ハイスクールDragon×Disciple   作:井坂 環世

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ていうわけで兼一とD×Dのクロスの始まりです。
更新は不定期になると思いますがどうぞよろしくお願いします


序章
1 されど転生者は神と踊る


イジメ――それは、善良な人が聞けば口を揃えて「いけないことだ。」と言うであろう事柄だ。しかし、多くの人々がそう認識しているにも関わらず、絶対に無くなることはないと断言できる類のものでもある。それは最早人間の本能に根ざした行動とも言えるだろう。

 

そして、某県某所の高等学校―――ここでもまた、イジメられている人間とイジメる人間が生まれていた。直接的な暴力を振るっているわけではない―痣などが残ると厄介なため―が、それでもカツ上げや、それに関わって自らも巻き込まれるのを恐れたための無視等のことは行われていた。

 

無論、誰が悪いのか、と言われればイジメる方が悪いに決まってるのだが、イジメられる方にも問題が無いわけではない。イジメられるのが嫌なら一言「やめて」と言うなり、周りに相談して教師や親、教育委員会等を頼るなりすればいい話だからだ。

 

「そんなことを言う勇気があるなら初めからイジメられて無いって」という言い分もあるだろう。なるほど、それは正論かもしれない。

 

そして、この高校でイジメられている少年―名を福島裕也―もその例に漏れず、それらの行動を起こす勇気が湧いてこずにイジメられる現状に甘んじている弱気で内気な少年だ。

 

体格は中肉中背で、眉毛の上で前髪は切りそろえ耳は出す程度に、後ろ襟も長すぎず短すぎずで特に整髪剤を付けたりせず寝癖を整えただけの髪型に、近視ゆえに掛けている眼鏡。まるで「真面目な普通の高校生を描け」と言われて描かれたような容姿の少年だ。

 

その容姿が与える印象に違うことなく、運動神経は並。成績は勉強しているため中の上。趣味は読書にゲームや漫画。彼女いない暦=年齢。とまるでどこにでもいる少年だった。

 

しかし、どこの学校にもいる不良グループ的な連中に目を付けられたのが運のつき、裕也はイジメられることとなった。

 

裕也は弱気で内気だが善良な性格だった。優しい性格をしていると言ってもいい。ともかく、その性格のおかげで中学まではイジメられることなどなかったために、裕也としてもこのイジメにはまいっていた。

 

しかし、先も言ったように弱気で内気な裕也は「やめて」と言うことも助けを求めることも出来ず、その結果イジメがさらにエスカレートし、と完全に悪循環に陥っているのだった。

 

「はぁ~。なんとかしないといけないよなぁ。」

 

帰宅途中に漫画の新刊を買うために本屋に立ち寄りながら独り呟く。しかし、頭では「何とかしないと。」とわかっていても勇気は沸いてきはしない。思考と感情、心は別物なのだ。どうしても「もっと酷いことをされたらどうしよう。」という思いが頭からこびり付いて離れず、恐怖が沸き立ってくるのである。

 

と、その時裕也の目に1つの新刊が映る。それは裕也のお気に入りの漫画で、買い集めているものの1つであった。

 

「お、ケンイチ最新刊出たんだ。買い買いっと。」

 

裕也が手に取ったのは「史上最強の弟子ケンイチ」という漫画だ。これは小学校から中学、さらには高校に上がってもイジメられっ子だった「白浜兼一」という少年が、「誰もが見て見ぬ振りをする悪を倒せるようになりたい」「間違ってることは間違ってると、正しいことは正しいと言えるようになりたい」「大切な人を守れるようになりたい」という信念のもと成長していくストーリーの漫画である。

 

高校に入ってからイジメられるようになった裕也は、イジメられっ子が成長していくというこの漫画に嵌り、1巻から全部集めているというわけだ。

 

「はぁ~。俺も兼一みたいに強くなれたらなぁ。」

 

そう思っていても実際に行動しなければ意味が無い。兼一が(漫画とは言え)成長できたのは努力したからで、思っていても努力しない者に成長はありえないのだ。

 

「すいませ~ん。これ買います。」

 

「420円になります。」

 

「はい。」

 

「ちょうどお預かりします。ありがとうございました。」

 

そうして、裕也は「史上最強の弟子ケンイチ」を購入し本屋を出た。その顔は現在憂鬱な事情を抱えてるとは言え、楽しみにしている漫画の続きを読むことが出来る喜色に満ちている。

 

そうして道草も終わらせ、家に帰ろうとしてしばらくしたところ。家の近くの公園が目に入ったところでその光景が目に入った。

 

子供が無邪気に遊んでる姿。それだけなら微笑ましい物だろう。だが、ボールを使って公園の入り口近くで遊ぶ姿は同時に危なっかしさも見ている者に抱かせる。

 

裕也はついその子供達の周りを見回した。遊んでる子供達を監督する大人はいないかを捜したのだ。しかし、周りには井戸端会議に夢中で子供達の様子に気づいた大人はいない。

 

(危ないなぁ。もう。)

 

まるで漫画や小説などでよくある危ないことが起こる場面に、思わず裕也は眉をしかめる。まぁ、実際はそんなことが頻繁に起こる訳ではないだろうが、心臓に悪いことは変わらない。

 

と、その時。子供達が遊んでいたボールがポ~ンと跳ね、公園の外の道路に飛び出してきた。そして、それを取ろうと子供も飛び出そうとして・・・

 

(危ないっ!)

 

しかし、裕也の目にはそれが見えていた。おそらく子供は気づいていないだろうが、そのボールが飛び出した道路を走っている車の姿を。

 

子供も、そして運転手も互いの存在に気づいていない。裕也の位置からは両方が見えているが、互いが死角にいて気づいていないのだ。

 

そのことに裕也が気づく前に、裕也は咄嗟に飛び出していた。それは無意識のうちの行動だった。何故?と問いかけられても裕也自身「そんなものは自分が聞きたい。」というだろう。

 

そして子供はボールを取ろうと道路に飛び出した。そしてそれに気づいた運転手が咄嗟にブレーキを踏みつける。しかし遅い。どうしようもなく時間と距離が足りなかった。

 

ドガンッッ!!!

 

何かを跳ねた感触と音がした運転手は顔を青ざめさせる。そして子供を跳ねたと思い扉を開けて外に出た。

 

しかし、そこで倒れていたのは運転手が想像した幼子では無かった。倒れていたのは少年だった。眼鏡をかけていた。中肉中背の体格だった。イジメに対してただ一言「やめて」とも言えないような弱気で内気な少年だった。倒れていたのは・・・福島裕也だった。

 

運転手が周りを見回してみると、歩道に子供が倒れて、こちらに信じられないような目を向けていた。そう裕也が咄嗟に子供を突き飛ばして代わりに轢かれてしまったのだ。

 

「お、おい!大丈夫かね!君!」

 

運転手の男は裕也に声を掛けるが、裕也には聞こえていなかった。目が霞み、耳も聞こえなくなり、体が冷たくなるような感覚とともに意識が遠くなっていっていたからだ。裕也は漠然と理解した。「これが死か。」と。

 

(この年で死んじゃうのか。嫌だなぁ。でも、子供を守って死ぬなんて、幾分マシな死に方だよね。)

 

横では運転手の男が必死になって救急車を呼ぼうとしているが、裕也はもうすでに諦めていた。理解していたのだ。もうすでに助からないと。

 

(さようなら、父さん、母さん・・・。)

 

こうして、福島裕也の短い人生は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

ハズだった。

 

「と、言うわけでぇ。今からお前転生させるから。理解したか?(ドゥーユーアンダースタン)

 

「は、はぁ。」

 

目の前にいる男の言に乾いた返事しか返すことの出来ない裕也であった。それはそうだろう。いきなりこんなことを言われて混乱しない人間はかなりの修羅場を経験してるか、どっかおかしいか、夢だと思っているやつくらいだろう。

ちなみにどんな話だったのかを3行で説明すると。

 

間違ってお前殺しちゃった♪

     ↓

これはヤベェ!

     ↓

じゃぁ転生させたらいいじゃん!←今ここ

 

という具合である。テンプレテンプレ。

裕也もオタクな友人がいるため、所謂2次創作や、その中の転生物の存在は知ってはいたが、まさか本当に存在し、そして自分が巻き込まれるとは・・・。

 

「さて、というわけで特典は何にする?」

 

「はぁ、特典ですか。」

 

「そうだ、特典だ。無限の剣製か?王の財宝か?何でもは無理だが大抵のもんならお前が行く世界に合わせて調整した上で与えてやるぞ。」

 

「そうですか。」

 

そう言われ裕也は考え込む。裕也も漫画やゲームが好きな人間だ。そう言われれば欲しくなる能力や道具の1つや2つはある。

 

ちなみに裕也はこれが夢とは考えていない。何故なら先ほどの死の感覚は余りに濃く、未だに他の事を考えていないと恐怖に震えてしまいそうになるからだ。

 

(どんなのがいいかなぁ。色々あって悩んじゃうよ。)

 

そうやって考え込んでいると、1つの漫画が思い浮かぶ。それは「史上最強の弟子ケンイチ」。死ぬ直前に買った漫画だ。

 

(そう言えば「ケンイチ」に書いてあったっけ。中途半端な力ほど危ないって。)

 

そう。確かにそう描写していたことを覚えている。中途半端な力を持つと目的の為に力を振るうのでは無く、力に飲まれ、力そのものの為に力を振るう修羅道に落ちると。そしてそれは今さらながらに実感となって裕也は理解した。

 

今まさに、裕也が他者から力を与えられるとわかってその力を振るうのが楽しみになってしまっていたからだ。いきなり力を与えると言われ、仕方ないこととは言えこれはまずいと裕也は思う。

 

(待てよ。「ケンイチ」か・・・。兼一も初めから強かったわけでも、才能があったわけでも無いんだよな・・・。それでも強くなれた。僕も兼一みたいに強くなりたい。強く生きたい!)

 

裕也の中でその思いが膨らんでいく。ただ力を持つだけではない。その力を振るう信念と覚悟を持ち、心を強く持って生きていきたいと。

 

と、そう考えているととあることが閃いた。それはまるで天啓のようだと裕也は思った。その考えが浮かぶとそれがとてもいい考えのように思え、それ以外の考えが浮かんでこなかった。

 

(そうだ。兼一だって初めから強かったわけでも、独力で強くなったわけでもない。兼一が強くなれたのは師匠がいたからだ。なら・・・!)

 

「特典は決めたよ。」

 

「ほぅ。どんなのにするんだ?」

 

その言葉に裕也はニヤリという不敵な笑みを浮かべる。自身が考え付いたアイディアがによほど自信があるのだろう。そして裕也はその考えを口にした。

 

「漫画「史上最強の弟子ケンイチ」に出てくる特A級の達人級が住む異空間を作り、そこに入れるようにしてほしい。」

 

「ほぅ。それはそれは・・・。」

 

「言ってみたら「ネギま!」に出てくる別荘に達人級の面々が住んでるみたいな物かな?そんな感じにしてほしいんだ。」

 

「良いだろう。ついでだ。その漫画で出てくる主要なキャラも達人級にしてそこに住んでるようにしてやろう。」

 

「本当かっ!」

 

「あぁ、サービスというやつだ。」

 

「やったぁ!」

 

その言葉に裕也は歓喜した。兼一や風林寺美羽や新白連合の幹部面々やYOMIが達人級に成長した姿が見れる!それは1作品のファンとしては諸手を挙げて喜びたい事態だった。

 

(これで梁山泊の面々や他の達人にも鍛えてもらえる!ただ他人から力をもらうんじゃなくて自分で強くなれる!)

 

ただ力を手に入れるのではなく、兼一のように強くなれる。さらに、好きな漫画のキャラに鍛えてもらえる。まだ可能性の段階だが、その事実に裕也は内心とても舞い上がっていた。

 

そう、自らはもう死んでおり、両親や友人にもう会えないということを忘れるくらいには。

 

「それじゃぁ手続きは終わりだ。後ろの扉をくぐれば転生になる。」

 

「あっ。」

 

(そうだ。僕は死んだんだ・・・。もう皆には会えないんだ。)

 

今更ながらにその事実に心のうちが痛くなる。もう会えない。大切な人たちには。悲しい、寂しい、そんな気持ちがまるで雪のように裕也の心に降り積もっていく。

でも、それでも!

 

(未練はある。後悔だってきっとある。悲しい気持ちも寂しい気持ちだって。でも!僕は強くなるって決めた。忘れるわけじゃない。捨てるわけにもいかない。この気持ちを胸に抱いて、それでも前を向いて歩いていこうっ!)

 

涙が滲む。視界が霞む。足だって重い。もしかしたらこれは夢なんじゃ?という思いだって消えはしない。でも、それでも裕也は一歩一歩歩き、そして扉の前に立った。

 

この扉を潜ればそこには新たなる世界、新たなる生が待っている。だから、足踏みしている暇はない。躊躇う意味も無い!

 

裕也は目を擦り涙を拭く。そして目を瞑り、開けた時にはその眼の中にはまだまだ弱いながらも覚悟の火が灯っていた。

 

(さようなら、皆。皆に見せることはもう叶わないけど、僕は強く生きてみせます!)

 

そして扉を開き、その足を踏み出した。その一歩は距離にしたら短いだろう。だけど、裕也の心の内では大きな一歩だった。

 

こうして福島裕也は転生した。




後数回プロローグ予定。
原作は入れるよう頑張ります^^;


題名元ネタ・・・されど罪人は竜と踊る
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