A.D.2012 偶像特異点 深夜結界舞台シンデレラ   作:赤川島起

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第12章 激戦

 深夜の結界で日中の作戦通り、無事二人のアイドルと合流できた。

 ランサー、城ヶ崎莉嘉。

 アーチャー、赤城みりあ。

 以前予想していたとはいえ、シンデレラとしては意外である三騎士。

 それも、遠距離攻撃のアーチャーならともかく、近接戦闘を主体とするランサーに、まさかのジュニアアイドルが当てはまっていた。

 ただ、アイドル達からはある種の納得があるようだ。

 その原因は、莉嘉が持つカブトムシの槍なのだろう。

 

「莉嘉ちゃん、カブトムシ好きたもんね」

 

「うん!それに、私の宝具もカブトムシだし☆」

 

『まさに、なるべくしてなった。という宝具のようだね』

 

 アイドルサーヴァントは彼女たちの個性、趣味、好み、信念、経験などが、スキルや宝具になっている。

 代表的な莉嘉の個性であれば、宝具として昇華されるのも必然なのだろう。

 ランサークラスにまで影響するのは、流石に予想外だったが。

 なお、莉嘉はこう語ってはいるが厳密に言えばカブトムシの宝具ではない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 間違ってもいないので、あくまで蛇足に過ぎないことなのだが。

 

「みりあちゃんは……シャボン玉、なんだね」

 

「やっぱり、『shabon song』からかな~?」

 

「みりあちゃん、と~ってもかわゆぅかったから、かも知れないよぅ!」

 

「ありがとう、きらりちゃん!」

 

 天真爛漫という言葉が、これ以上ないほどに似合っているみりあ。

 可愛らしい笑顔は、卯月と同様に元気を与えてくれる。

 物怖じしない性格からか、短い付き合いでしかないカルデアに好意的に接してくれる。

 今までの知識から、皆を助けてくれたすごい人達、という認識があるとはいえすごいことだ。

 

 →「皆、話はちゃんと出来た?」

 

「うん!カルデアのみんな、とってもいい人たちだね☆」

 

「おしゃべりはここまでだね。みりあもたくさん、がんばるよ!」

 

 気合十分。

 命に別状はないとはいえ、怖いはずの戦いに怯まない。

 それは、他のアイドル達にも言えることだ。

 彼女たちは、人数が増えるほどに前向きになっている。

 仲間がいるほどに、目に見えて雰囲気が明るくなっているのが分かる。

 

 →「じゃあ、行こうか!」

 

「皆さん、行きましょう。私も、精一杯皆さんを守ります」

 

 マスターとマシュの声に続くように、探索へと向かう一同。

 カルデアの英霊達も、戦意が増しているのが分かる。

 それは、アイドル達のスキルによる影響なのかもしれない。

 しかし、そういったスキルがなかったとしても、士気は揚がっただろう。

 アイドル達から応援され、こちらもアイドル達を応援する。

 応援しあうことで、彼らは共に戦うことが出来るのだから。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 第五特異点。

 トップサーヴァントが幾人も現れ、アメリカ大陸を文字通り揺るがした神話大戦。

 味方にも、敵にもいたトップサーヴァント。

 それに加え、あの特異点にいたサーヴァントのほぼ全てが一度に襲い掛かってくる。

 総勢十八体。

 クリミアの天使、ナイチンゲール。

 コサラの王、ラーマ。

 コノートの女王、メイヴ。

 堕ちた光の御子、クー・フーリン・オルタ。

 影の国の女王、スカサハ。

 八極拳と神槍の使い手、李書文。

 巨人と竜を退治した英雄、ベオウルフ。

 赤枝騎士団の勇士、フェルグス・マック・ロイ。

 フィオナ騎士団の長、フィン・マックール。

 フィオナ騎士団随一の騎士、ディルムッド・オディナ。

 拷問城の主、エリザベート・バートリー。

 シャーウッドの森の英雄、ロビンフッド。

 アメリカのアウトロー、ビリー・ザ・キッド。

 アパッチ族の戦士、ジェロニモ。

 発明王、トーマス・エジソン。

 神智学者、エレナ・ブラヴァツキー。

 授かりの英雄、アルジュナ。

 施しの英雄、カルナ。

 今までのシャドウサーヴァントの中では最多であり、個々の戦闘力も強力だ。

 しかし、カルデアのサーヴァントも伊達ではない。

 強化された彼らに加え、十人のアイドルサーヴァントたち。

 味方であるシャドウサーヴァントは、前回に引き続きオケアノスのメンバー。

 ケルト兵はいないため、数の有利は明白。

 だが、今まで以上の激戦となっていた。

 

 マシュが盾を構える。

 アルトリアが聖剣を振るう。

 エミヤが剣を投影する。

 ジャンヌが旗で防御する。

 ヘラクレスが力任せに暴れ回り、近接戦闘に向かない相手を撃破していく。

 しかし、相手の多くは戦士系のサーヴァント。

 殆どのアイドルサーヴァントと相性が悪い。

 だが彼女たちも、自分に出来る事を確実にこなしてくれる。

 

 

 

「それいけ!発進!鋼鉄公演きらりんロボ!(きらりん☆びーむ&なっくる)

 

 

 

 きらりの宝具によって、巨大ロボが出現する。

 類を見ない分類である、対巨大兵器宝具。

 その真名開放は、強烈な威力をもって敵を蹴散らす。

 

 

 

 ガガガガガガガガガッ!!

 

 

 

 だが、それをやすやすとは許してくれない。

 大きさという力は、的が大きいと言う弱点となる。

 アーチャーのシャドウサーヴァント、アルジュナの弓がきらりんロボを削っていく。

 

 

 

 ドッゴオオオォォン!!

 

 

 

 より小さいはずの影が、きらりんロボを殴り倒した。

 ベオウルフ。

 英文叙事詩に名高い英雄。

 彼の偉業である巨人退治(・・・・)

 似たような姿を持つ、きらりの宝具とは相性が悪かった。

 

 

 

 →「………………っ!」

 

 

 

 サーヴァントに供給する魔力は、カルデアからも補っているがマスターの負担もある。

 きらりの宝具がやられた今、魔力の余裕は決して多くは無い。

 

 

 

「弾ける力、シャボン玉の魔法」

 

 

 

「弾けた瞬間、私が変わる」

 

 

 

舞い上がれ私のシャボン玉(ロマンティックナウ・バブル)!」

 

 

 

 出現したのは、直径2mの大量のシャボン玉。

 シャボン玉には、それぞれに映像が映し出されている。

 それは、彼女たちを含めた味方の姿。

 魔力が満ち、視界を封じ、敵を撹乱する。

 特にシャドウサーヴァントたちへの恩恵は大きく、回避率が明確に上がっていた。

 

 

 

 パッチイイィン!!

 

 

 

 シャボン玉に攻撃した、エリザベートが吹っ飛んだ。

 無論、これはただの撹乱ではない。

 シャボン玉一つ一つに、明確な攻撃力がある。

 近接戦闘を主とする、戦士系サーヴァントの直接攻撃はダメージを負う結果となる。

 

 

 

「これが、私の未来!」

 

 

 

 みりあがシャボン玉を纏った(・・・)

 すると、みりあの姿が変化していく。

 いや、変化ではなく成長(・・)というべきだろう。

 みりあの外見年齢は、五、六年程成長していた。

 髪が伸び、子供から少女へと変わっている。

 そして、何よりもその身から溢れる魔力が強化されていた。

 

 舞い上がれ、シャボンの玉(ロマンティックナウ・バブル)

 シャボン玉を纏うことで、その映像をその身に投影する宝具。

 言い換えれば、みりあの未来を先取りする宝具(・・・・・・・・・・・・・・)

 彼女の未来、無限の可能性を一足早く使用することが出来る。

 その効果は、第二魔法、第五魔法に近い。

 

「いっくよー!」

 

 弓を番える(・・・・・)

 みりあの未来から、弓を使っている未来を先取りする。

 放たれた矢は正確に、そして確実に命中していく。

 

 アイドル達は、各スキル、宝具を使い応戦していく。

 誰一人として、無傷な者はいない。

 しかし、彼女たちは誰一人として脱落していない。

 仲間に危険が迫れば、確実にカバーする完璧なコンビネーション。

 人数が多いほど難易度が跳ね上がるそれを、戦闘経験の殆ど無い彼女達が実現している。

 カルデアの、ひいてはマスターの感じた思いは正しかった。

 アイドル達を、心強いと思ったこと。

 

 事実、アイドルサーヴァントたちは人数が増えるほどその真価を発揮していくのだから。

 

 

 

「莉嘉のコレクション、見せてあげる!」

 

 

 

「世界にいっぱい、シールを貼っちゃえ!」

 

 

 

「デコっちゃうよ~☆莉嘉の甲虫、大集合!(DOKIDOKIリズム・ビートル)!!」

 

 

 

 現れたのは、人間が騎乗出来そうな程に大きいカブトムシの大群。クワガタも少し混じっている。

 しかし、違和感を感じざるを得ない。

 まるで、イラストに描かれたカブトムシが、現実に飛び出たかのようだ。

 それもそのはず。

 莉嘉の宝具によって現れた昆虫たちは、生命体ではない。

 宝具によって投影された存在。

 近い宝具で言うならば、ネロ・クラウディウスの「招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)」だろう。

 世界というページの上に、貼り付けられたシール(・・・)

 それが、あの昆虫たちの正体なのだ。

 故に、欠けると存在が保てなくなる投影よりも、存続する力が強い。

 そして一匹の戦闘力も、伊達ではない。

 

 

 

「いっけええぇぇ!!」

 

 

 

 ヤマカブトに騎乗し、手に持つ槍を振るいながら敵に突っ込んでいく莉嘉。

 さらに増した数の利。

 数を減らしていた敵にとって、この大群がトドメとなった。

 

 

 

 激戦は終わった。

 息を整え、休息のために346プロダクションへと帰還する。

 前のように、連続での魔神影柱戦は無理があるためだ。

 今はただ、みんなが無事であった事を喜ぶことにする。

 346プロダクションは、カルデアにとっても安心できる場所となっていた。

 

 

 

 

 


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