「・・・分かりました」
「ありがとうございます、Missリナリー。私の我が儘に付き合ってもらいまして」
「いえ、大丈夫です」
エドルは白髪の少年とクロス元帥を宿に泊めるよう手配した後。
教会に帰ってきたと同時にリナリーに三ヶ月の期限を儲けるのと医者や教師、牧師を派遣するお願いを頼んだのだ。
理由は3つ。
一つ目は、黒の教団とこの教会の距離は歩きで一ヶ月、馬車では15日かかる。
二つ目は、医者と牧師そして教師を待ち、引き継ぎの事を教えるのに一ヶ月を費やすためだ。
三つ目は、御別れを惜しむのと日常を送りたいという気持ち、先程の被害者三名の葬式を行いたいと要望したのだ。
「いえ、そんな・・・。それに」
「それに?」
「知り合いが亡くなる気持ちは・・・分かりますから」
「・・・」
「おい、酒はねぇのか?」
「アナタ、無銭で飲食してる自覚有りますか?」
リナリーが去ってから10日後、エドルは葬式を済ませたのち、クロス元帥とその弟子アレン・ウォーカーを教会の食事に招待した。
ただクロス元帥は「酒がねぇ、女居ねぇ」とぼやいたらしいが、エドルは「少しぐらい我慢しろ」と一言言っただけだった。
「ウォーカー君、大変ですね」
「わかってくれますか!!」
「昔、といっても数年前ですかね。
借金を抱えられた時が有ったりしましたから」
「そうなんですか!」
「まぁ、借金の件は倍にツケを入れて送り返しましたから」
「え?」
「その話は投げとけ。
で、本題に入るぞ。クソ弟子の腕を直す準備は出来てんのか?」
「出来てなければ呼びませんよ。ただ、私の出来るレベルは応急措置程度の修理です。機材も色々足りませんし」
「結構。コイツには十分な価値だ」
「ありがとうございます」
エドルは二人の言葉を聞いて、今後の話をする。
「時間としては今日入れて三日間の予定です。応急措置といっても傷口の状態を見てから出来る範囲が広がりますので。
あ、あと麻酔なしでいきますよ。麻酔用の薬は高いので」
「任せる、好きにしろ」
「わかりました。さぁ、ウォーカー君」
「え!?麻酔なし!?」
「すみませんね、舌を噛みきらないように布は用意しますから」
「あ、安心できる要素ないですけど!!」
「安心してください、痛みは慣れれば一瞬です」
「ヒっ!」
エドルはアレンを脇に抱えて、鉄の扉がつけられた地下室に向かう。
「ちょっと待ってください、エドル神父!」
「安心してください。腕は保証します。痛いと思いますが」
「安心できない!安心できないです!師匠助けてください!」
「弟子、痛みは尋常じゃないが腕は確かだ、保証する」
「そ、そんな!」
そんなコントを繰り広げている間に鉄の扉は開けられ、二人は入っていった。
『ここからは音声と音でお察しください』
ズバッ!グチャリ!ピチャッ!
ピギャアアアア!手がぁ!手が違う方向を向いてぇえ!
数時間後、エドルは牧師服を脱いで白シャツとズボンを着たラフな格好をしながら地下室から出てきた。
「自律神経は無事でしたから日常生活には問題ないです。
傷は、目立たない程度に防ぎました。レベル2以上の戦い、及びイノセンスとの戦闘は避けた方が良いでしょう」
「流石、教団一の神童だな」
と、クロス元帥は皮肉混じりに言いながらワインの入ったグラスを飲み干す。
「元ですよ、ってワインを何処から」
「ん・・・」
クロス元帥は後ろを指差し、マリア像の下を指す。
「アナタ、聖母マリアの捧げ物を飲んだのですか!」
「良いじゃないか、腐らせるより良い行いだろ?」
「そういう問題じゃないですよ!まったくアナタは!」
「そう噛みつくな。信奉し過ぎなんだよ、お前」
「・・・はぁああ、なんかもう良いです。ワイン、いただけますか?」
「お、飲むのか?」
「中途半端に返したらマリア様に悪いうえに、捧げ物にはならないでしょうが」
「クックックッ、なるほどな。ほれ」
クロス元帥は、もう一つ有ったグラスにワインを入れて、エドルに渡し、自分のグラスにもワインを入れた。
「じゃあ説明会でも開くか?」
「えぇ、お願いします。彼、アレン・ウォーカーの事も含めて・・・」
「・・・アレンか」
「アレン・ウォーカーの顔に着けているタトゥーは・・・ペンタグルは呪いで間違いないですね。何故、彼が呪いを?
AKUMAの遊びでなったのですか」
「違う、あれはアイツが呼び出したAKUMAによって付けられた呪いだ」
「まさか、彼が千年公と取り引きしたなら何故生きて・・・」
「丁度良くイノセンスが覚醒したんだよ」
「・・・そんなバカな」
「有り得ないなんて有り得ない、この世の中。この戦争の中なら可能性ぐらい有るだろ」
「・・・。なら彼は自分で呼んだ魂を、AKUMAを破壊したのですね」
「あぁ・・・」
「酷い罰だ」とエドルはぼやき、ワインを一気に飲む。
「本題の質問はここからです・・・。
何故アナタがアレン・ウォーカーを預かって居るのですか?」
「何故?何故って、便利な手足が必要だったからだ」
「本当にそれだけですか?」
「本当だ」
「嘘だ」
エドルは真剣な顔になり、クロス元帥は微笑な表情で答える。
「・・・なら聞こうか、嘘と断言できる理由をな」
「断言、とは言えません。でもアナタ、子供が嫌いでしょ?」
「そうだったか?」
「アナタは、私を蹴り飛ばしたこと有りますよね。あの時、餓鬼は嫌いだと言いました。まさに我一番って顔をして」
「女々しい野郎だ。下らない事を覚えやがる」
「確かに女々しい野郎ですよ。私はね。
でも、今のアナタの顔は昔と全然違う。親の顔ですよ」
「・・・親だァ?」
「えぇ、親の顔です。気付いてましたか?アナタ、怪我の状態を聞いた時の安心した顔ときたらもう」
ガチャリと、クロス元帥はジャッチメントと呼ばれる回転式の拳銃に変えられたイノセンスをエドルの眉間に突き付ける。
「それ以上言うとド頭を吹き飛ばすぞ」
「わかりましたから、ジャッチメントを下げてください。お願いします、私死んじゃう。
私、頭を吹き飛ばされたら確実に死んじゃう」
「面白いジョークだ。安心しろ、吹き飛んだら穴に埋めずに肥溜めに捨ててやるからよ」
「酷い、だったら火葬して地中海に灰を流してください!」
「知るか、ど阿呆」
(閑話休題)
ドンッ!
本当に撃つやついるかァあ!
「とりあえず彼を預かって居る理由、今は聞きません」
「俺は、あの至近距離でジャッチメントの弾丸を掴んだコツを知りたいんだが」
「嫌です。さて、今後の事ですが・・・アレン・ウォーカーのリハビリを二日だけ行うことにします」
「あ、なんでだ?」
「ま、私にも色々有りましてね。アナタも有るでしょ、急ぎの任務」
エドルは絶対に居候なんてさせないというオーラを出し、クロス元帥を威嚇する。
「・・・ちっ、食えねェな」
「お互い様ですよ、アナタも私も・・・そもそも同族嫌悪していた間柄ですからね、私達」
「あぁ、そうだったな」
そう言いながらもワインボトルを数本空にしてエドルとクロス元帥は何故か日本に伝わる箸拳勝負を朝まで騒ぎ通したのだった。
オマケ劇場
アレン「んあ?」
↑手術のショックで気絶していたら寝ていたアレンは、起きて地下室から出る。
アレン「おはようございます・・・え゛」
エドル「いやぁ、ウォーカー君。おはよう・・・うぷっ」
↑箸拳勝負で二日酔い
クロス「バカ弟子ぃ・・・ベッドまではこ、うぷ」
↑二日酔い
アレン「なに、この混沌とした現場」
ティム「ガァ・・・」
ためにならないミニ知識!『箸拳』
土佐のお座敷遊び。
大雑把に言えば、両者三本づつ割りばしを持って、自分と相手が出す割りばしの合計の数を当てるゲーム。負けた方は酒を飲むという罰ゲームが待っている。
サーの呟きコーナー
サー「新年明けましておめでとうございます」
エドル「おめでとうございます」
サー「さて、今回はエドルの名前について、お話します」
新名、エドル・ガトウ
旧名、ロドリ・シット
サー「この二つの名前の旧名はスペインの有名人、エル・シッドから取りました。
ロドリはロドリーゴ・ディアス・デ・ビバールの名からロドリを取りました。
シットは簡単にシッドの濁点を取りました。」
エドル「じゃあ新名のエドル・ガトウは?」
サー「完成にサーのオリジナルです。と言いたいのですが、エドルは鋼の錬金術士お馴染みの主人公エドからルを付け足した物で、ガトウはガンダムのガトー少佐から着けさせてもらいました。」
エドル「一つしか鋼の錬金術士要素しかない!?」
サー「でも馬の名前、バビエカよりましだろ」
バビエカ=愚か者という意味。
サー「という形で今回は終わりであります。今後ともよろしくお願いします。」
次回
第六夜、格闘の技術