A.D.2012 偶像特異点 深夜結界舞台シンデレラ   作:赤川島起

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シャドウソロモンに対する特殊効果

「アイドルサーヴァントの応援」
毎ターンスターを獲得&毎ターン敵に固定ダメージ


最終章 スターライトステージ 3

 グランドサーヴァント。

 通常のサーヴァントよりも一段階上の霊基を持つ英霊。

 七つの人類悪に対して世界が召喚する英霊の頂点にして、始まりの七つ。

 相手が冠位のシャドウサーヴァント。

 

 否。

 

 グランドキャスターの足跡に過ぎないとしても、その力は通常のサーヴァントはおろか魔神柱ですら凌駕する。

 

 →「大技、来るよ!」

 

「はい!」

 

 的確な指示をもって、シャドウソロモンへと食い下がる。

 加えて、大勢のアイドル達の援護。

 アイドルサーヴァントは、仲間が増えるほどに大きな力を発揮できる、

 

 卯月のスキル、「絶えない笑顔EX」。

 きらりのスキル、「にょわにょわーるどEX」。

 莉嘉のスキル、「カリスマJC EX」。

 みりあのスキル、「立派なお姉ちゃんEX」。

 かな子のスキル、「おかしな国のおかし屋さんEX」。

 李衣菜のスキル、「ロックな生き様EX」。

 アーニャのスキル、「繋いだ手の輪EX」。

 美波のスキル、「アイドルのリーダーEX」。

 

 これらは、味方を補助するスキル。

 チームでこそ、本領を発揮する。

 

 凛のスキル、「夢への憬れEX」。

 未央のスキル、「やらかしリーダーEX」。

 蘭子のスキル、「ローゼンブルクエンゲルEX」。

 杏のスキル、「ニート願望EX」。

 智絵里のスキル、「チェリーエンジェルEX」。

 みくのスキル、「マジメネコチャンEX」。

 

 これらは、彼女達自身を強化するスキル。

 どれも強力だが、単体では真価を発揮しにくい。

 だが、仲間からの援護によって驚異的な力となる。

 

 アイドルサーヴァントの本領にして、最大限。

 全アイドルによる総力戦は、シャドウソロモンに食い下がる。

 

 

 

「――――――――!!」

 

 

 

 だが、あくまで食い下がるだけだ(・・・・・・・・)

 

 侮るなかれ、相手は痕跡に過ぎないとしてもグランドサーヴァント。

 影からの驚異的な出力は、全アイドルの援護があって初めて相殺できる。

 後退こそしないが、前進も出来ない。

 このままではいずれ、こちら側の魔力が先に尽きる。

 相手もまた、正規のグランドサーヴァントでない以上、この出力を維持すればいずれ尽きる。

 

 だが、それはいつ?

 

 五分後か?三十分後か?一時間後か?

 

 はたまた一日後か?一週間後か?一ヵ月後か?

 

 ゴールの見えないマラソンは苦痛だ。

 明確な終わりがわからないというのは、それだけで絶望感を煽る。

 味方の精神とて脆弱ではない。

 が、この作業(・・)は、ゴリゴリとやすりのように心を削っていく。

 

「――っ!負けない!美の女神たる戦乙女(ヴィーナスシンドローム)!!」

 

 果敢に攻めるアイドル。

 

「ミナミっ!アーニャも。―――星空へと希う郷愁(Nebula Sky)

 

 後方から支援するアイドル。

 (みな)、削れてゆく集中力に抗って奮戦する。

 この状況下では、肉体的なダメージは回復が効く。

 それよりも問題となるのは、精神力へのダメージ。

 

「志希ちゃんの~、ケミカルポイズン!!」

 

「フレちゃ~ん、アターック!!」

 

 ああこの中で、ブレない彼女たちの様子こそありがたい。

 いつもどおりの彼女達が、他者の心を支えてくれる。

 

「っ――――」

 

 だが、彼女たちとて人の子だ。

 磨耗しない精神など存在しない。

 疲れもある、恐怖とて無くなったわけではない。

 

「絶対、絶対に――――強くて可愛い、猫チャンパワー!(チャーミングビースト・キャット)

 

「これが、私のロック――――心をこめてロックを歌おう(Beating my heart)!」

 

 負けたくない、負けてたまるか。

 このまま終わりたくない、皆がいるんだ、プロデューサーを取り戻すんだ。

 だから頑張る、頑張れる。

 

 

 

 

 

 ああ。

 

 ――――、早く終わって欲しい。

 

 

 

 

 

 とは思わない(・・・・・・)

 それだけは、己の心に巣食うのは許さない。

 弱気とは違う。

 負ける気だけは、何があっても抱かない。

 

 

 

 負ける気だけは、何があっても――――――。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

「何やってんの!!」

 

 

 

 一喝。

 

 

 

 激しい戦闘の最中、美嘉の声が響き渡る。

 

「美嘉さん!?」

 

 戦闘中に、意識を逸らすという蛮行。

 攻勢を捨て、守りへと移行することで事なきを得る。

 しかし、それもいずれ限界が来る。

 攻撃を捨てた分相手の消費も遅くなり、より終わりが遠ざかる。

 

 だがそれでも、美嘉には伝えなければいけない事があった。

 

 

 

「皆、負けない気でいたでしょ。絶対に負けたくないって思ってるよね」

 

 

 

 そうだ、今まで負けない気でいた。

 負けてたまるかと、皆一様に奮起していた。

 

 

 

そうじゃないでしょ(・・・・・・・・・)!?負けない気でいるんじゃダメ!勝つ気(・・・)でいなきゃいけないの!!」

 

 

 

 負けないのではなく、勝つ。

 強大な相手に対峙して、徐々に削れていったが故に足りなかった感情。

 心が削れる?それがどうした。削れたのなら作り直せ。

 美嘉もまた、自身の弱気を感じていた。

 だからこそ、自分が言い出さなければいけないと思った。

 

 

 

「絶対勝つ!みんなの気持ちを、それで一つにするんだよ!!」

 

 

 

 アイドル達にも、様々な視点がある。

 一喝されて、弱気な心を払拭したもの。

 叱咤される前から、勝つ気しかなかったもの。

 流れが切り替わったと感じる、カルデアの面々。

 だが、美嘉の言葉によって、全員が意思を共にした。

 アイドル達が一つになった。

 

 

 

 

 

 ドクンッ。

 

 

 

 

 

 鼓動が、鳴った。

 

 

 

 

 

 カラーン。

 

 

 

 

 

 鐘の音が響いた。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 カラーン、カラーン、カラーン。

 

 鐘が鳴っている。

 甲高い、遠くまで響き渡りそうな音が。

 

 →「一体、どこから!?」

 

 警戒する立香。

 この音は結界の終わりに似ている。

 まさか結界が崩れようとしているのか?

 

 いや、違う。

 

 この音は結界から聞こえているのではない。

 アイドル達から共鳴するように響いている(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「あっ――――」

 

 アイドル達は、それ(・・)が何か理解した。

 頭で、ではない。

 感覚で、とも少し違う。

 

 

 

 言葉にするなら、本能で(・・・)理解した。

 

 

 

 本能で、サーヴァントが理解できるもの。

 

 それすなわち、――――宝具である。

 

 

 

 

 

 ステージが、誕生した、

 

 それは、あまりにも巨大だった。

 結界のバック、背景のように現れた。

 日本はおろか、世界にだってこれほどの集客数を誇る会場は無いだろう。

 

 

 

 合体宝具、「魔法をかけられた女の子(シンデレラガールズ)

 

 

 

 アイドル達の意識を共有したことによって発現した、新たな宝具。

 その原因は、スキル「陣地作成(場)C+++」。

 アイドル達全員(・・)が持つスキル。

 シンデレラが輝く舞台、ライブ会場などを作成する。

 その効力は、複数人(・・・)で行うことで増していく。

 

 そう、ここにいるのは全てのアイドル(・・・・・・・)

 

 全てのアイドルがこのスキルを発揮することで、宝具の域にまで到達した。

 

 

 

「――――――よし!」

 

 

 

 それを言ったのは誰だったか。

 だが、アイドル達が思ったことを吐露している。

 そうここは、アイドル達が最も力を発揮できる場所。

 

「これ、は?」

 

「私達も、恩恵を?」

 

「卯月さんの、宝具……」

 

 その効果を受けたのは、アイドルたちだけではない。

 カルデアの女性陣も、その恩恵を享受する。

 ここは、シンデレラが最も力を発揮できる場所。

 そう、カルデアもまた、卯月の宝具によってシンデレラの霊基が継ぎ足されている(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 相性による効き目の強弱は別にして、その効力は三人に及んでいる。

 卯月の宝具、「硝子の靴のお姫様(S(mile)ING!)」。

 シンデレラの霊基を継ぎ足して、他者のステータスを強化する宝具。

 残っていた、もう一つの謎。

 いつまでも続く、卯月の宝具による衣装変化(きょうか)

 

 

 

 それは、この固有結界・深夜結界舞台シンデレラによる副作用。

 

 プロデューサーが作り上げた舞台には、シンデレラがいなければならない。

 

 シンデレラになったのならば、結界の基点であるプロデューサー達によってそうあり続けることになる。

 

 

 

 さあ、本当の意味で舞台は整った。

 ここからが本領発揮。

 全力全霊の舞台をお見せしよう。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

「――――――!!」

 

 強化されたシンデレラに対応するかのように、シャドウソロモンが変質する。

 

 いや、違う。

 

 変質ではない、元に戻っている。

 だってそもそも、彼は魔術王ソロモンに非ず。

 変化した影が、新たなヒトガタを作り上げる。

 

 

 

「――――――。」

 

 

 

 人類悪の影、シャドウゲーティア。

 ソロモン王の遺体を利用し、受肉した召喚式そのもの、――――の痕跡。

 この結界は、かつての戦いを機械的に再現する。

 だからこそ、この変化は必然だ。

 

「まさか……このあと……」

 

 マシュが予感する。

 そうだ、敵がゲーティアで、戦いを再現するのならば。

 宝具「誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロモニス)」が来る。

 

 

 

 

 

「――――――。」

 

 

 

 

 

 ことはなかった。

 そう、シャドウ化による共通点。

 影となったものに、宝具は使えない。

 装備ならともかく、真名解放など不可能。

 

 だが、だからと言って安心できない。

 

 影と言えども、七つの人類悪の一つ、『憐憫』の理を持つ第一の獣・ビーストⅠ。

 出力も保有魔力も、あの時とはだいぶ劣る。

 そうだ、あの戦いを制したのも、一人の力だけではない。

 

 

 

 だって、ゲーティアを倒す最後のピースは――――――。

 

 

 

 →「えっ?」

 

「う……そ……」

 

 

 

 ()は、そこに現れた。

 そうだ、ここにいる影達は座からの召喚ではない。

 ならば、()が現れることに不思議はない。

 

 

 

 

 

「………………。」

 

 

 

 

 

 ロマニ・アーキマン、通称Dr.ロマン。

 またの名を、魔術王ソロモン。

 ゲーティアを倒した最後のピース。

 

 

 

 

 

「――――――。」

 

 

 

 

 

 だが、シャドウゲーティアは慌てない。

 今の魔術王ソロモン(ロマニ・アーキマン)はシャドウサーヴァント。

 ゲーティアを倒す決定的な宝具「訣別の時来たれり、其は世界を手放すもの(アルス・ノヴァ)」。

 シャドウサーヴァントである為それも使用できない。

 

 

 

「ドクター……」

 

 →「……ロマン」

 

 

 

 だが、そんなの関係あるもんか。

 この状況下で、奮い立たないカルデアではない。

 

「そうです。ドクターと一緒なんです!」

 

 →「やっと、一緒に戦える!」

 

 人理修復の旅路において、ついに実現しなかったDr.ロマンとの共闘。

 影だから?痕跡だから?

 分かっている。

 でも、この場にいるシャドウソロモンは、Dr.ロマンが刻みつけたもの。

 つまり、彼の意思だ。

 今のカルデアは、ドクターの意思と共にある。

 

 

 

 影の魔神王、擬神王ゲーティアとの戦いが始まった。

 最終決戦の終幕は近い。

 

 

 

 

 

 人類悪 陰影

 

 

 

 

 




マテリアルが更新されました。

島村卯月
プロフィール:〔最終章 スターライトステージ 3〕をクリアで開放。

補足 宝具:硝子の靴のお姫様(S(mile)ING!)

彼女が他者をアイドルの仲間に誘ったエピソードによって、女性に対してシンデレラの霊基を譲渡する性質を持つ。
深夜結界舞台において、この宝具の衣装変化は持続する。もとより、核となっているPがシンデレラを導く魔法使いであるため、味方をシンデレラにするこの宝具の魔法は時が来るまでで解けることはない。

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