一年一組
代表¦織斑・一夏
副代表¦早瀬・誠一郎
一年二組
代表¦凰・鈴音
副代表¦ティナ・ハミルトン
一年三組
代表¦アメリア・ヌベス
副代表¦グレイシア・オマリ
一年四組
代表¦更識・簪
副代表¦仙波・傭平
一年五組
代表¦京極・すみれ
副代表¦マルファ・ノブツカヤ
「……それで、貴女達は一体何をするつもりなの?」
汗を流し、ISスーツから制服に着替えたアメリアが、同じく着替えて、吸入器を咥えていた傭平に問うた。見れば、右腕を吊っている。
「あ~、それはもう少し待ってもらえますか?」
「教えると言ったのは、貴女達よ」
「あ、いやいや、教えますよ。だけど、全員が揃うのを待ってほし……」
と、傭平がそこまで言った時だった。傭平達の居る第四アリーナの隣、第五アリーナから轟音が響いた。
「……今、終ったみたいです」
「二組代表ね」
「二組対五組の試合でした」
過去形だ。それも当然、あの凰・鈴音相手に、五組は単純に数で勝とうとした。戦略も要も無く、ただの数。
そんなものを鈴音にぶつけたところで、哀れな犠牲者を増やすだけだ。
龍母 ¦『終ったわよー』
一季 ¦『いやあ、早い早い。漫画みたいに人が飛ぶんだな』
侍娘 ¦『鈴相手に数でいったんだ。……あんなのゲームで見たな』
セシー¦『武将系アクションですわね』
弾薬庫¦『あ、隠しコマンドで性転換してビーム撃つやつだ』
首領飾¦『剣からビームは基本』
雇われ¦『世界が違う基本ですね』
「五組代表のやりそうな事ね」
「ああ、やっぱりそういう人なんですか」
傭平が広げた、空間投影型ディスプレイを見ながら、アメリアが溜め息混じりに言う。
「何と言うか他力本願、人を纏めるのは上手いけど、人を使うのは下手という感じね」
「え、なんですその矛盾」
「口が上手いし人当たりが良いけど、計画性があまり無いのよ」
まあ、本人も自覚してるけど。アメリアが言うと、廊下から声がした。
「いや、あのミサイルは卑怯でしょ」
「ははは、自国の代表の装備を思い出せ」
「……発言を撤回する勇気って大事よね?」
「グレース、何を言ってるの」
「ん、試合後の親交。アメリアも、大事だよ、こういうのはさ」
アメリアが溜め息を吐く。どうやら、三組の外交担当は、副代表が担っている様だ。
「ハロー、四組副代表さん。改めて自己紹介するわ。三組副代表〝グレイシア・オマリ〟、仲が良い相手からはグレースって呼ばれてるわ」
「ではこちらも、三組副代表の仙波・傭平です」
「宜しく、ミスタ・仙波。ほら、アメリアも」
「……三組代表、アメリア・ヌベス」
「四組代表、更識・簪」
握手をするが、両者共に顔が笑っていない。
傭平がグレイシアを見れば、彼女も肩を竦めていた。どうやら、よくある事らしい。
「それで、私達に何をさせる気かしら?」
「説明するから、後少し待って。全員が揃ってからの方がいい」
「まさか、一年全員?」
「そのまさかだ」
現れたのは、バインダーを抱えた早瀬・誠一郎。続く後ろには、セシリアと箒が居る。
「〝HAI〟次期代表」
「気の早い話だ、三組代表。鈴と一夏が五組を連れて、大会議室に向かっている。詳しい話はそこでだ」
「簡単だが、軽食も用意している。……ああ、安心するといい。全て、〝HAI〟社製品だ」
「箒さん、今のどういう意味ですの?」
「はっはっはっ、セシリア。ほら、宗教的な体質的なサムシングがあるだろう?」
笑って済ませる箒と、納得した様で、何か納得がいかない様子のセシリアを横に、簪はさっさと大会議室へと足を向けていた。
やはりと言うべきか、空腹の様だ。
「四組代表」
アメリアが言い止めるが、簪は聞く耳持たず、ピットから去っていった。
「ねえ、彼女、いつもあれ?」
「あ、いや、いつもじゃないんですけど、空腹時は機嫌が悪いんですよ」
アメリアはどちらかと言えば、若干目付きが鋭すぎるきらいがあるが、日系の見慣れた顔立ちだ。
対し、グレイシアは典型的な南米系の顔立ちと肌色をしており、強い目力と陽気な性格も相俟って、中々に強い圧を感じる。
「ふうん?」
「何か入れれば、また元通りですね」
「扱いに困りそうね?」
慣れましたよ、と言う傭平を見るグレイシアの目は、柔和な表情に対し鋭い。傭平の言葉に嘘が無いか、それを見極めているのだろう。
他にも、誠一郎やセシリアに箒にも、何かを問い掛け、アメリアに視線を送る。
視線を受けたアメリアが頷くのを見て、グレイシアは僅かに見せていた険の色を解いた。
「それじゃ、行きましょうか。大事な話を包み隠さず、明かしてもらう為にね」
〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃
「はーい私が五組代表の〝京極・すみれ〟だよ」
賑やかな大会議室に着いた簪を出迎えたのは、会議机に突っ伏しながら、プラスチックのフォークを口で弄ぶ、いまいちやる気の無さそうな女だった。
「食べ物は部屋の隅に纏めて並べてるから好きなものを好きなだけ一緒に置いてある紙皿にね」
純日本人にしては、顔立ちがはっきりとしている。そして、肺活量があるのか口調なのか、言葉が途切れず一気に来る。
「やけにケミカルなのあるけど退かず省みずレッツチャレンジ。だけどその真緑のパスタやめときなよ。食べる青汁濃縮味」
ほぼ初対面に近いが、やけに親しげに話し掛けてくる。間を置かない独特の口調に、簪が言葉を挟まず、紙皿にやけに濃いソース色のパスタを盛りながら、もう一枚の皿にパンを乗せていると、大会議の扉が開いた。
「お、簪も到着か」
「一夏、鈴は?」
「鍋振ってる。米と回鍋肉来るぞ」
「軽食って何だっけ?」
盛ったパンを割って、中にソース色パスタを挟んで齧る。出汁ソース風味だった。キャベツが欲しいと、簪は躊躇い無く咀嚼し飲み込み、また次に取り掛かる。
「四組代表はよく食べるね」
「食べないと、体が保たない」
「正論だな」
延々とソース味だが、焦げたのか焦がしたのか、たまにある色の濃い部分が、予想外に香ばしい。
だが、具が無い。〝HAI〟は何を考えているのか。
同じ様に、サンドイッチを齧る一夏を横目に、簪は〝まロ茶 ~ふふふ、最近の新庄君は過激だね~〟を一気に飲み干す。
「もうすぐ皆来るから、一応は座っとこうぜ」
「一組二組、到着ですわ」
「三組と四組もだよ」
「ついでに、白飯と回鍋肉もよ」
セシリア、シャルロットが一年全員を連れて、大会議室に入ると、ついでと鈴音が業務用炊飯器と、会食用の大皿に山盛りとなった回鍋肉を持ってきた。
生徒の一部は、既に白飯に回鍋肉が乗った茶碗と箸を持っている。
「早くないかしら?」
「でも、アメリア。二組代表の料理は人気よ」
「よくご馳走になってるんで、味は保証しますよ」
続き、アメリアとグレイシアに傭平が入室する。
「さて、全員揃ったか」
「それでは、各クラスは代表、副代表を先頭に席に着いてくれ。あ、料理は好きな様にしてくれて構わない」
最後に誠一郎と箒が入室し、これで一年が全員揃った。
誠一郎は一組の席には着かず、議長と書かれた名札の置かれた席に座り、箒は書記の席に座った。
二人の後ろに置かれたホワイトボードには、何も書かれておらず、全員が誠一郎の言葉を待つ。
「今回の議題は二つある。一つは俺達、専用機持ち組の問題。これに関しては、最悪俺達で何とかする。もう一つに関しては、俺達全員の問題となる」
単刀直入に言おう。
誠一郎は、一瞬息を吐き、全員を見据えて言い放った。
「下手をすると、来年には今のIS学園は無くなる」
そして、その言葉に、専用機持ち組以外の全員が目を見開いた。