マイボス マイパートナー   作:ジト民逆脚屋

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やあ、久し振り。
今回は〝出雲〟一夏と〝風見〟鈴音の二人でお送りします。

あと、前回に悪役と尻神様をちらりと出してたけど、誰か気付いたかな?

そして、傭平の新型機には尻尾生えないからね?

「今まで尻尾が無かったのが、不思議なくらいですヨ」

とか言わないからね?


追記

最終章小ネタ

簪¦『馬鹿で夢見がちな大人達に思い出させてやれ! ここは私達子供の場所だと! 私達の秘密基地を壊そうとする大人達の顔をひっぱたきに走れ! GO AHEAD! GO AHEADだ!』


〝HAI〟合流

規則的な重低音が響く。

体格の良い男が革手袋を嵌めた手でハンドルを絞れば、重低音は更に低く重く音を響かせ男に力と振動を届ける。

男がその音と振動に笑みを浮かべると、視線の先に小さな人影が何人かに囲まれているのが見えた。

 

「オッス、お待たせ」

 

男は単車を路肩に止めると、囲まれている小さな人影に呼び掛ける。

囲んでいる男達が、単車の男に邪魔をするなと視線を向ける。しかし、単車の男はそれらを一向に気にした様子無く、男達の隙間を抜けてくる少女に話し掛ける。

 

「わりぃ、申請と改造に時間食ってさ。鈴」

「成る程、人が下らないナンパ受けてる時に、気ままに単車転がしてた訳ね? 一夏」

「おっと、悪意ある解釈だな。どう埋め合わせすればいい?」

「あら、下手に出てきたわね。尻に敷かれたい?」

「鈴の尻なら大歓迎だな。だが今は」

 

言って、一夏は自分の背後を親指で示す。鈴が見れば、一夏が駆る単車はタンデムシートに変更されており、シートをこれに換えていたから遅れたのだろう。

鈴はシートに腰掛け、己をすっぽりと隠してしまいかねない背中に身を預ける。

 

「お?」

 

ナンパ男が文句を言おうと前に出るが、体を向き直した鈴が、一夏の胸ぐらを掴み頭を抱える様にして下げさせ、下がってきた唇を深く啄み、男達は止まった。

 

「ま、そういう訳だから、別の相手見つけなさい」

「悪いな。この良い女は俺の女なんだ」

 

唇を啄まれていた一夏がエンジンを掛け直し、一夏の唇を離してシートに座り直した鈴を連れて場を後にすれば、そこに残ったのは呆気に取られて何も出来なかったナンパ男達だけだった。

 

「んで、今日は新車のお披露目?」

「それもあるが、今日は〝HAI〟だ」

「傭平の機体?」

 

鳴り響くエンジン音と風切り音に遮られない様に、鈴は普段より声を上げて一夏に問い掛ける。

 

「上手くいってるみたいだが、傭平が求める反応速度にまだ足りないらしい」

「ふーん」

「あれ、興味無さげだな」

「傭平の事だし、シャルロットがなんとかするでしょ」

「それもそうか」

 

少し早い落ち葉が舞い始めた道路を、二人乗りの単車が駆け抜けていく。時刻は正午少し前辺り、〝HAI〟に着く頃には昼過ぎ程になっているだろう。

〝HAI〟の食堂で昼は済ませよう。

鈴が密かに決めると、一夏が単車の速度を緩めた。

 

「なに? 信号?」

「いや、あれ」

 

単車を脇に止めて一夏の指差す先には、何処かで見覚えのある一部以外は小柄な姿が見えた。

 

「山田先生よね?」

「山田先生だな」

 

一年一組副担任山田真耶が、秋の町中をウロウロしていた。

一体何をしているのか。

 

「あれ、何してると思うよ?」

「学園祭の買い出し?」

「まだ日あるぞ?」

「日にち間違えてんじゃない?」

「……有り得るな」

 

二人で見る真耶は、食料品店をあっちにフラフラこっちへフラフラ、見ている方が不安になる動きだった。

 

「どうするよ?」

「面倒だし、ほっときましょう」

 

今日は〝HAI〟、面倒はゴメンだ。

一夏は単車を発車させ、一路〝HAI〟へと向かう。

 

「そう言えば、なんで〝HAI〟に行くの?」

「ほら、この間バックアップ企業鞍替えするかとか話したろ? それで、一応の顔見せするかって、誠一郎がな」

「ああ、それでね」

 

二人を乗せた単車は、一夏の操作に従って秋の乾いた路面に、しっかりと噛み付き加速の唸りを上げていく。

 

「飛ばすじゃないの」

「折角の新車だ。飛ばしたくならねえ? そこんとこどうよ?」

「新しい玩具買った簪みたいな感じ?」

「おう、それそれ、その感じ」

 

夏とは違う秋の風に、確かな心地好さと僅かな冷えを感じながら、鈴は目の前の背中に、体を沈み込ませる様にして深く抱き着く。

鈴が知る限りでだが、同年代の男子の誰よりも分厚い筋肉で覆われた体、出会った頃から体格はよかった方だが、剣道等に打ち込み始めてから、その効果が目に見えて現れた。

 

「あ、鈴。その感じで来られると、鈴の感触が良い感じで伝わってグッド!」

「前見なさい、締めるわよ?」

 

ほんの少しだけ、抱き着く腕に力を入れると、肋骨が軋む音と感触が伝わり、呻き声が僅かに聞こえた。

鈴の膂力は、幼少期からずば抜けていた。鈴のほんの少しは他人の本気であり、加減というものが出来なかった。

その事で虐められもしたが、やられたらやり返す性格の鈴に、ちょっかいを掛ける者はすぐに居なくなった。

 

「鈴、鈴、折れる」

「あんたの骨が、この程度で折れる訳ないじゃない」

「信頼が辛いな……!」

 

その辺りだったか。鈴にちょっかいを掛ける者が減り始めた辺りで、鈴は一夏達と出会った。

始めは〝異様に頑丈な変な奴〟が現れたと、そういう風にしか見ていなかった。鈴の本気を受けても、倒れはするがすぐに立ち上がってくる。

そしていつの間にか一緒に居た、五反田弾と御手洗数馬達とつるむ様になり、いつの間にか惹かれ始めて告白して今に至る。

 

母の仕事と実家の関係で、中国に引っ越す事になったりして、一度離れたが、再会しても相変わらずの一夏で安心したりもした。

 

「しかし、相変わらず運転上手いわね?」

「弾達と乗り回したりしてたからな!」

「あら、アウトロー気取りかしら?」

「無免許はアウトローじゃねぇか?」

「私の男が無免許でアウトロー気取るとか、恥知らずやらないでほしいだけよ」

「安心しろ。専用機持ち特権で、早目に免許取ったからな!」

「知ってるわ」

 

性格は相変わらずだったが、鈴が知る一夏よりも更に鍛えられ、背も伸びていた。

そんな一夏を見て、変わらぬ自分が嫌になりそうだったが、出会い頭で抱き締められて、

『やっぱ、鈴は鈴だな。安心した』

そう囁かれて、そんな些細な嫌気は何処かへ消えた。

 

「傭平とシャルロットも、早くくっつけばいいのにな」

「そこは傭平次第ね」

「あ、やっぱり?」

「傭平がシャルロットに対する気持ちを、いまいち理解出来てないってのが厄介よね」

 

鈴は一夏を掴む手に力を入れ直す。彼の背中越しに見える風景には、白い建物の群れが見えてきていた。

 

「ま、それも本人達次第だわな」

「そうね」

 

成るように成るだろう。二人はそう結論を出し、白亜の群れへと向かった。

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