A.D.2012 偶像特異点 深夜結界舞台シンデレラ   作:赤川島起

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第16章 七つ目の試練、そして…

 突如現れる巨大な影。魔神影柱との遭遇。

 醜悪な姿がシルエットによって軽減された、九体の影の使い魔。

 戦闘能力は通常の魔神柱よりも低く、それを九体という数でカバーする。

 しかし、魔神影柱など既に敵に非ず。

 こちらのサーヴァントは、シャドウサーヴァントが十人、カルデア所属が四人、アイドルが十四人。

 シャドウサーヴァント含め、木っ端な者など一人としていない。

 既に戦闘の様相は、数の暴力と言っていい。再生しない魔神影柱など、ただの案山子だ。

 サーヴァントの何人かは、待機という現状なのだから、それも致し方ない。

 時間をかけることなく、短い間に戦闘は集結する。

 

 

 

 結界が解除される午前六時まで、あと――――二時間。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 戦闘が終わるまでが短くなった。

 シャドウサーヴァントと魔神影柱を倒してなお、数時間の余裕がある。

 個々の戦力が大きくなれば、それだけ決着がつくのが早い。

 既に見回ったところも多く、探索の時間も効率的になったのも要因だろう。

 だが、今から辺りを散策したところで、遭遇しても時間的に決着がつかない。

 魔神影柱戦が終わり、小休止をしてから346プロダクションへと戻る予定である。

 

 →「……変化がないね」

 

「はい。第七特異点と魔神影柱の戦いは終結しました。仮説が正しければ、結界に何かしらのアクションがあるべきなんですが……」

 

「……もう推理を披露してもいいだろう、ホームズ。ここで迷宮入りなど、望むところではないはずだ」

 

『……そうだね。決定的証拠はまだだが、状況証拠は既にある。なにより、説明しなければ先に進みそうに無い』

 

 七つの特異点、そのシャドウサーヴァントと魔神影柱は倒した。

 この結界が、聖杯探索(グランドオーダー)の再現であるならば、事が起こるはずである。

 全員が内心、思っている事がある。

 七つの特異点を超えたならば、そこにあるべき存在。

 だが、同時に<ruby><rb>こう</rb><rp>(</rp><rt>​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​・​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​・​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​</rt><rp>)</rp></ruby>考える。

 

 しかし、それだけはありえない(・・・・・・・・・・)と。

 

 

 

『では、私の推理を開示しよう……と言いたいところだが、その前に報告がある。――――――敵性反応だ(・・・・・)

 

 

 

 →「っ!?気をつけて、皆!!」

 

 マスターの指示通り、周囲を警戒するサーヴァントたち。

 最後の戦いか、それとも何かしらのイレギュラーか。

 シャドウサーヴァントか、魔神影柱か、はたまた全く違う敵なのか。

 

 見回した中に、近づいてくる影が見えた。

 

『!超々高速で接近する反応を感知!これは――――』

 

 ダ・ヴィンチちゃんが話し終えるより早く、一同の前に現れた一体のシャドウサーヴァント。

 

「あなたは……」

 

 一目見て、この結界の性質を一つ理解した。

 だってそうだろう、このシャドウサーヴァントがいるのであれば、全てが線で繋がるのだから。

 

 

 

 

 

 →「巌窟王……エドモン・ダンテス」

 

 

 

 

 

 巌窟王エドモン・ダンテス。

 監獄等にて行動を共にした英霊であり、アヴェンジャーのサーヴァント。

 監獄塔を除き、彼が特異点に来た事例は一つしかない。

 

 

 

 終局特異点、冠位時間神殿ソロモン。

 

 

 

 そう、この結界は聖杯探索(グランドオーダー)の再現ではない。

 終局特異点の再現(・・・・・・・・)なのだ。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 新たに現れたのは、様々な特異点で出会った英霊のシャドウサーヴァント。

 数は今までの中で、最も多い二十体。

 巌窟王、エドモン・ダンテス。

 竜の魔女、ジャンヌ・オルタ。

 極東の聖人、天草四郎。

 北欧の戦乙女(ワルキューレ)、ブリュンヒルデ。

 征服王、イスカンダル。

 神秘殺し、源頼光。

 対セイバー用決戦兵器、謎のヒロインX。

 直死の魔眼、「両儀式」。

 第六天魔王波旬、織田信長。

 新撰組一番隊隊長、沖田総司。

 風魔一族頭領、風魔小太郎。

 魔法少女、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

 その姉妹、クロエ・フォン・アインツベルン。

 大江山の鬼の首魁、茨木童子。

 三大妖怪の一角、酒呑童子。

 白き聖杯、アイリスフィール・フォン・アインツベルン。

 抑止の守護者、アサシン・エミヤ。

 エジプト最後のファラオ、クレオパトラ。

 太陽の化身の分け御魂、タマモキャット。

 女スパイ、マタ・ハリ。

 

 数の有利はこちらにある。

 質もまた、こちらのほうが上だ。

 シャドウサーヴァントは、正式なサーヴァントの劣化。

 対してこちらには、シャドウでありながら強力な第七特異点のメンバー。

 さらに、正式なサーヴァントを連れたカルデア、そして強力な能力を持つアイドルサーヴァント。

 敵にも強力なシャドウサーヴァントがいるが、それはこちらの戦力を上回らない。

 

「――――――!!」

 

 だが、それでも侮れないのが英霊なのだ。

 たしかに、総合的な能力は勝っている。

 されど、油断して仲間を失う訳にはいかない。

 

「皆さんに、力を。硝子の靴のお姫様(S(mile)ING!)

 

 卯月の宝具によって、全員が強化される。

 人数が増えた今、宝具による恩恵は非常に大きくなった。

 

「皆で一緒に!ふわふわで甘い一撃(マシュマロキャノン・ショコラティアラ)!!」

 

 かな子の宝具が発動した。

 味方と共に魔力を注ぐことで、分類すら進化する攻撃宝具。

 だがしかし、かな子の近くにアイドルはいない。

 にもかかわらず、対軍宝具として現れた砲身。

 

 その理由は、アーニャのスキル「繋いだ手の輪EX」。

 他者と魔力パスを繋げる、評価規格外のスキル。

 つまり、一ヶ所に集まって使用する必要が無くなるのだ。

 

 スキルと宝具によるコンボ。

 

 アイドルのコンビネーションは、集まるほどに真価を発揮する。

 

「デコっちゃうよ~☆莉嘉の甲虫、大集合!(DOKIDOKIリズム・ビートル)!!」

 

 巨大なカブトムシが出現し、即座に莉嘉が騎乗する。

 

「借りるにゃ、莉嘉チャン!」

 

「私もお願い。エアギターで一発おみまいするぜ!」

 

「莉嘉ちゃん、みりあも乗せてもらうね!」

 

 他のアイドル達も、それに倣う。

 莉嘉の宝具によって出現したものには、他者も騎乗する事が出来る。

 その特性を活かし、昆虫たちを乗り回す。

 上から攻撃を叩き込む李衣菜。

 時に乗り換え、己が速度をもって踏破するみく。

 近接をカブトムシに任せ、遠近両方を担うみりあ。

 アイドルの三騎士達は、その称号にふさわしい戦果を上げる。

 

いやだ、私は働かないぞ!(スローライフ・ファンタジー)

 

 多人数同士の戦闘において、杏の宝具は無類の効果を発揮する。

 直接的な攻撃力こそ持たないものの、敵を行動不能にする宝具は一斉に敵を無力化する。

 

「はぁっ!!」

 

「せいっ!!」

 

「やあっ!!」

 

「はいっ!!」

 

 その敵を、悉く切りつけていくカルデアのサーヴァント。

 そして、セイバー・新田美波(シンデレラ)

 美しき剣戟は、スキル「文武両道B+」によって修得したもの。

 カルデアのサーヴァントとの共闘を経て、自らの剣技に昇華した。

 あくまでスキルによる修得。無論、英霊と見比べれば隙も未熟さも目立つだろう。

 しかし、卯月の宝具をはじめとした、味方によって強化された美波のスペック。

 動きの鈍った敵など、必然のように打ち破ってみせた。

 

 

 

 様々な特異点で共にした英霊のシャドウサーヴァント。

 

 それを打倒し、張り詰めていた空気が緩む。

 

 だが、気の緩む暇など無い。

 

 

 

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

 

 

 

 

 

 即座に魔神影柱が現れた。

 思えばこれも、終局特異点の要因だ。

 

 72柱の魔神柱。

 

 これまで倒した魔神影柱は63体。

 この場にいる敵と合わせて、ちょうど72体。

 

 

 

 そうこれが、――――――最後の魔神影柱戦。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

「うきゃー!!来い!きらりんロボ!!」

 

 きらりの宝具が起動する。

 連戦を経て、味方の精神力に余裕はない。

 早期に決着をつけるべく、アイドルサーヴァントの中でも威力に秀でた宝具をもって当たる。

 アーニャのスキルによって魔力を貰い、召喚された「きらりんロボ」。

 即座に、巨大な魔神影柱へ向かって駆け抜ける。

 

「いっけー!はぴはぴ☆とまほーく!!」

 

 ロボのリボンが変形し、手斧(トマホーク)となって武器とする。

 近くの魔神影柱をなぎ払うが、他の個体がきらりんロボに迫る。

 

硝子の靴のお姫様(Never say never)!!」

 

 その横から、凛の宝具が魔神影柱に直撃した。

 最中、バックステップにて後退する「きらりんロボ」。

 逃げたのではない、力を溜めるためだ。

 

 

 

「それいけ!発進!鋼鉄公演きらりんロボ(きらりん☆びーむ&なっくる)!」

 

 

 

 すべてを灰にする、強力なビーム。

 超音速で敵を砕く、鋼の拳。

 質量の破壊力だけではなく、神秘も纏った真名開放は、魔神影柱の多くを打ち滅ぼす。

 残った魔神影柱も、大きいダメージを受けている。

 だがこちらも、魔力の消費は大きい。

 宝具の連続使用は、アーニャのスキルによる補助があってなお、厳しいものがあった。

 

 

 

「――――投影(トレース)開始(オン)

 

「――――憑依経験、共感終了」

 

「――――工程完了(ロールアウト)全投影(バレット)待機(クリア)

 

「―――停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)!!!」

 

 

 

 魔神影柱戦のラストは、効率よく敵を屠るエミヤに託された。

 彼の連続投影。その一斉射撃。

 的確に魔神影柱に突き刺さり、剣のサボテンとなる。

 

 

 

「――――壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!!」

 

 

 

 それが、すべて起爆した。

 どこに刺し、どこで起爆すれば、よりダメージを与えられるのか計算しつくされた攻撃。

 魔神影柱にトドメを刺し、すべての試練は成し遂げられた。

 

 

 

 

 

 現在の時刻は――――午前、六時一分(・・・・)

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 これより、道は開かれる。

 

 彼らは待っている。

 

 結界の最奥で。

 

 彼が作った結界。

 

 彼らが用意した舞台。

 

 かつての戦いの再現。

 

 シンデレラが踊る会場。

 

 

 

 その成り立ち故に、こう名乗るべきだろう。

 

 

 

 

 

 固有結界(・・・・)、深夜結界舞台シンデレラ。

 

 

 

 

 


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