今回も伏線張るよ?
あと、境界線上のホライゾン新刊は買ったかな?
……ふふふ、言わなくても解っているよ? 勿論、買って読んでいるよね?
……開幕からぶっぱなしてんな、おい!
「よっす」
〝HAI〟カフェテラスで、更識簪がランチプレートを食べていた。
「ボス、弐式の開発ハ?」
「詰まった」
傭平が聞くと、簪はあっけらかんと言い放ち、新たなプレートへフォークを伸ばした。
「簪、何時から居たんだ?」
「ついさっき」
「で、これか」
早瀬達が見るテーブルには、積み上げられた大小不揃いな皿が、不恰好な塔を作っていた。
「〝HAI〟は中々にチャレンジャー、この〝鰯の洋風照り焼きパンケーキ〟とか、意外なマッチング」
「そりゃよかった」
焼き色のついた鰯の半身を切り分け、パンケーキと一緒に口に放り込む。
それを飲み下し、プレートを半分空にすると、側にあったコーヒーカップを空にする。
「それで、話って?」
「まあ、待て。まだ役が揃ってない」
「あ、そう。それなら、この〝焼きうどん御膳〟追加で……!」
簪が注文を伝えると、店員が愛想よく手を上げ、了承の意思を見せた。
「簪、食べ過ぎよ?」
「カーちゃんマジ勘弁、昨日の晩からまともに食べてないの」
「あんたね、開発に没頭するのもいいけど、ちゃんと食べなさいよ」
「鈴鈴、言ってる事が反転したぞ?」
一夏が言えば、鈴は手のひらをひらひらと振り、頬杖をついた。
「いいのよ、私だから」
「鈴、流石だな……!」
「当たり前でしょ」
鈴がさも当然と言い切れば、焼けた鉄板に乗ったうどんが、簪の目の前に置かれる。
「ホントにうどん焼いてきやがった……!」
「焼きうどんって、こんなだっけ?」
「いや、違うと思いますヨ……?」
焼けた鉄板の上で、水で練った小麦粉を細く切って茹でた麺、真っ白なうどんが焼かれていた。
簪が箸で一本摘まめば、いい感じの焦げ目がついている。ソース等の味付けが為されていれば、それはそれは食欲をそそっただろう。味付けが為されていれば。
「おい、誠一郎?」
「いや、そのな? カフェのメニューは管轄外だ」
「うりゃ」
全員が引くそれに、簪は引く事無く、テーブル備え付けの醤油を回し掛けた。
「ボス、少し躊躇いましょウ?」
「うどんに躊躇う理由が解らない。ほぅら、醤油の焦げる香り……!」
焼けた鉄板に醤油を垂らせば、醤油の水分が蒸発し、独特の香気がテラスに漂う。
その香りを、手で扇ぎ拡散させる。
「なあ、鈴」
「無駄遣いはダメよ」
「じゃあ、何故か会社内のメニューにあるカップルプレート頼むか」
「やだ、もう! 照れるじゃない!」
口の端を吊り上げ笑う簪を他所に、カップルプレートを注文した一夏の肩を、鈴の右手が叩く。
人体からしてはいけない打撃音が連続して響くが、誰も気にせずメニュー表を見る。
「ふはは、誰もこの醤油の焦げる香りには逆らえまい……!」
「いや、なんで簪は魔王ムーヴしてるの?」
「シャルロットさン、ボスは弐式の開発が進んでないから、八つ当たりですヨ」
「そうなんだ」
「はい、そこー。うるさーい」
「「うわー」」
メニュー表を団扇代わりに、シャルロットと傭平に向けて扇ぐ。
醤油の香りが二人を直撃している横で、メニュー表を見ていた誠一郎が、そこで気付いた。
「おーい、こっちだ」
「こっちか」
「なんだか、凄く醤油の良い香りがしますわね」
「ああ、簪の八つ当たりテロだ」
「成る程」
合流したセシリアと箒が、誠一郎の両隣の席につく。
ラウラがいつの間にか頼んだ珈琲を口に含み、簪が焼きうどん御膳を半分程平らげた頃、誠一郎が切り出した。
「先ずは文化祭だな。準備はどうだ?」
「二組は飲茶の屋台がメインね。後は、グループでフリマ」
「四組は粉ものメイン。味見は任せれ」
「ボス、それ目当てですよネ」
「一組は地味に国際色豊かだからな、色々出すぞ」
「一組だけで、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、海外組をメインに屋台を出す」
「味見は?」
赤だし味噌汁を啜り、簪が誠一郎に視線を向ける。
誠一郎はその視線に、冷やを一口含み、口を湿らしてから答えた。
「一度場所を設けて、試食会でもやるか?」
「超賛成」
「簪、食べ過ぎはダメだよ?」
「シャルロット、食べ過ぎじゃない」
「ええ……?」
困惑するシャルロットを置いて、余った白飯にお新香、鉄板に残った焼けた醤油と鰹節を乗せ、熱い茶を掛けて、茶漬けを簪は流し込んだ。
「……山葵が欲しかったかな?」
「また、地味に渋い要求をするな」
「もっと言えば、海苔も欲しかった」
空になった茶碗を盆に置き、ほっと息を吐く。
どうやら、一心地ついた様だ。
「で? 話は文化祭だけ?」
「いや、そうじゃないさ。ラウラ」
「うむ、これだ」
「あ、やっぱり、こうなるのね」
ラウラが数枚の資料をテーブルに広げる。
その内容に、専用機持ち全員が納得の意を示した。
「避けるのは、無理か?」
「無理だな。現に、学園はその意思を示していない」
「学園次第?」
「というより、何時かはこうなりますわ」
「面倒な話ですネ」
傭平が糸目を更に細めて、唸り声を上げる。
ラウラが用意した資料で判断するに、全員共通の予想は覆りそうにない。
「まあ、どんなに遅くても今年中だ。そして、予定日だが、十二月二十五日だ」
「クリスマスかよ」
「はしゃぎたい日に、おおはしゃぎね」
「全くだな」
鈴がヘラヘラと笑みを浮かべれば、隣の一夏が肯定する。
「でもさ、避けられなかったのかな?」
「無理ですヨ。アレを学園が保有した以上、連中は口実を手に入れまス」
「だからこそ、学園の訓練機を増やしている。そして、訓練時間もな」
ラウラがニヤリとした笑みを吊り上げ、もう一つの資料を示す。
そこには、現在の学園の訓練機数と、その慣熟訓練時間が事細かに記載されていた。
「三組のファルーデは、重量機の扱いに長けている。是非とも、アイゼン・リッター隊に加えたい」
「じゃあ、二組の日吉さんを、メイルシュトローム隊に戴きたいですわね」
「一組からリアーデをテンペスタ隊、四組からは茅部がラファール隊か」
「打鉄隊は私、他遊撃隊を傭平が」
「ラファール隊は僕が」
次々に役割が決まり、それに伴う訓練予定を組んでいく。
そして、一通りの予定が組み上がり、誠一郎が予定表をテーブルの中心に置いた。
「取り合えず、今はこれでいくぞ」
「了解。後は、倉持か?」
「簪さん、弐式の状況は?」
「少し詰まってる。セシリア、後で手伝って」
「構いませんわ」
「それと箒、明日時間ある? 薙刀の動きを確認したい」
「任せろ」
「後は、シャルロット」
「え、僕?」
簪がいきなりシャルロットを呼び、シャルロットはそれに若干驚きつつも、簪に返事を返す。
「次の休み、予定ある?」
「次の休み? 予定は無いけど」
「なら、家に来て。傭平の両親が会いたがってる」
「へ?」
気の抜けた声が、〝HAI〟カフェテラスに転がった。
次回
仙波家