A.D.2012 偶像特異点 深夜結界舞台シンデレラ 作:赤川島起
突如現れる巨大な影。魔神影柱との遭遇。
醜悪な姿がシルエットによって軽減された、九体の影の使い魔。
戦闘能力は通常の魔神柱よりも低く、それを九体という数でカバーする。
しかし、魔神影柱など既に敵に非ず。
こちらのサーヴァントは、シャドウサーヴァントが十人、カルデア所属が四人、アイドルが十四人。
シャドウサーヴァント含め、木っ端な者など一人としていない。
既に戦闘の様相は、数の暴力と言っていい。再生しない魔神影柱など、ただの案山子だ。
サーヴァントの何人かは、待機という現状なのだから、それも致し方ない。
時間をかけることなく、短い間に戦闘は集結する。
結界が解除される午前六時まで、あと――――二時間。
――――――――――
戦闘が終わるまでが短くなった。
シャドウサーヴァントと魔神影柱を倒してなお、数時間の余裕がある。
個々の戦力が大きくなれば、それだけ決着がつくのが早い。
既に見回ったところも多く、探索の時間も効率的になったのも要因だろう。
だが、今から辺りを散策したところで、遭遇しても時間的に決着がつかない。
魔神影柱戦が終わり、小休止をしてから346プロダクションへと戻る予定である。
→「……変化がないね」
「はい。第七特異点と魔神影柱の戦いは終結しました。仮説が正しければ、結界に何かしらのアクションがあるべきなんですが……」
「……もう推理を披露してもいいだろう、ホームズ。ここで迷宮入りなど、望むところではないはずだ」
『……そうだね。決定的証拠はまだだが、状況証拠は既にある。なにより、説明しなければ先に進みそうに無い』
七つの特異点、そのシャドウサーヴァントと魔神影柱は倒した。
この結界が、
全員が内心、思っている事がある。
七つの特異点を超えたならば、そこにあるべき存在。
だが、同時に<ruby><rb>こう</rb><rp>(</rp><rt>・・</rt><rp>)</rp></ruby>考える。
しかし、
『では、私の推理を開示しよう……と言いたいところだが、その前に報告がある。――――――
→「っ!?気をつけて、皆!!」
マスターの指示通り、周囲を警戒するサーヴァントたち。
最後の戦いか、それとも何かしらのイレギュラーか。
シャドウサーヴァントか、魔神影柱か、はたまた全く違う敵なのか。
見回した中に、近づいてくる影が見えた。
『!超々高速で接近する反応を感知!これは――――』
ダ・ヴィンチちゃんが話し終えるより早く、一同の前に現れた一体のシャドウサーヴァント。
「あなたは……」
一目見て、この結界の性質を一つ理解した。
だってそうだろう、このシャドウサーヴァントがいるのであれば、全てが線で繋がるのだから。
→「巌窟王……エドモン・ダンテス」
巌窟王エドモン・ダンテス。
監獄等にて行動を共にした英霊であり、アヴェンジャーのサーヴァント。
監獄塔を除き、彼が特異点に来た事例は一つしかない。
終局特異点、冠位時間神殿ソロモン。
そう、この結界は
――――――――――
新たに現れたのは、様々な特異点で出会った英霊のシャドウサーヴァント。
数は今までの中で、最も多い二十体。
巌窟王、エドモン・ダンテス。
竜の魔女、ジャンヌ・オルタ。
極東の聖人、天草四郎。
北欧の
征服王、イスカンダル。
神秘殺し、源頼光。
対セイバー用決戦兵器、謎のヒロインX。
直死の魔眼、「両儀式」。
第六天魔王波旬、織田信長。
新撰組一番隊隊長、沖田総司。
風魔一族頭領、風魔小太郎。
魔法少女、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
その姉妹、クロエ・フォン・アインツベルン。
大江山の鬼の首魁、茨木童子。
三大妖怪の一角、酒呑童子。
白き聖杯、アイリスフィール・フォン・アインツベルン。
抑止の守護者、アサシン・エミヤ。
エジプト最後のファラオ、クレオパトラ。
太陽の化身の分け御魂、タマモキャット。
女スパイ、マタ・ハリ。
数の有利はこちらにある。
質もまた、こちらのほうが上だ。
シャドウサーヴァントは、正式なサーヴァントの劣化。
対してこちらには、シャドウでありながら強力な第七特異点のメンバー。
さらに、正式なサーヴァントを連れたカルデア、そして強力な能力を持つアイドルサーヴァント。
敵にも強力なシャドウサーヴァントがいるが、それはこちらの戦力を上回らない。
「――――――!!」
だが、それでも侮れないのが英霊なのだ。
たしかに、総合的な能力は勝っている。
されど、油断して仲間を失う訳にはいかない。
「皆さんに、力を。
卯月の宝具によって、全員が強化される。
人数が増えた今、宝具による恩恵は非常に大きくなった。
「皆で一緒に!
かな子の宝具が発動した。
味方と共に魔力を注ぐことで、分類すら進化する攻撃宝具。
だがしかし、かな子の近くにアイドルはいない。
にもかかわらず、対軍宝具として現れた砲身。
その理由は、アーニャのスキル「繋いだ手の輪EX」。
他者と魔力パスを繋げる、評価規格外のスキル。
つまり、一ヶ所に集まって使用する必要が無くなるのだ。
スキルと宝具によるコンボ。
アイドルのコンビネーションは、集まるほどに真価を発揮する。
「デコっちゃうよ~☆
巨大なカブトムシが出現し、即座に莉嘉が騎乗する。
「借りるにゃ、莉嘉チャン!」
「私もお願い。エアギターで一発おみまいするぜ!」
「莉嘉ちゃん、みりあも乗せてもらうね!」
他のアイドル達も、それに倣う。
莉嘉の宝具によって出現したものには、他者も騎乗する事が出来る。
その特性を活かし、昆虫たちを乗り回す。
上から攻撃を叩き込む李衣菜。
時に乗り換え、己が速度をもって踏破するみく。
近接をカブトムシに任せ、遠近両方を担うみりあ。
アイドルの三騎士達は、その称号にふさわしい戦果を上げる。
「
多人数同士の戦闘において、杏の宝具は無類の効果を発揮する。
直接的な攻撃力こそ持たないものの、敵を行動不能にする宝具は一斉に敵を無力化する。
「はぁっ!!」
「せいっ!!」
「やあっ!!」
「はいっ!!」
その敵を、悉く切りつけていくカルデアのサーヴァント。
そして、セイバー・
美しき剣戟は、スキル「文武両道B+」によって修得したもの。
カルデアのサーヴァントとの共闘を経て、自らの剣技に昇華した。
あくまでスキルによる修得。無論、英霊と見比べれば隙も未熟さも目立つだろう。
しかし、卯月の宝具をはじめとした、味方によって強化された美波のスペック。
動きの鈍った敵など、必然のように打ち破ってみせた。
様々な特異点で共にした英霊のシャドウサーヴァント。
それを打倒し、張り詰めていた空気が緩む。
だが、気の緩む暇など無い。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
即座に魔神影柱が現れた。
思えばこれも、終局特異点の要因だ。
72柱の魔神柱。
これまで倒した魔神影柱は63体。
この場にいる敵と合わせて、ちょうど72体。
そうこれが、――――――最後の魔神影柱戦。
――――――――――
「うきゃー!!来い!きらりんロボ!!」
きらりの宝具が起動する。
連戦を経て、味方の精神力に余裕はない。
早期に決着をつけるべく、アイドルサーヴァントの中でも威力に秀でた宝具をもって当たる。
アーニャのスキルによって魔力を貰い、召喚された「きらりんロボ」。
即座に、巨大な魔神影柱へ向かって駆け抜ける。
「いっけー!はぴはぴ☆とまほーく!!」
ロボのリボンが変形し、
近くの魔神影柱をなぎ払うが、他の個体がきらりんロボに迫る。
「
その横から、凛の宝具が魔神影柱に直撃した。
最中、バックステップにて後退する「きらりんロボ」。
逃げたのではない、力を溜めるためだ。
「それいけ!
すべてを灰にする、強力なビーム。
超音速で敵を砕く、鋼の拳。
質量の破壊力だけではなく、神秘も纏った真名開放は、魔神影柱の多くを打ち滅ぼす。
残った魔神影柱も、大きいダメージを受けている。
だがこちらも、魔力の消費は大きい。
宝具の連続使用は、アーニャのスキルによる補助があってなお、厳しいものがあった。
「――――
「――――憑依経験、共感終了」
「――――
「―――
魔神影柱戦のラストは、効率よく敵を屠るエミヤに託された。
彼の連続投影。その一斉射撃。
的確に魔神影柱に突き刺さり、剣のサボテンとなる。
「――――
それが、すべて起爆した。
どこに刺し、どこで起爆すれば、よりダメージを与えられるのか計算しつくされた攻撃。
魔神影柱にトドメを刺し、すべての試練は成し遂げられた。
現在の時刻は――――午前、
――――――――――
これより、道は開かれる。
彼らは待っている。
結界の最奥で。
彼が作った結界。
彼らが用意した舞台。
かつての戦いの再現。
シンデレラが踊る会場。
その成り立ち故に、こう名乗るべきだろう。