マイボス マイパートナー   作:ジト民逆脚屋

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祭りの前夜 配点¦(実は今が一番楽しかったり)

まったくと、迫り来る弾幕を回避しながら、傭平は右腕を振り抜いた。

色々と言いたい事はあるが、今は迫る質量弾をどうにかしなければ、色々と何も言えなくなってしまう。

打撃に防御に捕縛と、多岐に渡る役割を持つクローで、質量弾を掴み、そのままの勢いで体を回し、それを投げ返す。

 

「ふぅん、結構いいわね。これ」

「結構いいわね、で済ませないでほしいんですガ……」

 

割りと、というレベルでなく辛い。というか容赦が無い。

学園祭の準備に追われていた筈なのに、何をどうして砲火に晒されねばならないのか。

よくよく考えるが、傭平の極々平凡な思考回路では、今の難解な状況への答えは出ない。

兎に角、今は目の前に迫るアメリアを、どうにかしてどうにかするしかない。

 

「振りが遅れる、訳でもないわね」

「いや、ちょっ!」

 

風を切り、快音と共に武装腕に叩き付けられたのは、装飾の少ない二本の長剣。

まるで、独楽の様に体を回して、絶え間無く、その刃が多方向から迫り続ける。しかし、それだけに気を取られる訳にはいかない。

 

「やっぱり、扱いが難しいわ」

 

大小二門、合わせて四門の砲口が、常にこちらを狙い、隙あらば質量弾を撃ち込んでくる。

 

 

兎軍人¦『ははは、どうだ。ドイツの最新型武装は』

雇われ¦『ボ、ボーデヴィッヒさん! これやり過ぎですヨ……!』

兎軍人¦『なに、気にする事はない。……死にはしない』

雇われ¦『あ! テンション上がってますネ?!』

兎軍人¦『はっはっはっ、我が祖国の砲火に沈めぃ……!』

 

 

ラウラはもうダメだ。

ディスプレイを閉じ、傭平は腰部装甲内蔵型の大型ナイフを抜き、アメリアの連撃を捌いていく。

 

「流石に、この装備でこの距離は、慣れないと厳しいわ」

 

しかも、相手はあの仙波・傭平。公式での実績は無いに等しいが、先日の試合で実力は理解した。

高い身体能力と身体操作技術、本能で己の動かし方を理解しているアメリアと違い、長い訓練で培った能力と技術で、傭平はアメリアに追随する。

しかし、アメリアに技術が無いのか。それは否だ。

 

「慣れないと厳しいなら、慣れればいいのよね」

 

本来、両手で振るう筈の長剣を片手で、それも二刀を易々と扱い、更識と仙波の剣術を修めている傭平を、次第に押し始めていた。

大きく細かく、緩急の激しい動きから、細かく緩やかな、流れる様な滑らかな動きへ、ナイフから剣を振るう動きへと変わっていく。

 

――冗談でもキツイですヨ……!――

 

修練し、修めた動きというのは、そう簡単には変わらない。その内に修めていたのであれば、動きを切り替える事は出来る。

だが、アメリアは変化した。ナイフから長剣へ、形も違えば、長さも重さも、扱う動きすら違う。まるで、最初から知っているかの様な動きだ。

 

 

弾薬庫¦『機体も新型、〝アイゼン・リッター(ツヴァイ)〟。軽量級の格闘機、テンペスタより出力が高い筈なのに、動きに迷いや違和感が無い。……天才って居るんだね』

一季 ¦『ドイツ製準第三世代兵装〝ファフニール〟と〝ファフニール改〟か。……あれ、エグくね?』

兎軍人¦『個人的には、〝グラム〟にも注目してほしいんだがな。腕利きの刀剣職人による業物だぞ』

セシー¦『イグニッションプランによる技術供与の産物、ドイツ製BT兵器。もう少しスマートに出来ませんでしたの?』

 

 

叩き付ける様な爆轟、ヘカトンケイレスの最大火力による一撃。並みの軽量機体なら、一撃で撃破判定となる爆炎の中から、それは悠然と姿を現した。

強いて言うなら、恐ろしく重厚な十字架。傷はおろか、跡すら残らない頑健な装甲に覆われた、大小四門の自律砲。

小口径を〝ファフニール〟、大口径を〝ファフニール改〟。シュヴァルツェア・レーゲンのレールカノンと、同口径のファフニールを常に動かし続け、それを超える大口径のファフニール改は、常に自分の周囲で防護に回す。

イギリスのBT兵器より簡略化され、細かな動きが出来ないという欠点はあるが、有り余る火力と装甲防御力が、その欠点を完全に打ち消している。

 

 

兎軍人¦『さて、どうだ新人(ルーキー)?』

あめり¦『悪くないわ。強いて言うなら、動きの遅さね』

兎軍人¦『そこは技術でカバーしてくれ』

あめり¦『そうね。なら、こうしようかしら』

 

 

まず、細かな動きは諦めた。四門共に自分よりも巨大なのだ。それに可能とする関節や機能も無い。

ならばと、アメリアは動きを定めた。単純に単純な動きが出来る様に、四門の動きのパターンを作った。先ずは、相手の動きを制限する為に、四門全てで取り囲む。

仮だが、悪くない出来だ。

 

 

Oまり¦『うわ……、アメリア友達無くすよ?』

あめり¦『グレースに引かれるのは、少し驚いたわ』

侍娘 ¦『というか、中々に使い方に容赦が無いな』

あめり¦『武器や道具は使って価値があるわ。なら、私は徹底的に使い倒す』

雇われ¦『や、優しさ、優しさが欲しイ……』

あめり¦『そうね、なら、はい』

 

 

――それは優しさではありませン……!――

 

放たれた優しさは、四門同時砲撃。しかも、至近距離での同時砲撃。回避は不可能、唯一の回避ルートには、既にアメリアの姿があった。

回避しなければ、砲撃に撃たれ、回避すれば、長剣に断たれる。なら、回避しなければいい。

 

――根性ー!――

 

最も信頼する二人が用意した右腕、神に挑む巨人の名を冠した腕を、迫る質量弾に向けて振り抜いた。

 

「っ……!」

 

衝撃、武装腕が軋み、直撃したクローが撓む。

アラートが鳴り響き、伝わる負荷状況から、傭平は爆薬を装填、二発同時点火による大爆炎が、アメリアと傭平ごとアリーナを埋め尽くした。

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

「さて、二人共。何か言う事あるかな? あるよね?」

 

にっこりと、オノマトペが浮かんできそうな笑顔を浮かべて、シャルロットが傭平とアメリアの二人を正座させている。

 

「試験結果はどうかしら?」

「うん、そうだね。〝グラム〟〝ファフニール〟〝ファフニール改〟、全て正常。ラウラ曰く、ドイツの担当官も満足してたって話」

「あら、ならいいわ」

「ならいいわじゃなくて、よくないんだよ……!」

 

シャルロットが叫ぶ。背後では、クローと装甲が破損したヘカトンケイレスと、砲口が裂けたファフニールが、一年整備課総出で修復されている。

防弾の直撃と炸薬の同時点火により、ヘカトンケイレスは第二クロー、薬室に内部撃鉄、放熱板と爆炎放出口が、過負荷により破損。ファフニールは爆轟の直撃を受け、熱と圧力が内部負荷限界を超え、砲口から内部砲身まで裂けてしまった。

両機共に、機体自体はほぼ無傷であり、破損した武装もパーツの交換だけで済む。

だが、

 

「分かってるの? 時間に余裕はないんだよ?」

「だからこそ、やる必要があるのよ」

「それはそうなんだけどさ……」

 

今、誠一郎達が各国各機関と交渉し、来る運命の日を調整しつつ、国連の外堀を埋めている。鈴音や一夏達は学園祭の準備に走り回っている。

そして、シャルロットや傭平に簪達は、生徒に回す装備や、自分達の武装の調整、各課の折衝の最終段階に入りつつあった。

 

「聞いた話によると、米国も怪しい動きをしているみたいね」

「ああ、あれ本当でしたカ」

「フランスからも、気を付けろみたいな話が来てるし、誠一郎達は国連と、簪は倉持ともめてるしさ……」

「……他にもテストしないといけないものもあるし、今はこの位にしておきましょうカ」

 

〝HAI〟から搬入されてくる機体や武装、物資は日に日に増えている。鈴音達も、手すきの者達を適宜回してはくれているが、現状は厳しいままだ。

 

「一夏も定期点検で、白式を整備課に預けてるし、誠一郎の機体も最終調整で〝HAI〟。学園内は半分お祭り騒ぎだし、今何かあったら大変だよぉ」

「心配し過ぎと言いたいけど、国連が暮桜を欲しがるなら、あの国も同じね」

「何かちょっかいを掛けてくる可能性は、充分にありますよネ」

 

 

Oまり¦『取り敢えずさ、私のテストいい?』

セシー¦『データはこちらでチェックしてますわ』

侍娘 ¦『準備はいいな。では、英国式準第三世代兵装〝ミスチビアスフェアリーサプライズボックス(イタズラ妖精のびっくり箱)〟の動作テストを開始する』

 

 

溜め息を吐く三人を他所に、アリーナで来季には、英国の代表候補生となるグレイシアの、準第三世代兵装の動作テストが行われていた。

 

「こんな日が続くだけならいいのにね……」

 

秋の青空の下、窓から空を見上げたシャルロットの呟きに、誰もが言葉を発さず、しかし頷いた。

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