A.D.2012 偶像特異点 深夜結界舞台シンデレラ   作:赤川島起

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今回登場するアイドルには、サーヴァントの設定が未決定の場合もあります。
クラス、宝具などの質問は、お答えしかねますのでご了承ください。


アイドル達のカルデア生活
番外編 アイドル達のカルデア生活


 カルデアには、様々なサーヴァントが所属している。

 神話の英雄に過去の偉人。

 恐れられた怪物に大罪人。

 神様そのものや、AIですらサーヴァントとして現界している。

 その中でも、異彩を放つサーヴァントたちがいる。

 

 そう、346プロダクション所属のアイドル達である。

 

 わけあってカルデアへと召喚された彼女達であるが、個性的なサーヴァントたちとの交流や生活を行っている。

 その一部を、ご覧に入れよう。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 Side シミュレーションルーム

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ…………。今のところ、もう一回通しでやりましょう」

 

「OK。私もステップが気になってたから」

 

「私も『間』がうまくいかなくて、しまむーの言うとおり、もう一回やろう!」

 

 汗だくのジャージ姿で、もう一度ミュージックを流して踊り始めるニュージェネレーションズ。

 戦闘訓練とは違う、彼女達の本職であるアイドルとしての訓練。

 もちろん、彼女達がレッスンを行っているのにはちゃんとした理由がある。

 

 一つ目、スキル「真のアイドルA+」

 

 他者に自己の存在を知らせることで、信仰心を集め強化するスキル。

 その性質上、新たな特異点では彼女達の本領が発揮しにくい。

 人々にアピールすることは、彼女たちにとっては自身が強くなることと同義なのだ。

 

 二つ目、コミュニケーションツールとして

 

 歌や踊りは文化や思想が違っても、思いをストレートに伝える事ができるコミュニケーションツール。

 第七特異点のような、大勢の味方と長期間過ごす場合には有効な手法。

 加えて、沈んでしまった士気を高めることもできるだろう。

 

 三つ目は、まあ、ただの習慣。

 

 彼女達の生活に含まれていたレッスンは、モチベーションを維持する為にも続けていたのだ。

 定期的にミニライブも行っており、お祭り好きなサーヴァントが観客として参加することもある。

 

 さて、アイドルたちには純朴だったり、常識的な者が多い。

 カルデアで最も近い気質を持つ者でたとえるなら、アルトリア・リリィやイリヤスフィール。

 穢れを知らない彼女達を影から見守ったり、近づき難いと感じる者もいたり。

 

 

 

「ふふふ、純粋でカワイイ子達だなぁ。ぬいぐるみのオイラなら、いい目を見れる!」(くわぁ!)

 

「うむ!純粋ということは生娘ということだ!そんな彼女たちには是非、夜のお相手をしてもらいたい!」

 

 

 

 逆にどうにかお近づきになろうと画策する者達もいる。

 自らの欲望に忠実なカルデアの性欲問題児。

 

 アーチャー、オリオン。(アルテミスの付属品)

 セイバー、フェルグス・マック・ロイ。

 

 彼らの辞書に自重という言葉は無く、言動からしても彼女達にとっては確実に有害。

 ここら辺のところは、(逸話や気性はともかく)紳士的である円卓の騎士の方が幾分かましである。

 

「では、早速声をかけるとしよう!」

 

「おう!アルテミスが来る前にな!」

 

 

 

 

 

「そこまでです!二人とも止まりなさい!」

 

「罪状は、言う必要はありませんね?」

 

「おとなしくしててもらうわよ」

 

 肩を捕まれ、動きを止めざるを得ない二人。

 彼らに声をかけた三人。

 

 ジャンヌ・ダルク。

 天草四郎。

 聖女マルタ。

 

 カルデアの秩序を司る治安維持隊、――――ルーラー警察である。

 

「そんなに体力が有り余っているなら、是非お相手したいと仰ってましたよ――――スカサハさんが」

 

「オリオンにも声がかかってますね、――――レオニダス達のマッスル組から」

 

「アルテミスやランサーの頼光じゃないことを幸運に思うことね」

 

「いや、それは絶対……違う、お誘いだと思うのだが……」

 

「いやだ!そんな暑苦しくて汗臭いとこなんざ行きたくねぇ!」

 

 問答無用というばかりに、強制的に連行される罪人二人。

 幸か不幸か、ミュージックを伴ったレッスンであり、集中していた三人はこのやり取りに気づくことは無かった。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 Side カメラマン

 

 

 

 

 

 シミュレータールームを応用した撮影会場。

 アイドル達の経験談のもと、資料も参考に忠実に再現している。

 カルデアでもアイドルとして納まっている彼女達の写真は、高い需要がある。

 アイドル達も慣れているからか許可した為、こうして定期的に撮影会が開かれている。

 ただし、入ることを許されているのは認められた人物および関係者のみである。

 

「こちらに目線をお願いします」

 

「はーい!かぅわいく撮ってにぃ!」

 

 カメラを構えるのは、聖ゲオルギウス。

 カルデアに来てから、カメラが趣味だった彼はすぐこの立ち位置に収まった。

 礼儀正しい聖人の為、必然とも言える。

 

 そんな彼が撮る相手は、諸星きらり。

 

 長身でモデル体形のアイドルで、可愛いものが大好き。

 着ている衣装も、リボンやフリフリが多く付けられている。

 ちなみに、ヴラドとメディアの合作である。

 メディアにとってみればきらりは守備範囲外なのだが、趣味が合ったらしく好意的に製作してくれている。

 むしろ全アイドルの服飾担当になろうかという勢いだ。

 

「あの、ホームズさん」

 

「なんだい?マシュ嬢」

 

「きらりさん、……ほかのアイドルさんも含めて、ゲオルギウスさんがカメラマンになるのは理解できるんですが……」

 

 

 

「こっちも可愛く撮ってね~。杏を撮るんだから、ちゃんと一発OKしてくれなきゃ困るよ~」

 

「デュフフ、了解ですぞ!杏ファン垂涎の出来にしてみせようぞ!」

 

 

 

「…………なんで黒髭さんまで担当しているんですか?」

 

 マシュの目線の先にいるのは、双葉杏と海賊黒髭。

 有害筆頭とも取れる黒髭がなぜ関係者となっているのか。

 写真技術はあるだろうが、当然の疑問である。

 

「目の届くところで監視できるから、だね。下手に隠れられて盗撮されるよりは、公式カメラマンとして採用したほうがリスクが少ない」

 

 加えて、アイドル達が黒髭自体を許可していることも大きい。

 彼女達にしてみれば、黒髭も間違うことなきファンであり、彼の言動にも仕事柄慣れている。

 無論、根が悪人である黒髭が暴走する可能性は否めない。

 だが、公式カメラマンとして採用されているということは――――。

 

「問題を起こせば、その地位を剥奪ということですね……。アメとムチですか」

 

「その通り」

 

 かくして、カルデアの写真の需要は満たされるのであった。

 

 補足だが、流石の黒髭も地位を失うことを恐れたのか、比較的平和に撮影は続いていったことを追記しておく。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 Side ライブ

 

 

 

 

 

 少女二人が倒れていた。

 カルデアにおいて、恐れられているそれ。

 新人であるが故に、それを知らなかったことによる大きすぎる被害。

 

 

 

 そう、ネロ&エリちゃんのコンビライブの犠牲者である。

 

 

 

「どうよ!すばらしすぎて気絶するぐらいでしょ!」

 

「うむ!至高の芸術たる余と、アマチュアながら見所のあるエリザベートのライブ!これはもう、トップアイドルといっていいレベルであろう!」

 

 ルックス、という意味ならば文句は無いだろう。

 ダンスも高い身体能力からか、筋は悪くない。

 

 しかし、彼女たちは致命的に――――音痴なのである。

 

 

 

「――――にゃ」

 

「ん?何?」

 

「もう一度言うがよい!」

 

 

 

 

 

「みくたちを殺す気かにゃあああぁぁぁ!?」

 

「カワイイボクを殺す気ですかあああぁぁぁ!?」

 

 迫力を持った大声で二人に詰め寄るアイドル達。

 猫系アイドル、前川みく。

 自称カワイイ、輿水幸子。

 今回のライブの犠牲者はこの二人のアイドル。

 なお、ギャグ補正がなければ即死だった――――かもしれない。

 

 

 

「ちょっとちょっと!私達のライブに文句があるっての!?」

 

「然り!いかにそなた達がプロとはいえ、納得がいかぬ!」

 

 

 

 

 

 プツンッ。

 

 

 

 

 

「ああそうかにゃぁ……、じゃあ、納得がいくよう説明してやるにゃあ!」

 

「ボクも同感です!この二人に、アイドルが何たるかを教えなきゃ気がすみません!」

 

 全くもって、当然の怒りである。

 

「まず第一に、ファンを楽しませようする気が全く見えにゃい!」

 

「何を言うか!?至高の芸術たる余のステージ!これを見て楽しまないものなどいるはずがなかろう!」

 

「そうよ!全世界のアイドルたるこの私のステージを楽しまない豚共なんて、いるはずがないでしょうに!」

 

「論!外!です!」

 

 声を張り上げるみくと幸子。

 彼女達のプロとしての意識は高い。

 そんな彼女達がこんな(・・・)ライブを認めるわけにはいかなかった。

 

 

 

「じゃあ!ちゃんとファンのことを見てるのかにゃ!?」

 

 

 

 どんな反論でも受け付けない。

 そういう姿勢だったネロとエリザベートは二の句が継げなかった。

 

「自分だけが楽しみたいならカラオケにでも行ってて下さい!ファンの方たちは、ボクたちがちゃんとファンのことを見ているか、気づいてくれているんです!」

 

「ファンの人たちに、勝手に楽しんでもらおう(・・・・・・・・・・・)なんて傲慢、通るとでも思ってるのかにゃあ!?」

 

 彼女達のプロ意識は高い。

 確かに、アイドルとして恵まれていたのは運も才能もあっただろう。

 しかし、彼女達が一番重視したのは―――ー努力。

 

 ファンの人達に楽しんでもらう努力を、彼女たちは積み上げてきたからこそプロのアイドル(・・・・・・・)なのだ。

 

「――――――わかったわ。悔しいけど、プロとしての意識はアンタ達の方が全然上みたい」

 

「うむ……。余にも思うところがある……。アイドルを甘く見すぎていた余たちが悪かった」

 

「ふんす!わかってくれればいいにゃ!」

 

 カルデアの職員やサーヴァントたちから見れば驚愕の光景だろう。

 あのネロとエリザベートが己の実力不足を受け入れた。

 一重に、彼女達がその道を進む、「真のアイドル」だから。

 スキルとは関係ない、彼女達のプロ精神。

 

「じゃあ、やることはわかってますね?アイドルの心得その2――――基礎レッスンです!」

 

「うん!アタシたちの指導、よろしくお願いするわ!」

 

「うむ。いつか、共にステージ立てるよう研鑽を重ねるとしよう!」

 

 道のりは険しい。

 指導も苦労するだろう。

 だが、今、確実に彼女たちは進歩したのだ。

 

 

 

 

 

「あれ?李衣菜ちゃんは?」

 

「まさかまだ倒れているのかにゃ――――」

 

 

 

 後ろを振り向くと、そこにはちゃんといた。

 ロックなアイドル(を目指している)、多田李衣菜。

 

 なぜかさわやかな汗を流して、握手していた。

 

 

 

「すごかった!超ロックだったよ!まさか、あの織田信長が女の人で、しかもこんなにロックだったなんて!」

 

「うはは!そうじゃろそうじゃろ?じゃが、お主のエアギターも見事であった」

 

「ありがとう!でも、本物のギターも頑張る。いつか、一緒にセッションしようね!」

 

「お主の気概、見事じゃ!その時まで楽しみにしておくとしよう!」

 

 

 

 どうやら、さっきまで盛り上がっていたらしい二人。

 夢中になっていたから。

 そして、ロックな爆音で相殺していたからか、被害が無かったようだ。

 

 

 

 

 

「にゃにを一人で楽しそうにやってたんだにゃー!」

 

 

 

 

 

 解散にゃー、と声が響く。

 もはや見慣れてしまった解散芸(いつもの)を見ているのは二人のアイドル。

 

「よくやるよなぁ、あの二人。端から見てる分には楽しいけど」

 

「あの、いつものこととはいえ、行かなくていいんでしょうか?英霊の方達も困惑しているようですし」

 

「ま、確かに。行くとしますかね。せっかく、だりーもギターの練習やる気のようだし」

 

「そうなると、私があっち担当なんですね……」

 

 からからと笑うロッカー(本物)。

 ため息を吐く常識人(永遠の17歳)。

 

 なつきちこと木村夏樹。

 ウサミンこと安部奈々。

 

 彼女達のユニットメンバーであり師弟のような関係。

 

 自らの弟子の下へ向かう、面倒見のいい師匠達なのであった。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 アイドルたちは人数が多い。

 数でいえばサーヴァント達に匹敵するだろう。

 それゆえに、まだまだ語れていない話もある。

 それはまた、機会があれば別のときに話をしよう。

 

 

 

 それでは、今日はここまで。

 

 

 

 

 


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