A.D.2012 偶像特異点 深夜結界舞台シンデレラ   作:赤川島起

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IFエピローグ シンデレラと従者達

 残響は虚空へと消えた。

 

 試練の結界は閉じる。

 

 合格の証と共に、従者達はこの世界から去っていく。

 

 彼らが、辿り着く先は――――――。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 感情の爆発は終息した。

 その暴威から守り切り、一気に緊張が解けたのか膝から崩れ落ちるマシュ。

 

 →「マシュ!」

 

 味方を守る役目を果たした後輩に、駆け寄って支えるマスター。

 

「大丈夫です。ちゃんと無事ですよ、先輩」

 

 マシュの言葉通り、その身に爆発による傷は一つもついていない。

 強大な脅威を前に、マシュによって守られるその様はゲーティアとの戦いを髣髴とさせた。

 健気な笑顔を向けてくれるマシュの姿に、すべてが終わったことも含めて一安心する。

 

 そう、この結界のすべてが終わったのだ。

 

「お疲れ様です、皆さん。……この度は、私の事情に巻き込んでしまって、本当に申し訳ありませんでした」

 

 頭を下げるプロデューサー。

 自分の未熟によって迷惑をかけたと、深く謝罪する。

 

 だが、それは二人の望むところではない。

 

 そのことを、ちひろが代わりに告げる。

 

「プロデューサーさん。謝罪でも間違いではないでしょうけど、カルデアの皆さんが言ってほしいのは、違う言葉のようですよ」

 

「えっ……はい……」

 

 襟を正し、マスター達へ向き直る。

 服装に乱れなく、ゆっくりとした所作で彼は最敬礼する。

 ちひろもまた、それに続く。

 

 

 

「本当に、――――――ありがとうございました!」

 

 

 

 硬い姿勢を崩せず、几帳面な様を崩さない。

 徹頭徹尾、丁寧に人に接するその姿。

 それが実に、彼らしいのだと思えた。

 

 

 

 →「どういたしまして」

 

「こちらこそ、です。お二人に会えて、共に過ごせたことに感謝します」

 

 ちひろには、とても頼らせてもらった。

 サポートも前衛もこなせる人物として、マスターを支えるマシュには非常に参考になっていた。

 

 プロデューサーには、彼の宝具によって、一時的にとはいえマシュはアイドルとなったのだ。

 シンデレラの魔法使いが、マシュという女の子に『魔法』をかけてくれた。

 それはまるで、君はアイドルになれる、と言われたようで。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

「あっ、壁が……」

 

 →「崩れていく……」

 

 マシュの言った壁とは、建物の壁面のことではない。

 それは、結界の壁。世界の際。

『無』と結界を隔てていた境目が、ボロボロと崩れていく。

 

 この世界は終わる。

 

 プロデューサーとちひろはそのまま消えるのだろう。

 擬似サーヴァントは、現実に生きる本人に支障は与えない。

 なら、マスターとマシュはどうなるか。

 レイシフトはできない。カルデアと連絡がついていないからだ。

 プロデューサーとちひろは、カルデアへの戻し方を知らない。

 引き込まれたのは、カルデアの二人の方なのだから。

 

 ――――だが、その心配はこの場において無用である。

 

「戻る心配ならしなくていいよ。僕のクラスと種族、忘れたわけじゃあ無いだろう?」

 

 キャスターのサーヴァント、花の魔術師マーリン。

 彼の種族は人間と夢魔(・・)の混血。

 夢の世界に入り込んだマスターとマシュを唯一見つけ出した。

 ここまで自力で来たのだから、帰ることも出来るという事。

 マスター共々エーテル体であるが、連れて帰れると断言する。

 カルデアの通信すら届かない場所だというのに、当然の如く。

 

 →「じゃあ、頼んだよマーリン」

 

「うん、任された。安全無事に二人をお連れしよう」

 

 やや芝居がかったように、少々大げさに言うマーリン。

 舞台の上の役者のように。

 物語の最後として、美しく幕を閉じる為に。

 

「では、私たちはこの辺で」

 

「……重ね重ねですが、ありがとうございました」

 

 毅然としたちひろと、ぺこぺこと頭を下げるプロデューサー。

 両者は光に包まれる。

 試験を終えた彼らは、これよりサーヴァントとしての始まりに至る。

 

 

 

 →「またね」

 

「またいつか」

 

 

 

 手を振る二人に笑顔を向け、シンデレラのキャスターとライダーはこの世界から去っていった。

 従者の役目を始める為に。

 彼ら二人が消えた後、自分達も光に包まれていく。

 レイシフトに近い感覚。

 マーリンを信頼し、この感覚に身を任せる。

 三人の姿は、粒子となってカルデアへと出発する。

 

 従者は去り、カルデアもまた帰還し、試練の世界は消滅した。

 

 そして、この場所には再び、『無』のみが存在することとなった。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 カルデア マイルーム AM07:28

 

 

 

 

 

 →「う……ん……。……朝?」

 

 カルデアで、目を覚ますマスター。

 少しだけポケーっとするが、すぐに自身の記憶から何が起こったかをサルベージする。

 短くも濃密な、シンデレラの従者たちとの時間。

 夢の中の世界で繰り広げた試練。

 それらを無事に乗り越え、今カルデアに帰ってきたことを自覚した。

 

 コンコン。と、ノックの音が鳴る。

 マイルームのドアの向こうから聞こえた音が誰によるものか、予想するのは簡単だった。

 

 →「どうぞ」

 

「先輩、失礼します」

 

 想定通り、やって来たのはマシュ。

 次点でマーリンだったが、彼はどうやら来ていない。

 自分の仕事は終わった、という心積もりなのだろう。

 何か問題があれば話は別だろうが。

 

「おはようございます。夢の世界について、先輩に報告をしようと思いまして」

 

 →「うん、わかった」

 

 特異点の影響は、どのように残っているかわからない。

 カルデアに戻り、何か不具合は出ていないかを確認するまでが彼らの仕事である。

 特に、今回の出来事はカルデア側と連絡が取れなかったので、どう観測していたかは不明である。

 

「カルデアでのことですが、私達の意識が抜けていることを、ダ・ヴィンチちゃん達はすぐに察知していたそうです。ただ、どの年代にも私たちの反応が無かった為に、探すのは困難を極めたそうです」

 

 それは確かに当然だ。

 あの世界は世界の狭間。

 人類史上に存在しない空間なのだ。

 今までも、そういった事例はあった。

 ジークと出会った大聖杯の中でもまた、終始カルデアと通信はできなかったのだから。

 

「その際に、マーリンさんがカルデアにいないことをホームズ氏が察知。逸早くマスターの元へと向かったと推理した為、カルデアでパニックが起こることは無かったそうです」

 

 英霊達はもちろんだが、この推理によって、カルデア職員達が落ち着いて観測(しごと)ができたのが大きかったらしい。

 立香はサーヴァントたちを律する事が出来る楔であり、カルデア職員にとって、今まで共に過ごしてきた大事な仲間の危機だったのだから。

 ただ、そんな中で何も言わずに一人だけで勝手に行動していたのがマーリンらしいといえばマーリンらしいのだろう。

 

「こちらでの時間と夢の世界との時間は、ほぼ同じ。つまり、ほんの数時間……私達が眠っていた、睡眠時間と同じでした」

 

 あの空間では、移動時間の殆どが車だった。

 深夜結界よりも狭いこともあり、かかった時間は長くなかった。

 時間という概念が薄い状況ではあったが、彼らと出会ってから数時間しか経っていなかったのだ。

 まあもとより、それ以上はあの固有結界を維持できなかっただろう。

 

「私たちの意識が戻り、カルデアに帰還したことは眠っている間に確認できたようです。睡眠が必要な私達は一旦休ませて、マーリンさんから事情を聞いていたようなので」

 

 ということは、マーリンは本当に仕事を終わらせていたらしい。

 夢の世界は彼の得意分野。

 マーリンの尽力によって、安全に帰還できた。

 後でまた、お土産を持ってお礼に行くと決める。

 今回の功労者であり、おいしい所を持っていった彼に。

 

 

 

 タタタタタタタッ!!

 

 

 

 足音がする。それも複数。付け加えるなら十数人。

 その音は徐々に近づいており、主はこのマイルームにやって来た。

 部屋の外で慌てた表情をしているのは、ニュージェネレーションの面々。

 

 

 

「大変、大変ですー!!マスターさ、うわあぁ!?」

 

「ちょっ!?」

 

「あぶなっ!?」

 

 

 

 大急ぎでドアを開けたは良いが、一緒に後ろからやって来た後続が減速できずにニュージェネの三人にぶつかった。

 全員が揉みくちゃになり、人の山になっていたのは十四人。

 それは、あの世界でシャドウアイドルとなっていたメンバーと一致する。

 

 緒方智絵里。

 三村かな子。

 神崎蘭子。

 諸星きらり。

 双葉杏。

 前川みく。

 多田李衣菜。

 新田美波。

 アナスタシア。

 赤城みりあ。

 城ヶ崎莉嘉。

 本田未央。

 渋谷凛。

 島村卯月。

 

「イタタタ…………、って、大変大変なんですマスターさん!!」

 

 今の状況も割りと大変だと思うが、普段大人しい卯月がここまで慌てているのも珍しい。

 それもそのはずと、次の言葉で理解することとなる。

 

 

 

「あの、マスターさんは知らないと思うんですけど、――――――新しいサーヴァントさんが二人、召喚されてたんです!!」

 

 

 

 →「あっ……」

 

 

 その様子と今までの経緯から、誰が来たのか把握した。

 なるほど、ならば彼女達が全員大慌てになっているのも納得がいく。

 

 

 

 

 

「その召喚された二人が、私たちのプロデューサーさんと事務員さんなんです!!」

 

 

 

 

 

 彼らがカルデアに召喚されたのは至極当然。

 あの結界の試験を終え、エーテルの体が崩壊して消えていった彼ら。

 サーヴァントが消えていくとき、その分霊は英霊の座に帰っていく。

 擬似サーヴァントであれば、少なくとも本来の肉体を持つ人物達には影響を与えない。

 だが、あの空間はサーヴァントとして始まるための(・・・)場所。

 アイドル達の力になれるかどうか、従者(なかま)として加わる為に。

 これから(・・・・)擬似サーヴァントとして召喚されるのならば、それはアイドル達がいる場所に他ならないのだから。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

 

 →「それでは、皆準備して~」

 

 最初の音頭をとるマスター。

 カルデアの食堂は、あの時のように飾り付けられていた、

 中心にいるのは、二人の男女。

 主役であることに慣れていない二人は、気恥ずかしさを隠せないでいる。

 そんな彼らを畳み掛けるように、クラッカーと共に一斉の祝言が告げられた。

 

 

 

 

 

「「「「プロデューサーさん!!ちひろさん!!カルデアへようこそ!!」」」」

 

 

 

 

 

 アイドル達の祝福。

 担当したアイドル達も、そうでないアイドル達も同様に。

 今回の主賓。

 シンデレラの魔法使い(キャスター)とシンデレラの御者(ライダー)

 プロデューサーと千川ちひろ。

 普段は中心に立たない二人が、今回の主役。

 試練を乗り越えた彼らは、アイドル達を支え続けていくだろう。

 今までのように、これからもそうであるように。

 いずれ来るであろう、引退(おわり)の時が来るまで。

 アイドルマスターの称号を持つ者として。

 

 ただ今は、この時を共に過ごそう。

 

 シンデレラとカルデアに、新しくも頼もしい仲間ができたことを。

 

 仲間と共に、祝宴を楽しみながら。

 

 

 

 

 

 結界の残響編 終

 

 

 

 

 




特異点クリア報酬

シンデレラのキャスター 獲得

シンデレラのライダー 獲得

※上記のサーヴァントは、各高難易度クエストをクリアすることで追加獲得できます。
(高難易度クエストの投稿予定はありません)

追記 魔術礼装 「深夜の呪術衣装」

SKILL 1 「生命変換」 味方単体の最大HPアップ+NPダウン(デメリット)

SKILL 2 「呪術障壁」 味方全体に被ダメージカット状態を付与

SKILL 3 「痛覚集中」 味方単体にターゲット集中状態を付与



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