A.D.2012 偶像特異点 深夜結界舞台シンデレラ 作:赤川島起
第七特異点のシャドウサーヴァントは、これまでの戦いの中でも数が最も少ない十体。
だが、侮ることなど出来ない。
此度の相手に、人間の英霊は三人。
他の七名は、神話でその名をとどろかせる神霊。
そして、生きた宝具であるエルキドゥ。
人間の英霊も、純粋な戦士たち。
シャドウサーヴァントとはいえ、基礎スペックが高い相手ばかり。
「我の闇に沈め!」
(倒れて!)
「――――――!!」
さらに、女神イシュタルには飛行能力も備わっている。
アーチャーである彼女の武装、飛行船「天舟マアンナ」。
制空権を掌握され、一方的な射撃を許すわけにはいかない。
相対するのは、飛行能力に長けた蘭子と杏。
「赤原を行け、緋の猟犬!
そして、遠距離を得意とするエミヤ。
数多の弓兵たちに引けを取らない命中精度によって行われる援護射撃。
「――――――!?」
「助かるよ。これで、いける!」
隙ができたイシュタルを、ノックバックさせる魔力弾。
威力ではなく、吹き飛ばすことが目的の一撃。
それにより、マアンナから振り落とされないようにしがみつくイシュタル。
隙が増し、決定的なチャンス。
「暗黒の炎、闇の極致たる力を受けるがいい!
黒い炎の竜巻が、イシュタルを襲う。
蘭子のスキル「ローゼンブルクエンゲルEX」によって放たれた大技。
巻き込まれたイシュタルは、なすすべも無く消滅していく。
まずは一人、敵の中で唯一飛行能力を持つ為に、倒さなければならなかった相手。
人数で勝っているために、シャドウサーヴァント一体を相手に複数人で対応する。
空中戦は、カルデアとアイドルが一勝をもぎ取った。
なお、蘭子はカッコよく叫んでいるが、別に宝具とかでは無い。
戦士のシャドウサーヴァントは、生前の技術を再現している。
あくまで再現であり、駆使してくるわけではない。
戦技を「振るう」のではなく、戦技を「振り回している」といえばいいだろう。
「――――――!!」
「――――――!?」
であるならば、単純に数こそが勝敗を分ける要因となる。
連れてきたのは、第六特異点のシャドウサーヴァント。
円卓の騎士だけで五人。
敵対する三体の戦士は、なすすべも無く敗れ去っていく。
本物のサーヴァントであれば、いかに人数に差があれど応戦できただろう。
だが、彼らがシャドウサーヴァントである以上、逆転の目は残されていなかった。
地上で行われている、女神たちとの戦闘。
その五体のシャドウサーヴァントを相手に、歴代ハサンのシャドウサーヴァントが撹乱する。
アイドル達は基本、接近戦が苦手だ。
サーヴァントの能力に、戦闘技術が付いていかない。
それを、チームワークや判断力、各々の個性でカバーする。
「にゃにゃにゃ!!」
「せーのっ!!」
「いっくぞー!☆」
縦横無尽に駆け回り、スピードをもって敵を切りつけるみく。
身の丈以上のエアギターを投影し、そのまま重力に任せて振り下ろす李衣菜。
隙が出来た敵を槍で持ち上げ、投げつける莉嘉。
近接戦闘をするクラスであるセイバーとランサーでありながら、見事に戦いをこなすアイドルたち。
「――――――!!」
味方であるシャドウサーヴァント、後方支援を行うアイドル。
シャドウサーヴァントでありながら、強大な個である女神たちを、次第に追い詰めていく。
「――――神性解放」
「私の剣は、仲間の為に!」
「行きます!
瞬間、美波の神気が膨れ上がった。
剣の意匠は、より神々しく
彼女の姿は、より美しく。
宝具「
美波の神性、「女神の神核」の最大出力。
宝具にまで昇華されたその神格は、美波に
美波は女神本人ではない。だが、彼女はヴァルキュリアとヴィーナスの神性を獲得した。
それに伴い、宝具によって
これは、平行世界における「
技術ごと継承することができるが、その使い方は本人次第。
「せい!!」
「――――――!?」
その宝具を、美波は使いこなしていた。
一定時間とはいえ、神霊に近い戦闘技能を振るうことができる。
擬似的な神性とはいえ、シャドウサーヴァントとの差は歴然としていた。
天の鎖、エルキドゥ。
その戦闘能力は、全盛期のギルガメッシュとほぼ等しい。
通常攻撃でさえギルガメッシュの「
シャドウサーヴァントになったとしても、彼自身が宝具。
神造兵器としての真名解放は、シャドウ化によって出来ず弱体化されていても、すさまじい強敵である。
それを示すように、数多の攻撃が放たれる。
「――――――!!」
「皆を守って、
智絵里の宝具が展開され、味方を守る盾となる。
だが、あまり長くは防げない。
面制圧が可能なエルキドゥを相手に、集団戦は本来悪手。
しかし、チームワークこそがこちらの武器。
いかに悪手だろうと、アイドルの力を殺すわけにはいかない。
「やああぁっ!!」
「まだまだ!!」
アルトリアとジャンヌが攻めに入り、敵の攻撃を中断させる。
「撃ちます!」
「みりあも!」
結界内部から行われる、アイドルのアーチャー達の狙撃。
だがそれも、牽制にしかならない。
敵を倒す算段が無ければ、ジリ貧となってしまう。
だが侮ること無かれ。アイドル達とてヤワではない。
→「あった?」
「見つからないです」
「こっちも――――、あっ、あった!!」
智絵里の宝具によって発生した四葉のクローバー。それを手渡す凛。
令呪にも等しいバックアップをもって、二人のアイドルが宝具発動準備に入る。
「私の、思い」
「私の、願い」
「皆と、一緒に。
雲の無いまま、吹雪がエルキドゥを襲った。
アーニャの宝具によって、吹き荒れる雪の暴風。
その分類は、対軍宝具。
強烈な吹雪は、エルキドゥの動きを止める。
「――――――!!」
しかし、そこまでだ。
アーニャの宝具は、動きを止めるまでに留まった。
致命的なダメージを、エルキドゥに与えることができない。
だからこそ、トドメとなる一撃が必要だった。
「いいとこ見せちゃうよ。飛び掛かれ!
流星群がエルキドゥを押しつぶす。
対軍宝具による連続攻撃。
故に、智絵里の宝具によるバックアップが必要であった。
「――――――!?」
最強の一角とはいえ、シャドウサーヴァント。
対軍宝具を続けざまに受ければひとたまりも無い。
今までの戦いで、最も少ない人数。
にもかかわらず、これまで以上のすさまじい戦いとなったのであった。
――――――――――
346プロダクションへ戻った一同。
休息も当然だが、魔神影柱との戦闘を前に第七特異点のシャドウサーヴァントを連れて行くためである。
気がかりなのは、第七特異点の人選。
『第七特異点の代表と言っていいギルガメッシュの不在。ティアマトを倒すキーパーソンであった、山の翁とマーリンも同じく』
もしもこの三人がいたら、もっと厳しい戦いになっていただろう。
正直、いなくて助かったという感情もある。
「だが、魔神影柱を相手にする際、この十人でもかなりの戦力になるだろう。最後の戦いに向けて、余裕ができるのはありがたい」
『でも、結界の奥に彼らを連れて行くことが出来るかは未知数だ。あまり当てにしないほうがいいかもしれないよ』
もとより、シャドウサーヴァントがなぜ味方をしているのかは不明。
もしかしたら、いつか裏切られるのかもしれない。
だが、推理を進めているホームズが危険を知らせていないのなら、彼の考えでは安全と判断したのだろう。
→「行こうか」
休息は終わった。
いつもの探索よりも時間に余裕があるため、休息に時間を当てられた。
回復系スキルもあるので、休憩の効率が良かったことも大きい。
「はい。次の戦闘は、おそらく魔神影柱です。気を引き締めていきます、先輩」
次の敵は魔神影柱。
初めて遭遇したときから、個体の戦闘力は殆ど変化していない。
情報の共有によって、多少の戦術を使ってくるぐらいだが、アイドルのチームワークのほうが数段上だ。
味方のシャドウサーヴァントもつわもの揃い。
それでいながら、油断はしない。
背中を任せられる仲間達がいる。歴戦の英雄たちがいる。
アイドルとカルデアの、最後になるかもしれない戦い。
――――――結界での戦いは、これより加速していく。