箱庭出身転生者と猫姉妹   作:めざし

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第12話

白音とレイがリコーダーの練習を始めて一週間が経った頃、白音はまたしても新たに生まれた問題に追われていた。

それは音楽の授業中のこと・・・

 

「・・・・・・むぅぅ、音はどうにか覚えられたものの、皆に合わせられません・・・」

 

 

白音はそれぞれの音に対応した指の動きは覚えられたものの楽譜通りに演奏すると、どうしてもぎこちなくなったり止まったり、と周囲とズレてしまっていたのだ。だが、同時にこれは仕方ないこととも言える。始めて一週間で覚えたての少女が周囲に合わせて演奏するなど容易にできることではないからだ。とはいえ、レイがそれを焦らなくてもいいとやんわり指摘しても意外と負けず嫌いな白音は焦ってしまい、それが余計に悪循環を生む。そして・・・・

 

 

「・・・やはり私には無理なのでしょうか・・・・」

 

「いやいや、そんな弱気にならないでよ、まだ始めて一週間なんだよ?

まだ時間もあるし、パートを一つずつゆっくりでもいいからものにして、それから全体を綺麗に吹ければいいのさ、こういうのは。

だから今は腐らず出来るところから少しずつやろうよ?」

 

「・・・・はい」

 

(・・・んー、姉さん結構ネガティブになってるなぁ・・・。でもこれに関しては指を慣らしていくしかないし、練習あるのみ、だもんなぁ)

 

 

と、このように時折自分は本番を迎えても吹けず、足手まといになってしまうのではないか、というネガティブ思考に陥ってしまうようになっていた。

 

 

「・・・家でもレイ君に見てもらってるのに・・・・私は・・・」

 

「・・・大、丈夫、だよ、白音ちゃん!」

 

「・・・詩穂さん?」

 

「最初は、誰でも、出来なくても、当たり前なんだよ?

大丈夫、昼休みでも、放課後でも、私たちが一緒に、白音ちゃんと、練習するから・・・・だから頑張ろ?」

 

「シホの言う通りだぜ!俺だって今も出来てねえ所がいっぱいあるんだ、一緒にがんばろうぜ、な?」

 

「詩穂さん、アツシくん・・・。はい!」

 

 

白音はどうやらアツシと詩穂の激励に元気を取り戻したようだ。

 

 

「・・・ありがとな、2人とも。どうにも白音姉さん焦っちゃうみたいで・・・2人のおかげで元気になったみたいだ」

 

「気にすんなよ、友達だろ」

 

「うん、気にしないで、レイ君。白音ちゃんが元気に、なったらそれだけで、嬉しいもん」

 

 

レイは白音に聞こえないようにアツシと詩穂に礼を言うのだった。

そして、それから4人は昼休みには集まって練習するようになり、放課後はそこに暇な黒歌も混じってするようになったのだった。

 

それから少し時間が飛んで二週間後・・・

 

 

「・・・・・パート毎ですけど・・・やっと全部綺麗に吹けるようになりました!!」

 

「うん、おめでとう姉さん!」

 

「おう、練習頑張った甲斐があったぜ」

 

「やったね、白音ちゃん!」

 

「はい、皆さん、ありがとうございます!・・・あとは通しで吹いてやるのと楽譜の暗記・・・・あと行進しながら吹くだけです」

 

「そうだね、残りも難しいけど、一歩ずつ進めばいずれは出来るようになるんだ!それにあと三週間もある、きっと大丈夫さ」

 

「はい!」

 

「じゃあまずは早速通しでやってみようぜ!!」

 

「「「おー!」」」

 

 

そしてレイたちは最初から最後まで演奏したのだが・・・・

 

 

「・・・・・・・だぁ〜!やっぱ通しでやるとなると難しいな、おい。

・・・・ってか、なんでレイとシホは普通に出来やがんだ!?」

 

「うーん、日頃の成果?」

 

「・・・・かな?」

 

「・・・そんな・・・私と練習量・・変わらないじゃないですか、レイ君・・・・」

 

「・・・・・そこはセンスということだよ、姉さん・・・」

 

「・・・・・・グスッ・・」

 

「!!?

ね、姉さん!?なんで急に泣くんだ!!!?」

 

「す、すいません・・・・グスッ・・・・・。

追いついたと思ったのに・・・レイ君にまた・・置いていかれたって・・・思ったら、グスッ・・・急に涙が・・・」

 

「え!!?いや、いやいやいや、これは慣れの問題だから!練習してればすぐ出来るから!

な、なぁ詩穂さん!!?」

 

「うぇ!!?う、うん!と、通しでやるのは、ま、また勝手がち、違うから!」

 

「そ、そうだぜ!?また出来るようになるまで練習続けようぜ、シロネ?」

 

「はい、ごめんなさい、急に泣き出してしまって・・・・」

 

「・・・・ふふ、むしろ泣く程負けん気が強くあってくれた方が上達するのは早いから良いと思うよ、姉さん、ふふふ」

 

「・・・・・むぅ、なんでそこで私を見て笑うんですかレイ君は?」

 

「い、いや嬉しいのと子供っぽくてかわいいなって思って、ふふ」

 

「んなっ!!?

・・・レイ君のそういう所は私は嫌いです」プイッ

 

「ごめんごめん。

僕が悪かったから怒らないでよ姉さん、ぷくく」

 

「謝る気ゼロじゃないですか!レイ君なんて知りません」

 

「・・・・なんでこいつらはイチャイチャしてんですかねぇ・・・。

おら、練習再開すっぞ!」

 

 

そんなこんなトラブルを起こしつつではあったが、4人は再び通しで練習を続け1週間も続けていくうちに大分形になっていた。そして・・・

 

 

「では本日より体育の授業は楽器を実際に使っての練習となります。各自楽器を忘れないようにしてください。

・・・では本日の朝のHRはこれで終わります」

 

 

運動会まで残り二週間を切り、今日から楽器を実際に演奏しながら練習することとなった。

 

 

「・・・・はぁ、不安です。動きながら演奏するなんて無理なんじゃないでしょうか?

一通り吹けるようになったとはいえ、まだ楽譜覚えきってないんですけど・・・」

 

「今から弱気になってもしょうがないよ、姉さん。

結局本番では今までの練習以上の結果なんてそうそう出るようなもんじゃないんだし。

そもそも他の子だって初めてのことなんだから、同じ条件だよ。

それに楽譜だってもう4分の3くらいは見なくても吹けるようになってるじゃないか」

 

「・・・・・わかってますよ。でもやっぱりまた私だけ出来ないんじゃないかと思うと恐いんですよ・・・」

 

「・・・まったく、しょうがないなぁ。

じゃあこうしよう、姉さん。

大きなミスを5回しなかったら今度の休みにどこか遊びに出かけようよ」

 

「・・・え?」

 

「だからゲームさ。・・・で、逆に5回ミスしたら罰ゲームってことで。

・・・こういう風にゲーム感覚に考えれば姉さんなら気合入るだろ?」

 

 

 

 

Side 白音

 

・・・・私は今日の体育で、いや新しい練習で皆さんの足を引っ張ってしまうんじゃないかってついつい悪い方に考えが行ってしまい、ひどく憂鬱でした。

・・・いや最近の練習の成果で一通り出来るようになってきましたし、初めて動きながら演奏するにしてもそんなに心配しなくても問題はないと思っています・・・・思ってはいるんですが・・。

やはり、以前ミスして皆さんの足を引っ張ってしまったことを思い出してしまって、また同じになるんじゃないかと不安になるんです・・・・。だから私は憂鬱でした。そんな風に私が悩んでいると・・・

 

 

「・・・まったく、しょうがないなぁ。

じゃあこうしよう、姉さん。

大きなミスを5回しなかったら今度の休みにどこか遊びに出かけようよ」

 

「・・・え?」

 

「だからゲームさ。・・・で、逆に5回ミスしたら罰ゲームってことで。

・・・こういう風にゲーム感覚に考えれば姉さんなら気合入るだろ?」

 

「・・・・・・」

 

 

レイ君はそんな風にどこか私をバカにしたようにニヤリとした笑みを浮かべ私にもちかけました。

・・・・・なるほどゲームですか・・。

良いでしょう良いでしょう、その提案受けて立ちましょう!

 

 

「・・・良いですよレイ君。

私もそろそろ姉としての威厳を見せつけてあげないといけないと思っていたところでした。

その勝負受けて立ちましょう。

・・・・ところでその罰ゲーム私が勝ったら当然レイ君も受けますよね?」

 

「・・・え?!遊びに行くのでダメ?」

 

「ええ、ダメですね。遊びに行くのは姉様も一緒でいいので、レイ君には罰ゲーム受けてもらいますよ?

・・・・この間レイ君に似合いそうな服を見つけましたし(ボソッ)」

 

「んん!!?今聞き捨てならないことボソッと言わなかった姉さん!?」

 

「さて何のことでしょう?

・・・・では罰ゲーム楽しみに待っていてくださいね?」

 

「もう勝ったつもりかよ・・・。良いぜ、横でしっかり聞いてっからミスしたらすぐ判るからな姉さん」

 

「ええ、大丈夫ですよ?そんな不正行為なんてしませんとも・・・ふふふ」

 

「・・・・う、やばいな。やらかした感がハンパない・・・」

 

 

どうやらレイ君は罰ゲームが自身に降り懸かりそうになって怖気付いたみたいですね・・・・。ふふふ・・・逃がしませんよ?

 

 

「おや、レイ君?負けることが怖いんですか?

そうですよね、お姉ちゃんに勝負で負けたら恥ずかしいですもんね?」

 

「・・・・へぇ?さっきまでビビってた割には随分強気だね、姉さん?

姉さんこそ負けても吠え面かくなよな!」

 

 

・・・あはっ♪上手くいきました♪吠え面かくのはレイ君なんですよ、休みの日が楽しみです♪

 

・・・・と、まぁそんなこんなで賭けになりましたが結果を先に言いますと私が勝ちました。ブイッ!

そしてそのことを姉様に伝えると・・・

 

 

「え、そんな面白いことになってたの?見たかったなー。

ま、でも今度の休みが楽しみだね。私もレイに似合いそうな服を見つけたんだ〜」

 

「ぐぬぬ・・・。ま、まぁ負けは負けだからな、黙って受け入れよう・・・。

・・・・・・・・・い、いややっぱ許して・・・もうワンピースは嫌だ」

 

「ダメですよ!せっかく私が勝ったんです、しっかり付き合ってもらいますよ」

 

「そうそう。往生際が悪いぞ♪」

 

「・・・・今度から安易に罰ゲームとか賭けないようにしよう」

 

 

・・・・・まぁ、なんだかんだレイ君は私を勇気付けようとこんなこと言い出してくれたわけですし、少しは抑えめにしときますか。

それに今回、今までの成果が無駄じゃなかった、というのも分かって安心しましたしね。何かレイ君にお礼するのも悪くありません。

 

と、私がそんなことを考えていると・・・

 

 

「・・・はぁ、それより黒歌姉さんは組体操の方は問題ないの?」

 

「んー?まぁ、私は猫の妖怪だからねー、組体操くらい問題ないし、修行でバランス感覚とかも鍛えてるからむしろ他の子たちのほうが心配な感じかな」

 

「ふーん、なるほどね。あーあと、姉さんは紅組なんだっけ?」

 

「そうよ。レイたちは?」

 

「同じく紅組だねぇ」

 

「そっか、それは心強いわね」

 

「まぁ、当日は力を出しすぎないように気をつけるくらいかな、問題は」

 

「そうですね、それに関しては細心の注意を払わないとですね」

 

「まぁ、多少騒ぎになってもアザゼルさんたちが上手くフォローしてくれるわよ、きっと。

私たちはベストを尽くしましょ?」

 

「・・・丸投げかよ。まぁ黒歌姉さんの言うことも一理あるか。

せっかく応援しにきてくれてるのにベストを尽くさないのは失礼だよな」

 

「はい、たまには姉様も良いこと言いますね」

 

「むか!白音は最近自分の意見をしっかり言うようになったのは良いけど、失礼だよ」

 

「うん、ごめんなさい姉様。ついうっかり」

 

「・・・もう、気をつけなさい。可愛いから許すわ。

・・・・さて、修行の続き始めましょ?最近運動会の練習ばっかりだから今日は多めにやりたいわ」

 

「了解。じゃあまずは姉さんたちで組手してからにしようか」

 

「わかりました。・・・・では、行きます姉様!!」

 

「ん、来い!」

 

 

運動会当日に力を出しすぎないように気をつけることを確認した後、その日は少し多めに時間をとって修行をすることにしました。姉様との組手は拮抗してるからなかなか決着がつきませんでしたが、でも逆に自身の力の全てを余すことなく出し切れるので、上達したところや短所などが如実に表れます。それから私たちに必要なことをレイ君が指導してくれるので更に磨きがかかり、翌日の修行にそれを活かすようにするのでどんどん強くなってる実感があります。

・・・・まぁ、それでも小学生な私たちではまだまだなのでしょうけど・・・。でも、毎日続けることでいずれはレイ君に追いついて、レイ君の見てるものを共有したいものです。

 

 

 

Side レイ

 

(姉さんたちの修行も大分進んだことだし次のステージへ、と行きたいところだが・・・・。

今の姉さんたちの体力や体格的にこれ以上はオーバーワークだろう・・・。

と、するならば・・・・精神的に鍛えるべきか・・・・。だが、あまりこの方向の修行は・・・。

どうしたものか・・・)

 

 

レイは黒歌と白音が組手を行なっている傍で悩んでいた。

それは2人が今より更に強くなるために、より実戦的な修行を行うべきなのではあるが、それは幼い2人が行うには余りにも厳しいものとなるからだ、故にレイは悩んでいた。

 

 

(・・・・しばらくはこのままのメニューで進めよう。最初ほどの劇的なレベルアップにはならないが、このまま一歩一歩歩き続ければ最上級クラスの悪魔にもそう易々と遅れは取らないレベルに至るのは間違いない・・・。

・・・・・もし、2人がこの先を望むならば、その時は・・・)

 

「レイー、交代しよ!今日こそは一本取って見せるわ!」

 

「・・・うん、やろうか」

 

(・・・これについては運動会が終わった後でいいな)

 

 

レイは今後の予定をそう結論づけて2人の組手に参加した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

運動会当日

 

「選手宣誓、僕たち私たちは、スポーツマンシップに則りーーーー」

 

 

開会式を迎えたレイたちは朝から学校のグラウンドに集まって、校長先生からのありがたいお言葉を頂いたり、学生代表の子たちの選手宣誓を聞いていた。そして・・・

 

 

「では、これよりプログラム1番大玉ころがしを始めます。生徒の皆さんは速やかに所定の位置について下さい。

繰り返しますーーー」

 

「始まったね姉さん。緊張してる?」

 

「うんうん、大丈夫だよレイ君。リハーサルでも問題なかったし、本番もきっと大丈夫だよ」

 

「ん、大丈夫そうだね。お、アザゼルさんたち見つけた」

 

「あ、ホントだ。手を振ろうか」

 

「そうだな。・・・っと、そろそろ行かないと怒られそうだ。行こう姉さん」

 

「うん」

 

 

こうして彼らの初めての運動会は幕を開けた。




はい、今回は運動会が始まったところで終わりにしたいと思います。

今回投稿が遅くなり申し訳ない。大学の試験と就活が重なりハードでした。
次話はなるべく早く出したいところです。

今回負けず嫌いな白音ちゃん回でしたが、いかがでしたでしょうか?今回も子供っぽさが出るように四苦八苦しました。
あと今回かなり巻きで進ませた感がパナイです、申し訳ない。小学生の頃の練習の記憶が全然思い出せず、ぐぬぬ、と言った感じでなかなか筆が進まず、ちょっと飛ばし飛ばしと言った感じです。展開早いよ、とか言われても仕方ありませんね(汗)

と、そんな感じで苦労しましたが、次話はできるだけ無理のないように構成してお届けしたい所存。
誠心誠意執筆中ですのでお待ちを!では今回はこれにて。アデュー
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