お久しぶりです。
今回は急展開になりました。申し訳ありません。
皆様は、キリスト教に伝わる七つの
もしくは根本の七つの大罪と言った方が知っていると思われる(時代によって七つの大罪は変わる)。
七つの大罪。
この話は西方教会が伝えている話で古くとも四世紀から有るお話である。
また十四世紀~十五世紀に悪魔が関与している絵が生み出されたのだ。
結論から言えば、七つの大罪の暴食を指す教えは食事の習慣を制御することができないなら、他の習慣、心の習慣 (情欲、強欲など)を制御することは多分不可能という、広い意味での食に関する悪徳(必要以上の量を食べる、生きるためにではなく味を楽しむために食べるなど含む)であるそうだ。
つまり、今。
アレン・ウォーカーは、今。暴食の罪に囚われそうになっている。
「・・・」
彼は無言で料理を見る。
キラキラと輝く目。
タラタラと口から垂れる涎。
そしてゴクリと唾を飲む。
「・・・」
そして恐る恐るアレンは手を出し、パンを食べようとしたが近くの扉が開き、手を急いで引っ込める。
「グラタンが出来ました。あと、もう少し待ってくださいね。
シチューも完成しますから」
「・・・!」
震えた。微かながらアレンは震えた。
(あぁ、まともな食事は何年ぶりだろう・・・こんなご馳走や天国はあったっけ?
いや無い、絶対ない!)
アレンは思い出す。
あの人食いモドキの植物の世話。師匠の借金を叩きつけられ、地獄だと思える逃走。スリや騙しを行う罪悪の日々。
(ここが天国!天国なんだ!1日の自由が僕に許された
「―ン君」
(そもそも師匠は僕をないがしろにしすぎなんですよ!
助けてくれたのは、とてもありがたいです。でも助けてくれた恩返しに、あの食人花モドキにイカサマや騙し、借金を押し付けるし)
「―レン君?」
(でも師匠ってカリスマ性有るから時々、男でもカッコいいという感じも見せるし)
「アレン君!」
「あ!はい!」
アレンは、エドルに思考の海から引き上げられるとエドルを見た。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい」
「どうしたんですか?」
「・・・昔の事を思い出して」
エドルは、唐突に曇った目をアレンを見て。
(この子、本当に何が有ったの?夢を瞬く間に崩されて絶望視する少年みたいだ)
そうエドルが思うぐらい目が死んでた。
「と、とにかく食べましょう。寄生型は燃費が悪いですからお腹空きますし」
「え?でもシチューは?」
「ちょっと置いてから食べましょう。煮込みは大切です」
「わかりました」
「では、祈りましょうか」
エドルは手を合わせて、目をつぶり、神に祈るポーズを取る。
「主よ。今日も我等に糧をいただ―」
グルルル・・・
唐突に何かが鳴った。
エドルは目を開けて、自身の腹を見て確認するが自分ではないことを知る。
そしてアレンを見ると赤面になりながら顔を俯けている。
「食べましょうか」
「・・・はぃ」
エドルは、少しだが真面目な子の意外な部分にほんわかした。
「あー。美味しかったです!」
「それは良かった。私も腕を振るった甲斐が有りましたよ」
「ありがとうございます。これで後一年半は戦えます」
「そんな大袈裟な」
ハハハ、とエドルは笑いながら食後の紅茶を入れる。それをアレンはニッコリしながら見て、後に天井を見る。
「不思議ですね。最後に食べたシチュー。あれ、昔師匠に作ってもらった味に似てました」
「・・・え?」
「どうしました?」
「アイツ、料理出来たんですか?」
「あれ?知らなかったんですか?」
「知るも知らんも・・・
アイツが料理するところなんて一切見たことないですから」
「そうですか・・・スゴいですよ師匠のシチュー。不器用に乱切りされた野菜がゴロゴロ有って――
目が死んだ白髪の子にそれを無理矢理食べさせて・・・」
(それが本当だとしたらアイツ、クロスは本人だろうか?)
とエドルは、クロスの変わりすぎる対応に少し頬が引き攣る。
「・・・それを聞くとやっぱり変わりましたね。アイツ」
「変わった?」
「えぇ。良い方向になったのかは考え物ですけど」
「え?」
カチャリと
音をたてながら自身が淹れた紅茶を飲むエドルは、先程の表情より頬の引き攣りが戻る。
「ところでアレン君。話は変わりますが良いですか?」
「え、はい。大丈夫です」
「実はね、もう一つだけ気分転換するための療法が有るんですよ」
「え?」
「いかがです?
催眠療法っていう方法ですけど」
「催眠、ですか?」
「はい。あぁ、そう身構えなくて良いですよ。ちょっと他人格を一時的に入れ込むだけで怖くないです。
ちなみに私も催眠療法は受けた事が有りますので安全面は確かです」
「・・・そうですか」
「はい、どうします?」
「・・・それ、覚えたら今後の役に立ちますね」
「今後?」
「借金返済にです」
「は?」
「大丈夫。怖いオジサン達から軽くお金を貰う気持ちで使いますから」
「・・・」
「あ、でも。催眠術を使って師匠の―」
エドルは、もう諦め、何かを悟った顔になった。そして「本当に根が良さそうなこの子は何処まで堕ちちゃうのだろうか?」と頭を片手で押さえながらこの若者の将来を心の中で心配した。
「―という訳で催眠術の件、よろしくお願いします」
「え、あ、はい?」
ちょっと不安になったエドルだったが催眠療法を受け入れてくれたので、寝室に案内すべくエドルは立ち上がる。
「あぁ。でもベッドなんて久しぶりだぁ!師匠なんて僕を床で―」
「やめて!もうやめて!もうやめてちょうだい!
もう私の不幸話が霞むぐらいの不幸ぷりが予想できたから!」
「え、ちょっ!?」
「うわぁああん!主よ!憐れに迷える子羊に纏う
大の男がアレンの不幸ぷりに触れて、壊れた声が教会中に響いた。
―大の男が騒いだため―
カット
「すみません、ちょっと壊れました」
「あ、いえ」
「さて催眠療法でしたね」
トントンと額を数度、右手の人差し指で打ち気分を一転させたエドルはアレンを見る。
「アレン君は思い出したくない記憶が有りますか?」
「はい!特に師匠に関する暴力の記憶が有りすぎて困ってます!」
「いや、それは現在進行形ですかね。
それ、ただのトラウマ軽減にしかなりませんからね。
他に無いんですか?」
「・・・寝る事でお腹いっぱいなれる催眠をかけてください」
「いや死んでしまう、死んじゃうから。ただでさえイノセンスの燃費が悪いのに余計悪化させちゃ駄目ですから」
「大丈夫、人間水のみで一週間生きれますから」
「は?」
「ちなみに体験談です」
エドルはアレンの両肩に手を置いた。
「アレン君。もう君は休んで良い。休んで良いです。
英気を養ってください。イイネ」
「アッハイ」
「結局。彼の事を聞けず・・・か」
エドルはアレンが寝静まった頃、ワインを二つのグラスに注ぎ入れて、マリア像を見る。
「そろそろ、出てきたらどうです?」
「・・・」
一柱の影から寡黙に現れたのは白の仮面を付けた男、クロスだった。
「お前、何故アレンを探ろうとする」
「少しばかり興味がわいてきましてね。
元科学者だからか、元々の性格だったのか」
「・・・興味がわいただと」
「まぁ、こちらに来てワインを飲みましょうか」
エドルはワイングラスを手に取り、片方をクロスに渡すと教会の最前列の右に存在する長椅子に座る。
「さて、何故、どうしてアレン君を興味の対象に選んだ理由は三つ有ります」
「三つ?」
「一つ、呪いの瞳。
二つ、クロス。あなたと彼の関連性。
三つ目・・・彼が何者でどうして千年伯爵が見逃したのか」
クロスはグラスの中に有るワインを一気に飲み、左の最前列の長椅子に座る。
「瞳はアレンが呼んだAKUMAが付けた呪いだと言ったはずだが」
「ならその場に千年伯爵も居たはず。
私はAKUMAの製造法など見たこと無いですが、作りたてのAKUMAを放置しますか?
私ならしない。皮も調整が要らなくても、目撃者の口封じがね」
「親玉がそんな事をする必要が有るか?」
「・・・さぁ、どうでしょうね。
まぁ、千年伯爵が去った後にイノセンスが覚醒し、その呼び出した者を主の元に還した・・・
な、ら、ば!納得がいきましょう!
しかし、もし観ているのにイノセンスの所持者を殺さなかったのかまたはイノセンスを破壊しなかったのは何故なのか・・・?
興味がなかった?NO!彼の製作するAKUMAは確実にエクソシストを人間を殺そうとするため彼はイノセンスが嫌いだ。
じゃあどうして見逃した、何故?
彼に温情がある?NO!罪なき子供を確実に殺す、非情な者!一介の子供を見逃す訳がない!」
「つまり言いたいことは・・・あ~あれか?
千年伯爵のパターンがある者、
その答えのない可能性に基づいたクソ弟子に興味がわいたと?」
「その通り!」
ガタリとエドルは立ち上がると歓喜の表情を浮かべるが直ぐ様、残念な顔に変わる。
「しかし、しかしですよクロス。
アナタが答えたその答えでは、まだ足りないんです。
最終的に何故アナタが絡むのだと。何故アナタが彼を擁護するのかと。
しかし仮定で、とある線を考えました。彼、アレンに関連する人物が彼を護るように託され、彼を護っているのでは・・・と」
エドルは顔をクロスに向けるとニヤリと微笑む、いや黒い微笑と言った表現で見た。
「・・・お前、それを止めろと昔から言ったよな」
「おや、どんな事でしたっけ?忘れましたね、アナタとは口論しすぎてね」
クロスはカチンと葉巻の先を葉巻用のハサミで斬り、口に加えた。
「じゃあ言ってやるよ。お前は『興味をいくつも持つ癖は止めろ』と―」
クロスがカチンとライターに火を点け、葉巻に点けた瞬間。懐から対AKUMA武器ジャッチメントが取り出された同時にエドルに向かれて撃ち、エドルは何故か横に吹き飛ばされ、近くの個室、懺悔室まで吹き飛ばされた。
「―『知りすぎると殺される機会が増えることに気をつけること』だ・・・」
ゴトリとクロスの前に黒く鎖に縛られた柩が現れクロスは立ち上がりながら呟く。
「オン・アバタ・ウラ・マサラカト
・・・
ジャラリジャラリと鎖が落ちてゆき、柩の中から一体の女性の屍が現れる。
「おら、起てよ。死んだふりなんてカッコ悪いぞ」
「く、く、く」
元懺悔室にエドルの声が響く。そして
「クハ、クハハハハハ!!」
笑い声が教会中に響いた。
「いやー、やられたやられた。まさか始めから頭を吹き飛ばそうとするなんて激しいですねぇ」
「ぬかせ、素手でジャッチメントの弾を掴んだ野郎に言われたくねェ」
「それもそうか」
パンと手を叩く音が響くと女性の屍の足元が崩れ、地下室に落ちる。
「おいおい女を物理的に落とすとはァ外道になったなぁ・・・あぁ?」
「ハッハッハ、
それに無粋ですよ、男と男の殴り合いなのに間に女性が入るなど」
「すまんが野郎とはそういう熱い展開を望んでないが・・・
まぁ、良い。どうせお前は」
「えぇ、私が勝ったらアレン君の事を洗いざらい話してください」
「じゃあオレが勝ったら名誉あるとある保証人にさせてやろう」
「ハッハッハ、死んでも断る」
そしてエドルは地を蹴り、クロスの元に跳んだ。