A.D.2012 偶像特異点 深夜結界舞台シンデレラ   作:赤川島起

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サポートサーヴァント

☆4 シンデレラのキャスター

☆4 シンデレラのライダー

☆5 マーリン

☆4 マシュ・キリエライト


IF第2章 従者の宝具

黒い乗用車が無人の街並みを進んでいく。

信号機も機能していない空間で、止まることないエンジンが音の無い町に響く。

千川ちひろが乗せるべきシンデレラとは、現代のアイドル達。

ゆえに、彼女達が乗りなれた現代の乗り物が宝具の一形態となるのは理にはかなっている。

『シンデレラの御者』が元となる宝具ではあるものの、千川ちひろの影響を受けたことを如実に現しているといえるだろう。

今の席順は、運転席には当然ちひろ。

助手席にはマスターが乗り込み、運転席の後ろにプロデューサー。

そのとなりにマーリン、マシュと並ぶ。

中でもマーリンは車に似合わないこと、この上ない。

彼がいつも持つ杖が空間を圧迫し、大柄なプロデューサーに時折ぶつかっているようだ。

 

閑話休題。

 

「この結界の探索ですが、闇雲に走り回っても徒に時間を浪費するだけです。なので、手がかりを探す事が重要だと考えます」

 

→「手がかりかぁ……」

 

マシュの発言から、当てはまるものを思考するマスター。

サーヴァントが始まるための空間。シンデレラを導く者としての試練。

つまり逆に言えば、今のままではアイドルを導くべきサーヴァントとしては不適格と言うことになる。

かのプロデューサーとアシスタントを一瞥する。

仮契約によって彼らのステータスは把握している。

能力的にも、性格的にも、信用的にも不足は見当たらない。

 

→「となると――――宝具かな?」

 

可能性はある。

実際に、キャスターは自身の固有結界である宝具をコントロールできていない。

アイドルを召喚する効果にもかかわらず、彼女たちに攻撃されているのだから。

 

「シャドウ化したアイドルサーヴァント。それに対するアプローチがカギになる……その可能性はありますね」

 

「ただ、どのアプローチが正解なのかは分からない。倒せばいいのか、救えばいいのか。もしくは全く別の原因があるのか」

 

始まったばかりの探索。

当然、まだ判断材料は少ない。

これ以上の推理は堂々巡りになりかねない。

ゆえに、暫定的な結論を出すことにする。

 

→「とりあえず……アイドル達を探そう!」

 

「はい。現在最も有力的な手がかりです」

 

「私からも、お願いします。――――アイドルの皆さんに会わなければ、何も始まらない気がする……と思うので」

 

「いやいや、その感覚は大切だよ。何せ君の世界で、君の宝具で、宝具とは本能だ。なら、本能の導くままに進むことこそ、正解への道筋なのさ」

 

マーリンがそう結論付け、その瞬間目を細める。

空気が変わったことを察知してか、マスターを筆頭に緊張した様子へと変わる。

 

 

 

ズガアアアアアァァァン!!

 

 

 

キキーッ!とタイヤが横滑りし、ドリフト染みた走行でありながら転倒を阻止したちひろ。

歩道へと車は乗り上げたが、すぐさま車道へと走りなおす。

 

二度目の遭遇は、相手からの奇襲によって開始が告げられた。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

上空からの爆撃。

これを成せるアイドルサーヴァントはかなり限られる。

窓から顔を覗かせると、目視で確認できた影が三つ。

 

キャスター、緒方智絵里。

ライダー、双葉杏。

アヴェンジャー、神崎蘭子。

 

サーヴァントの中でも決して多くはない飛行能力の持ち主。

既に攻撃態勢に入られている以上、完全に制空権を取られていた。

 

ブオオオオォォン!!

 

エンジンを最大限吹かし、制限速度をぶっちぎったスピードで夜の街を爆走する。

だが、場所が悪い。

広い空間の少ない、コンクリートジャングルである東京。

いかにスピードに優れていても、地上走行である以上必ずどこかで限界が来る。

対して三人は空中を縦横無尽。

 

『敏捷EX』

 

飛行による評価規格外であるその意味を、改めて痛感することになる。

 

→「車から降りられない?」

 

「無理です先輩!今止まったら狙い撃ちにされます!」

 

乗用車の構造上、上空の相手に対応する術は無い。

猛スピードの車から飛び降りるほか無いか、と覚悟を決める。

 

「問題ありません。マスターさん、宝具の形状を変化させます(・・・・・・・・・)。シートベルトはしてますね。では、――――しっかり、つかまっててください!」

 

黒い乗用車が、光に包まれる。

形状を変化させる中、二匹の白い『ネズミ』が前へと飛び出す。

その二匹は徐々に大きさを増し、美しい姿をした二頭の『白馬』へと姿を変えた。

 

そして、その『馬車』は全貌を見せる。

 

全体を白で彩った、ゴージャスでありながら繊細な装飾。

屋根は無い。

上を見上げれば、星空と三つの影が見える。

ところどころに、かぼちゃの意向をしたことを伺わせる様子が分かる。

二頭の白馬は全力で駆け、その手綱を握るちひろ。

 

 

 

これが、彼女の宝具『かぼちゃの馬車は煌びやかに(シンデレラ・ロード)』の真の姿。

 

 

 

ライダー、千川ちひろの騎乗物。

その姿は事務服から、男性的な騎手の衣装へと形を変えた。

『シンデレラの御者』という特性上、彼女の騎乗スキルは他者を乗せることで本領を発揮する。

自身はあくまで脇役。

主賓を乗せ、送り届ける為の馬車。

 

「これなら、何とかなりますか!?」

 

「ああ、もちろんだとも。せっかくだし僕も、キャスターらしいところを見せないと、ね!」

 

マーリンが杖を振るう。

 

 

 

すると、次第に馬車が空を走る(・・・・)

 

 

 

「ええぇぇー!!」

 

あまりの状況に驚くちひろ。

彼女の馬車に、飛行能力は無い。

屋根を取り除き、魔術による遠距離戦を想定していた彼女には予想外の出来事。

空に魔力の足場を作り、宙を駆ける道となる。

 

かつてバビロニアで、最終決戦時に使ったマーリンの援護。

その再演である。

 

→「マシュ!」

 

「はい。警戒態勢から戦闘態勢に移行。対シャドウサーヴァント空中戦、行きます!」

 

デミ・サーヴァントのバランス感覚をもって、走る馬車で立ち上がるマシュ。

三次元戦闘を基本とする三人に対し、盾を構え迎え撃つ姿勢をとる。

上下左右正面背後。

どの位置からの攻撃も、残さず受けきる構えである。

マシュは護る者。

非常にストレスの大きい盾役というスタイルを、その曇りない心で貫き通す。

 

 

 

「普通の少女をシンデレラへ――――」

 

 

 

その背中を、――――

 

 

 

 

「私の『魔法』が変身させる」

 

 

 

シンデレラのキャスター(プロデューサー)が押す。

 

 

 

「笑顔を咲かす、『シンデレラに変える魔法(パワー・オブ・スマイル )』!!!」

 

 

 

 

 

レンジ内に変化があった。

劇的なのはマシュだろう。

かつての舞台、深夜の衣装。

 

卯月の宝具による変身と同じ衣装。

 

両者共にシンデレラへ導く宝具ゆえの一致。

その『魔法』が、本職たるプロデューサーの手によって今成された。

 

これが彼固有の対アイドル宝具(・・・・・・・)、『シンデレラに変える魔法(パワー・オブ・スマイル )

 

一定範囲内の自軍の女性に対し、アイドル属性を付与する性質を持つ宝具。

無論、それだけではない。

が、それ以上は彼自身にも分からない。

 

例えばマスター。

深夜の呪術衣装とは全く異なる姿。

腰には一振りのレイピア。

黒と青をベースとした、シュッとした姿をかもし出す衣装。

 

マーリンは白のスーツ姿。

タキシードとは違う、煌びやかなビジネススタイル。

 

ちひろには見た目の変化がない。

が、心なしか馬車の機動力が増しているようだ。

 

彼の信条、プロデューススタイルは個性の尊重。

個々人の魅力を活かし最大限に発揮させ、笑顔の姿を前面に出す。

そのため、彼の宝具の効果は相手や場合によって変化する。

プラスの効果であることは間違いなく、また本人の意に反する強化も起こることはない。

 

女性のアイドルへの変身と、その仲間である味方全体への強化の二つの効果を持つ宝具。

 

 

 

「いっきますよー!!」

 

 

 

そして今この場はシンデレラの(・・・・・・)馬車。

ちひろの騎乗スキルは、対象がシンデレラであれば効力を増す。

 

 

 

その変化は、――――劇的だった。

 

 

 

タタタタタタタタッ!!

 

二頭の白馬『チーちゃん』と『ユーくん』の足並みが速まる。

もはやスピードは、劣化したシャドウサーヴァントでは追いつけないレベルにまで達していた。

 

 

 

「■■■■■■―■―■■■!」

 

 

 

ノイズまみれの金切り声。

三人から発せられる悲痛な叫び。

 

その音の中に。

 

 

 

「■ワ■■■■■■―■■■!」

 

 

 

言葉が入り始めていた。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

「神崎さん!緒方さん!双葉さん!」

 

プロデューサーが語りかけ続ける。

今回の戦闘は撃破が正解とは限らない。

アイドルを導くものが、アイドルを倒してしまうのには違和感を感じる。

そのため、戦闘に余裕があるうちにいくつもの手を試す。

 

説得、嘆願、交渉、傾聴。

 

およそマイナスではない、様々なネゴシエーション、

だが彼女たちとは会話すら成立せず、コミュニケーションは全く取れない。

 

 

 

「■―■■―■■■―■■■!」

 

 

 

叫びは止まらない。

普段そのようなイメージのない、杏のシャドウサーヴァントもまた叫び声を上げ続けている。

大人しいはずの智絵理もまた、喉が苦しいのを無視するかのように声を発する。

激情に満たされた雰囲気のシャドウアイドルサーヴァント。

彼女たちの訴えのような攻撃は回避されるか、強化されたマシュの盾によって防がれる。

 

 

 

「話を、聞いてください!私は、――――皆さんの力になりたいんです!」

 

 

 

プロデューサーの痛恨の訴え。

紛れもない本心からの発露。

 

 

 

しかし、その発言は。

 

 

 

「■■シ■■■タ■ワ■■ナ■!」

 

 

 

否定されるかのように上書きされ、かき消される。

 

→「今、声が――――」

 

ノイズまみれの音から、ようやく聞き取れた声。

しかし、その意味までは分からず。

 

 

 

「■■■■■■■■■■■■!」

 

 

 

不利な状況下の為か、シャドウ化したアイドル達は戦場から去っていった。

撃退は成功した。

が、その状況を喜ぶものは一人も居ない。

 

その理由は、聞こえ始めた声。

 

声色は、どこまでも暗く。

影の黒さも相まって、――――絶望しきったかのような雰囲気。

 

 

 

何よりも、プロデューサーから逃げる(・・・・・・・・・・・・)素振りだった彼女たち。

その後の彼が、酷く苦しそうな表情をしていたから。

 

 

 

 

 




シンデレラのライダー:戦闘時スキル構成

スキル1:アシスタントA+++

味方単体の弱体状態を解除&弱体無効(1回・3T)を付与+毎ターンHP回復状態を付与〔Lv6〕(5T)[CT6]

スキル2:二重召喚B

自身のNP獲得量をアップ〔Lv6〕(3T)+アサシンクラスに対する攻撃及び防御相性不利を打ち消す状態を付与(3T)[CT6]

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