IS十一巻、チラッと読んだけど、ははは愉快愉快。
私如きが、こんな事を言うのは何であるが、ガバリティ高いな……!
買ったか? ははは、買ったとも! 空挺ドラゴンズ三巻をね……!
「やあ、いらっしゃい」
気楽な声が聞こえた。だが、その声に返事は無い。
七人は目の前にある門を見上げて、固まっていた。
「でっか……!」
「これが更識家……」
「BUKEYASIKIか!」
「誠一郎さんのお宅より大きいですわ」
「更識と比べられたらな」
数百メートル続く漆喰造りの塀に、瓦葺きの屋根を持つ木造の門の前、呆気に取られる七人だが、そうも言っていられない。案内人が門の前で待っているのだ。
「入らないの?」
「ちょっと待ってね、簪。ここなの?」
「ん、ここが更識家。仙波と布仏も一緒に住んでる」
案内人の着物を着た簪が、普段と変わらぬ眠たげな目で、背後の屋敷を指し示す。開いた門の先には、純日本家屋に日本庭園、そして、
「「「「「いらっしゃいませ」」」」」
頭の先から爪先まで黒で揃えたスーツの男達が、玄関までずらりと整列していた。
誰も彼も顔に傷があったりして、明らかに堅気ではない事が伺える。
予想外の光景に、七人が気後れしていると、玄関から誰か歩いてくる影が見えた。
「やぁ~やぁ~、皆~」
間の伸びた声でゆったりとした歩みで、近寄ってくるのは、一夏達と同じ一年一組の布仏・本音だ。
本音は効果音が聞こえてきそうな調子で、黒服達の作る谷を歩き立ち止まると、軽い調子で頭を下げた。
「よく来たね~、いらっしゃ~い」
「おう、のほほんさん。今日ははいからさんだな」
「お仕事の制服なのだよ、おりむ~」
一夏が言う様に、本音の服装は袴姿。俗に〝はいからさん〟とも言われる格好に、白いフリル付のエプロンを着けている。
「あらあら、随分似合うじゃない」
「おお~、流石リンリン解ってる~」
「私をリンリンと呼ぶ奴は許さないけど、本音は許しちゃう」
「うきゃ~」
鈴が両の掌で本音の顔を挟むと、笑みと共に彼女の頬を上下左右に揉んだ。
背後で息を飲む音が聞こえた気がしたが、まあ気のせいだろう。鈴の力だと、本音の首がもげると思ったセシリアが顔を逸らしたが、強面の黒服達と目が合いまた逸らし、誠一郎の背中に隠れた。
そんな中、本音はシャルロットを見付けると口を動かした。
「あぉぉ、ゆっち~、お~お~あら、ろうようあぉ~」
「えっと、ごめん本音。なに?」
「ぽへっ、でゅっちー、よーよーなら道場だよ~」
鈴の両手から逃れた本音が、何故か傭平の居場所をシャルロットに伝えた。
よーよー?と首を傾げるシャルロットだったが、次第に誰の事を指しているのか理解したのか、顔が一気に赤くなった。
「な、なな、本音?!」
「お~お~、真っ赤ですな~、かんちゃん」
「ククク、まったく真っ赤ね」
ニヤニヤと笑う本音に、邪悪に微笑む簪。二人共、明らかに面白がっているのが解る。
「それで、シャルロットは置いておくとしてだ」
「え! ひどいよ、ラウラ!」
「まあ、待て。傭平は道場で何をしているのだ?」
慌てるシャルロットを掲げた右手で制しつつ、ラウラは簪達に問うた。
出迎えと案内人、本来なら使用人である本音か傭平が行う筈だ。なのに、案内人には簪。そして、彼女の直属の部下とも言える傭平は道場に居るという。
それは何故なのか。
「言うより、見た方が早いから、行こうか」
簪が眠たげな赤目を向ける先、更識家の奥に道場があった。
「有意義な時間を過ごしているよ。きっと」
〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃
傭平は、この日何度目かの視界の反転を見た。
抵抗は無意味、むしろ更なる危険に繋がりかねない。
なので、抵抗せず反転の流れに身を任せて落ちる。そして、来る衝撃に受け身を取り立ち上がった。
「……面白い技を拾ってきたな」
「どうにも、ここら辺りが今の限界ですかネ?」
「いや、まだ伸びるだろう。なにせ、お前は仙波だ」
予想外の言葉に、立ち上がった傭平の動きに遅れが出た。
それを見逃さず、相手は傭平から〝消えた〟。
目を剥く傭平、急ぎ構えを作るが、
「そら、こうか?」
貫手の四指が眼前にあった。
「本当に面白い技だな。学年主任で本音の担任の技だったか」
「ええ、これを越えろというのが卒業条件でしテ」
「ふむ、相手の知覚や感覚に呼吸、一つ一つから少しずつズレて、相手の認識の外に〝外れる〟。知っている理解している相手であればある程、容易となる技か」
言って、眼前の四指が消え、背後から首を刈り取る動きで手刀が来た。
「いや、鼓動に踏み込みや手の握りもか。傭平、お前達の学年主任は本当に教師か?」
「元世界最強で、現世界最強続行中と頭に付きますが、教師でス」
傭平は構えを解かず、目線だけを動かし、周囲を確認する。
己の首筋に手刀は無い。しかし、相手の姿も確認出来ない。
「これを越えろか。中々に無理を言うものだな」
また視界が反転し、受け身を取る間もなく、反転した視界を傭平は落ちた。
〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃
「なにあれ?」
「傭平が勝手に飛んだ?」
「いや、投げられたんだ」
九人が見る道場内では、道着姿の傭平が着流し姿の男相手に手も足も出ない状況が続いていた。
専用機持ち組の中で、生身では一番の傭平が反応すら出来ずに転がされている。
「だ、大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫~、よーよーなら平気だよ~」
「ほら、すぐ立った」
「て、あれ、織斑先生の技!」
「チートや、チートがおる」
更識家に来てから、驚きの連続だったが、今繰り広げられている光景が一番の驚きだった。
着流しの男が傭平を投げるが、傭平はまた反応出来ずに転がされている。あの男は一体何者なのか。
七人は簪と本音を見た。
「父さん」
「先代様だよ~」
「そうだ」
七人は突然聞こえた声に振り返ると、着流しの男が立っていた。
「やあ、久々の客人、それも簪達の友人達。本音、客間に通しなさい。丁重にもてなさねば」
簪の父、先代楯無はにこやかに笑った。
次回
うっかり話しちゃった。よーよーの過去