マイボス マイパートナー   作:ジト民逆脚屋

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挿し絵とか欲しいなって


奉納神楽は如何に舞われるか 配点¦(楽しんだ者勝ち)

さて、どうなるかとは問わない。

さて、どうするかとは問わない。

さあ、どうしようかとも問わない。

誰も、理解している。

今この場において、問うという事自体が意味を成さぬ事だと。

 

「おうおう、中々静粛じゃねえか」

 

戦場となる〝播磨〟を見詰める観客席、空間投影ディスプレイ越しだが、それでも不用意に騒ぎ立てる輩は見当たらない。

 

「そりゃそうでしょ。まさか、三種の神器全部揃うとか、誰が予想したのかしら?」

「あ、俺。俺予想してた」

「一夏、頭悪そうだから止めた方がいいぞ」

「お前……、どうして、そう直接くるよ? そこんとこ、どうよ?」

「いいから、準備を進めろ。そろそろ時間だ」

「誠一郎さん。時間ですが、まだお二人が」

「簪と傭平なら」

「もう来てますよ」

「諸君、待たせたな」

 

何やら、菓子を齧りながら、簪が悠々と現れた。

側には傭平が、どことなく申し訳なさそうに立っていた。

 

「お前、まさか……」

「売店に寄ったら、ついつい遅れたね」

 

逆さに向けた袋から、スナック菓子を口に流し込み、派手な音を立てて咀嚼し、嚥下する。

見れば、背後の傭平が右手の指を五本たてている。つまり、今の袋で五袋目だという事だ。

 

「新味はついつい試したくなるね?」

「遅れた理由がそれなのね?」

「まあ、それと少しの緊張かな?」

 

言いながら、新たな菓子の袋を開け、一つを口に運ぶと、その袋を傭平に渡す。何かと、傭平は袋を受け取り、見れば少し赤いスナック菓子が入っている。

恐らく、食えという事なのだろう。一枚手に取り、口に運ぶ。そして、隣のシャルロットに袋を手渡す。

あとはその繰り返しで最後、誠一郎から簪に袋が戻り、一足早く嚥下した一夏が、簪に向けて言った。

 

「……お前、これ何味よ?」

「新商品〝俺ちゃんのチミチャンガ〟味、中々ハイカロリーな味だね」

「く、口の中が、どういう状況か分かりませんわ……」

「というかチミチャンガって、揚げたブリトーでしょ。赤い要素はどこよ?」

「具……?」

 

これは一体何なのだと、薄く赤色の付いた揚げた薄切り芋を、全員で囲んで何だかんだと、緊張感の欠片も無い会話を繰り広げる。

これから〝神〟と戦う。そんな悲壮感は微塵も感じられない。何時もと変わらぬ、これから試合をして、終わったらまた、あれやこれやと騒ぐ。

今日は、何時もより人が多いだけだと、そんな気楽さで、菓子を回し食い、空になった辺りで、簪が口を開いた。

 

「さて、何か騒がしくなってきたけど、まさか今更になって、緊張してきたとか帰りたいとか言わない?」

 

と、簪が問えば、

 

「おいおい、折角の祭だぜ? 乗らなきゃ損って奴だ。そこんとこどうよ、鈴」

「あのね、一夏。私は〝龍〟よ? 〝龍〟が〝神〟にビビる理由は無いわね。あと、祭に行くのは当たり前。で、ビビってるのは居るの?」

 

龍の女と白の太刀が応え、

 

「ははは、鈴よ。私は篠ノ之の女だ。神の魂鎮めは本職だぞ。それに、仲間外れは嫌だ」

「日本式の考えは、まだ理解出来ませんが、此度の戦いに誉れこそ感じても、怯えは有り得ませんわ」

「まあ、俺は例によって機体が間に合わんから出れん。だが、仲間外れは御免だな」

 

誉れの騎士と、腰に刀を佩く巫女が笑い、策士もそれに習う。

 

「うむ、祭とは楽しいものだ。クラリッサもそう言っていた。それに、こういったものは楽しんだ者勝ちだとも聞いた」

「そうそう、楽しもうよ。傭平も」

 

黒の軍人と疾風の乙女が振り向けば、

 

「では、ボス。祭です」

 

右腕たる傭兵が、乙女の言葉に頷き、主もそれに頷く。

 

「さあ、祭だ祭だよ。嘗て世界を一度は見限った〝神〟に捧げる祭だ。捧げるは我らの武と勇と意思、そして得るのは未来だ。あ、私地味だから、派手な演出欲しいね」

「……そう言うと思って、傭平と手を回しておいた」

「というか話の腰折るなって」

「黛先輩の新聞部と演劇部が、好き勝手するらしいですよ」

「なら、安心かな?」

「安心なら良しとしてだ。そろそろ入場だが、さっき言った様に、新聞部と演劇部の演出がある。あと、俺の仕込みもな」

 

何やら邪悪さを感じさせる笑みを浮かべると、誠一郎は一夏を指差した。

 

「まず最初はお前だ。名前を呼ばれたら派手に飛べ」

「お、マジか」

 

問うと同時に、聞き覚えのある声が、会場に響いた。

 

『さあさ、皆さんお待ちかね! もう間もなく、世紀の一戦の幕が開けます!』

「だそうだ。ほら、さっさとカタパルトに行け」

 

背を押された一夏が、カタパルトに白式の脚部を乗せると、黛の声と一夏好みの音楽が鳴り始めた。

 

『さあ、まず一番手を飾りますは、我らが世界最強が血縁にして、世界最初の男性パイロット! さあ、来いよ、〝白〟を受け継ぎし〝白〟! 織斑・一夏入場だ……!』

「おい待て、これ毎回やるのか? そこんとこ、どう……!」

 

よ、とは続かず、一夏はカタパルトによって、歓声とスモークの渦の中に射出される。

まったく、自分が出ないからと好き勝手してくれる。一夏は苦笑を浮かべ、軽いパフォーマンスでもと、大剣型に機殻(カウリング)した雪片弐型を、軽く構えた瞬間、正面から何か悪寒の様な感覚を感じた。

 

――これは……!――

 

この悪寒の正体を、一夏は知っている。だから、雪片を斜めに振り下ろした。得たのは、澄みきった硬質な激突音と観客の驚愕。そして、この場に立つ権利だ。

 

『……えー、今更ですが、解説の榊原先生。今のは?』

『あ? 熱田が値踏みしてきただけだ。〝剣神〟熱田はそれ故に〝剣神〟であると、そういう事だ』

『つまり?』

『お前、あとで補習するか? ……まあいい、熱田が織斑弟を試し斬りしたら、織斑弟がそれを受けきった。それだけの話だ』

『見えなかったんですが……?』

『ま、そこら辺は追々話してやる。うちの連中が保てばの話だがな』

 

中々に不吉な事をと、一夏は思うが、雪片を持つ手にまだ痺れに似た感覚が残っている。

情けない話だが、これは本当に鈴音に任せるのが正解の様だ。

戦えない、という訳ではない。しかし、勝てるかと問われたら、答えは〝今〟は否だ。

今、あの〝神〟に届くのは、鈴音以外には居ない。

だがしかし、届かないから諦めるのか。

否、それは断じて否である。

 

「神様のお気に召したって奴かよ」

 

なら、何も問題は無い。今この場には、〝神〟に届かぬと諦める者居ない。

 

『では、気を取り直しまして、二人目! 神職である巫女にして、自らも剣を振るう女武者! IS学園の人斬り巫女とは彼女の事だ! 紅の巫女武者! 篠ノ之・箒!』

「誰が人斬りだ! 誰が……!!」

「おいおい、落ち着けって箒。……今までの試合、思い出せって」

「私は殺生はしていない!」

「切り捨て御免は?」

「試合で相手を斬るなと?」

 

この場に居る者は、全員が〝神〟に挑むと決めた者達。

 

『さあ、まだ続くぞ三人目! その右腕は忠義の右腕! その右腕は〝神〟に挑む巨人の右腕! 今日この日、敬愛する主の道を切り開こう! 雇われ傭平! 仙波・傭平!』

「いやはや、何だか大変な事になりましたね?」

「おう、簪の様子はどうよ?」

「何だかテンション上がってますよ」

「それは上々だな」

 

〝神〟に挑み、そして勝つと決めた者達。

 

『続く四人目! 〝神〟に届く者は居るか? 〝神〟に勝る者は居るか? 嗚呼、そうだ! ここに居るぞ!

〝神〟に届く〝龍〟! 〝神〟に勝る〝龍〟! 嘗て、力こそが〝神〟だった! ならば、全てを捩じ伏せるこの力こそが我らの〝神〟だ! さあ来るぞ! 〝小暴龍〟凰・鈴音だ!』

『鈴音姊姊!!』

『鈴音妈妈!!』

『カーちゃんだ! カーちゃんが出たぞ!』

「中々派手ね。……と、一夏」

「あいよ」

 

そう返事を返し、一夏と他二人が鈴音の視界から外れ、鈴音の背後に下がる。

沸いていた観客は、一体どうしたのかと疑問する。そして、その疑問は一瞬で解消された。

悠然と佇む鈴音の眼前で、何か薄く硬質なものが砕け散る破砕音が響き、〝播磨〟上にある建物の幾つかが、横一文字に両断され、倒壊の音と粉塵を撒き散らし、崩れ落ちていた。

 

「試しは済んだの?」

 

鈴音はそう言うが、返事となる言葉が返ってくる事は無かった。

誰も何も言われずとも解る。今の一撃は〝剣神〟の試しだ。そして鈴音は、その試しをただ無傷で受けきった。

 

 

弾薬庫¦『何今の? 何今の……?!』

御曹司¦『〝剣神〟の業だろうが、少し想像以上か?』

牛鬼 ¦『一応言っとくけどね? 今の〝剣神〟結構機嫌良いかもね?』

Oまり¦『機嫌が良くなったら、危険物飛ばしてくるって……』

あめり¦『隔離した方がよくないかしら?』

セシー¦『本当にはっきり仰いますわね』

御曹司¦『勝てば、隔離でも何でもすればいい。だが今からは、俺の戦いだ』

牛鬼 ¦『何か仕込んでるね? というより、薫子に何か吹き込んだね?』

御曹司¦『ははは、吹き込んだとか人聞きの悪い。俺はただ、善意で噂話を流しただけで、そしたら偶然にも噂話が事実だったというだけだ』

牛鬼 ¦『物は言い様だね? まあ、私的にも、気分的には楽になるから、別にいいけどね?』

 

 

既に見限ったとは言え、古巣とも言える場所だ。やはり、若干の後ろめたさはある。

だからまあ、身から出た錆として諦めてほしい。

 

『そして最後の五人目ですが! 本来の五人目である早瀬・誠一郎は、機体の改修が間に合わず、無念の棄権という事です! ……しかし皆様、ご安心ください。本日吉日、代役にして最後の五人目に相応しい人物と、世界を驚かすビッグニュースをご用意しております……!』

 

――さあ、ここから勝負よ。黛・薫子……!――

 

最初に話を聞いた時は、ただのデマだと切り捨てた。情報を扱う以上、騒いでいい噂とそうではない噂の見極めは、確かにしなければ、要らぬ争いの種になる。

だが、この噂はただのデマと切り捨てるには、いやに信憑性があった。

一年達の動きと、専用機持ち達の集まり。それに加えた〝HAI〟との関係の強化。まるで倉持技研との関係を断つかの様なシフトチェンジに、調べてくださいと言わんばかりに、学園に運び込まれる機材と資材。

そして、匿名で寄せられる更識・簪と倉持技研の関係。

 

――それでこのタイミングでの、この話。誰でも気付く――

 

『最後の最後! 五人となるは学園最強にして、現ロシア国家代表更識・楯無の妹! 不世出の天才! 更識・簪!』

 

そう、ここには挑む者しか居ない。

だから、見せてほしい。

 

『そして、彼女が駆る機体こそ、IS学園で生まれた第三世代機体! 我ら子供が世界に叩き付けた挑戦状だ……! さあ来いよ! 更識・簪、打鉄弐式……!』

 

〝神〟に〝世界〟に挑み勝つ。

子供を嘗めきった大人の、高々と伸びきった鼻をへし折る様を、私達にも見せてほしい。




だけど私は絵が描けない
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