A.D.2012 偶像特異点 深夜結界舞台シンデレラ   作:赤川島起

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第9章 宝具の衝撃

 放たれた約束された勝利の剣(エクスカリバー)

 卯月の宝具によって強化されたその一撃は、魔神影柱をまとめて吹き飛ばした。

 

「――――――!!」

 

 もはや残骸というべき状態から、崩れ落ち消滅していく。

 最後の足掻きとばかりに暴れるが、それはむなしく空を切る。

 空中にいた蘭子と杏も、残骸から距離をとって安全を確保した。

 

「油断しないでよ~。ちゃんと消えるまで確認しないとね」

 

「心得ておる。心配は無用」

(大丈夫、わかってるよ)

 

 最後まで気を抜くことなく、すべての魔神影柱の消滅を確認した。

 目の前に残っているのは、もはや破壊痕のみである。

 

「魔神影柱、消滅を確認。戦闘終了です、先輩」

 

 →「おつかれさま、みんな」

 

「はい!おつかれさまです!」

 

「う~。今回は未央ちゃんあまり活躍できなかった~」

 

「そんなにふてくされないの。サーヴァントになったとはいっても、私達は戦いの素人なんだから」

 

「わかってはいるよ。でも、やっぱり足手まといにはなりたくないから……」

 

「いえ、足手まといなどではありません」

 

「そうですよ。騎士王の宝具が間に合ったのは、皆の功績です。貴方達の援護がなければ、確実ではなかったかもしれない」

 

「こちらからすれば、それだけでもありがたい。ヘラクレスの時も、他の場所での奮迅は助かった。あれが無ければ、もっと苦しい戦いになったはずだ。なあ、マスター?」

 

 →「皆頼もしいよ」

 

「……えへへ。いや~、そこまで言われると照れるんだけど」

 

「現金だなぁ、未央は」

 

「未央ちゃんですから」

 

 談笑する一同。

 それに合流しようと降りてくる杏と蘭子。

 

「しかし誇り高き王の剣、その力は真であった!」

(アルトリアさんの聖剣、すっごくかっこよかった!)

 

「まあ、本物の英雄、しかもアーサー王だもん。蘭子の気持ちもわかるよ」

 

 最強クラスの宝具。

 それも彼の有名なエクスカリバーとあっては、蘭子の興奮も当然だ。

 杏もまた、ゲームなどでも良くモデルとなる剣の実物に対し、蘭子に共感している。

 早く実際に話を聞きたいと、そわそわしている蘭子。

 

 

 

 

 

 バアアアアアアァァァァン!!

 

 

 

 

 

 そんな彼らに対し、突如魔神影柱が現れた。

 

 

 

「――――え?」

 

 

 

 アルトリアの宝具は、破壊の規模が大きい。

 そしてそれは、目くらましになりやすいことでもある。

 宝具からギリギリ逃れ、地中へと回避した。

 魔力不足による威力低下もあったのだろう。

 いつ消えてもおかしくない程に追い詰めたが、倒し損なった。

 しかも、他の魔神影柱の残骸を吸収したのか、回復までされている。

 機を伺っていたのだろう魔神影柱は、もう既に攻撃態勢に入っていた。

 自身の無事を度外視した、捨て身の一撃。

 

 

 

 その身を叩きつけようと、倒れるようにこちらに向かってくる魔神影柱。

 

 

 

「――――や」

 

 

 

 迎撃の隙も無く、襲い掛かってくる。

 

 

 

 

 

 ドゴオオオォォン!!

 

 

 

 

 

 その魔神柱は、何かに殴り飛ばされた(・・・・・・・)

 

 

 

 

 

「――――はい?」

 

 

 

 

 

 魔神影柱は言わずもがな巨大。

 そんな敵を殴り、あまつさえぶっ飛ばした。

 

「こ―――」

 

「これは!?―――」

 

 殴り飛ばしたのは、堂々とした佇まい。

 至る所に付けられたリボン。

 髪はツインテールにまとめられている。

 何よりも、圧巻なのはその大きさ。

 

 

 

 

 

「待たせたにぃ」

 

 

 

 

 

 マスターが見上げるほどに大きい、その存在は――――。

 

 

 

 

 

 →「巨大ロボットだああぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 実にメカメカしい姿をしていた。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 →「ロボだよロボ、巨大ロボットだよ!」

 

「先輩の目が、未だかつて無いほどに目がキラキラしています!?」

 

『日本男子はこういうの好きだからねぇ~』

 

「あのロボットって……」

 

「……あれだよね?」

 

「あれですね」

 

「左様だな」

(そうですね)

 

 マスターが巨大ロボットに目を輝かせる。

 ロボットを見て、知ってるから余計に混乱しているアイドル達。

 

「……あ~、来たんだね~」

 

 一人落ち着いて、冷静に現状を見る杏。

 

 そんな彼らに対し巨大ロボット、ではなく、その肩に乗った人物から声がかかる。

 

「ちょっと待っててにぃ。あとは、きらりにおまかせだよぉう!」

 

 若干遠い為、はっきりとは見えないが姿は確認できた。

 スターリースカイ・ブライトを着るその人物は、服装は違えどロボットと似通っている。

 まず間違いなく、新たなアイドル。

 

 しかし、あまりにも宝具が予想外すぎるのだが。

 

 

 

「――――――!!」

 

 

 

 そんな事情は、魔神影柱には関係ない。

 新たに現れた邪魔者を排除しようと、きらりへと襲い掛かっていく。

 

「いっくよぉ~!」

 

 そんな状況にもかかわらず、恐れを抱くことなく立ち向かうきらり。

 

 

 

 

 

「ガンガン敵を打ち砕け!」

 

 

 

 

 

 ロボットが構える。

 こぶしを振るわんと、敵を見据え迎え撃つ。

 

 

 

 

 

「ドンドン希望湧いてくる!」

 

 

 

 

 

 加えて、ロボの目が光りだす。

 それは、ロボの主力である必殺の一撃。

 

 

 

 

 

「それいけ!発進!鋼鉄公演きらりんロボ!(きらりん☆びーむ&なっくる)

 

 

 

 

 

 メインウェポンであるビームと、鋼の拳の合わせ技。

 きらりの宝具の真名開放をもって、魔神影柱との戦闘に勝利した。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

「みんな~、おっつおっつ~!怪我とかない~?」

 

「は、はい……。幸い、大怪我を負った方はいません……」

 

 巨大ロボの手によって降ろされた彼女。

 近くで見れば、エミヤに迫る高身長。

 髪は様々なアクセサリーでデコられている。

 どうやら、見覚えがあるアイドル。

 

 諸星きらり。

 

 シンデレラガールコンテストでは、杏と共に審査発表を行っていたアイドルだ。

 お疲れ会にも参加しており、カルデアとは既に面識がある。

 ロボットのインパクトで気づかなかったが、このしゃべり方にも覚えがある。

 

 →「ねえ!あのロボットは何!?」

 

 興奮気味にマスターが指差すのは、彼らの近くで佇む巨大なロボット。

 オカルトではなく、SF的な意味で現実感の無い光景だ。

 

「あれは、きらりが造った『きらりんロボ』!っていう設定のロボだにぃ」

 

「設定、とは?」

 

「あ~、ジャンヌの質問には私が答えるよ~」

 

 杏曰く、あのロボットは当然現実に存在する兵器ではない。

「きらりんロボ」。

 とあるイベントによって生まれ、その内容はきらりが演じる科学者でありパイロットが作り上げたという設定だ。

 ストーリーや設定もいくつかあるのだが、今回は割愛。

 きらりが関わる企画の中でも、屈指の人気を誇る企画である。

 

「何がどうなって、それが宝具になるんでしょうか……」

 

『そりゃあ、ファン達による逸話だろうね』

 

「あっ、はじめましてぇ。私きらり!これからよろしくにぃ!」

 

『ああ。よろしく、きらり嬢。知ってるかもしれないが、私の名はシャーロック・ホームズ。以後よろしく』

 

「……にょわー!きらり『嬢』だって~!」

 

『喜んでもらえるなら何より。さて、話を戻そう。宝具と言うのは、サーヴァントが過去に成した偉業、功績、大罪などが語り継がれ、逸話となって昇華するものだ。彼女達アイドルの場合、ファンからの応援がそれにあたる』

 

 →「そっか。人気企画だもんね」

 

『そう。そのような形で逸話が昇華され、宝具と化したのだろう』

 

「私達も、その影響を受けてます」

 

「自分のソロ曲が宝具の名前になってるから」

 

「たしかに、言われてみればそうだよね」

 

 卯月、凜、未央、杏の宝具は、自身のソロ曲が真名解放の名前となっている。

 蘭子の場合は異なり、ソロ曲の名前は使われていない。

 が、彼女の趣味全開の固有結界なので、ファンからのイメージと無関係では無いだろう。

 きらりもまた、形式が違うだけで根本は同じなのだ。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 そろそろ時間も過ぎた。

 午前六時が迫っている。

 結果として今日の探索では、蘭子ときらりが仲間となった。

 成果は上々。

 もう時間もあまり無いので、話題は日中の事となる。

 

「私達は、明日お仕事なんです」

 

「めんどくさいけど、夏休みは仕事が多いんだよね~」

 

「時間が取れるとしたら、明後日になるかも」

 

「残念だが、その時では私は魔力を高められない」

(私、明後日は休みじゃないですね)

 

「きらりも~」

 

「明後日は、私たちニュージェネはお休みだよ。でも、他のアイドル達はどうかな~?ほら、前に言った鉢合わせしよう、って話」

 

『それについては確認が取れ次第、念話で連絡してくれないかな』

 

「うん、いいよ!」

 

『いい返事だ。カルデアは、此度の日中は休息にあてよう。アイドル達も忙しいだろうし、連絡が取れたら、作戦会議にしようか』

 

 →「了解!」

 

「働きたくないけど、しかたないね」

 

「にょわ?杏ちゃん、今回はやる気?」

 

 いつもよりは、と但し書きが付くが。

 

「流石に、杏もサボっちゃいけない仕事(コト)の分別ぐらいつくよ。他のアイドルも見つけなきゃいけないし」

 

「……。にょわー!杏ちゃん、(やっさ)しぃ」

 

「ぐっ。タップタップ……」

 

 感極まり、抱きしめるというよりは締め上げるという形で杏を持つきらり。

 補正もあるのだろうが、筋力Bは伊達ではない。

 

 

 

 

 

「じゃあ、また念話で連絡を下さい。それでは、また」

 

「まったにぃ~」

 

「闇に飲まれよ!」

(お疲れ様でした!)

 

「じゃあね~」

 

 きらり、蘭子、杏が光の中に消え、現実世界へと帰還する。

 

「おつかれさまです、皆さん。また、明日」

 

「また明日。ゆっくり休んでね」

 

「まったねー!次も未央ちゃん、大活躍しちゃうよ〜!」

 

 卯月、凜、未央も同様に帰っていく。

 今日の探索は終わった、誰一人欠けることなく。

 だが、まだ強敵は多いだろう。

 不安も恐怖もある。

 

 →「明日も頑張ろうね、皆」

 

 だがそれは、顔には出さない。

 楽では無いだろうが、頼もしい仲間達がいる。

 頼りになる、アイドル達がいる。

 

「はい。先輩」

 

 これからの苦難に対し、彼らは前を向いていた。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 結界は繰り返す。

 

 舞台を作る。

 

 セットを作る。

 

 アイドルを作る。

 

 それ自体に意思は無く。

 

 ただシステムのように作動するだけ。

 

 結界に感情は無く。

 

 型に嵌った動きをするのみ。

 

 

 

 

 

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