A.D.2012 偶像特異点 深夜結界舞台シンデレラ   作:赤川島起

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最終章 スターライトステージ 2

 346プロダクション全プロデューサー。

 彼らが結界の基点であり、欠片となった時間神殿をシンデレラの城へと無意識に作り変えた者達。

 故に、アイドル達はその縁をもって召喚された。

 全てのプロデューサーのもとにいる、全てのアイドル達が。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

「若い子達が頑張ってるんだもん。大人の私達がちゃんとしないとね」

 

「同感。年下の子たちに任せっきりだなんで、大人失格よ」

 

「ええ。気合を入れていきましょう」

 

「普段は流されてばかりな私ですが、ここは頑張らなきゃですね」

 

 346プロダクションの中でも、大人のお姉さんに分類されるアイドル達。

 川島瑞樹、片桐早苗、高垣楓、三船美優。

 

「ところで、楓はお得意のギャグは封印なのかしら?」

 

「ひどいです早苗さん。まるで私が、駄洒落を得意としているみたいじゃないですか。そんなに私、得意(・・)がっていませんよ」

 

「いや、言ってるじゃないの。それにイマイチ」

 

「厳しい評価ですね、瑞樹さん」

 

 戦いを目の前にして、落ち着いた様子の四人。

 昂ぶる様子も、怖がる様子も見えない。

 年長者が取り乱しては、年下の者達が不安に感じてしまう。

 

 だからこそ、彼女達はいつもどおりなのだ。

 

 軽口を叩きながらも、目の前の存在からは目を離さない。

 強大な敵を前に、彼女達は動じない。

 

「もういいです。早苗さんと瑞樹さんなんて知りません」

 

「拗ねないの。謝るから。気合入れるんでしょ」

 

「私も、イマイチって言って悪かったから」

 

「機嫌、直してください。楓さん」

 

「ふふっ。良いんですよ美優さん。あわてたお二人を、見たかっただけですから」

 

「あー!ひっどーい!」

 

 ……少々気を抜きすぎな感じもするが。

 もはや、空気が緩くなっている。

 いつまでも続きそうな、彼女たちのやり取り。

 

 

 

「もう、楓ったら。私たちをおちょくったんだから、――――ちゃんと戦うのよ」

 

 

 

 だがその時、突如空気が締まった。

 ピリピリと感じる気配。

 いや、魔力――――。

 

「もちろんです。私だってシンデレラガールズの一員なんですから」

 

「それを言うなら、あたし達もよ。どんな相手だろうと逮捕しちゃうんだから!」

 

「プロデューサーさんを助ける為です。絶対に、取り戻しましょう」

 

 サーヴァントになって、一段と頼りになる大人アイドル達。

 彼女たちは、敗北など微塵も考えてなどいない。

 

 そんな頼もしい大人たちに、少女たちは続いていく。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

「フフーン!カワイイボクが来たからには、大勝利間違い無しですよ!」

 

「全く持ってその通り!あたし達『KBYD』が来たからには、ホームラン間違いなし!」

 

「幸子はん、友紀はん。落ち着きや。気合入れすぎても、空回りになってしまうどす」

 

 気合十分な二人のアイドルと、それをたしなめる一人のアイドル。

 輿水幸子、姫川友紀、小早川紗枝の三人組ユニット、「K(カワイイ)B(ボクと)Y(野球)D(どすえ)」。

 バラエティ番組に出る機会の多い人気ユニットである。

 

「大丈夫ですよ、紗枝さん。ボクは冷静ですよ!ボクのプロデューサーさんを、取り戻す為ですから!」

 

「そうそう。あたしも、バットでかっ飛ばさなきゃ気が済みそうに無いし!」

 

 口では落ち着いていると言いながら、むしろヒートアップしている幸子と友紀。

 そんな様子を見た紗枝は、水を差すのをやめたらしい。

 

 ――――なにより、紗枝もまた二人と同じ気持ちなのだから。

 

「……まあ、やる気満々な様子でいい事やと思うことにしやす。うちも、プロデューサーはんを勝手に連れられて、……いささか腹立たしく思ってやすしなぁ……」

 

 この場にいるアイドル達に、プロデューサーを利用されて怒りを感じていない者などいない。

 理由はどうあれ、ソロモンの固有結界に囚われている事は、紛れも無い事実。

 

「カワイイボクが、カワイイサーヴァントになったんです!今のボクに、不可能なんてありませんよー!!」

 

「敵は強大!なら、目指すは逆転!サヨナラホームラン、かましていくよー!!」

 

「ならうちも、お二人はんに続いて気張るとしやす~。『KBYD』一丸となったら負ける気なんて、さらさらありまへんどす」

 

 気合もやる気も不足なし。

 サーヴァントになったことで、力も湧いてくる。

 皆と一緒にいるから、こんな恐怖なんてたいしたこと無い。

 

 

 

 一人で飛ぶバンジージャンプのほうがよっぽど怖かったのだから。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

「うう……。もりくぼ、怖いです……。でも、帰りたくもないんですけどぉ……」

 

「だらしないぞ、ノノ!ここは敵に向かって、引っかいてやる所だ!でも、帰りたいって言わなかったのはエライと思うぞ!」

 

「フヒヒ……、美鈴ちゃん、すんごいやる気だね……」

 

「ふふふ。まゆも、すっごーく、ヤル気ですよ♪」

 

 恐怖を殺しながら、勇気を振り絞る気弱なアイドル、森久保乃々。

 そんな乃々を激励する、鉤爪を携えたアイドル、早坂美鈴。

 内向的でマイペースなキノコアイドル、星輝子。

 静かでありながら、激情が溢れている様子を見せるアイドル、佐久間まゆ。

「インディヴィズアルズ」と「アンダーザデスク」のメンバーたちである。

 

「さすがのもりくぼも、ここは逃げちゃいけないと思ってますからぁ……」

 

「そうだ!ここは逃げちゃいけない。ここで逃げたら、絶対に一生後悔する。少なくともウチは、アイドル人生に後悔なんてしたくない!」

 

「私も、同じ……。でも、私たち以上に…まゆさんは…気持ちが強そう……」

 

「あら、そう思われます?でも、そうですね。――――――まゆのプロデューサーさんを取り戻す為なら、どんなこと(・・・・・)でもします。うふふ……」

 

 事件の元凶はあくまで、意思無き結界の欠片である。

 だが、そうであろうと無かろうと、せん無きことだろう。

 

「怖いけど…、逃げたくない……。こ、こうなったら、やけく… やけくぼですけどぉぉぉーーーー!!」

 

「ノノもやる気だ!ウチも引っかいて引っかいて、引っかきまくってやるぞ!」

 

「私も…気合、入れなきゃ。――フヒヒ、フハハ、アッハッハ!ヒャッハアアアァァァ!!ゴートゥーヘールッ!!」

 

「アイドルの皆やプロデューサーさんのためですから。――――――邪魔です♪」

 

 テンションを上げ、自らを奮い立たせるアイドル達。

 テンションの方向性こそ違うが、気合ではある意味一番なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

「全・力・疾・走です!!」

 

「どこを走るつもりなの?茜ちゃん」

 

「言葉の綾です!!私の気合が全力疾走です!!」

 

「先走った、って言いたいのかな?」

 

 熱血とゆるふわ、対照的な雰囲気を持つ少女たち。

 未央とのユニット、「ポジティブパッション」のメンバー、日野茜と高森藍子。

 前言を撤回しよう。

 この場における一番の気合を持つアイドルは、茜で間違いない。

 

「仲間を助けるこの瞬間!今の私は、未だかつて無いほどに燃えていますよー!!」

 

「茜ちゃん?」

 

「届け歌声! 燃やせ友情! 響け歓声!取り戻せプロデューサー!私たちの気合、未央ちゃんに伝われー!」

 

「お、落ち着いて、茜ちゃん!」

 

「ボンバーーーー!!」

 

 なにやら、茜の後方で特撮のような爆発が起こったような気がする。

 気がするだけで、実際にはそんなこと起こっていないのだが。

 そう思ってしまうほど、今の彼女は熱血乙女なのだ。

 

「茜ちゃん!!落ち着いて!!」

 

「うわぉっと!?」

 

 珍しく大声を出した藍子。

 やる気があるのはいいのだが、空回りしては意味がない。

 バーサーカークラス故のことかもしれないが、注意は必要だ。

 

「熱くなるのも悪くないけど、ちゃんと考えて動かないとダメだよ。ここには茜ちゃんだけじゃなくて、皆がいるんだから」

 

「藍子ちゃん、ごめんなさい!それとありがとう!皆に迷惑をかけては意味がないですからね!一致団結です!」

 

 人数が増えたからこそ、チームワークが重要になる。

 茜もチームプレーの大切さは知っている。

 一心同体、一蓮托生。

 同腹一心、三位一体。

 さすれば彼女達に敵はなし。

 

「分かってくれたのなら。さあ、私たちも行きましょう!」

 

「私たち『ポジティブパッション』!!未央ちゃん達と一緒に戦います!!」

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 神谷奈緒、北条加蓮。

 凛と一緒に活動するユニット、「トライアドプリムス」のメンバーたち。

 今までのアイドル達と異なり、彼女達は感傷浸っていた。

 

「……加蓮。凛は、ここまで頑張ってきてたんだよな……」

 

「そうね。私達はさっき召喚されたばかりだけど、凛は厳しい戦いを乗り越えてここにいる。……やっぱり、すごいね……」

 

 召喚されたときに得た、これまでの戦いの記録。

 それを知ったとき、彼女達が凜に抱いた感情は、――――先達者への情景。

 立派にサーヴァントをやっているチームメイトに対する羨望と、ほんの少しだけの嫉妬。

 

「ああ、凛はすごい。でも、あたし達だって負けちゃいられない!」

 

「そうだね、奈緒の言うとおり。サーヴァントだとしても、アイドルと名のつく以上はやってみせる!」

 

 羨望も嫉妬も、彼女達は自らを動かす燃料に変える。

 アイドルへの思いは、人一倍強い。

 どんな形であろうとも。

 

「あたし達『トライアドプリムス』!!」

 

「アイドルにかける想いは、誰にも負けない!!」

 

 凛が先に行っているのならば、追いかければ良い。

 どうせなら追い抜いてやろう。

 凛ならきっと、悔しがってもすぐに追いついてくれるだろうから。

 

「加蓮にだって負けないからな」

 

「それはこっちのセリフだよ」

 

 「トライアドプリムス」。

 チームメイトでありながら、ライバルでもある。

 彼女たちは仲間だからこそ、負けたくないのだろう。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

「卯月ちゃん達やカルデアの人達。ここはしっかり、応援しなきゃ。頑張ろうね響子ちゃん!」

 

「うん、ここが正念場だよ。今来たばかりの私たちじゃ、説得力は無いかも知れない。でも、卯月ちゃんみたいに頑張らないと!」

 

 彼女達の名は、小日向美穂、五十嵐響子。

 卯月と共に、「ピンクチェックスクール」で活動するアイドル達。

 

「それに、お礼もしたいから……」

 

「響子ちゃん?」

 

「シンデレラガールコンテストの時、マシュさんが私たちの歌を選んでくれた。たくさんある曲の中から、私たちの歌を」

 

「……うん。私もあのコンテストを見て、とても嬉しかった。――――マシュさん、すっごく楽しそうに歌ってくれたから……」

 

 歌の巧拙の問題ではない。

 言うなれば、あのステージに立つマシュの「笑顔」に心奪われた。

 楽しそうに、もっと歌いたそうに。

 そんな表情で、自分たちの曲が歌われていた。

 

 アイドルとして、嬉しくないはずがない。

 

「だからって訳じゃないけど、全力で皆を応援するよ!五十嵐響子、頑張ります!」

 

「うん!小日向美穂も頑張ります!」

 

 満面の笑顔。

 卯月とは違う、彼女たちだけが持つ笑顔。

 

 笑顔のアイドル達の応援が皆に届く。

 

 ――――――最高の、笑顔と共に。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 ソロモンが蠢く。

 一気に体積が膨張し、後方に魔神影柱を従える。

 命令一つで、魔神影柱そのものを武器として放ってくるだろう。

 

 だが、もう恐れはしない。

 

 背中を預けるのは、200人近いアイドルサーヴァント。

 

 仲間が増えるほどに、頼もしくなるアイドルたち。

 

 恐怖など、もはや微塵も感じてなどいやしない。

 

 

 

 →「行くよ、皆!」

 

 

 

 

 

『はい!』

 

 

 

 

 

 真の最終決戦が今、幕を開けた。

 

 

 

 

 

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