が薄い主人公&ヒロイン。

……イッセー主人公タグ付けようかな。


今回のボツ台詞

一誠「行くぞ、不死鳥。命の貯蔵は充分か!!」
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