A.D.2012 偶像特異点 深夜結界舞台シンデレラ   作:赤川島起

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第7章 アイドルミスコン本選 決着

 いよいよ次が最終審査。

 それを紹介してくれるアイドルが入場する。

 

「こんにちはー!」

 

「私達ー!」

 

「ニュージェネレーションズです!」

 

 最後のアイドルたちは卯月、凛、未央。

 登場した彼女達に、アイドル全員が傍による。

 

「ここまでの審査、皆さんお疲れ様です」

 

「最後の審査は、私達アイドルと一緒に行います」

 

「観客の皆さんも一緒に楽しんでくださいね」

 

 すると、打ち合わせ通りに指定された立ち位置につく。

 アイドルも参加者も全員。

 一人一人に間隔があり、動けるスペースを作っていく。

 観客も予想できた人が出てきたらしく、早めに歓声をあげる。

 

 ここまでの審査を振り返る。

 第一審査、宣材写真(ビジュアル)

 第二審査、歌唱力テスト(ボーカル)

 そして、最終審査――――

 

 

 

 

 

「最終審査はステージダンス!」

 

「私達と一緒に、歌って踊って楽しみましょう!」

 

「それでは聞いてください!」

 

 

 

 

 

『GOIN!!』

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 アイドル達が踊る。

 その卵達も踊る。

 サーヴァントも踊る。

 

「――――――♪」

 

 楽しそうに、嬉しそうに。

 この場にいる人物の中で、ステージを楽しめない人物などいない。

 観客やカルデアを含めて、一人残らず熱中する。

 プロではない参加者は、時折ミスをしたりタイミングがずれたりする。

 いかに身体能力が高かろうと、カルデアの三人とて例外ではない。

 しかし、事前に誰かに言われているからか、深く気にすることは無い。

 少なくとも今は。それよりもこのステージを楽しみたい。

 

「――――――♪」

 

「―――!―――!」

 

 シンデレラが歌う。

 ファンが合いの手を入れる。

 会場のすべてが盛り上がる。

 舞台裏のスタッフも、事務員も、プロデューサーも。

 彼女達のステージを見て聞いて。

 楽しい気持ちになる。

 嬉しい気持ちになる。

 

 

 

 

 

 今この時、ステージ上にいるのは彼女たちは、一人残らず――――――シンデレラガールになっていた。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 これにて、すべての審査は終了した。

 

 最終結果は、全観客の投票にて行われる。

 

 休憩時間を兼ねて、マークシートによる投票結果がスタッフにより回収されていく。

 

 集計の間、壇上で行われるアイドルたち含めたトークショー。

 

 ついにその時はやってきて、結果がモニターに表示される。

 

 

 

 

 

「第1回シンデレラガールコンテスト!栄えある優勝者は――――――」

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 →「じゃあ、皆お疲れ様でした!乾杯!」

 

『乾杯!!』

 

 場所は東京都内のレンタルキッチン。

 レストランなどではアイドル達が人目につくため、このような場所を借りていた。

 参加しているのは、カルデアとアイドル達。

 

 

 

 名目は、――――お疲れ&残念会。

 

 

 

 三人は優勝はおろか、表彰台に上がることもなかった。

 四位以下が公開されていない為、何処にランクインしたかもわからない。

 だがこれは、順当な結果と言えよう。

 マシュもジャンヌもアルトリアも、魅力的であった。

 笑顔も良かった。

 可愛かった、格好良かった、情熱的だった。

 

 だがやはり、――――――技術が付いていけなかった。

 

 相手の多くは、アイドルを目指して長年努力してきた少女達。

 一日二日で追い越せるほど、甘い道のりではなかったのだ。

 

「大変でした……。でも、楽しかったです」

 

「ええ。今まで、人前に出たことはありましたが、それとはまた違う想いを持ちました。アイドルを志す少女の気持ち、少しだけ解った気がします」

 

「聖女や王と慕われるのとは違う、等身大の自分を見てもらい、好きになってもらう。本当にすごいですね、現役のアイドル達は」

 

「いやまあ、そこまで言われると照れるんだけどね」

 

「私も。でも私、最初はアイドルに興味は無かったんだ」

 

「凛さんが、ですか?」

 

「うん、スカウトだったんだ。でも、今は続けてよかったって思ってる。大変なこともあるけど、ライブとかちゃんとやりきったとき、すごく楽しいんだ」

 

 →「確かに楽しそうだった」

 

「まあね。あと遅くなったけど、声援ありがとう。3人もお疲れ様」

 

「ましゅましゅも可愛かったし、アルちゃんもカッコよかった!ジャンヌさんもすごかった!」

 

「皆さん、とっても素敵でした!」

 

 今日のステージを労うニュージェネの三人。

 それに続き、マシュ達を称える新たなアイドル。

 

「ほーんと!皆、はぴはぴしてすっごく良かったにぃ!」

 

「お疲れ様。後はゆっくり休みなよ、杏も一緒に付き合うからさ」

 

「杏ちゃん、明日もお仕事だよ」

 

 いつもどおりマイペースな杏を嗜めるアイドル。

 此度のステージで、杏の相方だった諸星きらり。

 ニュージェネと杏がこの会を提案したところを発見し、誘われる形でついてくる事となった。

 カルデア側からしても異論は無く、こうして参加しているのだ。

 

「さて、談笑を楽しんでいるところ申し訳ないが、ぜひ食事も楽しんでもらいたいね。せっかく作った料理が冷めてしまう」

 

「あっ、すいませんエミヤさん。じゃあ早速、いただきます」

 

「いっただっきまーす!」

 

 いつの間にか用意が済んでいたテーブルの上。

 そこに並ぶエミヤ特製の料理とあっては、逃すわけにはいかない。

 テーブルの上に並んだご馳走。

 魚介の香り漂うパエリア、脂弾けるローストチキン、色鮮やかで特製ドレッシングのかかったサラダ、旨みたっぷりのクリームシチュー。

 食後には紅茶とケーキが出てくるという至れり尽くせり。

 

「すっごくおいしい~!」

 

「エミヤさん、すごい料理上手です!」

 

「そう言ってもらえると作った甲斐がある」

 

 エミヤの料理はプロ級だ。

 カルデアにおいて、料理長を担う彼の腕は折り紙つき。

 ましてや、ここは食材豊富な現代日本。

 その中でも、様々な食材が集まりやすい東京。

 もとよりこのレンタルキッチンもエミヤの発案であり、嬉々として調理に取り掛かっていた。

 完全に水を得た魚。

 かつて、食材や調味料に制限がかかっていたカルデアでも十分美味な料理だった。

 

 →「今まで食べたエミヤの料理の中で一番おいしい!」

 

「おいしいです。これが、エミヤさんの全力なんですね」

 

 鬼に金棒、エミヤに包丁である。

 なお、エミヤの包丁は投影によるバッタもんだが。

 

「……………」

 

 アルトリアなど、もはや無言。

 言葉を出している暇があったら、次の一口を進める。

 行儀よく食べ進めてはいるが、もうおかわり寸前である。

 

「ん~!」

 

 ジャンヌもまた、料理に舌鼓を打つ。

 どうやらシチューが特にお気に入りらしい。

 

 

 

 食後のティータイムも終え、心地よい満足感に陶酔する一同。

 満腹感が心地よく、ついつい寝てしまいそうになる。

 

「エミヤさん。おいしい料理、ありがとにぃ!皆も、きらりを誘ってくれて嬉しかった!」

 

「お粗末様。礼なら結構、良い表情で食べてくれれば、料理人冥利に尽きる。」

 

 →「どういたしまして。それに、きらりさんもステージお疲れ様」

 

「きらりでいいよ。こっちこそ、応援ありがと!」

 

(みな)良い表情(かお)だった。結果こそ伴わなかったが、ステージとしては成功だろう」

 

「珍しいですね、アーチャー。貴方がそのように褒めるなど」

 

「いや、流石に私も素直に感想ぐらい言うぞ。でなければ、労いの為に腕を振るったりはしない」

 

「む、それもそうですね。確かにいつも以上に美味しかった」

 

 →「皮肉屋のエミヤが素直になる。アイドルってすごいね」

 

「マスター!?貴様もか!?」

 

 

 

 誰かが笑い出し、それが波及する。

 楽しく笑う、悔しさを洗い流すように。

 短期間とはいえ、全力で取り組んだアイドル業。

 全力だったからこそ、やっぱり悔しい。

 

 でも笑おう、楽しかったんだから。

 

 悔し涙ではなく、笑い涙を流す。

 

 

 

 

 

 

 日もとっぷり暮れ、全員が帰宅するまで。

 みんなの笑顔が途切れることは無かった。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 十二時の鐘が鳴る。

 

 平和な世界が反転し、一部の者のみがそこを認知する。

 

 深夜に繰り広げられる結界の舞台。

 

 影が蠢く。

 

 かつての戦いを再現するように。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 深夜の結界に再び招かれたマスターたち。

 既にアイドルの四人とも合流し、プロダクションにて作戦の確認である。

 

『念話でのブリーフィングは覚えているね。今一度確認だが、今まで第一、第二特異点とシャドウサーヴァントが続いてきた。ならば、次は必然第三特異点以降のシャドウサーヴァントがいると見て間違いないだろう』

 

『どの特異点の敵とあたっても、決して楽ではない。理想は、新しいアイドルを先に見つけることだね』

 

「今まで通り、私が先行及び索敵だな」

 

 エミヤの視力は、アーチャーのため当然いい。

 常人離れしているくらいだが、遮蔽物の多い東京では完全ではない。

 見つけられるかどうかは、あくまで運次第。

 

「あの、手分けして探したらどうかな?」

 

 凜が挙手し発言する。

 確かに、人数が増えた為以前よりも余裕があるだろう。

 シャドウサーヴァントを含めれば数は20を超える。

 

 →「止めた方が良いと思う」

 

「なんで?」

 

 疑問をぶつける未央。

 彼女達にしてみれば、一刻も早くアイドル達を探し出したい。

 そんな焦りも多少影響しているかもしれない。

 確かに、探すならば手分けして、そのほうが効率は良いだろう。

 だが、それができない理由はもちろんある。

 

『単純に危険だからだ。手分けしたほうが探すのには効率がいい。けど、それは戦力の分断につながる。平和な都市を探すのとはわけが違うからね』

 

「わかった。そういう理由があるなら」

 

「せっかく見つけても、一緒にやられちゃったら本末転倒だもんね」

 

 しっかりとした理由をもって諭した為、引き下がる凜と未央。

 カルデアの面々とて心配している。

 共にステージに立った人や、まだ会った事のないアイドル達が危険かもしれない。

 だからこそ、しっかりと作戦を固める。

 生霊だから、やられても死ぬわけではないからと思うような人物は誰もいない。

 

 全員の気持ちは一つ。

 見つけ出して助ける。

 

 

 

 準備を終えた面々は、深夜の東京へと繰り出して行った。

 

 

 

 

 

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