マイボス マイパートナー   作:ジト民逆脚屋

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お披露目

〝HAI〟所有アリーナは、ある意味で強い緊張感に包まれていた。主にデータ計測に使われる観覧席で、誠一郎は携帯端末を手に、画面に並ぶ数字をタッチペンで弾いていく。

 

「よっす、誠一郎」

「一夏、軽いな」

 

若干、緊張した面持ちで誠一郎が言えば、一夏は両手を肩の位置まで挙げて、溜め息と共に返事を吐き出した。

 

「なーにが、緊張してんのは変わんねーわ」

「ああ、やはりか」

「つか、自信は?」

「徹底的に弄り倒したラファールに、バカみたいな武装取り付けたんだ。あとは、傭平次第だな」

「傭平次第かよ。他力本願ってやつか?」

「そう言われても仕方ないか。……事実そうだしな」

 

溜め息と同じほぼタイミングで、長い欠伸を漏らす誠一郎。彼も〝HAI〟の御曹司をしながら、個性の強い専用機持ちの纏め役までしている。疲れが溜まっているのだろう。

 

「これが終わったら、連中にはたっぷり支払いをしてもらうぞ……!」

「おーう、頑張れよー」

「……一夏、随分雑な対応だな。おい?」

 

確かに雑な対応だが、一夏としては今の誠一郎より、これから始まるテストの方が重要なのだ。

誠一郎には悪いが、これから行われる傭平の機体、それの動作テストの相手が、まさかの鈴音なのだ。

 

「何を考えて、鈴を相手に指名したんだか」

「簪らしいぞ」

「わーお」

 

一夏は軽くおどけてから、観覧席から立ち去る。その背中を見ながら、誠一郎はタブレットを椅子に置いて、合掌する。

 

――一夏、成仏しろよ――

 

もしもの為に、箒、セシリア、ラウラの三人には、二人が居るピットとは、別のピットで待機してもらっている。

無いとは思うが、万が一鈴音の歯止めが効かなくなり、もしもワンオフアビリティが発動した場合、この三人に一夏を足して、何とかなるかというところだろう。

簪は機体の最終調整、誠一郎は新型パッケージのマッチングで、今回は戦力外だ。

だが、マッチングが早く終われば、誠一郎も動作テストを行う事になる。

 

「はあ~、明日にならんかな……」

 

扱い慣れない装備で、鈴音と戦うの避けたい。

タブレットの画面には、今現在の誠一郎の機体と、武装のセッティングが行われている傭平の機体の状況が、事細かに記録されていっている。

今、傭平の機体は最終チェックの最中の様だ。今頃、ピットではシャルロットと簪が、あの装備を囲んでいるのだろう。反対のピットでは一夏と鈴音が、何か話でもしているのだろう。

 

 

侍娘 ¦『誠一郎、私達の準備は完了した』

御曹司¦『そうか。あとは傭平側の準備か』

兎軍人¦『しかし、誠一郎。傭平の機体だが、ラファールの改良型だな?』

御曹司¦『ああ、ラファールにアイゼンリッターのフレームを、補強としてある』

セシー¦『それがどうかしたんですの?』

兎軍人¦『いや、送られてきたデータが、ラファールにしてはな』

侍娘 ¦『む? これがそうか。……何か、ラファールにしてはゴツくないか?』

 

 

箒が紅椿のディスプレイに写る画像を見比べ、素直な感想を述べる。確かに、箒の言う通り傭平の改良機は、通常のラファールに比べ、幾らか骨太になっている。

 

 

御曹司¦『その理由は、今から分かるさ』

 

 

誠一郎が言えば、ピットから鈴音が出てくる。手には、大型青竜刀〝双天牙月〟が、連結されて握られている。表情に力みは無く、良い意味で緊張感があった。

 

 

龍母 ¦『でー、何時になったら傭平出てくんのー?』

一季 ¦『ははは、時間が掛かるみたいだな』

御曹司¦『もう少し待ってろ。最終セッティングに手こずってるらしい』

龍母 ¦『早くしてよ。今日、セールなのよ』

約全員¦『お前も大概だな……!』

首領飾¦『そんな貴女に朗報……!』

弾薬庫¦『やっと出来たよ……!』

雇われ¦『お待たせしましタ』

 

 

その言葉と共に、傭平がピットから飛び立つ。眼前に立つ姿は、通常のラファールとは違う。ラファールに多用される平面装甲ではなく、曲面装甲を採用し、全体的に丸みを帯びている。それに加え、流用されたアイゼンリッターのフレームの影響からか、ラファールとは一目では判別し辛い。

 

「傭平、あんた、それ……」

「まあ、ちょっと、無茶苦茶ですよネ」

 

だが、それでもまだラファールだと判別出来る。アリーナで、シャルロットや簪、誠一郎以外の全員を困惑に誘うものがあった。

 

「多目的武装腕〝ヘカトンケイレス〟、俺が並以上になる為の腕でス」

 

傭平の右腕、その前腕を覆う装甲だ。生身の鈴音よりも大きい円筒形の異形の腕、双天牙月すら握り潰しそうな、強力な四本のクローを備えたそれは、いくらISを装着しているとはいえ、人が扱ってよいものとは言えない。

 

 

一季 ¦『はい! 端的に申しまして、とてもロマン武装であります!』

首領飾¦『欲しい?』

一季 ¦『正直、雪片弐型より……!』

首領飾¦『でも、ダメー!! 一夏はその段片ブンブンしてな』

一季 ¦『くそー! 何でだ!? 何で、白式には刀一本しかないんだ……!?』

 

 

盛り上がる外野を他所に、傭平が武装腕をゆっくりと振り上げていく。鈴音は早々に、あれを連結した双天牙月で受ける事は不可能だとし、分離し両手に構え直す。

 

「では、動作テスト、宜しくお願いしまス」

 

言うや否や、背部スラスターによる加速で、一気に互いの距離に入る。不意を突いた、とは思わない。その証しに、振り抜いた筈の武装腕は止められ、あの〝小暴龍〟鈴音と鍔迫り合いになっている。

 

「傭平、あんたね。無茶苦茶にも程があるわよ?」

「それでも、これからを成す為には、この腕が必要なんですヨ……!」

 

無理矢理振り抜こうとした巨腕が、青竜刀に弾かれるが、即座に戻し、振り抜かれる青竜刀を防ぐ。激音と共に、莫大な火花を撒き散らし、激突を繰り返す。

何度目か、裏拳を防いだ青竜刀の一本が割れ砕けた。

 

「……そうね。なら、その(覚悟)、私が試してあげるわ……!」

「なら、試されましょウ……!」

 

残る青竜刀の柄を握り潰した鈴音が、今まで数多の敵を打ち砕いてきた拳を握り、傭平が振るう覚悟と激突した。




ビッグオーとか、紅蓮や白炎、果てはZ先生。あんな片腕武器はロマン。
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