マイボス マイパートナー   作:ジト民逆脚屋

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はい、次回予告詐欺のお話です。
よーよーの過去はまたの機会に!

この世界線では亡国機業は居ません。無人機は開発されていますが、開発途中なので、普通に暴走しました。
銀の福音もまあ、似たようなノリです。

そして、キャラのイメージはChoco先生か川上絵またはさとやす絵、お好きなイメージでどうぞ。

さとやす先生、画集出さないかな?


更識家にて

「いや、よくいらっしゃった」

 

着流しの男、先代楯無がにこやかな笑顔を浮かべながら、七人を迎えた。

彼はきちんと整えられた顎髭を撫でながら、人数分の座布団が敷かれた畳の間に、まあ座れと七人に手招きする。

 

「ささ、座って座って。話をしよう」

 

先程の道場での様子とはうって変わって、気さくな様子で話し掛けてくる。

 

「はあ、ではお言葉に甘えて?」

「うんうん、もうすぐ茶と菓子がくるから、それまで話をしよう」

「は、話ですの?」

「そうだな。学校では、簪達はどうだ? 仲良くやれてるか? 簪も傭平も本音も、少し変わっているからなぁ」

 

先代楯無の言う通り、三人は中々に変わっている。

マイペースで、価値観が独特で、なんというか変わっている。

だが、それを言うなら

 

「大丈夫ですよ。学園に居る人、全員変わってますから」

 

誠一郎の言う通りに、IS学園に所属している人間は一人残らず変わっている。

生徒も教師も、そこに働く人達全員だ。

 

「第二次大戦中製造の食堂のトメ婆さんとか、老人性の震えで汁物溢さないか不安になるし、時々電源落ちた様に立ち止まる事があって、食堂でスリリング演出してくれるわね」

「うん、僕が五目うどんの三つ葉が苦手だって言ったら、五目うどんが三つ葉うどんになって出てきたよ……」

「好き嫌いは許さない。だけどやっぱり無理なら、次もう一度言いなさいな。トメ婆さんの格言だ。……二回言っても、マジ忘れされて、大辛塩鮭定食が納豆定食になったが……」

「まあ、そこら辺のハラハラどじっ子婆さん振りが人気の秘訣だな」

「中々、スリリングな食堂なんだな……」

 

先代楯無は困惑した。学園での家族の様子を聞いたら、食堂の婆さんの話が返ってきた。何時から、自分の家族は老人になったのか。

だが、はっきり解る事がある。

 

「しかし、初めてだな」

「えっと、何がですか?」

「あの子達が、家に誰かを招待したのがね」

 

己の言葉に頷く七人が居る。素直な子達だと思う。

あの三人が招待したのだ。きっと、良い子達なのだろう。

〝更識〟と聞けば、すり寄ってくる者や離れていく者が居る中、この子達はそんな事関係無しに、簪と傭平に協力してくれていると、本音から聞いている。

 

「すげー家だもんな。警備会社って儲かるんだな」

「こら、一夏。……すみません」

 

隣に座るツインテールの小柄な娘、確か凰・鈴音と言った筈。学園生徒第二位の腕は確かなのか、あの細腕でのショートフックで肉が破裂する音が、男子二人の内で一番体格の良い少年の脇腹から聞こえた。

 

仕事の経験上、人体からしてはいけない音第一位だったが、少年が一瞬マジ顔で停止した後、噎せるだけで済んだので大丈夫なのだろう。

 

と、襖を開ける音が聞こえた。

 

「父さん、何を話しているの?」

「ああ、かんざ……!」

「ボス?! 先代!」

 

着物姿の簪が、先代楯無の顔面目掛けてドロップキックを見舞った。

湯飲みや茶菓子を乗せた盆を持った傭平が驚愕する正面、簪は着物の裾を乱さず着地、いつの間にか開いていた障子戸の向こう、庭に着弾する先代楯無を簪が見送ると障子戸が勝手に閉まり、傭平の持つ盆から湯飲みを持って一口、一息ついて言った。

 

「皆、お待たせ。お姉ちゃんを沈めるのに、時間が掛かりすぎた」

 

どうやら、二人の楯無が庭に沈んだ様だ。

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

「ボス、やり過ぎですっテ」

「だって、父さん要らない事言うから、ついうっかり」

 

作務衣姿の傭平が簪を咎めるが、簪は平然と故意ではなく、衝動的な行動だと言い切った。

 

「かんちゃん、やる~」

「本音も止めてくださいヨ」

「え~、無理っぽ~」

「うぬヌ」

 

傭平は唸るが、いい反論が思い付かないのか、諦めを顔に浮かべて溜め息を吐いた。

 

「さて、文化祭の話をしましょうカ」

「「「「あれ無かった事にするのかよ!」」」」

「まあまあ、更識では日常ですんデ」

 

言って、傭平は湯飲みと茶菓子を全員の前に並べていく。

茶は緑茶、茶菓子はえらくカラフルなマカロンだった。

 

「簪、これ、大丈夫?」

「大丈夫、着色料は無添加の自然由来、流行りものが好きな父さんが買ってきたやつ」

「そうだぞ、簪! 父さん、お前が友達連れてくるって聞いて、母さんと無意味に頑張ったんだからな!」

 

畳の間の一枚をひっくり返し、先代楯無が飛び出てきたが、直後何本もの黒服達の腕が伸びてきて、すぐに床下に引きずり込まれ、傭平がひっくり返された畳を直しに入った。

 

「……一応、聞くぞ? いいのか?」

「ん、箒。問題ない、通常運転」

 

簪が何時の間にやら持ち込んだドーナツを食べながら、箒に答え器を差し出す。箒はその中から、半分をチョコレートでコーティングされたものを手に取った。

一口かじるが、ドーナツ特有の油気が無く、柔らかくしっとりとした食感と甘さが舌に乗る。

 

「シャルロット」

「え、なに?」

「これが傭平の好物」

「……そうなんだ」

 

ニヤリと口の端を吊り上げるシャルロットに、眠た気に二つ目のドーナツを手に取る簪。

畳を直し終えた傭平が振り向くと、あっと声を挙げた。

 

「あ、ボス! それ、俺が自分用に買ってきたやつじゃないですカ!」

「私の目と鼻が利く場所に隠したのが間違い」

 

二つ目を平らげ、三つ目を取ろうと手を伸ばすが、器が無い。簪は何故かと器を探すと、目を弓にした鈴が器を取り上げていた。

一夏が摘まもうと手を伸ばしたが、二発目のショートフックで沈んだ。

 

「それ以上はダメよ、簪。晩御飯入らなくなるわよ?」

「私の腹は、ドーナツ三つでどうにかなる程狭くない」

「はい、傭平」

「ああ、有り難う御座います。シャルロットさん」

 

鈴が取り上げていた器を、シャルロットが傭平に手渡す。

 

「いい、簪。貴方の旺盛な食欲は知ってるし理解もしてる。だけどね、食べ過ぎはダメよ。節制しなさい」

「鈴、鈴、話、話が進んでない」

「あら、ラウラ。安心しなさい。話は進むわ。誠一郎がね」

「え?」

 

いきなり振られた誠一郎が己を指差し、鈴を含めた全員が頷く。

その隙に、全員の手前に置かれた器に盛られたマカロンに、手を伸ばそうとした簪が鈴に手をはたかれていた。

 

「はい、では文化祭だ。今年は倉持案件打開の為に、一年合同だ」

「二年、三年の協力を得るためには、二学年に勝たないといけないんだったか?」

「まあな」

 

簪の専用機〝打鉄弐式〟の開発は最終段階に入ったが、まだ気は抜けず、経験の浅い一年だけでは間に合わないかもしれない。そこで、経験豊富な二年や三年に協力をしてもらおうと、傭平達が話を持ち掛けたのだが

 

「IS学園の二年、三年ともなれば、曲者具合が堂に入ってるからな」

「文化祭の結果次第で、全面協力か協力かが決まる訳だな」

「で、何をするのですか?」

 

セシリアの言葉に、男三人は口を揃えてこう言った。

 

「「「屋台村だ」」」

「屋台村? なんだそれは」

 

ラウラが疑問する。

 

「こう、屋台がいっぱいあって、それを好きな様に巡るイベントでス」

「そこで、各クラスで好きなメニューの屋台を出してもらおうとな」

「個人も、クラス内のグループでもOK。屋台を出したい人は、織斑先生か山田先生、各クラス担任に届け出てくれ」

「あ、屋台に関しては、家で使っていたお古を、学園に貸出しますんデ」

「その売り上げで勝負という訳か?」

 

箒が言うと、傭平が〝一年屋台村計画書〟というものを、作務衣の懐から取り出した。

傭平は計画書のページを捲ると、楕円形の図形が描かれたページを見せた。

 

「理想図ですが、学園の校庭を利用して、出入り口を各所に受付を配置、客数でも勝負しまス」

「ガチね。二組は私主導で簡単な飲茶を出そうかしら」

「屋台の注文はお早めに、設計組み立ては更識が請け負いますかラ」

 

傭平が言えば、床下から何やら争う音がする。

全員が暫し床を見詰めていると、音が止んだ。ややあって、また違う畳がひっくり返され、先代楯無が飛び出てきた。

 

「屋台の注文の代金は、簪達のお小遣いにしていいからなっ!」

 

飛び出た先代楯無の尻辺りから、高圧電流的な音がして、一瞬痙攣した先代楯無が黒服達の腕により、再び床下に引きずり込まれた。

 

「……屋台の設計組み立ては、中国から亡め……、移住してきた金氏が請け負う」

「あ、今の流す感じか?」

「しののん、慣れるの早いね~」

「家も、姉さんと父が似たような事をしていたからな」

 

一口茶を飲み、マカロンを口に放り込む。香ばしいソースと鰹節が口内を駆け抜け、青海苔が微かに鼻にすり抜けてきた。たこ焼きだ。

箒は黙って、本音から茶のお代わりを貰い、気付いた本音が飲みやすい温度になった茶を湯飲みに注いでくれた。

一気に飲み下し、マカロンの器を気付かれない程度、セシリア寄りに寄せた。

 

「箒、無理はするなよ?」

「大丈夫だ、誠一郎。多少面食らったが、味はちゃんとしていた。……帰りはたこ焼きを買って帰ろう。口直しだ」

「お、おう」

「それでまあ、家はその手の専門家が何故か多いから、金氏は何故か移動屋台とかを異様に堅牢に作るのが上手い」

「そ、そうなんだ」

「ん、放っておくと、防弾シールドやG.P.S(衛星方位測定システム)や脱出艇を中に仕込む本格派」

「簪、それ屋台じゃないよ! 何か別のものだよ!」

「今年の地域夏祭りに出した屋台は、高機動型で装甲を薄くして、内部を電子管制にしたから、指揮官とパイロットの二人でも大量人数を相手に出来たのが強かったですネ」

「傭平、それなんの屋台?」

「ははは、シャルロットさん。常識的にクレープ屋ですヨ」

「常識って飛び道具だったんだ……」

 

シャルロットが肩を落とし、更識組が首を傾げた。

 

「変なシャルロット。まあ、置いといて、今回はロシアから亡命してきたマッスルスキー兄弟とショタスキビッチ姉妹が手伝ってくれる」

「亡命を隠そうよ!」

 

シャルロットが思わず叫び、傭平が宥めた。

 

「シャルロットさん、シャルロットさん、更識ではこれが常識なんでス」

「僕、心折れそうだよ……」

 

シャルロットが項垂れ、傭平が頬を掻いた。文化祭の作戦会議はまだ続く。




次回

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