マイボス マイパートナー   作:ジト民逆脚屋

25 / 52
男が集えば

すっかり天候も秋めいて、学園祭の準備も佳境に入ろうかというある日、学園内にトラブルが起きた。

 

「どう? 直りそう?」

「あ~、これ無理だわ」

 

学生寮内にある大浴場、その給湯機が故障した。それだけなら、まだよかったが、作成中の屋台の稼働テストによる流れ弾で、給湯パイプまで破損。

急ぎ業者に連絡を取ったが、替えの部品を現在切らしており、今からでは、どれだけ急いでも修理は、明後日以降になるという話だ。

普通なら諦めるが、しかしここIS学園。ならばと、整備課の生徒達が道具や部品を持ち寄り、給湯機と配管を囲み、あれやこれやとやり始めたのが、今より一時間前。

そして、やはり無理だと諦めた(飽きた)のが、つい先程五分前。

 

「いやまさか、おでん屋に偽装した、警備用の出張セントラルステーションが暴発するとハ……」

「傭平ってよ、たまに日本語がおかしくね? そこんとこどうよ」

「どうよと言われてもな。……マイルドに言えば、文化の違いだろう」

 

風呂を、自室のシャワーで済ませる者が多い中、世界でもたった三人の男性操縦士達は、IS学園がある学園都市島内にある、二十四時間営業の銭湯〝永世ひまわり〟へと向かっていた。

 

「まあ、更識の常識ですからネ」

「その一言で、全てを済ませるな」

 

賑わう学園都市、来月には学園祭、この島の書き入れ時が近付いてきている。

日本各地、世界各国から、人が入り乱れる数日間は、宿泊に食事、土産等、学園都市島の運営費を稼ぐ、絶好の機会だ。だから、学園でイベントがある前には、大量の物資の流入があり、その為に少しでも古い物資は、処分する為にセールが開催される。

この時期は学生にとっても、安く食料品などを手に入れられる嬉しい時期だ。

 

 

龍母 ¦『一夏、帰りに牛乳と卵お願い。あ、あとバニラエッセンスも、いや、バニラビーンズの方が香りが良いかしら?』

一季 ¦『お、何だ? なに作るんだ?』

龍母 ¦『カスタードプリン、簪が食べたいって駄々こねてるわ』

一季 ¦『俺も食いたい』

龍母 ¦『はいはい、全員分作ってあげるから』

雇われ¦『すみません、凰さん。ボスがご迷惑を……』

龍母 ¦『いいのよ。簪はこれから忙しいんだし、今は甘やかしてあげるわ。というか、傭平。あんたも明日から忙しいんじゃない』

雇われ¦『明日から本番ですヨ。まずは三組を黙らせまス』

 

 

右の拳を強く握れば、僅かに腕全体に引き攣りがあった。前回の武装テストから、右肩はまだ完全には回復していない。

だが、傭平は仙波、更識の右腕だ。この程度、試合に支障は無い。

 

「傭平、あまり無理はするなよ」

「これは無理じゃないですヨ」

「ま、俺達はやれる事をやるだけだ。けどよ、傭平。あまり、シャルロット泣かすなよ?」

「……善処しまス」

 

進んだのやら、進んでいないのやら、誠一郎と一夏は顔を見合せ、仕方ないと肩を竦める。

傭平もシャルロットも、互いの距離の詰め方が、下手というか独特というか、中々進まない。

しかし、それはそれで、いいのかもしれない。

 

「色々話はあるが、まずは風呂だ」

 

浮かぶ向日葵を看板にした銭湯〝永世ひまわり〟、学園都市島の地下ボイラー施設より、発生する熱を配管利用し、二十四時間営業を可能としている。

他にも同様の施設はあるが、一番設備やサービスが充実しているのがこの〝永世ひまわり〟だ。

 

三人は番台で代金を支払い、受け取った鍵の番号のロッカーへ向かい、服を脱ぐ。

利用者は三人だけ、この時間帯ではまだ客は来ないのだろう。

広い湯船に、やけに歯を剥いた笑顔の向日葵の絵が、壁一面に描かれている。

かけ湯をし、体を洗ってから湯船に浸かれば、少し熱目の湯が疲れた体に沁みた。

 

「あぁ~……、ほんっと、疲れる……」

「一年は残り三組と五組、これは実質消化試合だが、二年三年がな……」

「この人格と文化のごった煮の中、二年三年と過ごした人達ですから、並大抵じゃ敵いませんヨ」

 

三人が疲れを吐き出す様にして、深く吐息する。IS学園は世界中から人材が集まり、この狭い島内でそれぞれの文化が展開される。

それはある意味で、宗教戦争や民族紛争の体を擁している。そんな中を、二年三年と過ごして、更に海千山千の教員を相手にしていれば、癖のある人間の一人や二人では済まなくなる。

 

「まったく頭が痛い話だ。これから忙しくなるのに……」

「ははは、誠一郎。やっぱり十二月か?」

「ああ、十二月二十五日前後だろうよ。入ってくる情報を整理するが、そこら辺が連中の限界点でもある」

「反対意見、出ますよねぇ……」

 

また一度、三人揃って深く吐息する。

無言、湯の揺れる音と、蛇口からの滴りだけが、浴室内響く。

 

「……そういやよ、誠一郎。箒達とはどうなんだ?」

「どうとは?」

「上手くいってんのかって事だよ。そこんとこ、どうよ」

 

ふむ、と誠一郎は顎に手を当て、一夏にどう答えるか考える。実質、誠一郎の現状は一般社会では、二股をかけている状態だ。

一夏、誠一郎、傭平の三人は特例として、一夫多妻が認められているが、現代日本の常識で育った者には、あまり快くないものだろう。

誠一郎はその辺りは割り切って、一夏は鈴音以外に興味は無く、傭平に至っては、どうにも理解しているのかいないのか。

 

「まあ、そうだな。今の所は目立つ何かは無いか」

「お、そうか。箒は幼馴染みだし、誠一郎だから大丈夫だろうが、少し気になっててな」

「安心しろ。俺は責任は取るし、二人共娶る覚悟と準備はある」

「いやはや、凄い話ですネ」

 

気の抜けた返事を、傭平がする。一夏は、お前もどうだと聞きそうになるが、今の傭平にそれを聞いて、期待する答えが返ってくるとは思えない。

だから、一夏は違う話題を振った。

 

「なあ、傭平。俺にもあの腕くれよ」

「ヘカトンケイレスですカ? あれに関しては、早瀬クンに言った方がいいですヨ」

「あれ絶対、白式が嫌がるぞ」

「なんとかならんかー」

「ならんだろうよ。……雪片弐型に機能を増やすなら、何とか了承するだろうがな」

「あれか、納得するやつなら、増やせるな。加速用のスラスターは受け入れたしな」

「じゃあ次は、ブレード飛ばしますカ?」

 

傭平の提案に、一夏は目を見開いた。

 

「いいな! 飛ばそう!」

「スペツナズ雪片弐型、一回飛ばしたら終わりだぞ?」

「白式、了承するか?」

「せんだろう」

「ワイヤーで繋ぎますカ」

「鎖鎌ならぬワイヤー雪片、……ありか?」

「止めとけ止めとけ。絡まって自爆する未来しか見えん」

 

だよなー。一夏が湯に沈む。

三人の中で、一番体格の大きい一夏が、湯船に沈めば、その分湯が溢れた。

気付けば、大分長い時間湯に浸かっていた。

 

「そろそろ帰るか」

「ああ、買い物もあるしな」

「ボス、待ちくたびれて、何か食べてますヨ」

 

絶対と言えば、違いないと二人が同意する。

近付く学園祭、そこでまず一つの事が決まる。

IS学園の〝未来〟だ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。